2019年9月17日に総選挙が行われるイスラエル国で、ユダヤ教に基づく法制度や慣習(伝統)の是非が焦点になっている。
イスラエルの家族法もユダヤ教を強く反映している。それについて、バルイラン大学ラクマンセンターのルース・ハルペリンカダリ教授(家族法)は「ユダヤ教の伝統を守る事が個人の権利の侵害につながっている。特に家族法は男性が女性を管理する考えが根強く、国際機関からも批判も受けている」という。
ユダヤ教の法制度や慣習(伝統)を愚直に守るのは、人口の1割強で、黒い帽子に黒いスーツ、あごひげに長いもみあげという格好をした超正統派の人々であるが、彼らについて、宗教の強制に反対する活動を続けるNGO「ビー・フリー・イスラエル」のシャケッド・ハッソン氏は「超正統派が伝統を守るのは良いが、それを全員に強制するのは間違いだ。多様な形で宗教と付き合う考え方が最近は広がりつつある」という。
以下に、ユダヤ教の安息日の一面を紹介しよう。
「ユダヤ教の安息日は、日曜日とは全然違う。金曜の日没から土曜の夕方までを指す。イスラエルでは日没と夕方にサイレンが鳴り渡る。安息日の間、イスラエル北西部の商業都市ハイファを除く国中の交通機関は止まる。ただし、シェルート(乗り合いタクシー)やモニート(ハイヤー)など私的交通機関は、勝手に営業して外国人観光客の足となっている。イスラエルには、ユダヤ教の信者だけでなく、信者でない人もおり、その両者で、安息日の過ごし方が違うが、両方に共通している慣習(伝統)としては、安息日の間は金銭のやり取りをしない事である。信者でない人はそれ以外については日本人の普通の休日のように、好きな事をして過ごすけれど、ユダヤ教徒の安息日は慣習(伝統)に従って過ごす。ユダヤ教徒は、土曜の朝、シャワーを浴びると、自分の持っている服の中で一番上等の長袖ワイシャツと長ズボンを身につけ、ソックスをはく。女性は一番上等の長袖ブラウスとロングスカートを身につける。この服装でシナゴーグ(教会堂)に礼拝に出かける。安息日の間、ユダヤ教徒はあらゆる労働をしてはいけない。火を使って料理をする事から、写真を撮られる事、電灯をつけたり消したりする事まで労働と見做されている。そのため、安息日に入る直前に、ローソクや電灯をともし、そのまま点けっぱなしにする。ただし、最近では、電灯の点滅をオートマチックにしたり、電気ポットでお湯を沸かしたりして、安息日の不便を乗り切っている」以上
ところで、日本人も、自分自身の生活を客観的に眺めれば、神道や仏教や世間体などさまざまな慣習(伝統)や制度に縛られて生活している事に気づいているだろうか。そして、その慣習(伝統)や制度が、すべての人に対し同調圧力(同調しないものは国民ではない非国民であるとする思想)という形で強制力を発揮し、それが憲法によって保障されている個々人の人権を侵害するという状況が生じていないだろうか。イスラエルの抱える問題は日本人にとっても他人事として無視できないのではないか。