OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

告白する魂の兄弟たち

2010-11-23 15:34:08 | Rock Jazz

魂の兄弟たち / Carlos Santana & John McLaughlin (Columbia)

1970年代前半のジャズ喫茶で困り者の存在が、ジョン・マクラフリンという英国出身のギタリストでした。

それはトニー・ウィリアムスやマイルス・デイビスをロックで毒した張本人であり、また超絶技巧に支えられたジャンルに拘泥しないギタースタイルは恐れられ、結果的には発売される作品群の凄さは分かっていても、ジャズ者には到底、受け入れられないというか、受け入れてはならない雰囲気が確かにありました。

しかしロックファンやロックからジャズへと流れて来たリスナーにとっては、ジョン・マクラフリンこそが、その最良の水先案内人であり、時代の先端を代表していたマイルス・デイビスの「イン・ナ・サイレントウェイ」や「ビッチェズ・ブリュー」、または「ジャック・ジョンソン」あるいは「ライブ・イヴィル」あたりのジョン・マクラフリンが参加した人気問題作を当然のように聴く事が出来たわけですし、トニー・ウィリアムスの「ライフタイム」も、また然りでした。

もちろん、それゆえにイノセントなジャズ者になるほど、拒否反応も強くなっていたんですよねぇ……。

そして、あろうことか、そのジョン・マクラフリンが、これも当時の人気ギタリストであり、ラテンロックという大衆路線でヒットを連発するサンタナを率いていたカルロス・サンタンとの共演アルバムとして、ジョン・コルトレーンの犯すべからずの世界だった「至上の愛」をやるというのですから、穏やかではありません。

一方、カルロス・サンタナは既に述べたように、自らが率いるサンタナによって、ラテンロックという金脈を握りながら、しかし本人は自己の音楽性の礎のひとつでもあったジャズへの拘泥と精神世界への覚醒があったと言われてますが、告白的に少しずつ表出させていた所謂スピリッチャルジャズへの傾倒をついには隠そうとしない演奏をやるようになり、それは1972年に発表した畢生の傑作アルバム「キャラバン・サライ」に結実していました。

ですから、我国の洋楽マスコミではジョン・マクラフリンとカルロス・サンタナが共演アルバムを出すというニュースも、人気ギタリストとしての地位を既に確立していたカルロス・サンタナの視点から報道され、これは絶対に凄い作品に違いないっ!

そういう確信的な予測をファンに与えていたのです。

それが1973年に発売された本日ご紹介のアルバムで、「Love Devotion Surrender」とされた原題を「魂の兄弟たち」とした日本語タイトルが、やはり馴染み深いんじゃないでしょうか。

演奏メンバーはカルロス・サンタナ(g)、ジョン・マクラフリン(g,p)、ラリー・ヤング(key)、ダグ・ローチ(b)、ドン・アライアス(ds,per)、ビリー・コブハム(ds,per)、ヤン・ハマー(per)、アルマンド・ペラーサ(per)、ミンゴ・ルイス(per) という、まさに震えが止まらないほどの強者揃い!

しかし、それにしも表ジャケットに写るカルロス・サンタナとジョン・マクラフリンの佇まいは、どうしてもジャズやロックのミュージャンには見えません。さらに裏&中ジャケットには、主役のふたりが当時帰依していた宗教家のスリ・チンモイ導師と撮った写真も使われているとおり、既にして精神世界の表現を狙っていることが、良くも悪くも感じられます。

ところが音楽ファンにとっては、そうしたマイナス要因ともなりかねないポイントが、ジョン・コルトレーンの十八番を演じるという免罪符によって、プラスのベクトルに転換しているのですから、事は重大です。

特にイノセントなジャズ者にとっては、心中如何ばかりか……!?

A-1 A Love Supreme / 至上の愛
 いきなり左右のチャンネルで唸る激烈なエレキギターのアドリブフレーズから、あの印象的なペースリフのイントロが導き出される展開に、思わずゾクゾクさせられるでしょう。
 そして意外なほどシンプルなテーマの提示から、右チャンネルにはジョン・マクラフリン、左チャンネルにはカルロス・サンタナという定位によって繰り広げられるギター合戦こそ、当時のロックファンやロックジャズの愛好者が特に望んでいたものです。
 これが実に分かり易いんですよねぇ~♪
 また、それゆえにジョン・コルトレーンを神格化し、崇め奉る一部のジャズ者には、決して許せない邪道であるとの推察も容易です。
 このあたりは当時のジャズマスコミでは、半ば無視状態であったように記憶していますし、逆にロック系の雑誌では、かなり意気軒昂な報道があった気がしています。
 ただ、何れにしても、ここに聴かれる演奏の魅力は、好きな人には好きとしか言えない純粋さが確かにあると思いますし、サイケおやじはリアルタイムから、そのひとりでした。

A-2 Maima / ネイマ
 う~ん、これも頑固なジャズ者にとっては許せない演奏になるんでしょうか……?
 ジョン・コルトレーンの演目ではお馴染みの静謐なオリジナルメロディが、ジョン・マクラフリンとカルロス・サンタナのアコースティックギターによって、なかなか神妙に奏でられるのですが、3分ちょっとの中に必要以上に漂う宗教色が気にならないこともありません。
 しかし、それでも次の演奏に繋がるタイミングを鑑みれば、これはこれで秀逸だと思います。

A-3 The Life Divine / 神聖なる生命
 で、これがひたすらに熱くて過激なロックジャズの決定版!
 ジョン・マクラフリンのオリジナルという事になっていますが、ジャズやラテンやロックの混濁したビートを土台に、多重録音したと思しきエレキギターのアドリブソロが縦横に暴れるという展開は痛快至極♪♪~♪
 特にカルロス・サンタナが十八番のトレモロピッキング系フレーズを噴出させる前半から、官能美を滲ませる中盤での執拗に絡み合い、そして後半でアグレッシヴに爆発するジョン・マクラフリンの力技というコントラストが、本当に凄いです。
 また絶対に難しい事はやらないと決意しているようなリズム隊の潔さも最高でしょうねぇ~♪ それがあればこそ、終盤でのギターバトルや御詠歌っぽいコーラスも、イヤミな混乱を感じさせないのだと思います。
 ただし、そのあたりは真性ジャス者がツッコミを入れるに充分なスキという感じも……。

B-1 Let Us Go Into The House Of The Lord / 神の園へ
 そしてB面が、これまたハイテンションなスタートで、いきなり中央で熱い精神感応的なギターソロを炸裂されるのはカルロス・サンタナでしょうか? とにかく独得の官能美を暑苦しさを交えながら表現してくれるのは圧巻!
 さらにそれが待ってましたのラテンビートを従え、天空に飛翔していく次なる展開には、ファンならば思わず惹きこまれるツボが満載で、あのトレモロピッキングで上昇していく十八番のフレーズから、これまた前作「キャラパン・サライ」でのハイライト曲だった「風は歌う」のメロディを引用したアドリブ構成、そこで存分に泣かせるサンタナのギターの魔法が堪能出来ますよ♪♪~♪
 あぁ、それにしてもアップテンポで飛び交うラテンビートの快楽性は良いですねぇ~♪
 そしておそらくはラリー・ヤングのスペーシーなオルガンアドリブから、いよいよ登場する過激なジョン・マクラフリンの無差別攻撃的なギターの怖さは、決して一筋縄ではいきません。スパート全開の早弾きや幅の広いチョーキングの妙技は、もはや神の領域云々という世界ではないでしょうねぇ。
 まさにジョン・マクラフリンの現人神的な存在証明といっては不遜でしょうか。
 もう、そんな風にしか思えないサイケおやじの感性は、当時も今も変わっていません。
 演奏はその後、終盤にかけてサンタナ対マクラフリンという、魂の兄弟が絶対的な協調と自己主張を披露し、存分な思わせぶりを悔しいほどに演じるエンディングへと流れる、これは見事な大河ドラマなのでした。

B-2 Meditation / 瞑想
 オーラスは前曲からの自然な繋がりが好ましいジョン・マクラフリンのオリジナル曲で、静謐なムードが横溢したアコースティックギターとピアノによる演奏です。
 正確なクレジットが無いので、確証はありませんが、おそらくはギターがカルロス・サンタナ、ピアノがジョン・マクラフリンということなんでしょうか?
 まあ、結論から言えば、そんな瑣末な事は意識せず、自然の流れの中で彼等の音楽に身を任せるのが正解なんでしょうねぇ~♪ 実際、伝承のメロディを基本に魂の兄弟が白熱の競演をやってしまった「神の園」をクールダウンさせ、タイトルどおりに瞑想の世界へと導いてくれる名演だと思います。

ということで、今もって様々な物議を呼ぶ作品でしょう。

特に全篇に漂う必要以上の宗教的な香りは好き嫌いがあるはずですし、そこに神聖(?)なるジョン・コルトレーンの世界を持ち出されては、黙っていられない部分も否定出来ません。

しかしジョン・コルトレーンにしても、インパルス期には相当に宗教っぽい雰囲気を堂々と演じていましたし、それが所謂スピリッチャルなジャズとして評価され、人気を集めたと思われるのですから、ジョン・コルトレーンが良くて、サンタナ&マクラフリンがダメという論法は、多少の無茶でしょう。

唯一の攻撃材料としては、ロック野郎がジャズをやるんじゃねぇ!

そんなところかもしれません。

実際、某ジャズ喫茶のマスターは、「コルトレーンはロックなんかやらないっ!」と公言して憚らない態度が有名でした。

ただ、それにしてもサンタナはともかく、本来はジャズミュージシャンだったジョン・マクラフリンのジャズ喫茶での冷遇は、今日からは想像も出来ないほどの酷さで、自己名義のリーダー盤はもちろん、リアルタイムで人気が高かったマハビシュヌオーケストラのアルバムを鳴らす店なんか、少なくとも東京周辺にはほとんど無かったと思いますねぇ……。

ですから、このLPは、やっぱりギターアルバムの傑作としてロックファンに受け入れられ、これを契機としてマイルス・デイビスやジョン・コルトレーンの諸作へ入門していく道程という存在なのです。

またカルロス・サンタナは以降、自らの方針に確信を得たのでしょうか、バンド名義では「ウェルカム」を、またジョン・コルトレーンの未亡人となったアリス・コルトレーンとの共演作を堂々と出していくのですから、その問題行動は流石でした。

というか、そういう居直りとは一概に決めつけられないカルロス・サンタナの我が道を行く姿勢が、その快楽性が魅力のギターを尚更に強調し、ファンを増やし続けているのだと思います。

もちろんジョン・マクラフリンにしても、以降の活躍は怖い部分を引っ込める事の無い潔さで、それには一般のジャズ者も敬服しているんじゃないでしょうか。

そんなこんながゴッタ煮となって、しかも素材の味が疎かにされていない「魂の兄弟たち」というアルバムは、決して忘れられないというファンが多いと確信しています。

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私的限界のイエス

2010-10-11 16:48:19 | Rock Jazz

■Fragile / Yes (Atlantic)


所謂プログレの定義は十人十色でしょうが、それはロックジャズの様式美化というのが、サイケおやじの思うところです。

そして本日のご紹介は、言わずと知れた、その分野の決定的な名盤アルバムなんですが、しかしこれが出た当時の衝撃度は、保守的なサイケおやじにとっては、違和感以外の何物でもありませんでした。

まず「こわれもの」という邦題が画期的(?)でしたし、それだけで触れてはならない繊細な世界を連想させられ、加えてジャケットのイラストがファンタジーSFの世界でしたからねぇ……。

しかし同時に、サイケおやじは既にイエスが大好きでしたから、そのデビューアルバムから、セカンドサードと聴き進めて来た結果として、必然的に辿りつかなければならない、ある種の強迫観念に支配されていました。

さらに発売前から、洋楽マスコミではイエスのメンパーチェンジと新作アルバムについて、かなり前向きな報道がありましたし、例え未だ日本では人気が確定していなかったイエスにしても、そういうマニアックな部分を気にせざるをえないファンがサイケおやじを含めて、相当数存在していたと思います。

そしてこのアルバム制作時のメンバーはジョン・アンダーソン(vo,per)、スティーヴ・ハウ(g,vo)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib)、そしてトニー・ケイに代わり、いよいよリック・ウェィクマン(key) が新参加した黄金期の顔ぶれですから、結果的に凄い演奏が出来上がったのも当然だったのです。

 A-1 Roundabout
 A-2 Cans And Brahms
 A-3 We Have Haven
 A-4 South Side Of The Sky / 南の空
 B-1 Five Pre For Nothing / 無益の5%
 B-2 Long Distance Ronaround / 遥かなる想い出
 B-3 The Fish
 B-4 Mood For The Day
 B-5 Heart Of The Sunrise / 燃える朝焼け

まずA面ド頭の「Roundabout」は、今に至るもイエスを代表する名曲名演なんですが、ここで聴かれる躍動的なリズムと複雑なリフの完璧なコンビネーションこそ、プログレの優良なサンプルとして歴史に残るものでしょう。

もちろん覚え易いメインの曲メロは言わずもがな、思わせぶりなイントロのアコースティックギターソロから目眩がしそうなペースのリフ、さらにビシバシのドラムスとイノセントな熱血を聞かせるボーカル&コーラス、そして千変万化の彩りを提供するキーボード♪♪~♪ しかも随所に仕掛けられた壮絶なキメとアドリブ(?)の応酬には、何度聴いてもゾクゾクさせられますよ。

しかしサイケおやじは、このアルバムバージョン以前に、短く編集されたシングルバージョンに親しんでいたので、ある意味で大仰な仕上がりには最初、馴染めなかったのが本当のところです。

実はイエスの楽曲は前作のサードアルバムにおいて、既成のロックジャズから脱した方向性を打ち出し、例えばテーマ~アドリブ~テーマで終わるのが通常の展開だとしたら、イエスは短い曲の断片を幾つか用意し、それを複雑なリズムパターンやカッコ良いリフで繋ぎ合わせるというモザイク方式でしょう。

こうした作り方はポール・マッカートニーの得意技でもありますが、イエスが凄いのは、スタジオレコーディングでは当然のようにテープ編集を用いていながら、ライプの現場できっちりとそれを再現してしまう事!

ですから、レコードで聴かれる歌と演奏にしても、単なる曲メロの集約やテープの切り貼りでは無く、複雑な構成が極めて自然な流れで聴けますし、それがメンバーの卓越したテクニックと音楽性に支えられているところが、プログレのプログレたる証明として、絶大な支持を集めたというわけです。

そして気がついてみれば、シングルバージョンが大好きなサイケおやじも、やっぱりアルバムバージョンにおける構成美とスリルに酔わされてしまいます。

こうした方向性は、このアルバムで確立されたイエス独自の世界として、如何にものSEを使った「南の空」ではハードロックとロックジャズが巧みに融合され、しかも中間部にはリック・ウェイクマンのピアノソロを聞かせるパートも用意するという、実に憎たらしい事をやらかしていますが、憎めません。もちろん鉄壁なバンドアンサンブルは微動だにせず、ジャズっぽくビシバシに暴れるドラムスと凝ったコーラスワークの対比の妙、さらにロックジャズがど真ん中のエレキギターは素晴らしいですよ♪♪~♪

しかしオーラスに置かれた長尺の「燃える朝焼け」は問題でしょうねぇ~。

何故ならば、これを聴いた多くの人は、絶対にキング・クリムゾンの「21世紀の精神異常者」か、あるいは同グループの関連諸作を想起せずにはいられないからです。メロトロンの使い方はもちろん、ベースやドラムスのビートの組み立て、キメのリフやギターの存在感が、モロとしか言えませんよっ!?!

う~ん、もしかしたらグレッグ・レイクはこの演奏を聴いたがゆえに、ELPで「恐怖の頭脳改革」を作り上げたような推察も無理からんと思いますし、ビル・ブラッフォードが後にキング・クリムゾンに移籍してしまうのも、充分に理解出来るんじゃないでしょうか……。

しかし、このアルバムが上手く出来ているのは、そうした複雑な内情を含んだ名曲名演の間に、メンバー各自のソロ作品とも言うべきトラックが配置されていることでしょう。

中でもテンションの高い「Roundabout」が終わった余韻の中で鳴り響く「Cans And Brahms」は、ブラームスの交響曲第4番ホ短調第3楽章をリック・ウェイクマンが様々なキーボードを重ねて変奏した和みの仕上がりで、誰もが一度は耳にしたであろうメロディが流れ出た瞬間の至福は、何度聴いてもたまりません♪♪~♪

また短いながらも強烈な16ビートで演じられる「無益の5%」は、ビル・ブラッフォードの超絶ドラミングとクリス・スクワイアのエッジ鋭いベースが対決するという構図の中に、次なる目論見が隠されているようです。

それはバンドが一丸となって強烈な展開を披露する「遥かなる想い出」で、ジンワリと染みこんでくるビートルズ風味、流麗にしてジャジーなギター、エグミ満点にドライブするベース、自分の役割を完全に把握しているドラムス、さらに隙間を埋めつつ絶妙の彩りを添えるキーボードをバックに、ジョン・アンダーソンの透明感あふれるボーカルが力強く歌っているという、これもまた今日まで、イエスのライプ演目としては外せない人気の快演♪♪~♪ しかも前曲「無益の5%」で提示されたリズム的な躍動感が、しっかりと継承されているという用意周到さは、この5人によるグループの持ち味だと思います。

そこで新たな気持でジョン・アンダーソンがメインの「We Have Haven」を聴いてみると、メロディのビートルズっぽさは言わずもがな、オーバーダビングを駆使して作り上げられたボーカル&コーラスの不思議な心地良さは絶品! そして最後のSEがアルバムの思わぬ場所で登場するあたりの仕掛けも、聴いてのお楽しみです。

ということで、全くソツの無い作品集のようですが、実は「The Fish」の焦点の定まらなさは???ですし、スティーヴ・ハウがクラシック&スパニッシュなギターソロを演じた「Mood For The Day」にしても、単なる息抜き以上の効果は感じられないような……。

お叱りを覚悟で書かせていただければ、かろうじてアルバムの流れの中で自己主張出来るだけのトラックでしょう。逆に言えば、緊張感優先でハードな演奏ばかりの中で、潤滑油のような働きがあるのかも……。

ですから、保守的なサイケおやじは、聴き慣れるのに相当の時間が必要だったアルバムです。そしてリアルタイムのイエス体験としては、この「こわれもの」が限界でしたねぇ……。

つまり次に出た「危機 / Close To The Edge」がイエスというよりはプログレ、あるいはロックの決定的な至高の名盤とされる理由が、未だに理解出来ていないのが本音です。

しかし、そのあたりをライプ音源で聴くと、これが実にサイケおやじを感動させるのですから、タチが悪いですよ……。告白すれば、例のアナログ盤3枚組LP「イエスソングス」を聴いてから、「こわれもの」が好きになり、「危機」にしても何んとか理解しようと苦行の鑑賞を続けられるわけですが、やはり根底にはイエスが好きだという愛の告白があります。

なにしろ今でも、イエスの新譜や発掘音源、ブートが出ると、聴かずにはいられないんですよ。

本当に我ながら、笑ってしまいますが、まあ、楽しいことを作っていくのが人生というサイケおやじの本分からすれば、自分で納得するばかりです。

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ここから始まるオブリヴィオン・エクスプレス

2010-10-10 16:44:45 | Rock Jazz

Brian Augers Oblivion Express (Gohst Town / RCA Victor)

ブライアン・オーガーがトリニティを解散させ、新たに結成したオブリヴィオン・エクスプレスのデビューアルバムが本日のご紹介です。

ご存じのように、ブライアン・オーガーはモダンジャズを基本にしつつも、R&Bやロックの分野に斬り込む活動を繰り広げていたイギリスのキーボード奏者ですが、それにしてもこれまでに発表してきた作品群は、イノセントなジャズ者にも充分満足出来る内容に仕上がっていたと思います。

それは元祖フュージョンという分類になるのかもしれません。しかし1971年に発売されたこのアルバムは、時期的に全盛期だったプログレと既に確立されていたロックジャズの幸せな結婚♪♪~♪

メンバーはブライアン・オーガー(key,vo) 以下、ジム・ミュレン(g,vo)、バリー・ディーン(b,vo)、ロビー・マッキントッシュ(ds) という顔ぶれですが、サイド各自が後に他の有名バンドに移籍して活躍したのは言わずもがなの実力者揃いです。

A-1 Dragon Song
 ジョン・マクラフリンの作曲と言われるだけあって、非常にハードで妥協の無い演奏が繰り広げられています。
 とにかくヘヴィなテーマアンサンブルから全開するドラムスの暴れ、いきなりマクラフリン節しか出さないギター、どっしり構えたベースという役割分担の明快さも素晴らしいかぎりなんですが、やはり圧巻は鬼気迫るブライアン・オーガーのアドリブソロ! それはオルガンの限界に近い音使いも含めて、実に前向きで熱いエモーションに満ちています。
 そしてバンド全体でゴリ押しするロックジャズ本流の勢いは、まさにこの時期のイギリスでしか表現されることの無かった異形のグルーヴでしょう。
 これをロックとするか、プログレと形容するかは、リスナーが十人十色の感性でしょうが、オプリヴィオン・エクスプレスという先進的なバンドが提示した新しいジャズという括りもあるかと思います。
 尤も、既にそんな分類に拘る必要が無いほど、ブライアン・オーガーの音楽的方向性は固まっていたのでしょう。これぞっ、アルバムの幕開けに相応しい熱演!

A-2 Total Eclipso
 前曲のムードを引き継いだような演奏ですが、こちらはグッとテンポを落とし、ダークでミステリアスな感性を強く狙ったようです。
 そしてジム・ミュレンのギターが大活躍するアドリブパートでは、しかし決してバックのアンサンブルが伴奏に留まらないインタープレイ的な味わいも強く、中でもロビー・マッキントッシュのドラミングが凄いですよ♪♪~♪
 肝心のブライアン・オーガーはエレピやシンセ、そしてアコースティックなピアノを多角的に用いての奮闘を聞かせてくれますが、やはりオルガンによるアドリブが一番熱くさせてくれますねぇ~♪
 11分超の長尺演奏ですが、聴き終える頃には宇宙空間に浮遊している自分を感じるサイケおやじです。

A-3 The Light
 アップテンポでブッ飛ばすハードロック調の演奏で、メンバーのボーカル&コーラスも全面に出ていますが、極言すればディープ・パープルがロックジャズしてしまったような痛快さが魅力です。
 つまりブライアン・オーガーのオルガンがジョン・ロードしている感じなんですが、それは全くの逆! 失礼ながらジョン・ロードよりも、ずぅ~~っと先鋭的なアプローチが極めてジャズ寄りだと思います。
 ただし最終パートは凝り過ぎかもしれませんねぇ。
 まあ、これは聴いてのお楽しみということで……。

B-1 On The Light
 いきなり痛快なファンキーロックの演奏で、ボーカル&コーラスのパートがあまり印象に残らないのは残念ですが、インストパートのカッコ良さは唯一無二! 特にジム・ミュレンのギターが爽快にして熱血! あぁ、こんなに弾けたらなぁ~~~。
 そしてもちろん、ブライアン・オーガーのオルガンが追従を許さぬ大疾走ですから、たまりません♪♪~♪
 いゃ~、こんなアップテンポを完璧にやってしまうメンバーの力量は凄過ぎます。 

B-2 The Sword
 う~ん、またしてもハードに燃え上がる演奏で、ここに強力なボーカリストが入っていたらディープ・パープルも真っ青だったでしょうねぇ~♪ とにかくリフはシンプルにしてカッコ良く、痛烈なギターのアドリブは憧れの早弾き大会ですよ♪♪~♪ そしてドラムスのタイトな暴れは言うまでもないでしょう。
 ですからブライアン・オーガーのオルガンが嬉々としてアドリブに突入すれば、どうにもとまらないという山本リンダ現象! ボケとツッコミのひとり漫才的な部分も含めて、流石に凄いと思います。
 ちなみに学生時代のバンドで、この曲のリフを練習した前科があるんですが、結果は無残な迷い道という告白を……。

B-3 Oblivion Express
 そしてオーラスのアルバム&バンドタイトル曲は、初っ端から叩きつけるようなイントロに導かれ、以降は思わせぶりなロックジャズとハードプログレがゴッタ煮となった展開が続きます。
 と、書いてしまえば、既にご推察のとおり、ここからはエマーソン・レイク&パーマー=ELPの如き印象が打ち消しようもないでしょう。同時期にELPの傑作アルバム「タルカス」が世に出たのも、今となっては運命のいたずらとしか言えません。
 実は後にブライアン・オーガー自身が告白したところでは、ELPの出現とキース・エマーソンのキーボード&シンセの使い方には少なからず衝撃を受けたそうですから、さもありなん!?
  しかし、それはそれとして、ここでのブライアン・オーガーとオブリヴィオン・エクスプレスの演奏は、やっぱり凄いですよ。特にギターソロが出る場面はELPでは決して求められないものですし、意識的にジャズから離れようとするブライアン・オーガーのオルガンは終盤のエフェクト処理も含めて、かなり暴虐の展開を聞かせてくれます。

ということで、結論から言えば、このアルバムは思惑ほど売れなかったそうですし、それは既に述べたとおり、ELPという強力なライバル(?)の出現が大きな痛手(?)だったのかもしれません。

そして次作アルバム「ア・ベター・ランド」では、英国フォーク&ポップスのプログレ的展開という、いやはやなんともの迷い道に踏み込んでしまうわけですが、リアルタイムのこの時点では正解と断じます。

もちろんサイケおやじは傑作「クローサー・トゥ・イット」を聴いて後、つまり後追いで接したアルバムですから、それはオブリヴィオン・エクスプレスがあれこれ試行錯誤を重ねていた事を知ったうえでの結論ですし、ブライアン・オーガーに対する思い入れも強いものが……。

そのあたりを踏まえて、ブライアン・オーガーを初めて楽しまれようとする皆様には、このアルバムが推薦盤になるのかもしれません。

フュージョンよりはロックジャズ、そしてハードプログレなモダンジャズとして、実にストレートな醍醐味が凝縮された1枚だと思います。

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アージェントB級グルメ説

2010-09-24 16:55:59 | Rock Jazz

All Together Now / Argent (Epic)

先日は某所で開催されたB級グルメ大会でモツ焼き、ゴッタ煮、焼きそば等々を喰いまくってきましたが、やはり駄菓子屋育ちのサイケおやじには、星が付いたレストランよりも、こっちがジャストミートしていることを痛感でした♪♪~♪

で、そうした好ましいB級グルメっていうのは、何時しか各方面に適用され、例えば洋楽の世界ならばプレグレポップなアージェントが、まさにB級グルメの王様じゃないでしょうか。

特に本日ご紹介のLPは、ブレイクのきっかけとなったシングルヒット「Hold Your Head Up」を含む1972年の傑作盤となるはずが、実は結果的にアージェントはB級の烙印を押された1枚かもしれません。

 A-1 Hold Your Head Up
 A-2 Keep On Rollin'
 A-3 Tragedy
 A-4 I Am The Dance Of Age
 B-1 Be My Lover, Be My Friend
 B-2 He's A Dynamo
 B-3 Pure Love
       Fantasia
       Prelude
       Pure Love
       Finale

ご存じのように、アージェントはゾンビーズの系譜を受け継ぐバンドとして、ロッド・アージェント(vo,key)、ラス・バラード(vo,g,key)、ジム・ロッドフォード(b,vo)、ロバート・ヘンリット(ds,per) の4人で活動していましたが、ここにもうひとり、ゾンビーズ時代にはベース奏者であり、ロッド・アージェントの盟友でもあるクリス・ホワイトが影のメンバーというか、ソングライター兼プロデューサーとして参画している事が、このバンド結成以来の基本姿勢でした。

そうした協調関係は、時には「船頭多くして、なんとやら……」に陥り易い事が、ある意味での常識かもしれません。

しかし当時のアージェントは、所謂トロイカ体制が極めて上手く成功した好例じゃないでしょうか。

それは大作主義のロッド・アージェントに対し、一般ウケを狙うラス・バラードの間にあって、そのバランスを上手く保つにはクリス・ホワイトの調整能力が不可欠だったと思われます。

そして実際、このサードアルバムでは、「アージェント」から「リング・オブ・ハンズ」と続いた前2作に比べ、グッと大衆寄りのアプローチとプログレ的な方向性が、非常に上手く融合しているのです。

例えば冒頭に収録のヒット曲「Hold Your Head Up」にしても、シングルバージョンでは編集カットされていた壮大なキーボードプレイがイヤミ無く提示されていますし、それはアルバムの大部分を占めるロッド・アージェントとクリス・ホワイトの共作曲が、総じて大袈裟になることをギリギリで踏みとどまる結果にも直結しています。

一方、ラス・バラードが単独で書いた「Tragedy」や「He's A Dynamo」は、ファンキーロックやパワーポップといった当時の流行を逸早く具象化したキャッチーさが魅力ながら、それだけではイマイチ弱いところをアルバム全体の流れの中で際立つものにしてしまうという、実に確信犯的なクリス・ホワイトのプロデュースが上手いと思いますねぇ~♪

ただし、それでもアージェントがB級という認識になったのは、やはりロッド・アージェントのキーボードプレイが、ど~しても同時代ではトップを走っていたキース・エマーソンの影響下にあると断罪されたことでしょう。

また、それゆえにアージェントがこのアルバムで作り上げた世界が、エマーソン・レイク&パーマー=ELPよりは格下と受け取られたのは、否定しようもありません。

確かにロッド・アージェントがキース・エマーソンを意識していなかったと言えば、ウソになるでしょう。もしかしたら結果的に良く似たアプローチに至ったのかもしれませんが、それは本人だけの知ることで、ファンやリスナーは虚心坦懐に提供された音楽を楽しめば、それで良いのでしょう。

しかし実際問題、キース・エマーソンと同じフレーズ展開や音作りを聞かされてしまうと、おっ!? ELP!? と思わざるをえないのも、また本音です。

例えばB面に収録された大作組曲「Pure Love」は、ロッド・アージェントが十八番の欧州系教会音楽やクラシックからの影響がダイレクトに感じられるものですから、演奏のほとんどがインストである事も含めて、やっぱりそれはELP!?

しかも、このアルバム以前にELPが出していた決定的な傑作盤「タルカス」や「展覧会の絵」に顕著だった強引なまでの緊張感や突撃モードが、ここでは些か温いとしか思えない感触です。

確かにB級の誹りは……。

ところがアージェントには、わかっていても、アージェントならではの魅力がちゃ~んとあるんですねぇ~♪

それは時代を見据えた折衷性というか、ラグタイムっぽいピアノとバタバタしたドラムスが意想外にスワンプロックな味わいを強める「Keep On Rollin'」、ファンキーロックとプログレが融合し、ついには新しいロックの誕生を告げるような「Tragedy」は、まさにアージェントの独壇場で、頑固一徹なELPには決して醸し出せない味わいでしょう。

また第一期ディープ・パープルみたいな「I Am The Dance Of Age」にしても、そこには脈々とゾンビーズの遺伝子が受け継がれていますから、例えピンク・フロイドみたいなSEやリズム処理があろうとも、これは立派にアージェントの世界になっていると思います。

さらに重なるディープ・パープル状況としては、なんと「Be My Lover, Be My Friend」が後の第三~四期を先取りしたかのようなハード&ファンキーな傑作トラックで、ジョン・ロードがこれを聴いていなかったという言い訳は通らないんじゃないでしょうか?

もう、個人的には、この曲が大好きっ!

ちょいとイナタイ雰囲気が、味わい深いんですねぇ~♪

おまけに続く「He's A Dynamo」が、どこかしらポール・マッカートニー&ウイングスしているとあっては、問答無用のお楽しみ♪♪~♪

既に皆様がご承知のとおり、こうしたところが「B級」にして「グルメ」なんです。

個人的推察としては、その味の秘伝が、どうやらバタバタしたドラムスやちょいと緩めなベースのグルーヴにあるような気がするんですが、そんな通常ならばマイナスであろうポイントが、何故かアージェントには必要不可欠です。

いや、それが無くてはアージェントにならないと思うんですよ。

実は後にバンドを脱退し、ソロ活動に入るラス・バラードにしても、またアージェント解散から幾年月を経て再結成されたゾンビーズにしても、そこでアージェント時代の曲をやったところで、同じ味わいは決して再現出来ていません。

結局それは、ジム・ロッドフォードとロバート・ヘンリットの存在という以上に、真にアージェントがオリジナルで作り上げたものなのでしょう。

ということで、見事なB級グルメとしてのアージェントが、このアルバムで誕生したのです。そして次なるアルバム「イン・ディープ」で、いよいよ頂点を極めるのですが、実は何であろうとも、そこへ至る過程の八合目あたりが一番感慨深いというのは常識ですから、このアルバムに対する愛着も尚更に大きくなります。

ちなみにジャケットにはメンバー以外にスタッフや友人&家族が写っていますが、これもまた1970年代前半のロック的流行として、アージェント以外にも数々のミュージシャンが実践したものです。

しかし今日ではプログレに分類される事も多いアージェントにすれば、その方面のジャケットデザインには幻想的なイラストや怖いイメージのものが多い中で、こういうハートウォームな拘りも、またアージェントの本質を表しているのかもしれませんねぇ。

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タルカスの突撃

2010-09-23 16:26:52 | Rock Jazz

Turkus / Emerson, Lake & Palmer (Island)

1970年代前半、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルよりも高い人気があったバンドが、キース・エマーソン(key)、グレッグ・レイク(vo.b.g)、そしてカール・パーマー(ds,per) から成るエマーソン・レイク&パーマー=ELPでした。

と、書いてしまえば、必ずや憤る皆様もいらっしゃるでしょうし、お叱りも覚悟しています。

しかし当時はプログレに分類され、特に大衆向けのシングルヒットも無かったEL&Pが、現実的には野球場を満杯にするコンサートをやったり、またレコードが絶好調の売れ行きを示し、新譜が待望される状況は、今に至るも「伝説」という言葉だけでは説明のつかない魔力が確かにあります。

さて、本日ご紹介のアルバムは、1971年に出たセカンド作で、そうしたEL&Pの勢いを決定的にした傑作盤!

ちなみにジャケットに描かれた機械獣が「タルカス」という主人公(?)らしいのですが、私も含めた我国のリアルタイムのファンは、テレビSF特撮の最高峰「ウルトラセブン(TBS)」の第28話「700キロを突っ走れ!」に登場した恐竜戦車を完全に想起させられるでしょう。

一説によれば、「Turkus」という単語そのものがキース・エマーソンの閃きだったと言われていますし、アルバムをプロデュースしたグレッグ・レイクは、火山から生まれたタルカスが世界を破滅させるという発想と企画に対して、呆れ顔だったとか!?

まあ、そのあたりの因果関係は知る由もありませんが、件のウルトラセブンが1967~1968年に放送されていた事をサイケおやじは忘れていません。

それゆえに尚更、このアルバムには妙な愛着もありますし、洋楽雑誌で最初にジャケットを見た瞬間から、これは凄いに違いない! という盲信がありましたですね。

 A-1 Tarlus
      a) Eruption / 噴火
(inst.)
      b) Stones Of Years
      c) Iconoclast
(inst.)
      d) Mass / ミサ聖祭
      e) Manticore
(inst.)
      f) Battlefield / 戦場
      g) Aquatarkus
(inst.)
 B-1 Jeremy Bender
 B-2 Bitshes Crystal
 B-3 The Only Way
 B-4 Infinite Space / 限りなき宇宙の果て
 B-5 A Time And A Place
 B-6 Are You Ready Eddy ?

上記の収録演目では、何んと言ってもA面全部を使ったアルバムタイトル曲が気になるはずです。なにしろ当時はプログレ全盛期でもあり、またサイケデリックから引き続くロック史の中では、長い演奏をする事が、ひとつのステイタスでもありました。

しかし、それにしても組曲形式で演じられた「Tarlus」の仕上がりは、圧倒的という言葉以外にありません!

それは思わせぶりな導入部を経て盛り上がっていくという、如何にもプログレ的なスタートから変拍子ビシバシのリズム的興奮の中で壮絶に暴れるキース・エマーソンのキーボード! 強靭なビートで対抗するグレッグ・レイクのエレキベース! そして終始パワーに満ち溢れたカール・パーマーの熱血ドラミング!

特に初っ端から異常に高いテンションで演じられるアグレッシヴな「噴火」が興奮を呼び覚まし、次に勿体ぶったグレッグ・レイクのボーカルとキース・エマーソンのグイノリオルガンが絶妙のコントラストを描く「Stones Of Years」という冒頭の流れで、それは早くも決定的なんですが、カール・パーマーが暴れまくるインストの「Iconoclast」も火傷しそうに熱いです♪♪~♪

もちろん、その中にはキース・エマーソンが十八番のクラシック趣味も心地良く滲み出るものの、そのあたりに批判的だったグレッグ・レイクが、おそらくは起死回生の「ミサ聖祭」で提出するメタリックな感触は、明らかにキング・クリムゾン直系の進化形でしょう。ヘヴィなリズムアレンジやハイテンションな緊張感が実にたまらんですよ♪♪~♪

ご存じのようにキース・エマーソンはELP以前にザ・ナイスというクラシックとロックやジャズの融合を図ったバンドをやっていたんですが、結局は煮詰まっての解散からELPの結成へという流れからは、ハードロック的なアプローチが可能なカール・パーマーや激情と冷静のバランス感覚を併せ持ったグレッグ・レイクの存在が必須だったと思われます。

そのあたりが上手く融合した成果が、この「ミサ聖祭」のパートじゃないでしょうか。

ですから続く「Manticore」の短くも強烈なロックジャズ演奏が以降のELPでは、ひとつの「お約束」として使い回されるキメになったのもムペなるかな、再びヘヴィロックの味わいが強い「戦場」では、シンセかギターが判別も難しいアドリブソロが飛び出したり、なによりもグレッグ・レイクの回りくどい歌いっぷりがジャストミートしています。

そして締め括りの「Aquatarkus」には、これまた後の「お約束」がテンコ盛り♪♪~♪

いゃ~、こういうジャズ+クラシック÷ロックというザ・ナイス的なアプローチを、この時になってまで捨てていないキース・エマーソンは、やっぱり憎めない人だと思いますよ、実際。

また手数が多く、それでいて基本のビートを大切したカール・パーマーのドラミンクからは、随所にジャズっぽいアプローチも当然の如く表出し、またキース・エマーソンのスタイルは、ありえない事ではありますが、もしもビル・エバンスがオルガンロックを演じたら? という空想天国に対するひとつの答えかもしれません。

以上、重厚にして熱気溢れるA面に対し、B面はその場限りの享楽も快い小品集という趣もありますが、もちろん各トラックの充実ぶりは流石の上昇期が楽しめますよ。

それはまず「Jeremy Bender」のおちゃらけたムード、一転してヘヴィメタルな「Bitshes Crystal」、さらにジャズっぽい「限りなき宇宙の果て」におけるキース・エマーソンの生ピアノ中心主義が、なかなか新鮮です。

一方、これまたファンが期待するクラシックのロックアレンジでは、パッパを堂々と借用した「The Only Way」が心地良く、しかもグレッグ・レイクのボーカルがエピタフ調なんですから、これはまさにプログレの黄金律でしょう♪♪~♪

そして「A Time And A Place」は、これがEL&Pの本領とも言うべき、殴り込みタイプのキーボードロック! どっしり重いビートで全てを薙倒して進む展開が痛快です。

おまけにオーラスの「Are You Ready Eddy ?」は、なんとジェリー・リー・ルイスも真っ青というローリングピアノのR&R♪♪~♪

いゃ~、まさか、こんな事までやらかしてしまうとは、全く意表を突かれてしまうんですが、キース・エマーソンのピアノは一瞬ですがフリージャズっぽいお遊びも、実は楽しさを倍加させていますし、こういうパロディ精神も当時はマジに受け取られていたように思います。

そして、そうした勢いが次なる超人気アルバム「展覧会の絵」に結実し、ついにEL&Pは黄金期を迎えるのです。

ということで、これは如何にも1970年代ロックの名盤ではありますが、今となっては多少の思い入れが無ければ聴けない部分も確かにあるでしょう。

全トラックの作編曲はグループ自らの手によるものですし、作詞はグレッグ・レイクが綴ったという事実があれば、その内輪ウケが些か鬱陶しくもあります。

ですから、当時をご存じない新しいファンが、このアルバムをどのように楽しまれるのかは、ちょいとサイケおやじには想像も出来ません。

しかしELPが1979年末の解散から度々の再編や再結成をやって、常に注目を集めるのは、単なる「集金」以外の魅力をメンバー自身が感じているからじゃないでしょうか?

残念ながら、今年の再編来日は直前で中止となりましたが、サイケおやじは密かにチケットを手配していたという告白を最後にしておきます。

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そっくりもぐらのご対面

2010-08-10 16:48:21 | Rock Jazz

Matching Mole (CBS)

なんとも愛らしいモグラのご対面♪♪~♪

もう、このジャケットデザインだけで和んでしまいますが、中身は極めてロックジャズな英国流プログレなんですから、たまりません。

と言っても、それは決してギスギスしたものではなく、ジャケットどおりのホノボノフィーリングもありますし、湿っぽくて幽玄なブリティッシュロックの味わい、さらに妥協を許さない緊張感が見事な化学変化を聴かせてくれる秀作だと思います。

メンバーはロバート・ワイアット(vo,ds,key)、デイヴ・シンクレア(key)、フィル・ミラー(g)、ビル・マコーミック(b,g,etc)、デイヴ・マクレア(key) という顔ぶれからも皆様ご推察のように、マッチング・モウルというグループは当時、イギリスのロックジャズバンドでは確固たる地位を確立していたソフト・マシーンに在籍していたロバート・ワイアットのソロプロジェクトが、そのスタートでした。

ご存じのようにソフト・マシーンは1960年代中頃から活動している老舗であり、ジミヘンのアメリカ巡業に前座同行してブレイクを果たしながら、悪いクスリや仲間割れ等々が重なり……。その音楽性はサイケデリックをベースにした浮遊感ロックからフリージャズまでも包括した、実に奥深いものでした。しかも独得のポップなフィーリングを持ち合わせていたのですから、リアルタイムで作り出されたアルバムは、なかなか高評価だったのです。

しかし前述のような経緯からオリジナルメンバーのロバート・ワイアットが、ついに独立を画策し、まずは1970年に最初のソロアルバムを発表し、その流れからソフト・マシーン脱退後の1972年に結成したのが、このマッチング・モウルだったようです。

ちなみにマッチング・モウルとは、ソフト・マシーンのフランス語発音をそのまんま、英語に置き換えたと言われていますが、こうした稚気も憎めませんねぇ~♪

 A-1 O Caroline
 A-2 Instant Pussy
 A-3 Signed Curtain
 A-4 Part Of The Dance
 B-1 Instant Kitten
 B-2 Dedicated To Hugh, But You Weren't Listening
 B-3 Beer As In Braindeer
 B-4 Immediate Curtain

まず、何んと言っても冒頭「O Caroline」の和みのメロディ、ホノボノとしたサウンドの妙にグッと惹きつけられます♪♪~♪ フワフワしながらハートウォームなロバート・ワイアットのボーカルと多分、メロトロンで作り出したであろうフルートの響きがジャストミートの良い感じ♪♪~♪

既に述べたように、ロバート・ワイアット=ソフト・マシーンというフリージャズな先入観からは、全く正反対のイメージなんですが、実はロバート・ワイアットはソフト・マシーン在籍時から、こうした美メロ&和みのポップスフィーリングの源になっていた存在だった事を後に知るほど、「O Caroline」がますます好きになるのです。

そしてここから続く「Instant Pussy」におけるフィールソーグッドなフュージョン趣味、そして「Signed Curtain」の美しくもせつないメロディ展開の心地良さは、決して気抜けのビールではありません。

ロバート・ワイアットの変幻自在なドラミング、デイヴ・シンクレアのキーボードは素直なアコースティックピアノも含めて、これ以上無い味わいを醸し出し、ついにハードで幽玄な「Part Of The Dance」へと見事な流れを構成していくのです。

もちろんそれはキング・クリムゾンやイエス、あるいはピンクフロイドあたりとは完全に異質な世界であり、特に「Part Of The Dance」で強靭に蠢くエレキベースは如何にもジャズっぽく、ですからギターやキーボードのアドリブと演奏全体の雰囲気が同時期のウェザーリポートに近くなるのも当然が必然でしょうか。

あぁ、それにしてもこのA面は何度聴いてもテンションが高いですねぇ~♪

冒頭のホノボノフィーリングを最後のクライマックスでここまで過激に変質させてしまうなんてっ!?!?!

こういうものは絶対にLP片面毎の構成が必要だったアナログ盤で楽しむべきでしょうねぇ。そしてCD鑑賞だったら、この4曲を聴き終えたところで、プレイヤーを一端は止めるべきだと思います。

そうでないとB面冒頭からフェードイン気味に始まる、「Part Of The Dance」の続篇的な演奏の「Instant Kitten」が、単なる勿体ぶった儀式にしか感じられないでしょう。

う~ん、このあたりのメロトロンやファズオルガンとでも形容するしかないキーボードの多重層的絡み合いは、イアン・マクドナルド在籍時のキング・クリムゾンに匹敵する濃密さが感じられると思います。そして同時に切れ目なく続いて行く「Dedicated To Hugh, But You Weren't Listening」におけるフリージャズ指向が強い導入部から、熱いロックジャズのアドリブ合戦と集団即興演奏の凄みは流石の一言!

ちなみにこの曲はソフト・マシーンで同僚だったヒュー・ホッパーに捧げられたことが、そのタイトルの皮肉っぽさからも明らかですが、それは無暗矢鱈にフリージャズへと猛進していたと言われる当該人物への問題提起だとしたら、それはあまりにも尊大でイヤミじゃないでしょうか?

とにかく、危険極まりない演奏ですよ。

ですから、これも切れ目なく続いていく「Beer As In Braindeer」が、完全なる電子フリージャズに聞こえたとしても、それはそれでロバート・ワイアットの思惑に捕らえられたと、まさに自業自得の悪因悪果!?

そしてついにオーラスの「Immediate Curtain」で明らかになるのは、ここまでのB面の連続演奏が、全てはこの幽玄な世界に辿りつくための一本道だったという真相でしょう。おそらくはロバート・ワイアットが弾いているとされるメロトロンの響きが、如何にも当時のプログレど真ん中♪♪~♪

もう、ここまで来ると、身も心も疲れ果てることが否定出来ない雰囲気になるんですが、それは当然、心地良い疲労感だと思います。すうぅぅぅ~っと何がが消えていくような最後のフェードアウトが絶妙ですよ。

ということで、親しみ易いA面にアヴァンギャルドなB面の構成も考え抜かれた名盤だと思います。尤も「名盤」とするには、あまり売れたとは言い難いかもしれませんね。

それでも我が国では通称「そっくりもぐら」と呼ばれるほど、一部では親しまれているんですよ。サイケおやじにしても、初めてこれを聴いたのはプログレ系のロック喫茶で、それは1975年のことだったんですが、その時には既に人気盤の仲間入りを果たしていたほどです。

ちなみに当時の我国では「プログレ」というジャンルが、ハードロックと並ぶほど人気が高く、レコードも相当にマイナーなバンドまで日本盤が出るという状況になりつつありましたから、ロック喫茶では専門店のようなところもあったのです。

そしてサイケおやじが忽ち夢中になったのは言わずもがな、ソフト・マシーンは知っていたものの、このアルバムセッションで大活躍のデイヴ・シンクレアというキーボード奏者が、同じイギリスでキャラヴァンというロックジャズバンドをやっていたことを知り、ますます深みに……。

今日では、こうした一派を「カンタベリー」と称しているようですが、もちろんそれは後の造語でしょう。少なくとも1970年代の日本では、ソフト・マシーンをキーワードに聴かれていたと思いますし、それは「プログレ」で括られていたように記憶しています。

またレコードの発売状況は、珍しい作品も出るには出ていたのですが、基本的に売れていないので中古も出ないという悪循環……。結局、ここでも経済的な事情に圧迫され、どうしても聴きたければ新譜での発売時期にリアルタイムで買うか、執拗に中古盤屋を巡るかという二者択一だったように感じています。

しかし、そうやって蒐集していくレコードって、けっこう何時までも愛着が離れないんですよねぇ~♪

このアルバムも個人的には棺桶に入れて欲しい1枚になっているのでした。

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ホラージャケットのイエスは爽やか

2010-06-29 16:35:49 | Rock Jazz

The Yes Album / Yes (Atlantic)

今日も蒸し暑く、朝から鬱陶しいですねぇ。

まあ、それは気候や湿度なんていう自然条件ばかりではなく、不景気やバカ政治、あるいは煮え切らない某協会、正義ぶったマスコミ等々の所為もあるんですが、そんな時こそ、本日ご紹介のアルバムのような、スカッと爽快な1枚が聴きたくなります。

それはデビューから3作目となる、イエスにとっては初めてのヒット盤♪♪~♪

 A-1 Yours Is No Disgrace
 A-2 Clap
 A-3 Starship Trooper
       a. Life Seeker
       b. Disillusion
       c. Wurm
 B-1 I've Seen All Good People
       a. Your Move
       b. All Good People
 B-2 A Venture
 B-3 Perpetual Change

ご存じのとおり、このアルバムからはギタリストがピーター・バンクスからスティーヴ・ハウ(g,vo) に交代し、それゆえにイエスというグループが本来持っていた広範な音楽性が尚更に活かせるようになったとは、評論家の先生方やコアなファンからの常識的な見解になっていますが、確かにピーター・バンクスの正統派ロックジャズ系のプレイに比べ、もっと柔軟なスタイルとテクニックを併せ持つスティーヴ・ハウのギターが、このアルバムでは目立ちまくり!

また同時にジョン・アンダーソン(vo,per)、トニー・ケイ(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib) の先輩メンバー達を立てることも疎かにせず、その充実したコンビネーションから確立されるバンドアンサンブルはスピード感とタイトなリズム感に溢れ、本当にスカッとさせられます。

それはA面ド頭の「Yours Is No Disgrace」からして、曲調やキメの使い方は明らかにピーター・バンクス時代を引き継いでいますが、多重録も使いながら披露されるスティーヴ・ハウのギターは、様々なジャンルに立脚する多彩なスタイルを場面に応じて弾き分けるという、なかなか頭脳的なものです。

なにより決定的に違うとサイケおやじが思うのは、ピーター・バンクスが汗だらだらの熱血スタイルだったのに対し、スティーヴ・ハウは冷静でスマート!?

ですからビル・ブラッフォードのドラミングは尚更にシャープさを増し、クリス・スクワイアのベースワークが暴虐を極めつつも、絶対にバンドとしての纏まりは崩れません。

またトニー・ケイのキーボードの些かイナタイ雰囲気が、ここではかえって効果的でしょう。つまり後のイエスには失われしまう絶妙の暖か味が、このアルバムを親しみ易くしたポイントじゃないでしょうか。

そのあたりは凝った組曲形式の「Starship Trooper」や「I've Seen All Good People」においてもなかなか効果的で、それゆえにその中の構成曲を編集し、「Life Seeker」と「Your Move」をシングル盤にカップリングしての発売もムベなるかな! 残念ながらヒットはしませんでしたが、それは時代が既にアルバム中心主義に以降していた1971年の事でしたし、結果的にアルバムそのものが各方面から絶賛され、売れまくったのですから、役割はきっとりと果たしたんじゃないでしょうか。

もちろん強い印象を残すのは演奏パートだけではなく、ジョン・アンダーソンの力強くて透明感がいっぱいのボーカル、また新加入のスティーヴ・ハウも最高の働きを聞かせるコーラスワークが、さらに進化していると思います。

中でも「Disillusion」はスティーヴ・ハウの高速フィンガービッキングだけをバックにアコースティックなコーラス&ハーモニーが冴えまくり♪♪~♪ これが如何にも英国風プログレの王道へと突き進む「Wurm」、そして最終盤の余韻は、なんとなく「マジカルミステリー」な展開となって、実にたまりませんねぇ~♪ というかスティーヴ・ハウのひとりギターバトルが「ジ・エンド」? いやはや、ニンマリですよ。

う~ん、もうこのあたりになるとイエスというグループが当時、新参者のスティーヴ・ハウを直ぐに信じ切っていた証なんでしょうか? それは特にスティーヴ・ハウの独り舞台というライプ録音の「Clap」をLP片面の流れの中で絶妙の場面展開に使っていることにも表れているようですが、それにしてもこのアコースティックギターのインストは凄すぎるテクニックとインスピレーションの賜物だと思います。

そしてB面は、これまで述べてきたことの集大成というか、美しいコーラスハーモニーと爽やかなアコースティックギターのイントロに導かれ、なんとも爽やかな曲メロが印象的な「I've Seen All Good People」は言わずもがな、トニー・ケイのハートウォームな資質が全開のピアノが良い味出しまくりという「A Venture」、以降のイエス全盛期の序曲とも言える「Perpetual Change」でのモザイク的な構成の美学が、スティーヴ・ハウの流麗なギターワークを水先案内人として繰り広げられるんですから、既に刻まれた歴史を知っていれば、尚更に楽しめると思います。

とにかく爽快無比なロックジャズ!

1960年代末にデビューしたバンドの中では、特にブルースロックっぽさが希薄だったにしろ、ここまで颯爽とした演奏を披露されると、そのアクの無さがイヤミになりかねない危険性もあるんですが、こんな蒸し暑い時期にはかえって効果的でしょう。

まあ、正直言えば、ベースとドラムスの存在感がデビュー盤セカンドアルバムに比べるとイマイチ、引っ込んだ感じもするんですが、その分だけバンド全体の纏まりやオリジナル曲を中心に据えたグループとしての主張が明確になったように思います。

さらに如何にも1970年代ロック的な録音とステレオミックスが、良いんですよ♪♪~♪

ちなみに歌詞の内容は時代的に反戦や人間の普遍的な幸福、さらに宗教や宇宙観までも含んだ、些かの夢と現実のギャップを表現するべく狙ったものかもしれませんが、我々日本人にとっては、あまりピンッとくる世界ではなく、英語がそれほどリアルに伝わってこないところを大切にしながら、イエス特有のハーモニーコーラスやジョン・アンダーソンの透明感溢れる歌声を楽しめば、結果オーライじゃないでしょうか。

またイエスの中心人物と自任するクリス・スクワイアは、数多い自分達のアルバムの中で、この作品が一番好きだと公言し、実際、後々までのライプステージでは定番となる演目が多数入っているのも高得点♪♪~♪

つまりこれを突き詰めて楽しむことが、イエスのライプをさらに身近に感じる道だということでしょう。

蒸し暑さにはイエスが効く!?

その答えは……、ちょいとホラー映画っぽいジャケットが、邪魔しているのかもしれませんね。

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フラッシュはフラッシュ!

2010-06-01 16:47:45 | Rock Jazz

Flash (Sovereign)

何とも刺戟的な、全くサイケおやじ好みのジャケットは、1970年にセカンドアルバムを完成させた直後のイエスを追い出されたギタリストのピーター・バンクスが、心機一転結成したフラッシュという新グループのデビューアルバムです。

もちろんフラッシュという英語にはパンチラという意味がありますから、その意気込みたるや見事!

そして結果は初期イエスのロックジャズ路線を見事に引き継いだ、好きな人にはたまらない世界が展開されています。

ここまでの経緯をあらためて簡潔に纏めておけば、まず主役のピーター・バンクスは公式デビューした時こそイエスのオリジナルメンバーではありましたが、意地悪いファンや研究者からすれば、決して初代のギタリストでは無いとされていますし、また後任としてイエスに参加したスティーヴ・ハウが超絶のテクニックと冷静な状況判断をウリとする職人肌であったのに対し、ピーター・バンクスの基本姿勢はロックジャズという人間味の強いものでしたから、1970年代初頭からのプログレ全盛期においては些か時代遅れという感が無きにもあらずでした。

しかし、その情に厚い演奏スタイルは時に熱血、またある時には別の意味での職人気質が強く打ち出されているようで、そんなところがサイケおやじを夢中にさせるのでしょうか。

ですから、1972年に世に出た本日ご紹介のデビューアルバムは、早々に当時が全盛期だったイエスとの比較から、時代遅れとか古臭いという烙印を押され、さらにはイエスのコピーバンドとさえ……。

それでもサイケおやじは、フラッシュを愛聴していました。理由は初期イエスの味わいを求めてなのは、言わずもがなでしょう。

これが実に最高なんですよねぇ~♪

他人が何んと言おうとも!

 A-1 Small Beginnings
 A-2 Morning Haze
 A-3 Children Of The Universe
 B-1 Dreams Of Heaven
 B-2 The Time It Takes

メンバーはピーター・バンクス(g,key) 以下、コリン・カーター(vo,per)、レイ・ベネット(b,vo,per)、マイク・ハフ(ds,per) に加えて、このアルバムでは当時のイエスに在籍しながら、やはり直後にバンドを追い出されるトニー・ケイ(key) が助っ人参加しています。

そしてアルバムを聴けば納得なんですが、当然ながらピーター・バンクスが集めたメンツは初期イエスを再現発展させるべく、例えばコリン・カーターの素直な歌唱はジョン・アンダーソンを強く意識していますし、同様にレイ・ベネットはクリス・スクワイア、マイク・ハフはビル・ブラッフォードの代用品的な部分は否定出来ません。

しかもA面ド頭の「Small Beginnings」を聴けば早速鮮明になるのですが、曲調も演奏の構成やスタイルも、丸っきりイエスのデビューセカンドアルバムを鋭く踏襲しているのです。

これを快感とするか、臆面も無いコピーとするかで、このアルバムも、またフラッシュというバンドの存在意義も変わってくるのは自明の理ではありますが、サイケおやじは当然ながら前者♪♪~♪

ハイハットやタムをメインに使うマイク・ハフのドラミングはジャズっぽく、懸命に野太い蠢きを創造するレイ・ベネットのベースワークも決して悪くありませんし、バンドアンサンブルやボーカル&コーラスの真似っこぶりは嬉しくなるほどですよ♪♪~♪

このあたりはピーター・バンクス&トニー・ケイの本家イエス組の執念!?!

と言ってはミもフタも無いと思いますが、そうした味わいを当時のイエスとは別趣向で進化させようとする試みは、このアルバムのもうひとつの魅力として、続く「Morning Haze」に結実しています。

それはズバリ、CSN&Y路線のアコースティックギターとコーラスワークのコンビネーションを使い回したハートウォームな世界として、なかなか素敵ですよ♪♪~♪ う~ん、これには同時期にブレイクしていたアメリカも顔色無しでしょうねぇ。ピーター・バンクスはアコースティック・ギターも巧みです。

そしてAラスの「Children Of The Universe」が、これまたプログレとハードロックが見事に大衆ポップス路線にリンクしたような、元祖産業ロック!? 親しみ易い曲メロとクセの無いコリン・カーターの歌いっぷりがジャストミートしていますし、演奏パートのウキウキ感はイエスの些か勿体ぶったところとは相容れない魅力でしょう。

正直に告白すれば、この時期のイエスの大ヒット曲「Roundabout」よりも、サイケおやじはこっちが好きなんですよっ! 誰もが一度は作ってたであろう、好きな曲ばっかりのカセットテープにも必ず入れていたほどです。

演奏時間はいろんな美味しいキメがテンコ盛りなんで9分近いんですが、上手く編集したシングル盤でも出していれば、ヒットは間違いなかったと思うんですが、どうだったんでしょうかねぇ。

こうしてB面を聴き始めれば、まずは「Dreams Of Heaven」が、これまた初期イエスを完全継承する名曲名演です。重厚なバンドアンサンブルは微妙なユルさがクセモノでしょうか、そこを修正しながらの個人技の応酬が如何にもロックジャズの王道に感じられます。極言すればピーター・バンクスが一番やりたかったのが、このタイプだったのかもしれません。

バンド全員による大仰なフリーフォームのイントロから受け継がれるアコースティックギターによるスローなソロ演奏、そしてグワァ~ンとハードな展開に突入するテーマ部分は王道イエスの曲調と双子のようなイメージで、続く激しいアンサンブルとアドリブパートの充実へと繋がっていきます。

そこには高速4ビートで飛翔していくギターソロが千変万化に楽しめますし、その音色やフーズ構成が時としてキング・クリムゾンのロバート・フリップになったり、ジョン・マクラフリンになったりしつつも、結局はピーター・バンクスならではのロックジャズが楽しいかぎり♪♪~♪ 複雑な変拍子にも落ち込まないリズム隊もがっちり訓練されているんでしょうねぇ。

ですからオーラスのプログレパラード「The Time It Takes」がソフト&メローな雰囲気、つまりは後のAOR的な肌触りだとしても、そこはプログレ全盛期の勢いというか、ちょいと旧態依然のフィーリングが逆に良い感じかと思います。

おぉ、むうぃでぃぶる~~す?!?!

うぅぅむ、きんぐくりむぞん??!?

間奏でのキーボードやギター、さらには様々なSEを彩りにしながら、曲メロは結局、「Epitaph」してしまうあたりが、憎めないんですよね。

ということで、繰り返しますが、初期イエスの系譜をストレートに継承した歌と演奏ばかりです。そしてそれゆえに当時もその後も全くプレイクすることなく、今に至ったのが真相であり、ピーター・バンクスは不遇のミュージャンとして記憶されるばかりかもしれません。

それでもフラッシュは、このデビュー盤を含めて3枚のアルバムを残していますし、常に言われ続けたイエスとの比較では後塵を拝したことが否めないとしても、イエス系のプログレに興味を抱かれた皆様ならば、一度は聴いていただきたいと、私は切望するばかりです。

そんな思いが通じたのでしょうか、実は先日、CD屋を徘徊していたら、なんとフラッシュの諸作が紙ジャケット仕様で復刻されていました。そこで辛抱たらまらず、全買いしてみたら、なんと値段がひとつ税込で三千七百八十円!

う~ん、確かに復刻ジャケットも良く出来ていますが……!?

と思ったら、なんと最新リマスターとアナログ盤から起こしたCDの2枚組でした!

いゃ~、これには思わず平身低頭というか、上手いところを刺激してくれますねぇ~♪

て、気になるリマスターなんですが、手持ちのイギリス盤LPと比べて、音のクリアーさは当然ながら、些かスマートになりすぎた感じが……。

またアナログ盤起こしの方は、微妙なチリチリノイズが残されたストレートなものですが、本物のアナログ盤が馴染んでいた耳には、これまた線が細い感じが致します。尤もそれは再生カートリッジの問題等々も関連してくるんでしょうねぇ。

ですから、これからフラッシュを楽しまれようとする新しいファンにとっては、これしか無いの決定版かもしれません。

ちなみに良く出来た紙ジャケットはアナログ盤LP同様の見開きですらか、ちょうど折り目の背の部分が気になるクレパスにジャストミート♪♪~♪ デザインは有名なピプノシスということで、流石のサービス精神が嬉しいかぎり♪♪~♪

そのあたりも含めまして、お楽しみ下さいませ。

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もっと聴こうよ、イエスのセカンド!

2010-05-27 13:40:21 | Rock Jazz

Time And A Word / Yes (Atlantic)

今日でも絶大な人気を誇るイエスは、もちろんイギリスのプログレバンドではピンク・フロイドキング・クリムゾンと並んで特に有名だと思いますが、決してレコードデビュー直後から大ブレイクしたわけではなく、当然ながら試行錯誤がありました。

中でも本日ご紹介のセカンドアルバムは、特にその傾向が強いと評論家の先生方にはウケが良くないらしいんですが、天の邪鬼なサイケおやじは最高に好きな1枚♪♪~♪

もう、これ無くして、何がイエスか!?

そこまで言っても後悔しないほど、好きです!

なぁ~んていう愛の告白は、女性に対しても使ったことが無いほどなんてすよ。

そしてイギリスでは1970年、我国では翌年に「イエスの世界第2集・時間と言葉」を邦題に発売されたのですが、ファーストアルバムで完全にKOされていた若き日のサイケおやじは、青春の血の滾りとでも申しましょうか、八方手を尽くし、ついに掲載したジャケット違いのアメリカ盤を逸早く入手することに成功♪♪~♪

もうこの時は本当に嬉しくて、天にも昇る心持ちとは、このことか!?

と、まで感激したんですが、実際に鑑賞謹聴すれば、それは尚更に強烈な歓喜となって、サイケおやじをシビレさせたのです。

 A-1 No Opportunity Necessary, No Experience Needed
                                                     / チャンスも経験もいらない
 A-2 Then
 A-3 Everyday
 A-4 Sweet Dreams
 B-1 The Prophet / 預言者
 B-2 Clear Days
 B-3 Astral Traveller / 星を旅する人
 B-4 Time And A Word / 時間と言葉

当時のイエスは前作同様にジョン・アンダーソン(vo,per)、ピーター・バンクス(g,vo)、トニー・ケイ(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib) という5人組でしたが、このアルバムセッションには特にオーケストラが随所に導入され、トニー・コックスなるアレンジャーが起用されています。そのあたりが賛否両論の要因だと言われているのですが……。

しかし個人的には全く違和感が無く、むしろ素晴らしいと思うばかりなんですよ。

それはこのセッションから参画したプロデューサーのトニー・コルトンの手腕、あるいはその起用を望んだジョン・アンダーソンの目論見だったかもしれませんし、巷間で酷評されるほどトホホのアルバムでは決して無いと確信しています。

それは如何にもブリティッシュなオルガンに導かれ、華麗なる西部劇調のストリングが鳴り響く中を一転して暴走する強烈なロックジャズ「チャンスも経験もいらない」からして完全なる成功! とにかく目眩がしそうなクリス・スクワイアの過激に躍動するベースワーク、エグ味の強いピーター・バンクスのジャズ系ギター、空間を支配するビル・ブラッフォードのドラムスも恐ろしいばかりに冴えまくり♪♪~♪ 素晴らしいアンサンブルと意図的にラフにしたであろうコーラスの存在は、既存のロックへのひとつの挑戦だったかもしれません。

しかも録音もミックスも、当時としては異常に先鋭的! つまり旧態依然とした左右と真ん中に分離するステレオミックスを大切にしながらも、各楽器の存在感が場面毎に微妙に変化するという小技が効いていて、それはアルバム全篇の隠し味かもしれません。

ですから続く「Then」が如何にエマーソン・レイク&パーマーしていようが、鋭いストリングの響きは決して殺されることなく、また今となってはバッファロー・スプリングフィールドのオリジナルとして知られる「Everyday」にしても、その中間部で炸裂する強烈なロックジャズの展開が、ド迫力のバンドアンサンブルと激しいアドリブの応酬、さらにビシッとキメまくりのドラムスとベースがオーケストラのパートと遊離する愚行なんて、絶対にありえません!

ちなみにサイケおやじは、当然ながらこの時点でバッファロー・スプリングフィールドは聴いたことがなく、後にオリジナルバージョンに接した時には些かの肩すかし状態だったことを付け加えおきます。

う~ん、それにしてイエスの「Everyday」は、何度聴いても圧倒的!

イノセントなジャズ者でも絶対に圧倒されること、請け合いです!

そしてポール・マッカトニーがプログレしてしまったような「Sweet Dreams」では、リボルバーっぽいドラムスの音作りがニクイばかりですし、このアルバムの中では特に躍動的な「預言者」では、ついにトニー・ケイのキーボードが大活躍! そのクラシックとジャズを良い塩梅でミックスさせた旨味は、なかなか絶品だと思いますが、演奏そのものがディープ・パープルになっているのも否定出来ず、それがまた嬉しかったりすると言えば、贔屓の引き倒し以上に苦しい言い訳でしょうねぇ……。

しかしそれを中和するのがジョン・アンダーソンの透明感あふれるボーカルで、ストリングスとの相性も素晴らしく、またド派手に自己主張するドラムスとベース、未だにジャズから脱却出来ないピーター・バンクスのギター共々に気分が高揚させられます。もちろん秘められたビートルズっぽさには、思わずニヤリ♪♪~♪

それはピアノとストリングスだけをバックにジョン・アンダーソンが歌う「Clear Days」の清々しさ、その詩情をジワジワとロックジャズ&正統派プログレ指向へと惹き戻す「星を旅する人」、そしてオーラスの「時間と言葉」における壮大な構築美という、全く後のイエスとなんら変わらない流れの中でも効果的な隠し味です。

また特筆しておきたいのが、ピーター・バンクスの凄いギターワークで、モロにジャズっぽいコードワークやオクターヴ奏法、あるいは通常のスケールから逸脱したアドリブ展開や細かいオカズの使い方、テンションの高いカッティング等々、とにかくロックジャズのギタリストとしては世界最高峰屈指のひとりと私は思います。

正直に言えば、今の私はピーター・バンクスを聴きたくて、初期イエスのレコードを取り出すといって過言ではないのです。

しかし掲載されたLPジャケットをご覧になれば驚かれるとおり、そこにはピーター・バンクスの姿は無く、代わりにここでは全く演奏していない新加入のスティーヴ・ハウが!?!

まあ、これはアメリカ盤という特殊事情ゆえのことではありますが、本国のイギリス盤や日本盤はお馴染みのシュールなイラストになっていますから、この仕打ちは酷いとしか言えません。

そこに何があったのか、現在の歴史ではバンドの意向に合わないとして、アルバム発売直前に解雇されたことばかりが有名になっていますが、その経緯や結果はともかくとして、ピーター・バンクスという稀代の達人ギタリストを真っ当に評価する動きがあっても良いのでは……?

それともうひとつ、このアルバムでのクリス・スクワイアのベースワークは、もはや暴虐と表現すべき躍動感を聞かせてくれますが、それは録音&ミックスがエレキベース中心主義に傾いているからでしょうか? リアルタイムでも呆れるほどに驚かされましたが、それは今日でも全く変わらない現実です。

さらにビル・ブラッフォードのシャープなドラミングも驚異的で、ロックビートはもちろんのこと、4ビートからポリリズムへと発展していくジャズっぽい敲き方は最高に冴えまくり♪♪~♪

そうした成果は、録音エンジニアのエディ・オフォードの優れた手腕によるところが大きく、後の大傑作「こわれもの」や「危機」といった名盤へとダイレクトに繋がる事実を否定は出来ないでしょう。

とにかく今は全く忘れられているこのアルバムこそ、聴かず嫌いの決定的1枚です。

こんなにビシッとキマッているロックジャズを聴かないのは、本当に勿体無い!

これは私のような者が百万言を弄しても致し方ない現実だと思います。

ぜひっ!

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アグネス・ラムにTAKANAKAを

2010-05-10 17:24:13 | Rock Jazz

スイートアグネス / 高中正義 (Kitty)

1970年代後半の我国グラビアアイドル界で最高の人気を得ていたのが、アグネス・ラムでした。と言うか、当時は「グラビアアイドル」なんていう言葉もジャンルも確立されていませんでしたから、その元祖がアグネス・ラムだったということかもしれません。

まあ、それはそれとして、最初に注目を集めたのは昭和50(1975)年頃、シャンプーかリンスのテレビCMだったと記憶していますし、同時に水着や露出度の高い衣装とは正反対の愛くるしい面立ち、もちろんスタイル抜群のセクシーな肢体を出し惜しみしないグラビアが雑誌にガンガン掲載されたのですから、正常な日本男児ならば、瞬時に辛抱たまらん状態♪♪~♪

ちなみに彼女は名前からもご推察のとおり、日本人ではなくチャイニーズ系のアメリカ人で、主にハワイを中心に活動していた本職のモデルだったのですが、我国でブレイクしたきっかはカーオーディオメーカーのクラリオンが主催したキャンペーンガールの初代クイーンに選ばれたことでした。

そしてアグネス・ラムが大ブレイクしたことにより、そのクラリオンガールに選ばれることをスタアへの入り口として、芸能界で飛躍した美女が、例えば烏丸せつこ、宮崎ますみ等々大勢いますし、中には開いた口がふさがらない蓮舫なんていう仕分け代議士の過去も、クラリオンガールでありました。

しかしやっぱりダントツだったのはアグネス・ラムに他なりません。

とにかく彼女さえ載せていれば雑誌は売れるし、盗難が相次ぐCMポスターゆえに対象商品が絶好の宣伝となり、またテレビでは夥しいCM以外にもバラエティ番組や英会話番組に出演していました。

また写真集も大量に出版されていたは言うまでもなく、ついには東映によって「太陽の恋人(昭和51年・三堀篤監督)」なんていう短篇映画さえ作られ、本日ご紹介のシングル盤は、そのテーマ曲♪♪~♪

ただし決してアグネス・ラムが歌っているのではなく、同じ頃に、やはり人気急上昇中だったギタリストの高中正義が演じるフュージョンインストが、その正体!? ということは、ジャケットからして彼女の歌声を期待したファンを裏切ることにもなるフェイク商品なのですが、そのあたりは彼女の素敵な笑顔に免じて、気持良く騙されれば結果オーライでしょうね。

もちろん収められた演奏そのものは、如何にも楽園的な爽快フュージョンになっているのは当然が必然! ですからキュートな彼女のジャケ写を眺めながら、あるいは映画館で鑑賞した前述の短篇映画の美味しい場面を思い出しながら、刹那の気分に浸るのは決して罪悪ではないのです。

また、それを演じている高中正義の履歴については、昭和42(1972)年に参加したサディスティック・ミカ・バンドでの鮮やかにしてアクの強いギタープレイが強い印象となり、以降は継続発展的に結成されたサディスティックスでの活動や、その傍らでの各種セッション参加、そして自身のソロデビューと、常に時代の流行を裏と表の両面から支え、リードしつつ今日に至っているわけですが、それ以前から我国のロック界では、例えば成毛茂のバンド等々でベースをやったり、自己のバンドを率いていたりという下積みがあったそうです。

実は私は、その高中正義がベースをやっていたという昭和46(1971)年末頃の成毛茂&つのだ★ひろのライプに接しているのですが、全く印象にも記憶にも残っていません。それが前述したサディスティック・ミカ・バンドでは加藤和彦やミカを見事に盛り立てると同時に、それ以上の目立ちまくる熱演まで披露していましたですねぇ~♪

それゆえにフュージョンインストがメインのリーダー盤ともなれば、ツボを押さえた作編曲とサンタナやリー・リトナーを想起させるギタースタイルが冴えまくり! ファーストアルバムの「Seychelles」が昭和51(1976)年7月、次いで同年8月に最初のシングル盤として発売されたのが、本日ご紹介の1枚というわけです。

ちなみに、この「スイートアグネス」は、そのデビューアルバムではなく、翌年5月に発売されたセカンド作「TAKANAKA」に「Sweet Agnes」として同一テイクが収められています。

ということで、最後になりましたが、実はこのシングル盤は私が買ったものではなく、リアルタイムで熱烈なアグネス・ラムのファンだった友人からの貰いものでした。それは友人が結婚することになった昭和57(1982)年のことで、その頃になると彼女の人気も下火になっていたのですが、あえて友人は「けじめ」をつける意味でアグネス・ラム関連の膨大なコレクションを処分した中のひとつとして、これを私にプレゼントしてくれたのです。

う~ん、もともと竹を割ったような性格の奴でしたから、流石に往生際が良いというか、結婚する男が何時までも昔のアイドルをオカズにするわけにもいきませんからねぇ。

ちなみに前述した短篇映画「太陽の恋人」は、わざわざハワイまでロケ隊が出張ってのイメージ作品で、私もリアルタイムで観ています。それは確か舘ひろし主演の「男組少年刑務所」や岩城晃一の「爆発!750cc族」あたりとの併映だったように記憶していますが、客層の大部分はアグネス・ラムがお目当てだったと思います。しかしそれは本当に30分に満たない短さで、内容は彼女が買い物やドライブ、テニスや乗馬をしたりというプライベートなところから、お約束の水着姿で海辺に遊ぶという、これが当時はボインと称していた彼女の巨乳を徹底マークした、如何にもしぶとい仕上がりでしたねぇ。

もちろんそこにジャストミートしていたのが、高中正義が演じるフュージョンギターのインスト天国だったというわけです。

コメント (4)
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