安倍自民党ワールドは、公然と憲法第99条「憲法尊重擁護の義務」を侵害して「憲法全面改正」を主張している。このような国民を馬鹿にした態度を黙って許していて良いのか?
安倍首相の「憲法全面改正」の目的は、安倍ワールド(天皇家皇族も結託)を守るためであって、彼らが日本を支配し為政者としての地位と権力と財産を維持するためのものであり、そのために国民の権利と財産と生命を利用(搾取・収奪・奴隷化)するためのものであって国民を「正義の使者」のように国民を守るためではない。その彼らの思惑を隠していかにも国民のためであるかのように装い「改正」を訴えているのである。安倍ワールドと国民とは、利害が異なる立場に生きている事に今こそ気付かなければ後悔する事になるだろう。18歳以上の参政権を持つ国民は、将来、子孫から今の自分の対応を問われて言葉に詰まらないために。
安倍首相は、憲法改正について参院選で国民の信任を問う争点化を明言した。米国のお膳立てと軍事力を後ろ盾にして吉田茂内閣が手に入れたと言ってよい「自衛隊」という存在を、「7割の憲法学者が『憲法違反の疑いがある』と自衛隊に対して疑いを持っている状態を、無くすべきではないかという考え方もある」「国内では軍ではないと言い、海外では軍として認められているという詭弁は憲法を改正してやめるべきだ」(12年末の衆院選の各党党首討論会)と責任転嫁したうえにさらに「既成事実を認め明記すべきだ」とする手前勝手な理屈で、自分たちがいかにも正当な考え方であるかのように思わせる説明をして、改正の意思をアピールしている(9条だけではなく「自民党憲法改正草案」のすべての実現が目的)。またもやこれも、これまでの安倍の手法と同じである。しかし、もう驚いていてはいけない。これを超える手法で闘うべきである。安倍が「命がけ」で安倍ワールドの利害を守るためなら、国民も「まさか」と思う「お人よし」を止めて自らを守る現憲法を「命がけ」で守る事が大切である。
さて、安倍は日本国憲法の制定過程について、「日本が占領下でGHQがある中で、逆らえない。その中で憲法が作られたのは事実であろう」と国民が望まない内容の「憲法」を国民が「押し付けられた」と述べている。本当にそうだろうか。GHQ草案をベースとしてGHQと日本政府が交渉を重ねて作った「憲法改正草案」に対して、今日の自由民主党の母体となる憲法制定時の「日本自由党」と「日本進歩党」は「天皇主権の国体護持」を堅持していた。それに対して国民は、「毎日新聞」の世論調査(1946年5月27日)によると、「象徴天皇制」を85%が、「戦争放棄条項」を70%が、「国民の権利」を65%が支持していた。これを見ると、「押し付けられた」として受け入れたのは大日本帝国下で権力を握り国民を支配する側にいた連中であり、そのため今日まで一貫して「大日本帝国憲法」の復権(憲法全面改正)をめざしてきたのである。しかし、そうではない国民は自力で獲得しえたわけではないが待ち望んで喜んで受け入れたといえる。このほかにもどれほど歴史を歪曲し安倍が自分の目的を実現するために歴史を隠し歪曲し国民をごまかして信任を得ようとしているのかを見てみよう。今回は先ず、マッカーサーが幣原首相に、憲法改正(憲法の自由主義化)を示唆し、松本烝治国務相らが作成しGHQに提出した松本案甲案「憲法改正要綱」を紹介しよう。結果的に、GHQに提出した松本案は「大日本帝国憲法」とほとんど変わりのない内容であったためGHQは拒否し、GHQが草案を作成する流れを導く。
○1945年10月25日、松本は「憲法問題調査委員会」を発足。
○同年10月27日、第1回総会。松本は「憲法問題調査委員会という名称をつけたのは、明治憲法を改正するとか、しないとかいう事ではなしに、ただそういう事の問題を研究する委員会という意味に過ぎない。それに調査を充分にするためには、たっぷり時間をかけた方がいい。あまり早くやろうとすれば、どうしても行き過ぎのような事が起こる」と発言。
※同年11月12日に日本共産党が「新憲法案骨子」を発表した。
※第89議会(同年11月29日)での議員の意見発言。
斎藤隆夫議員の発言「いかに憲法を改正するとも、これによってわが国の国体を侵す事はできない。統治権の主体に指を触れる事は許されない」
鳩山一郎議員の発言「天皇が統治したまうという事が、国民の血肉となっている信念である。日本は族長的国家の典型的なもので、一大家族的集団である。この美しさを土台として発展してきた日本の中心は天皇である。我々は国家の中心を失う事は絶対できないのである」
幣原首相の発言「もし憲法の若干の条規を改正する事によって、将来の疑義を閉ざし、濫用のおそれを断ち、国運の伸張に貢献し得らるるものがあると認める場合には、この方向に歩を進める事が望ましい」
○同年12月8日の予算委員会で「松本4原則」発表。
①天皇が統治権を総攬せらるる原則に変更がない。⇒明治憲法の第1、3、4条をさす。
②議会の権限を拡充し、従来のいわゆる大権事項を制限する。⇒根本は変わらない。
③国務大臣の輔弼の責任を国務全般にし、それ以外のものの介在する余地をなからしめる。国務大臣は議会に対して責任を持つ。⇒それ以外のものとは、軍部の事で内閣のみが責任をもって国をリードしていく。
④臣民の自由、権利を保護し、国家の保障を強化する。
○同年12月22日に松本委員会総会開催。「第1条から4条は決定保留、天皇の地位に関する条項に触れたくない。民主的な味付けをする修正にとどめたい。」⇒憲法改正に積極的でなく尻込みしていた。
※同年12月26日、鈴木安蔵らの憲法研究会が「憲法草案要綱」を発表し、GHQと日本政府に提出した。
○1946年2月1日、毎日新聞が「松本委員会」の「乙案」(甲案の天皇主権を薄めた内容)をスクープ。
○同年2月3日には毎日新聞はコラムで「松本委員会案」を批判。「憲法改正調査委員会の試案を見て、今更の事ではないが、あまりに保守的、現状維持的のものに過ぎない事を失望しない者は少ないと思う。つまり、憲法改正という文字に拘泥し、法律的技師の性格を帯びた仕事しかできないで、新国家構成の経世的熱意と理想に欠けているからである。今日の憲法改正は単なる法律的の問題ではない。それは最高の政治である。法律家(東大商法専門家)の松本烝治国務相を中心とし、あたかも民法とか商法とかの改正調査会のようなものを作って、これに原案を作らせるという考え方が、すでに革命的の時代感覚とはおよそかけ離れたもので、……」
○1946年2月2日、第7回総会をもって任務完了し解散。幣原内閣の松本烝治を中心とする「憲法問題調査委員会」の体質を理解してもらえたと思う。
○マッカーサーは同年2月3日に民政局に「3原則」を示し、2月4日から1週間かけて「GHQ憲法草案」の作成を指示した(同年2月12日に完成)。
※マッカーサー3原則は①天皇は国の元首のままでかまわない。皇位の継承も世襲とする。天皇の職務及び権能は憲法に基づいて行使されるが、それは憲法に示された国民の基本的意思に基づいて定められる。②国権の発動としての戦争は放棄する。日本はいかなる事があれ、紛争解決のための手段として戦争を選択しない。さらには自らの安全を保持するための手段としての戦争も放棄する。日本の防衛は国際社会を動かしている崇高な理想に委ねる事にし、日本が陸海空軍をもつ権能は将来にわたって与えられる事はなく、交戦権が与えられる事もない。③日本の封建制度は一掃される。国会の型は英国の議会政治にならうが、貴族院をはじめ枢密院、それに特権階級である華族制度などは廃止される。以上。
○同年2月8日、松本烝治国務相はGHQに「憲法改正案(甲案)」(天皇統治権を認める大日本帝国憲法とほとんど同じ内容)を提出した。
○同年2月9日、松本は御文庫で天皇に会い、委員会案提出を報告した。その時の天皇と松本との問答は(木下道雄侍従次長『側近日記』)。
天皇「これ(明治憲法の第1、4条)はむしろ簡明に『大日本帝国は万世一系の天皇、この憲法の条章により統治す』としてはどうか。天皇が統治す、といえば権の字を特に用いる必要はないのではないか」
松本「仰せはもっともにございますが、その観点からの議論は、閣議にても出なかった事でございまして、……また第4条はもともとが外国(ドイツ)憲法の翻訳でございますれば、……それに憲法改正は陛下のご発議によるものであります以上、第1ないし第4条に触れます時は、議会で色々と議論を呼ぶ恐れもございます」
木下「とにかく松本という人は、自己の在任中に憲法改正を終了してしまいたいという意思が非常に強いようだ。これは総理大臣の幣原にも言おうと思うが、そんなに急がなくとも、改正の意思さえ表示しておけば足る事で、改正案は慎重に議論をなさしむべきである」以上。
○同年2月12日の夕方、GHQから楢橋渡書記官長に電話がかかってきた。「本日に予定されていた会談を延ばして、明日13日にしたい。なお、憲法問題でこちらから重大な提案をするからそのつもりで会合の準備をせよ」
○同年2月13日午前10時に外務大臣官邸で会合。
日本側は吉田茂外相、松本国務大臣、終戦連絡中央事務局次長:白洲次郎、外務省通訳:長谷川元吉の4人。
GHQ側はホイットニー准将、ケーディス大佐、ハッシィ中佐、ラウエル中佐の4人。
この時GHQは、松本の提出した「委員会案」=「憲法改正要綱」に拒否表明をし、作成した「GHQ憲法草案」(英文。鈴木安蔵らの憲法研究会の「憲法草案要綱」などを参照)を幣原内閣(吉田茂、松本烝治など)に提示した(回答期限は2月22日)。この時の両者のやり取りについては「ラウレル文書」、松本烝治「松本会見記略」)。
【松本烝治案「憲法改正要綱」】
第1章 天皇
第1条:大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す
第2条:皇位は皇室典範の定むる所に依り皇男子孫之を継承す
第3条:天皇は至尊にして侵すべからず
第4条:天皇は国の元首にして統治権を総攬しこの憲法の条規に依り之を行う
第5条:天皇は帝国議会の協賛を以て立法権を行う
第6条:天皇は法律を裁可し其の公布及び執行を命ず
第7条:①天皇は帝国議会を召集しその開会閉会停会及び衆議院の解散を命ず ②衆議院の解散は同一事由に基づき之を命ずることを得ず
第8条:①天皇は公共の安全を保持し又は其の災厄を避ける為緊急の必要に由り帝国議会閉会の場合に於いて法律に代わるべき勅令を発す、②この勅令は次の会期に於いて帝国議会に提出すべしもし議会に於いて承諾せざるときは政府は将来に向かってその効力を失うことを公布すべし ③緊急勅令を発するには議院法の定むる所に依り帝国議会常置委員の諮詢を経るを要す
第9条:天皇は法律を執行する為に又は行政の目的を達する為に必要なる命令を発し又は発せしむ但し命令を以て法律を変更することを得ず
第10条:天皇は行政各部の官制及び文武官の俸給を定め及び文武官を任免す但しこの憲法又は他の法律に特例を掲げたるものは各々その条項に依る
第11条:天皇は軍を統制す
第12条:①天皇は軍の編制及び常備兵額を定む ②軍の編制及び常備兵額は法律を以て之を定む
第13条:戦を宣し和を講じ又は法律を以て定むるを要する事項に関する条約若しくは国に重大なる義務を負わしむる条約を締結するには帝国議会の協賛を要するものとすること但し内外の情形に因り帝国議会の召集を待つこと能わざる緊急の必要あるときは帝国議会常置委員の諮詢を経るを以て足るものとし此の場合に於いては次の会期に於いて帝国議会に報告しその承諾を求むべし
第14条:①天皇は戒厳を宣告す ②戒厳の要件及び効力は法律を以て之を定む
第15条:天皇は栄典を授与す
第16条:天皇は大赦特赦減刑及び復権を命ず
第17条:①摂政を置くは皇室典範の定むる所に依る ②摂政は天皇の名に於いて大権を行う
第2章 臣民権利義務
第18条:日本臣民たるの要件は法律の定むる所に依る
第19条:日本臣民は法律命令の定むる所の資格に応じ均しく文武官に任ぜられ及び其の他の公務に就くことを得
第20条:日本臣民は法律の定むる所に従い公益の為必要なる役務に服する義務を有す
第21条:日本臣民は法律の定むる所に従い納税の義務を有す
第22条:日本臣民は法律の範囲内に於いて居住及び移転の自由を有す
第23条:日本臣民は法律に依るに非ずして逮捕監禁審問処罰を受けることなし
第24条:日本臣民は法律に定めたる裁判官の裁判を受けるの権を奪われることなし
第25条:日本臣民は法律に定めたる場合を除く外其の許諾なくして住所に侵入せられ及び捜索せらるることなし
第26条:日本臣民は法律に定めたる場合を除く外信書の秘密を侵されることなし
第27条:①日本臣民は其の所有権を侵されることなし ②公益の為必要なる処分は法律の定むる所に依る
第28条:日本臣民は安寧秩序を妨げざる限りに於いて信教の自由を有す
第29条:日本臣民は法律の範囲内に於いて言論著作印行集会結社の自由を有す
第30条:日本臣民は相当の敬礼を守り別に定むる所の規定に従い請願を為すことを得 ②日本臣民は本章各条に掲げたる場合の外凡て法律に依るに非ずしてその自由及び権利を侵さるることなし
第31条:(非常大権)削除
第32条:(軍人の特例)削除
第3章 帝国議会
第33条:帝国議会は参議院衆議院の両院を以て成立す
第34条:参議院は参議院法の定むる所に依る選挙又は勅任せられたる議員を以て組織す
第35条:衆議院は選挙法の定むる所に依り公選せられたる議員を以て組織す
第36条:何人も同時に両議院の議員たることを得ず
第37条:すべて法律は帝国議会の協賛を経るを要す
第38条:①両議院は政府の提出する法律案を議決し及び各々法律案を提出する事を得 ②衆議院に於いて引続き3回その総員3分の2以上の多数を以て可決して参議院に移したる法律案は参議院の議決あると否とを問わず帝国議会の協賛を経たるものとす
第39条:両議院の一に於いて否決したる法律案は同会期中に於いて再び提出することを得ず
第40条:両議院は法律又は其の他の事件に付各々其の意見を政府に建議することを得但し其の採納を得ざるものは同会期中に於いて再び建議することを得ず
第41条:帝国議会は毎年之を召集す
第42条:帝国議会は3カ月以上に於いて議院法に定めたる期間を以て会期とす必要ある場合に於いては勅命を以て之を延長することあるべし
第43条:①臨時緊急の必要ある場合に於いて常会の外臨時会を召集すべし ②臨時会の会期を定むるは勅命に依る
第44条:①帝国議会の開会閉会会期の延長及び停会は両院同時に之を行うべし ②衆議院解散を命ぜられたるときは参議院は同時に停会せらるべし
第45条:衆議院解散を命ぜられたるときは勅命を以て新たに議員を選挙せしめ解散の日より3カ月以内に之を召集すべし
第46条:両議院は各々其の総議員3分の1以上出席するに非ざれば議事を開き議決を為すことを得ず
第47条:両議院の議事は過半数を以て決す可否同数なるときは議長の決する所に依る
第48条:両議院の会議は公開す但し両議院の会議を秘密会と為すは専ら其の院の決議に依るものとす
第49条:両議院は各々天皇に上奏することを得
第50条:両議院は臣民より呈出する請願書を受けとることを得
第51条:両議院は此の憲法および議院法に掲げるものの外内部の整理に必要なる諸規則を定むることを得
第52条:①両議院の議員は議院に於いて発言したる意見及び表決に付院外に於いて責を負うことなし但し議員自ら其の言論を演説刊行筆記又は其の他の方法を以て公布したるときは一般の法律に依り処分せらるべし ②会期前に逮捕せられたる議員は其の院の要求あるときは会期中之を釈放すべし
第53条:両議院の議員は現行犯罪及び内乱外患に関わる罪を除く外会期中其の院の許諾なくして逮捕せらるることなし
第54条:国務大臣及び政府委員は何時たりとも各議院に出席し及び発言することを得
第4章 国務大臣及び枢密顧問
第55条:①国務各大臣は天皇を輔弼し帝国議会に対して其の責に任ず ②すべて法律勅令その他国務に関する詔勅は国務大臣の副署を要す ③衆議院に於いて国務各大臣に対する不信任を議決したるときは解散あるたる場合を除く外其の職に留まることを得ず ④国務各大臣を以て内閣を組織する旨及び内閣の官制は法律を以て之を定む
第56条:①枢密顧問は枢密院官制の定むる所に依り天皇の諮詢に応え重要の国務を審議す ②枢密院の官制は法律を以て之を定む
第5章 司法
第57条:①司法権は天皇の名に於いて法律に依り裁判所之を行う ②裁判所の構成は法律を以て之を定む
第58条:①裁判官は法律に定めたる資格を具える者を以て之に任ず ②裁判官は刑法の宣告又は懲戒の処分に由るの外其の職を免ぜらるることなし ③懲戒の条規は法律を以て之を定む
第59条:裁判の対審判決は之を公開す但し安寧秩序又は風俗を害するの虞あるときは法律に依り又は裁判所の決議を以て対審の公開を止めることを得
第60条:特別裁判所の管轄に属すべきものは別に法律を以て之を定む
第61条:行政事件に関わる訴訟は別に法律の定むる所に依り司法裁判所の管轄に属するものとす
第6章 会計
第62条:①新たに租税を課し及び税率を変更するは法律を以て之を定むべし ②但し報償に属する行政上の手数料及び其の他の収納金は前項の限りにあらず ③国債を起こし及び予算に定めたるものを除く外国庫の負担となるべき契約を為すは帝国議会の協賛を経べし
第63条:現行の租税は更に法律を以て之を改めざる限りは旧に依り之を徴収す
第64条:①国家の歳出歳入は毎年予算を以て帝国議会の協賛を経べし ②予算の款項に超過し又は予算の外に生じたる支出あるときは後日帝国議会の承諾を求むるを要す
第65条:①予算は前に衆議院に提出すべし ②参議院は衆議院の議決したる予算に付増額の修正を為すことを得ず
第66条:皇室経費中其の内廷の経費に限り定額に依り毎年国庫より之を支出し増額を要求する場合を除く外帝国議会の協賛を要せず
第67条:憲法上の大権に基づける既定の歳出は政府の同意なくして帝国議会之を廃除し又は削減することを得
第68条:①特別の須要に因り政府は予め年限を定め継続費として帝国議会の協賛を求むることを得 ②予備費を以て予算の外に生じたる必要の費用に充つるとき及び予備費外に於いて避くべからざる予算の不足を補う為に又予算の外に生じたる必要の費用に充てる為に支出を為すときは帝国議会常置委員の諮詢を経べし
第69条:避くべからざる予算の不足を補う為に又は予算の外に生じたる必要の費用に充てる為に予備費を設くべし
第70条:①公共の安全を保持する為緊急の需要ある場合に於いて内外の情形に因り政府は帝国議会を召集すること能わざるときは勅令に依り財政上必要の処分をなすことを得 ②所定の財政上の緊急処分を為すには帝国議会常置委員の諮詢を経るを要す ②前項の場合に於いては次の会期に於いて帝国議会に提出し其の承諾を求むるを要す
第71条:帝国議会に於いて予算を議定せず又は予算成立に至らざるときは政府は会計法の定むる所に依り暫定予算を作成し予算成立に至るまでの間之を施行すべきものとし此の場合に於いて帝国議会閉会中なるときは速やかに之を召集し其の年度の予算と共に暫定予算を提出し其の承諾を求むるを要す
第72条:①国家の歳出歳入の決算は会計検査院之を検査確定し政府は其の検査報告と俱に之を帝国議会に提出すべし ②会計検査院の組織及び職権は法律を以て之を定む
第7章 補足
第73条:①将来此の憲法の条項を改正するの必要あるときは勅命を以て議案を帝国議会の議に付すべし ②両議院の議員は各々其の院の総員2分の1以上の賛成を得て憲法改正の議案を発議することを得 ③此の場合に於いて両議院は各々総員3分の2以上出席するにあらざれば議事を開くことを得ず出席議員3分の2以上の多数を得るに非ざれば改正の議決を為すことを得ず
第74条:①皇室典範の改正は帝国議会の議を経るを要せず ②皇室典範を以て此の憲法の条規を変更することを得ず ③天皇は帝国議会の議決したる憲法改正を裁可し其の公布及び執行を命ず
第75条:(憲法及び皇室典範変更の制限)削除
第76条:①法律規則命令又は何らの名称を用いたるに拘らず此の憲法に矛盾せざる現行の法令は総て遵由の効力を有す ②歳出上政府の義務に係る現在の契約又は命令は総て第67条の例に依る
以上
(2016年2月6日投稿)