淡路阪神大震災から28年。
被災者6434人には、6434以上の物語がある。
1月20日ラジオ深夜便。
「親愛なる母上様」もその一つ。
神戸大学に入学の一人息子、加藤貴光さんを、下宿の西宮まで送り届けた母、加藤りつこさんの、その後の物語。
残念な事に、貴光さんは、1995年1月17日の大地震で、住居のマンションが倒壊。21歳の若さで亡くなったとの事。
茫然自失のりつこさんに遺されたのは、入学時、神戸から広島への帰途、息子貴光さんが新幹線の駅で、別れ際、渡してくれた感謝の手紙。
それが、「親愛なる母上様」。
母の愛情によって、より高くより遠く、飛躍するよう紡がれた
息子の翼は、無惨にも、震災によって絶たれたが、その愛情の深さと絆は、広く伝播している。
壇 一雄(1912~1976)の「リツ子その愛 リツ子その死」ならぬ「りつこその愛 貴光その死」物語。
遠く近くは、地理上の距離だけではない。
時間にも、記憶にも存在する。
暁の刻に、眠りを醒ます蒸気船ならぬ深夜便。
団塊も、母親のりつこさんと、ほぼ同年代。
来月73だが気持ちは37。
武田鉄矢の、「思えば遠くへ来たものだ」。
そして、翼を休めつつ、もう少し遠くまで羽ばたくとすべえか。