上海師範大学「慰安婦」問題研究センターの微信(ウェイ・シン)によると、2019年8月21日、中国の日本軍性奴隷制度被害者・楊桂蘭(ヤン・クイラン)さんが死去した。99歳。彼女は1920年、湖北省通常県に生まれ、湖北省岳陽県に12歳で嫁いだ。実家に帰る途中で日本軍に拉致され、付近の祠堂(お堂)に監禁された。実家や親戚によって助け出されたが、10数日間、被害を受け続けた。2019年4月30日、上海師範大学「慰安婦」問題研究センターが被害を受けた幸存者である事を確認した。中国大陸で記録された日本軍性奴隷制度で被害を受けた生存者は17人だけとなった。
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(津田大介芸術監督)の企画展「表現の不自由展・その後」が脅迫などの暴力を受けて芸術祭実行委が企画展を中止した問題で2019年9月6日、市民団体「表現の自由を市民の手に 全国ネットワーク」は衆議院第2議員会館で抗議集会を開催。国会議員や文化人が「このままでは、暴力的抗議、公権力の圧力に屈する事になる」と再開を要求した。
また、企画展の実行委員会は同月13日、大村秀章・愛知県知事が会長を務める芸術祭実行委に展示再開を要求する仮処分を名古屋地裁に申請した。そして、「思想信条や表現の自由が侵害された」「損害賠償や責任追及ではなく、何より再開を要求する。適切な対策をとれば再開できる事を裁判官に示したい」と訴えた。
「あいちトリエンナーレ」に出品した作家の森達也氏は国民に警鐘を鳴らしている。「ピカソの代表作『ゲルニカ』は、スペイン・アサーニャ人民戦線内閣に対し反乱を起こしたファシスト・フランコ将軍に、ヒトラーのナチスドイツが軍事支援し、ゲルニカの町を無差別爆撃した事に対する非難抗議を表しており、国連本部にもタペストリーがある。今、ドイツが『先祖を侮辱しているから、絵を撤去しろ』と言ったなら、ドイツは世界からどう思われるでしょうか。今、日本では同じ事が起きている。脅迫で、不安と恐怖が社会で増幅し、『万一の事態』という言葉に誰も抵抗できなくなっており、危険な事態である」と。
侵略戦争であるアジア太平洋戦争を引き起こした神聖天皇主権大日本帝国政府は敗戦でなくなったが、新憲法に基づいた「日本国」の政権は、端的に言えば、それまでの為政者たちによって(自民党によって)継承されてきたと言って良い。安倍自公政権はその最新で最も戦前回帰的で民主主義を大切に思う主権者国民にとっては最悪の政権である。安倍自公政権は日本国憲法に定められている民主主義体制を、自分たちにとって都合の良い敗戦前の社会の姿に徐々に回帰させてきました。それに対し、「おかしい」と思い声を上げる人々を、脅しや圧力、権力を濫用して抑え込み黙らせてきました。今回の企画展に対してはそれを公然と行っているのです。この手法は、敗戦までの特高や憲兵の手法と根っこは同じです。この事態を今、主権者国民はどう認識するのか、その生き方を示すべき時が訪れています。後悔する事のないように。
ついでながら、第2次世界大戦・太平洋戦争の前から、無差別爆撃による市民の虐殺を行ったのはナチスドイツ(スペインのゲルニカへの爆撃)と神聖天皇主権大日本帝国政府(中国重慶への爆撃)であった。そして、米国による帝国日本の広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の最終的帰結であったという認識を持つ事が大切である。