OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ウェス、ケリー、マクルーア&コブのハードバップ天国

2017-06-24 20:47:32 | Jazz
Smokin' In Seattle / Winton Kelly Trio, Wes Montgomery (Resonance = CD)
 
 01 There Is No Greater Love / Winton Kelly Trio
 02 Not a Tear / Winton Kelly Trio
 03 Jingles  / Wes Montgomery with Winton Kelly Trio
 04 What's New?  / Wes Montgomery with Winton Kelly Trio
 05 Blues in F  / Wes Montgomery with Winton Kelly Trio (fade-out)
 06 Sir John / Winton Kelly Trio
 07 If You Could See Me Now / Winton Kelly Trio
 08 West Coast Blues  / Wes Montgomery with Winton Kelly Trio
 09 O Morro Nao Tem Vez / Wes Montgomery with Winton Kelly Trio
 10 Oleo / Wes Montgomery with Winton Kelly Trio (fade-out)
 
ジャズは即興演奏という個人技が大きな魅力ですから、それがバンド形態であれば、必然的に参加メンバーの顔触れが気になるは必定であり、それがあってこその魅力が、逆もまた真なり!?

そこには決定的な名演を記録したレコードが残されている事は言わずもがな、それゆえに、このメンツならばっ、絶対!

なぁ~んていう期待と思い込みがあるもんですから、ひとつでもそ~した新規音源に接する事はジャズ者にとっての無常の喜びと思います。

本日ご紹介のCDも、まさにそんなストライクゾーンのド真ん中という最近の発掘音源であり、なにしろメンバーがウイントン・ケリー(p)、ロン・マクルーア(b)、ジミー・コブ(ds) のレギュラートリオにウェス・モンゴメリー(g) が加わったラジオ放送用のライブレコーディングなんですから、たまりません。

しかも記載データによれば、録音されたのが1966年4月14&21日!

という事は、あの大名盤「スモーキン・アット・ザ・ハーフ・ノート」のA面収録日から約半年後ですら、聴く前から期待はどこまでも膨らみ、しかもハードバップ愛好者ならば、思わず腰が浮くという瞬間はお約束以上と、サイケおやじは痛切に感じる快演ですよっ!

それはまずピアノトリオで演じられる冒頭の2曲からしてウキウキ気分は留まらず、アップテンポで演じられる歌物スタンダード「There Is No Greater Love」ではウイントン・ケリーが十八番の「節」を全開させれば、ジミー・コブはザクザクしたブラシからクールなリズムキープを貫くドラミングの相性もバッチリですし、ロン・マクルーアの堅実な助演も良い感じ♪♪~♪

ですから最初はミディアムスローで始める「Not a Tear」が中盤からスインギーなビートを伴ってグルーヴィに演じられるのも説得力があって、しかも歌心が大切にされているところは、如何にもウイントン・ケリー・トリオの「らしさ」だと思います。

あぁ~、ジミー・コブのビシっと入るキメ打ちも心地良いですねぇ~~♪

そしてお待たせしましたっ!

いよいよ登場したウェス・モンゴメリーが豪快なノリで一気呵成に弾きまくりの「Jingles」には息苦しくさせられるほどの迫力が満ち溢れ、このスピードで、このフレーズ、このコードワーク!? 本当に親指だけで弦を弾いているのか、ミステリアスな領域の怖ささえも、痛快ですよっ!

また、これまたお馴染みの歌物スタンダード曲「What's New?」は、もちろんじっくりじんわりのスローな展開ですから、十八番のオクターヴ奏法を駆使したウェス・モンゴメリーの秘儀は無論の事、リズム隊の味わい深い妙技も聴き逃せないと思います。

うむ、さりげなくテンポアップしてからのメンバー間の意思の疎通と意地の張り合い(?)もニクイですねぇ~~♪

こうしてライブは前半の終了というか、残念ながらフェードアウトしてしまう「Blues in F」は、それでもウェス・モンゴメリーのアドリブが強烈至極! 耳に馴染んだフレーズとキメが乱れ打ちされれば、それはハードパップ天国という他はありませんっ!

ちなみに、おそらくはここまでは4月14日の演奏と思われますので、以下の後半も同じ構成というか、まずはピアノトリオで軽快なゴスペル系ハードバップ曲「Sir John」が始まれば、ジャズ者が素直に酔わされてしまう得心もナチュラルな衝動でありましょう。

当然ながらケリー&コブのコンビネーションは言わずもがな、新参のロン・マクルーアも健闘していますから、思わせぶりを狙ったスローバラード「If You Could See Me Now」にしても、歌心を支える強いビートがハードバップの存在証明と思うばかりです。

そしてここから再登場のウェス・モンゴメリーが自作の「West Coast Blues」を弾き始めれば、ワルツタイムのハードバップグルーヴを瞬時に提供するリズム隊のジャズ性感度も最高で、幾分ガサツなジミー・コブのドラミングが意想外にジャストミートしているあたりは、サイケおやじが大いに好むところです。

その意味でボサノバのハードバップ的展開に終始する「O Morro Nao Tem Vez」は、お馴染アントニオ・カルロス・ジョビンの有名曲ですから、本当はもう少しジェントルな雰囲気があって正解なのかもしれませんが、ここまでイケイケの演奏が提示されるのであれば、素直に浮かれるのがジャズ者の喜びのひとつでしょう。

いゃ~~、ウェス・モンゴメリーは本当に凄いギタリストですねぇ~~~♪

そう想えば、さらにノリノリの「Oleo」が、これまたフェードアウトしてしまうのは残念至極であり、また、日常的にここで聴かれるような演奏が行われていた当時の幸せがお裾分けされた事は、まさに僥倖と感謝しなければなりません。

ということで、気になる音質はモノラルミックスではありますが、なかなか良好で、各楽器のバランスも整合性がありますので、どうぞ皆様もお楽しみ下さいませ。
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王道ジャズだぜっ、デクスター!

2017-06-14 17:57:50 | Jazz
The Jumpin' Blues / Dexter Gordon (Prestige)

ということで、昨夜は音楽鑑賞に没頭集中し、久々にジャズを2時間ほど聴いた中から本日のご紹介は、デクスター・ゴードンが1970年頃に出したLPです。

説明不要とは思いますが、デクスター・ゴードンはモダンジャズの王道を貫いた偉大なテナーサックス奏者ではありますが、悪いクスリ諸々の問題から、モダンジャズがリアルタイムで盛り上がっていた1950年代中~後期には活動が停滞逼塞……。

しかしそれでいて社会復帰後の1960年からは、名門「プルーノート」とのレコーディング契約が結べた事もあり、今も不滅の名盤・人気盤を幾枚も残したのですが、既に時代はハードバップよりも過激なフリーやモードという、無機質なものがジャズの本流となり、また同時にロックやソウルが大衆音楽の中心となっていましたから、そこに馴染まないジャズプレイヤーは本場アメリカを離れ、欧州に活動の場を移さざるをえないという苦境の中、偉大なデクスター・ゴードンも、その例外ではありませんでした。

ところが、ここからが流石の存在感というか、むしろそうした1960年代中頃以降においてのデクスター・ゴードンは、ますますジャズ界で重きを成したと言えば大袈裟かもしれませんが、少なくとも1970年代前半からのネオパップ&ハードバップ・リバイバル隆盛にあっては、欧州の正統派ジャズレーベルとして創設されたばかりの「スティープルチェイス」に吹き込んだ諸作が、そうしたムーヴメントの支柱となり、我が国においても、ハードバップ愛好者の心の拠り所となっていた真実はひとつ!

ただし、サイケおやじには必ずしもそればかりでは無い!

という気持ちが確かにあって、つまり前述した「ブルーノート」と「スティープルチェイス」から発売されたLPばかりじゃ~なく、その間に吹き込まれていた「ブレスティッジ」からの諸作にだって、なかなかの快作盤があると思っていますし、実際、本日ご紹介のアルバムも、その1枚です。

録音は1970年8月27日、ニューヨークのRCAスタジオにおけるセッションで、メンバーはデクスター・ゴードン(ts) 以下、ウイントン・ケリー(p)、サム・ジョーンズ(b)、ロイ・ブルックス(ds) という所謂ワンホーン編成ですから、こちらが思うとおりのハードバップが楽しめますよ♪♪~♪

A-1 Evergreenish
 御大デクスターが書いた如何にものハードバップ曲ですが、おそらくは歌物スタンダードのコード進行を借用した改作と思われますので、ミディアムテンポの楽しい演奏は、お約束以上♪♪~♪
 悠々自適なテーマ吹奏から王道のアドリブを展開するでスクター・ゴードンは言わずもがな、続くウイントン・ケリーのピアノにも、そりゃ~確かにマイルス・デイビスのバンドに在籍していた頃の強烈なスイング感は薄まってはいますが、やっぱりジャズ者を魅了するウキウキグルーヴは本当にたまりませんねぇ~♪
 ただし、それに続くベースソロのパートが些か緊張感が欠如気味のリズム隊のアンサンブルなのは、ちょっぴり残念……。
 う~ん、でも、やっぱり、イイんですねぇ~~、こ~ゆ~ジャズってっ!
 終盤に演じられる、デクスター対ブルックスの短いソロチェンジも良い感じ♪♪~♪
 あっ、これの曲は、もしかしたらタッド・ダメロンのあれですかぁ~~!?

A-2 For Sentimental Reasons
 お馴染、ナット・キング・コールの大ヒット歌物メロディを絶品の解釈で吹奏するデクスター・ゴードンは、まさに王者の風格でしょう。
 せつなくも甘美な原曲の旋律を心で歌ったとしか思えないフェイク&アドリブの妙こそが、デクスター・ゴードンの真骨頂! まさに「歌詞を忘れたら吹けない」との名言どおりの名演と思います。
 それとスローテンポでありながら、ダレないリズム隊のグルーヴと味わい深いイントロ&伴奏、そして素敵なアドリブを披露するウイントン・ケリーもニクイ存在感です。

A-3 Star Eyes
 これまた数多の名唱名演が残されている歌物スタンダード曲ですから、デクスター・ゴードンも手慣れた中にも自らの味を大切にした名匠の証という演奏です。
 それはもちろん、イントロから定石のラテンリズムとサビの4ビートで展開されるテーマ、さらに続くアドリブパートはミディアムテンポのジャズグルーヴという流れが安心印の太鼓判であり、それゆえにストロングスタイルの厳しさは足りないかもれませんが、リラックスしたモダンジャズって、こ~ゆ~もんだと再確認させられるんじゃ~ないでしょうか。
 
B-1 Rhythm-A-Ning (mistitled as Straight, No Chaser)
 これが本アルバムの目玉と申しましょうか、およそデクスター・ゴードンのイメージとは相性が良いとは思えないセロニアス・モンクの有名(?)オリジナル曲を真っ向勝負のアップテンポで吹きまくった、まさに痛快な演奏です。
 それは原曲に潜む不気味なテンションコードを極力排除し、それでいてモダンジャズの醍醐味は失せないように徹したデクスター・ゴードン以下、セッションメンバーのジャズ魂の発露かもしれず、個人的には、この演奏を聴いて何も感じないようであれば、モダンジャズを楽しむ「何か」が、リスナーの内から消失したのかもしれないと、僭越&生意気にも思うほどです。
 モダンジャズ、万歳!

B-2 If You Could See Me Now
 これまた良く知られたジャズ系スタンダード曲で、ボーカルバージョンも数多残されているという人気のメロディですから、シンプルにテーマを吹奏するデクスター・ゴードンの潔さにシビレますよ。
 そしてウイントン・ケリーの歌心中心主義のアドリブから、再び登場するデクスター・ゴードンの見事なフェイクと締め括りの妙こそは、テナーサックスにおけるスローバラードのお手本であろうと思います。
 ちなみに、これを書いたのは前述したタッド・ダメロンで、この作編曲家のオリジナルには何れも歌心をナチュラルに表現出来るツボがあるように感じるのですが、いかがなものでしょう。
 サイケおやじは、好きです。

B-3 The Jumpin' Blues
 オーラスは天才チャーリー・パーカーが駆出し時代に在籍していた事でも有名なジャズ&ブルースのジェイ・マクシャン楽団が1940年台に放ったヒット曲をハードバップ流儀で再演したと書きたいところなんですが、デクスター・ゴードン本人は最初からここまで、それほどスタイルの変わったプレイヤーではないので、極めて自然体の演奏が、そのまんまハードパップの王道であったという、そんな「こじつけ」は無用の長物でありましょう。
 とにかくアップテンポで威風堂々、グイグイと引っ張っていくテナーサックスの鳴りは、やはり本物です。
 そして本来はバックアップするべきリズム隊が、逆にノセられてしまったという本末転倒も、最高に心地良いですねぇ~~♪

ということで、これは決してジャズ史云々で語れるようなLPではありませんが、日常的愛聴盤としては、嬉しい1枚じゃ~ないでしょうか。

そして、それゆえにジャズ喫茶や、そこに集うイノセントなジャズファンにとっては、これが世に出た1970年末頃から些か軽んじられていた風潮も、当時のモダンジャズではジョン・コルトレーンが神格化され、それに殉じた精神の演奏が聴けないレコードは冷たく扱われていたという現実に結実していたのです。

もちろん、そ~した風潮の中でジャズ喫茶に通っていたサイケおやじは、こ~ゆ~レコード、デクスター・ゴードンの他にもハンク・モブレーとか、アンチ・コルトレーン派みたいなテナー奏者が好きなのは邪道かいな……?

なぁ~んて苦悩(?)した事も確かにあったんですが、今となっては笑い話というか、間違えた常識に捕らわれていた自分の不明が恥ずかしくなるばかりです。

ただし、サイケおやじは決してジョン・コルトレーンを忌み嫌っているわけではありません。

むしろ大好きと言っても間違いではないほどなんですが、時と場所を選べる自由があるのであれば、好きな時に好きなレコードを楽しむという姿勢を大切にしたいと、それを実践しているにすぎません。

本日は殊更に独断と偏見、失礼致しました。
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レフト・アローンな気分の高揚

2017-05-28 17:55:26 | Jazz
レフト・アローン / 笠井紀美子 (日本ビクター)

昨日もまた、とても悔しい気分に苛まれました。

それは片山由美子様のトークショウも行われた、石井輝男監督追善供養の映画鑑賞会に参加出来なかった事で、もちろんサイケおやじは、そこに参集するために努力はしたのですが、既に2ヶ月ほど前から決定していた約束はど~にもならず、京都までの道行~日帰りという仕事の結果も、それほど芳しいとは言えないのですから……。

当然、そんな立場はサイケおやじだけではない事も重々承知はしております。

しかし、今回に限った事ではなく、こんなに仕事に束縛され、自分の時間が思うようにならないなんてこたぁ~、霞を食って生きてるわけじゃ~ないサイケおやじにしても、絶対に本末転倒だと思うばかりで、本気で独り取り残されたような気分はロンリーですよ、今日もねぇ……。

そこで本日のネタはジャズ者にはお馴染み、孤独に悩んで聴くのが本質と思われていた我が国ジャズ喫茶文化をある意味で象徴していた人気曲「レフト・アローン / Left Alone」の笠井紀美子バージョンです。

それは黒人ピアニストのマル・ウォルドロンが伴奏を務めていた人気歌手のビリー・ホリディに提供した哀切のメロディであり、そこにビリー・ホリディ自らが作詞してライブステージでは1958年頃から演じられていたと云われていますが、そのリアルなオリジナルバージョンの公式録音は残念ながら残されていません。

しかし、この「レフト・アローン / Left Alone」が本当にジャズの名曲として世界中で認識されたのはビリー・ホリディの死を悼んで、1960年にマル・ウォルドロンがジャッキー・マクリーンのアルトサックスを入れたインストのカルテットバージョンを録音してからで、同名タイトルのLPがロングセラーになるほどの人気名演となってみれば、これまでに様々なカバーバージョンが残されているのもムベなるかな、ご紹介の笠井紀美子のバージョンも、そのひとつです。

しかも、これがなかなか意義深い(?)のは、バックの演奏にマル・ウォルドロンが参加している事で、他にメンバーは鈴木 良雄(b)、そして村上 寛(ds) から成るトリオ編成ですから、笠井紀美子のボーカルにも緊張と緩和のバランスが絶妙です。

というか、作者本人が伴奏するという怖い場面にも臆する雰囲気が感じられないところが、流石じゃ~ないでしょうか。

制作されたのは1971年の彼女のLP「ワン・フォー・レディ」からのシングルカットであり、そのアルバムからしてタイトルどおり、ビリー・ホリディの愛唱曲をメインに入れた所謂トリビュート盤なので、機会があれば皆様もお楽しみ下さいませ。

ちなみにサイケおやじは件のLPはジャズ喫茶で何度も聴いた事があったのですが、このシングル盤に邂逅したのは1970年代も終わりの頃だったものですから、もしかしたら、これって日本語バージョン?

なぁ~んていう希望的妄想が瞬時に湧き上がってきたものの、実態は英語詞での歌唱でしたから、今となっては歌謡曲やフュージョン系のアルバムばかりが人気の笠井紀美子が、真っ向からジャズを歌っていた時期の姿を堪能出来ると思います。
 
尤も、そんな偉そうな事をホザいてしまったサイケおやじにしても、実は笠井紀美子のリアルなジャズボーカル盤は、これしか持っていなんですけど……。

ということで、本音では今の仕事をど~やって辞めるか、なぁ~んて事を考える時が多いサイケおやじなので、なんとも情けない状況の中では、好きな物事に拘りたい気持ちも殊更強くなっております。

そして、そんなこんなを拙ブログに綴ってまいりますので、愚痴も増えてしまいそうですが、これからもよろしくお願い申しあげます。
 
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コルトレーンを聴けば、ジャズ喫茶の幻想に回帰する

2016-10-20 15:43:15 | Jazz
John Coltrane Quartet Live At Penn State '63 (HiHat = CD)
 
 01 Bye Bye Blackbird
 02 The Inch Worm
 03 Every Time We Say Goodbye
 04 Mr. P.C. (imcompltet)
 05 I Want to Talk About You
 06 My Favorite Things (imcompltet)
 
昨日の責め地獄からのストレスが解消していないので、本日は朝っぱからコルトレーン地獄で憂さ晴らし!
 
もちろん毒を以て毒を制す!
 
というわけでもないんですが、とにかくそれが掲載した発掘音源CDで、内容はタイトルどおり、ジョン・コルトレーン(ts,ss)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という4人組がやらかしたペンシルバニア州立大学における壮絶なライブステージを、それもなかなか良好な音質で堪能出来るというブツです。
 
なにしろピアノとベースの音が大きく録れている事が特筆物で、ご存じのとおり、当時の他の同種音源では、特にピアノが引っ込んだものが多いという不満が、ここにはありません。
 
もちろんポリリズムを叩きまくるエルビン・ジョーンズもしっかり聴けますし、ジミー・ギャリソンのベースにしても重量感は満点ですから、殊更後者のソロパートではエグ味の効いた音にシビレさせられますよ♪♪~♪
 
そして肝心のジョン・コルトレーンのプレイがちょっぴり引っ込んだ感じに録れているのも、逆にライブっぽくて、サイケおやじは好きです♪♪~♪
 
つまり、バンド全体でガンガンやってくれる、そのド迫力にはハナからケツまで圧倒されるばかりで、なるべく大音量で聴かれることが望ましいわけですが、それが叶わぬならば、ヘッドホーン等々でも充分にOKでしょう。
 
ただし、この音源はどうやらラジオ放送用のソースがネタ元らしく、それゆえに全篇約70分弱の収録時間ということは、上記したプログラムが完全収録されていない事が推察に易く、実際「Mr. P.C.」と「My Favorite Things」は、いよいよこれからっ! という時になって非情のフェードアウト……。
 
またトラックによっては幾分の頭欠けもあるのが実情です。
 
しかし、それでもこれは本当にスカッとさせられる演奏ばかりですし、もっともっと過激にやって欲しいっ!
 
そんな願いが抑えきれなくなるほどの熱気が充満しています。
 
あぁ~、マッコイ・タイナーの溌溂としたピアノ、地響きの如きジミー・ギャリソン、ビシバシのエルビン・ジョーンズという重量級リズムセクションには、やっぱりジョン・コルトレーンが一番似合うわけで、そんなことはありませんが、代わりに誰がフロントに入っても同等、あるいはこれ以上のストロングスタイルのジャズは演じきれないんじゃ~ないでしょうか。
 
しかも、このバンドがもうひとつ魅力的なのは、イケイケの演奏の次にはきっちりと歌物バラードをやってくれることで、それは上記のプログラムでも明確なんですが、特にスローなテーマ吹奏からジワジワと熱く、力強く盛り上げていく「I Want to Talk About You」はやっぱり素晴らしく、最終盤では今や「お約束」となった無伴奏のパートも、リアルタイムでは絶対に刺激的、そして緊張と緩和の美しき流れの究極の表現を目指していたものと思いますので、サイケおやじは素直に惹き込まれてしまうばかり??~♪
 
ということで、このブツは昨年発売されたものですが、既にジャズが伝統芸能化している昨今、ここに収録されているような演奏に心底期待し、虜になって聴きまくるサイケおやじを含むリスナーの皆々様は、おそらくはジャズ喫茶全盛時代を体験しているんじゃ~ないでしょうか。
 
実際、1970年代には、例えクロスオーバーやフュージョンが人気を集めていた頃であっても、既に神格化されていたジョン・コルトレーンの演奏スタイルに少しでも接近する努力を聴かせてくれるレコードがウケていたわけで、その最先端を知る場所がジャズ喫茶でありました。
 
現在では、そういう店も減少していると思いますが、もしもご紹介した音源が1970年代に出ていたら、ジャズ喫茶の大音量の中で聴くという幸せを過ごせたんじゃ~ないのかなぁ~~~、なぁ~んていう夢想を思い描いていしまいます。
 
最後になりましたが、どうにも最近のサイケおやじはストレスの発散が上手く出来ず、何事も一方通行な仕儀ばかりで、特に拙文への皆様からのコメントにも、なかなか気の利いたお返事も出来ず、反省しきり……。
 
正直に告白させていただければ、一番に欲しているエロスについても、なかなか自分の好みにジャストミートするようなものが極端に少なく、もはや自分で作る他は無いとは思いつつも、現実的にはそれも困難となれば、とりあえず音楽に救いを求めるのが最良の道と自分に言い聞かせている次第です。
 
そしてこれまで入手していながら、開封もしていなかったブツをあれやこれやとひっくり返していますので、追々にご紹介させていただく所存であります。
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CDでも素敵なジャケ写、あるいはジョン・コルトレーンの1962年の咆哮

2016-10-08 17:01:48 | Jazz
The Complete 1962 Copenhagen Concert / John Colttane (Domino = CD)
 
☆CD One:
 01 Bye Bye Blackbird
 02 Chasin' The Trane
 03 The Inchworm
 04 Every Time We Say Goodbye
 05 Mr. P.C.
☆CD Two:
 01 I Want To Talk About You
 02 Traneing In
 03 Impressions
 04 My Favorite Things
 
所謂「ジャケ買い」は音楽好きには常套手段ですが、それは圧倒的にアナログ盤が優先される趣味でしょう。
 
なんたってCDに比べれば、ジャケットやスリーヴのサイズが大きいですからねぇ~~。
 
しかし、CDにだって素敵なジャケットデザインは確かに存在しているのも事実であって、それに惹かれてゲットさせられるブツだって、決して少なくはないはずです。
 
本日掲載したジョン・コルトレーンの発掘盤CDは、サイケおやじにとっては、まさにそうした中のお好み盤♪♪~♪
 
これを発見したのは、もう4~5年も前の事になりますし、中身ついても、既に出回っていた音源だったですが、このジャケ写デザインが妙に気に入ってしまったもんですから、ついついねぇ~~♪
 
そして義理堅い気持ちで聴いてみれば、やっぱりジョン・コルトレーン(ss,ts)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、そしてエルビン・ジョーンズ(ds) という顔ぶれのカルテットは凄まじく、最高! 分かっちゃ~いるけど、思わず熱くさせられる演奏がぎっしりですよ♪♪~♪
 
しかも、録音が1962年11月22日、コペンハーゲンでのライブセッションということは、何かと賛否両論はあろうとも、ジョン・コルトレーンが過激さの中にも「一定の文法」を大切にしていた頃という認識がサイケおやじにはありまして、つまりはイケイケで演じるオリジナル曲と和みの時間を提供する歌物スタンダードをひとつのコンサートの流れの中で披露していたところが、個人的には大好きなんですよっ!
 
それはいきなり容赦無く、まずは初っ端の「Bye Bye Blackbird」は誰もが一度は聴いたことのある有名スタンダード曲ですから、ジョン・コルトレーンも比較的分かり易いテーマ吹奏からのアドリブも、5分が経過した頃にはエルビン・ジョーンズもグルのなっての修羅場の真っ只中! かろうじてマッコイ・タイナーの溌溂としたピアノに救われるような気分にはなるものの、締め括りのテーマ吹奏が、これまた激しいメロディフェイクの世界に変質していくのですから、たまりません。
 
こんな地獄と天国が、21分超の演奏になっているのは、如何にも当時の勢いってやつでしょう。
 
説明不要とは思いますが、この曲はマイルス・デイビスも十八番にしていて、繊細で思わせぶりな歌心を披露していたわけですが、もしも自分のバンドでジョン・コルトレーンがここで聴かれるようなアドリブ展開をやってしまったら、御大はどのように対処するんだろうか……?
 
なぁ~んていうのは、余計なお世話!?
 
そしてさらに怖いのは、続けて始まる「Chasin' The Trane」のイケイケブルース攻撃で、このアップテンポのドシャメシャなフィーリングには、リアルタイムの聴衆も?然とさせられたんじゃ~ないでしょうか。
 
しかし、それが一方的とはいえ、狂乱狂熱の衝動を伝えてくれることは確かです。
 
また、クネクネとしたモード解釈に基づいた「The Inchworm」に続く、予定調和(?)のバラード演奏「Every Time We Say Goodbye」の心地良さは言わずもがなと思います。
 
ところが、またまた襲ってくるのが、これぞっ! コルトレーンジャズの代名詞ともいえるアップテンポの「Mr. P.C.」ですから、エルビン・ジョーンズのドカドカ煩い大車輪ドラミング、饒舌なマッコイ・タイナーのピアノ、どっしりと構えたジミー・ギャリソンのベースという子分どもの奮闘も顧みず、ひたすらに自らの魂を解放するが如きジョン・コルトレーンの咆哮には、ぐったりと疲れさせられますねぇ~、もちろん心地良くです♪♪~♪
 
そうした傾向は後半でも変りなく継続し、和みと情熱の危ういバランスをひたすらに追及する「I Want To Talk About You」は、まさにオンタイムのジョン・コルトレーンを象徴する歌物演奏だと思います。
 
また「Traneing In」は、1950年代後半からやっている変則的なブルース演奏でありながら、この時期になると基本は一緒ながら、解体と構成の比率と遣り口がズレているというか、アブストラクトな展開も不自然には聞こえないほどの逆説的統一感がバンドの纏まりとして表現されているような気がします。
 
ですから、いよいよクライマックスはジョン・コルトレーンの激烈モードを代表するオリジナル曲「Impressions」はお約束! もちろんオーラスはお待ちかねの「My Favorite Things」へ続く流れも、ジャズが「モード」という新兵器(?)を得て、世界で一番にヒップな音楽だった時代の表れでしょう。
 
ということで、簡単なご紹介ではありますが、如何にもジョン・コルトレーンらしい演奏を求めんと欲すれば、初めてその世界を体験される皆様にも、なかなか聴き易いところがありますので、これはオススメの音源です。
 
気になる音質は、モノラルミックスですが、同時期のジョン・コルトレーン・カルテットの発掘音源にはありがちだったピアノの音の薄さも、ここではそれなりにしっかり入っていますし、ドラムスもバランス良く録れていると思います。
 
もちろん、近年の高音質ブートに慣れているお若い皆様には???かもしれませんが、少なくとも1970年代からのリスナーやファンには、何らの問題無く楽しめるはずです。
 
ただし、「Traneing In」では途中で一瞬ですが、音が途切れますし、オーラスの「My Favorite Things」は強制終了で拍手を被せたとしか思えない編集が惜しいところ……。この点が以前から解消されていないのは残念ですが、それでもこれだけの凄い演奏に免じて、ど~か皆様もお楽しみ下さいませ。
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ドナルド・バード&ペッパー・アダムス組 vs ハービー・ハンコック・トリオ

2016-09-23 16:19:49 | Jazz
Complete Live At Jorgie's 1961 / Donald Byrd - Pepper Adams Quintet (Solar = CD)
 
これまたネットで注文していながら、既に3年以上も梱包を解いていなかったブツの中からのご紹介です。
 
それはドナルド・バード(tp) とペッパー・アダムス(bd) という、ハードパップ愛好者にはお馴染みのコンビが組んでいた実際のレギュラーバンドによるライブ音源集で、実は収録されている全5曲はアナログ盤時代にブートで聴かれていたトラックばかりなんですが、LP片面ずつという制約から、その全てが1枚物に纏められてはおらず、しかもレコードの塩ビ素材そのものが悪かった所為もあって、せっかくの力演が些か勿体無い扱いになっていた印象がありました。
 
ところが今回の再発では、CDというメディアの特質を活かしての全曲纏め収録は当然ですし、アナログ盤ではカットされたいたと思しきパートの復活(?)やデジタル作業による音質の改善が顕著ですから、いよいよじっくりと楽しめるのは高得点♪♪~♪
 
しかも録音がセントルイスの「Jorgie's」という店における1961年6月24日のライブステージで、メンバーは前述したとおり、ドナルド・バード(tp) &ペッパー・アダムス(bs) の双頭リーダー以下、ハービー・ハンコック(p)、クリーブランド・イートン(b)、セオドア・ロビンソン(ds) という顔ぶれは、まさにハードパップの王道から所謂新主流派への過渡期を踏まえた演奏を楽しませてくれますよ。
 
01 Jorgie's
 如何にも新主流派というムードが横溢したハービー・ハンコック以下のリズム隊が思わせぶりな露払いを演じた後、いよいよ登場するドナルド・バード&ペッパー・アダムスがやってくれるのは、1959年にブルーノートに吹き込んだ名盤アルバム「バード・イン・ハンド」に収録されていた「Witchcraft」だと思うんですが、いかがなものでしょう。
 と書いたのも、実はこのタイトルの曲は、ここでのライブセッションから約3ヶ月後にブルーノートでスタジオ録音が行われ、人気アルバム「ロイヤル・フラッシュ」に収録されていますが、なんとなくテーマメロディが異なっている印象が……。
 しかし、十八番のキメを使ったバンドの纏まりの良さがありますから、ドナルド・バードが緊張と緩和の構成を活かしたアドリブを展開すれば、ペッパー・アダムスもハード音色で迫ってきますが、やはり優先してハービー・ハンコックの新しい感覚に惹きこまれてしまうあたりは、後の歴史を知っていればこその感慨とばかりは言えないでしょう。
 また、クリーヴランド・イートンのベースワークも秀逸で、輪郭がはっきりしたピチカートプレイは必聴! この人は後にラムゼイ・ルイスのグループやカウント・ベイシー楽団でも活躍した名手なので、要注意かと思います。
 あぁ~、ミディアムテンポで、このテンションの高さが素敵ですねぇ~♪
 
02 6 M's (Blues In 3/4)
 タイトルどおり、変則テンポを用いたアップテンポのブルースということで、イントロからファンキーな雰囲気を提供するリズム隊に呼応するべくジワッと登場してくるフロントコンビのテーマ吹奏♪♪~♪
 もう、このあたりだけで気分はすっかりハードパップにどっぷりですよ♪♪~♪
 しかもドナルド・バードのアドリブは何時もの安心印、続くペッパー・アダムスも心地良いマンネリ感という和みの展開が、ハイテンションなリズム隊の勢いに押されていくという、これが実にたまらない展開で、出しゃばり寸前のハービー・ハンコックのピアノと手堅いツッコミで煽りまくりのセオドア・ロビンソンのドラミングには熱くさせられますねぇ~♪
 ちなみにこの曲も前述した「ロイヤル・フラッシュ」にスタジオレコーディングのバージョンが収録されていますが、そこでの落ち着いた感じのテイクに比べると、やはりライブならではの熱気が強く出ている結果はオ~ライ♪♪~♪ 嬉しくなります。
 
03 Hush
 これまた当時のドナルド・バード&ペッパー・アダムスの代名詞とも言うべきゴスペルファンキーなヒット曲ですから、堂々の盛り上げ演奏はお約束以上!
 もちろん、ここでもリズム隊の熱血な煽りは物凄く、極言すればガサツなところこそが黒人ジャズの魅力であるならば、ここではそれが全開でしょう♪♪~♪
 そしてさらに味わい深いのが、リズム隊だけの演奏となる終盤のパートで、ここではファンキーと新主流派の幸せな結婚というか、ソウルフルなピアノを披露するハービー・ハンコックが瞬時に勿体ぶったムードに転じたり、そこにドラムスとベースが入り込んでのハードパップに引き戻し作戦という鬩ぎ合いがニクイです。
 そして前曲同様、この「Hush」も件のアルバム「ロイヤル・フラッシュ」にスタジオバージョンが入っていますので、聴き比べも楽しいところです。
 
04 Amen
 そして続くのが、またまたゴスペルファンキーな人気曲♪♪~♪
 既に1959年にブルーノートの傑作人気アルバム「フェゴ」にて発表済みでしたので、おそらくは当時のステージでは定番プログラムだったと思われますから、例え手慣れた雰囲気があろうとも、聴いているこっちは、それこそが希望する高い満足度ってやつでしょう。
 当然ながら、ここでもリズム隊メインに聴いてしまうのがサイケおやじの本性であります。
 
05 Like Someone In Love
 オーラスは、そんな気分を増幅させてくれる絶妙のプレゼントとして、リズム隊だけのピアノトリオによる人気スタンダードの素敵な快演と書きたいところなんですが……。
 正直、ここまでの演目でのテンションの高さが些か感じられず、なんとなく普通っぽいのが物足りないところです。
 しかし、時代を考慮すれば、これはこれで新しいフィーリングが滲む演奏なんでしょうし、中盤のベースソロで何度か客席が湧くという、音だけ聴いていては分からない現場の雰囲気の良さは、如何にも日常的なライブの味わいでしょうか。
 ピアノトリオだけにしては10分を超える長い演奏ですが、それなりに退屈せずに聴けると思います。
 
ということで、全篇で57分弱の収録時間は、アッという間に聴かされてしまうほどで、本当のモダンジャズに接しているという気持ちにさせられました。
 
そしてジャケ写には特に「Featuring HERBIE HANCOCk」と記載されている事に偽りはありません。
 
つまりドナルド・バードとペッパー・アダムスは従来どおりでも、ハービー・ハンコックがリードしているであろうリズム隊の積極的な働きにより、新旧が見事に融合した演奏が熱いんですよっ!
 
音源としては決して新発掘ではありませんが、こうしてCD化されているのであれば、未聴の皆様には、この機会にぜひっ! とオススメしたく思います。
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蘇るジャズ者魂

2016-09-04 19:55:12 | Jazz
Sonny Rollins Trio & Horace Silver Quintet Zurich 1959 (TCB = CD)
 
さて、先日書いたとおり、借りているトランクルームの不備確認に赴いた機会に、ネット等々で注文していながら開封もせずに放置していたブツを幾つか持ち帰ったんですが、その中のひとつが本日ご紹介の発掘音源CDです。
 
なんとっ!
 
ソニー・ロリンズとホレス・シルバーという、モダンジャズ最盛期に圧倒的な人気と実績を残した名プレイヤーが、各々自らのバンドを率いての欧州巡業の最中、スイスのラジオ局のスタジオで放送用に残した音源をカップリングしてあるんですねぇ~~!
 
しかも録音データを確認すると、それが1959年3月5日なんですから、両者共に全盛時代の演奏が堪能出来るにちがいないっ!
 
というワクワク感は、まさに音楽を聴く喜びの助走に他なりません。
 
☆Sonny Rollins Trio
 01 I Remember You
 02 I've Told Every Little Star
 03 It Could Happen To You
 04 Oleo
 05 Will You Still Be Mine?
 まず前半はソニー・ロリンズ(ts) が率いるトリオの演奏で、他にメンバーはヘンリー・グライムス(b) とピート・ラロッカ(ds) が脇を固めているんですが、皆様ご存じのとおり、当時のソニー・ロリンズはさらに自由な発想でアドリブ主体の演奏を志していたという目論みからすれば、ここで聴かれる5曲は何れもがソニー・ロリンズの天才性を堂々と証明するトラックばかりです。
 もちろん、「自由な発想」と言っても、闇雲なフリージャズなんかに走る事は決してなく、ソニー・ロリンズならではのリズムの「外し」を用いたテーマメロディの柔軟な解釈や瞬間芸的に紡ぎ出されるアドリブフレーズの妙、さらには主題曲構造を決して逸脱せずにリスナーを仰天させるが如き、不意打ちの快感のような展開を堪能させてくれるあたりは、まさにモダンジャズの醍醐味を提供するソニー・ロリンズの存在証明でありましょう。
 そして演目それぞれについては有名スタンダードが4曲と自身の代名詞的なオリジナル「Oleo」ということで、その詳細は省かせていただきますが、アップテンポでドライヴしながら独特の歌心を発散させる「I Remember You」、緩急自在な「I've Told Every Little Star」 、中盤まで無伴奏ソロで聞かせるスローな「It Could Happen To You 」、豪放にして軽妙洒脱なユーモア感覚も交えた「Will You Still Be Mine?」には、わかっちゃ~いるけどノセられてしまうツボがきっちり刺激されてしまいますし、悠々自適な「Oleo」こそは、ソニー・ロリンズが演じてこその輝きが否定出来ません。
 また、共演のヘンリー・グライムスのベースワークも秀逸で、豪胆と繊細のコントラストが素晴らしく、同時にピート・ラロッカの叩き出すポリリズムっぽいドラミングのビートの芯をしっかりサポートする働きも侮れませんよ。
 ちなみにジャズ史的には、この巡業直後にソニー・ロリンズは活動を縮小停止しての所謂「雲隠れ」という転換潜伏期に入り、1962年録音のLP「(RCA)」で第一線に復帰してからはフリージャズも視野に入れた賛否両論の演奏形態に変化変身していることから、あくまでもハードパップというモダンジャズの最高に美しいスタイルが爛熟寸前で楽しめるここでの音源は、ソニー・ロリンズのファンならずとも、全世界のジャズ者には絶好のプレゼントだと思います。
 気になる音質もモノラルミックスながら良好で、実は音源そのものは昔っから出回っていたんですが、それはラジオ放送からエアチェックだったと推察も出来るほどの差異が感じられますので、この復刻CDは放送局に保存されていたマスターテープが用いられているのでしょう。
 あぁ~、こんなに素晴らしい演奏を披露していたソニー・ロリンズが一時的にせよ、逼塞してしまうなんて、当時の天才は何を考えていたのか、凡人のサイケおやじには不可解極まるのでした。
 
☆Horace Silver Quintet
 06 Nica's Dream
 07 Cool Eyes
 08 Shirl
 09 Ecaroh
 10 Senor Blues
 さて、こちらのホレス・シルバー・クインテットの音源も同日に録音された演奏で、メンバーはホレス・シルバー(p) 以下、ブルー・ミッチェル(tp)、ジュニア・クック(ts)、ジーン・テイラー(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という、今では夢の顔ぶれこそは、ホレス・シルバーが爆発的な人気を誇っていた時期の傑作LP「フィンガー・ポッピン(Blue Note)」レコーディング直後ということですから、ガッツ溢れる演奏はお約束、と書きたいところなんですが……。
 ど~にも、こちらの期待が大き過ぎたのかイマイチ、熱気に欠ける印象が否めません。
 実は、この前のソニー・ロリンズの演奏パートもそうだったんですが、放送用録音と云っても、決して公開セッションではなく、スタジオには観客が入っていないもんですから、そんな状況がマイナス方向へと作用していたとしたら、何かしら勿体無い気がするほどです。
 また演目もホレス・シルバーの代表曲のひとつとして以前以降何度も録音され、常にライブの現場でもやっていたであろう「Nica's Dream」はともかくも、「Cool Eyes」「Senor Blues」、そしてリズム隊だけで演じられる「Shirl」の3曲は、1956年11月に全く別なフロント陣で録られたLP「6 ピーシズ・オブ・シルバー(Blue Note)」からのプログラムですし、「Ecaroh」にしても、1950年代初頭に作られ、リーダー自身がこれまた何度かレコーディングも残しているという、つまりは当時のステージでは、このあたりが定番だったという真相が失礼ながら、今日のリスナーには手慣れた印象を与えているのかもしれません。
 しかし、それは同時に贅沢な戯言である事も確かであって、これほど安定したハードパップを現代で聴けるという僥倖は、そんなにあるもんじゃ~ないでしょう。
 やっぱり、文句をタレるのはバチアタリってもんだと、痛切に反省している次第です。
 
ということで、久々にガチンコで聴いたジャズは、やっぱり良いですねぇ~~♪
 
この勢いで、未開封のブツに手を伸ばしておりますので、追々にご紹介していきたいと思っています。
 
よろしくです。
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強烈に凄い! 全盛期ジャズメッセンジャーズの発掘音源!

2012-12-06 14:54:59 | Jazz

The Jazz Messengers At The Free Trade Hall 1961 (Head On Fire = CD)

実は最近、ジワジワとジャズモードに回帰しつつあるのがサイケおやじの本性です。

昨日も病院での検査帰りにソフト屋を急襲! 諸々ゲットしてきた中の1枚が本日ご紹介の発掘音源CDなんですが、なんとっ! リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) という全盛期ジャズメッセンジャーズによる1961年5月6日のリアルなライプが良好な音質で楽しめたんですねぇ~~♪

01 It's Only A Paper Moon
 有名な歌物スタンダードをモード的解釈で演じるという、当時のジャズメッセンジャーズ十八番の手法がいきなりの大爆発!
 なにしろイントロからの重厚なリフをバックにリー・モーガンが縦横無尽なアドリブをやってくれますからねぇ~♪ その後に出てくるお馴染みの原曲メロディが尚更に愛おしいのもムペなるかな、続くウェイン・ショーターの意味不明なソロ展開も、好きな人にはたまらない世界でしょう。
 もちろんサイケおやじも、その中のひとりとして、ここは発作的なシビれに、どっぷりと浸らせていただきました♪♪~♪
 しかし同時に凄いのはアップテンポで突進するリズム隊の骨太感!
 それゆえに再び登場するリー・モーガンの飛び跳ねフレーズの連発にしても、バンドとしてのグルーヴは決して揺るがないのですから、いゃ~、素晴らしい限りです。

02 Dat Dere
 当時のジャズ・メッセジャーズには欠かせなかったファンキー部門の担当者がボビー・ティモンズであるとすれば、本人自作のゴスペル節が自信たっぷりに披露されるのは自然の流れでしょう。
 ここでもどっしり重いハードバップのグルーヴと真っ黒なソウルフィーリングが全篇に横溢し、加えてウェイン・ショーターのテナーサックスがハードエッジなアドリブを演じれば、リー・モーガンがダークな思わせぶりから情念の噴出を聞かせてくれるのですから、これまた、たまりませんよ♪♪~♪
 ところが肝心のボビー・ティモンズのアドリブが短く、あっさりしているのが、ちょいと勿体無いです。せっかくリズム隊がグリグリに煽っているんですからねぇ……。

03 Are You Real?
 と思った次の瞬間、颯爽と始まるのが、ベニー・ゴルソン時代からの定番ヒットなんですから、思わずグッと惹きつけられるのはジャズ者の宿業でしょうか。
 スピードに乗ったテーマ合奏からウネウネと奇怪なアドリブフレーズを積み重ねていくウェイン・ショーター、直線的でありながら千変万化なリー・モーガン、その対象的な遣り口を演じてくれるフロントプレイヤーの存在こそが、予想を裏切るが如き抜群の相性を感じさせてくれるんですから、これぞっ! 全盛期の証のように思います。
 そして、ボビー・ティモンズの快調なアドリブ、終盤でのソロチェンジは言わずもがな、それを支える硬質なドライヴ感を提供するジミー・メリットのペースも流石の一言!

04 A Night In Tunisia
 これまた常にバンドの定番演目であった有名曲という事で、それは歴代メンバーの実力をリスナーが推し測る意味でも毎度のお楽しみ♪♪~♪
 結論から言うと、ここでのウェイン・ショーターの破壊力は強烈至極で、特にテーマ直後のブレイクの凄さは、とにかく聴いていただく他はありません。また、直線的にぶっつけてくるアドリブフレーズの面白みも、当時としては相当に破天荒だったと思われます。
 そして一方のリー・モーガンも、これまたハチャメチャにぶっ飛んだ存在感をアピールしまくりですよっ! これまでよりもテンポアップしたアンサンブルからアドリブパートまで、ジコチュウ全開なんですから、既に「お約束」となっている終盤の無伴奏ソロのマジギレも火傷寸前でしょう。
 う~ん、時の勢いってのは、こういう事だと痛感!

05 The Summit
 これはなかなかの曲者というか、ウェイン・ショーターが書いた最先端モードの演奏というわけですから、バンドの意気込みとは裏腹に観客の反応は、完全に新しいものを聴いているという感が、この音源録音状況からも伝わってきます。
 つまり非常にクールで熱いメンバー各々のプレイが、観客を圧しているような、ちょいと突っぱねた姿勢が散見されるというか……。
 しかし個人的には、これもリアルなジャズメッセンジャーズとして、大好きです。

06 Like Someone In Love
 という尖がった姿勢から一転、和みのスタンダード曲を柔らかくやってくれるのも、ジャズメッセンジャーズの魅力でしょう。
 ここではリー・モーガンの歌心、ボビー・ティモンズの上手い伴奏、そしてウェイン・ショーターの変態アドリブが見事な融合を聞かせてくれますよ♪♪~♪

07 Kozo's Waltz
 そしてオーラスは威勢の良いアート・ブレイキーのドラムソロからグイノリのモダンジャズが展開される、これがハードバップの保守本流という演奏です。
 あぁ~、こういうものが聴けるからこそ、ジャズの黄金時代はそこにあるっ!
 些か確信犯的なレトリックではありますが、エキセントリックなウェイン・ショーター、作者の強みを活かしたリー・モーガンの突撃ラッパ、親分の敲くワルツビートに強引とも思えるスイング感を付与するボビー・ティモンズ、その隙間を埋め、さらには自己主張も忘れていないジミー・メリット!
 まさにジャズメッセンジャーズの底力を堪能させてくれる演奏です。

ということで、演目はリアルタイムでブルーノートと契約していたジャズメッセンジャーズが、既に1960年春~秋に正式レコーディングしていたものが中心ですから、それ以前の十八番であった「Are You Real?」も含めて、手慣れた中にも前向きな勢いは存分に楽しめますよ。

気になる音質は全7曲で収録時間が約79分強ですから、正直に言えば音圧レベルが幾分低く、ベースとドラムスが目立つモノラルミックスではありますが、それゆえに迫力は充分だと思います。おそらくはラジオ放送用の音源だったのかもしれません。

いゃ~、今でもこんな素晴らしい発掘物が出るんですから、まだまだ世の中、捨てたもんじゃ~ありませんねぇ~♪

ジャズが好きで良かった♪♪~♪

心底、思っています。

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ウディ・ショウのモダンジャズ残侠伝

2012-07-03 15:55:48 | Jazz

Stepping Stones / Woody Shaw (Columbia)

連日の民主党ゴタゴタ騒動は、ついに昨日、至極当然ながら、思いっきり間延びした結末を迎え、国民を呆れさせましたねぇ。

まあ、民主党及び小沢グループ所属議員の支持者がどのように感じているのかは知る由もありませんが、一応は外側から見られるサイケおやじにとっては、もう、うんざりですよ。

特に一度は離党届を親分に提出しながら、土壇場でそれを取り戻しに行った恥さらしが二人も出たというんですから、いやはやなんとも……。

日頃から節操の無い自らを省みる事さえ忘れさせられる、そういう大義名分が与えられたポイントにおいては、まあ、失笑で済ませられるかもしれませんが、そんなわけですから、本日ご紹介の一途なガッツ溢れるモダンジャズ盤を聴いてしまうのも、頭よりは心、そして肉体そのものの欲求でしょう。

なにしろ演じているバンマスのウディ・ショウは、1960年代中頃から頭角を現した、所謂新主流派バリバリの看板トランペッターで、モード手法やフリージャズといった時代最先端の波に乗りながらも、ハードバップというモダンジャズが一番に「らしく」輝く味わいを大切にしていましたから、特に1970年代前半までの我国ジャズ喫茶全盛期はもちろんの事、クロスオーバーやフュージョンが人気を集めていた頃でさえ、発売される新譜には常に絶大な期待が寄せられる実力者でした。

そして本日ご紹介のアルバムは、1978年に勇躍登場したライプ盤!

録音は1978年8月5&6日のニューヨークは名門クラブのヴィレッジ・ヴァンガードのステージから、、メンバーはウディ・ショウ(tp) 以下、カーター・ジェファーソン(ts,ss)、アラン・ガムス(p)、クリント・ヒューストン(b)、ビクター・ルイス(ds) という、全員が頑固なまでにモダンジャズ保守本流に拘り抜いていた名手ばかりとあって、まさにガチンコの熱演が堪能出来ますよっ!

A-1 Stepping Stone
 如何にも新主流派が丸出しのモード系ハードバップの真髄がギュ~ッと凝縮された演奏で、アップテンポながら幾分不穏な空気を醸し出すテーマからメッチャ、カッコ良すぎるウディ・ショウのアドリブに突入していくトランペットのワンフレーズだけで、シビれが頂点に達するでしょう。
 しかも尚更に早いテンポで繰り広げられるアドリブパートの前半が、ウディ・ショウとカーター・ジェファーソンの掛け合いという展開で、たまりませんねぇ~~~♪ 当時のジャズ喫茶では、これが流れてくると店内のムードがグッと本物のジャズ喫茶らしくなるという、なんとも不思議な感覚に満たされたんですから、今になっても瞬時に熱くさせられてしまうサイケおやじの心情を御察し下さいませ。
 またリズム隊のハードなスイング感も素晴らしく、特に親分の盟友だったアラン・ガムスのピアノは変幻自在の伴奏からメリハリの効いたタッチでバリバリに弾きまくるアドリブは爽快ですし、手数の多いクリント・ヒューストンのペースにしても、決してピートの芯は蔑にしていません。
 さらにビクター・ルイスのドラミングが、これまた当時の学生バンドブレイヤーにも人気があったとおり、なかなか熱いエモーションを煽りたてるような真摯な敲きっぷりで、好感が持てますよ♪♪~♪
 もう、この初っ端だけで、アルバム全体の出来は保証されたというものです。

A-2 In A Capricornian Way
 演奏が始まる前に、おそらくはウディ・ショウ本人と思われるMCが入るんですが、これがなかなか落ち着いた話っぷりで、如何にも一途な人柄が偲ばれます。
 と書いたのも、実はご存じのとおり、ウディ・ショウは決して経済的に恵まれていたわけではなく、しかも晩年は視力の極度な低下も含む難病に犯され、非業の最期……、という現実を我々が知っているからに他なりません。
 実際、このバンドを率いていた頃でさえ、大手のコロムビアと契約していたのですから、流行のフュージョン系作品を作っても、それなりに素晴らしい成果を残せたと思えるのですが、そこへは走らず、常に己の信ずる4ビートがメインのモダンジャズしか演奏しなかった姿勢こそが、ファンを感銘させるひとつの要因になっていたわけで、これは決してサイケおやじの独断と偏見ではないはずです。
 で、あればこそ、本物と感じられるのが、このアルバムに入っている観客の熱の入った拍手歓声でしょう。
 そしてこの演奏にしても、前曲と同じくウディ・ショウの真っ当なジャズオリジナルという、些か堅苦しい雰囲気のモード手法が展開されていますが、ミディアムテンポの流れの中で、メンバー各人の個人技が鮮やかにキマッていくのは快感♪♪~♪
 もちろんウディ・ショウの早いフレーズ回しやハイノートの使い方には安心印のスリルが満点ですし、カーター・ジェファーソンのテナーサックスにしても、当然ながらコルトレーンのスタイルから大きな影響があるとはいえ、それに身を任せて聴き入ってしまうのは、やはりジャズ者が基本的に求めるものが、そこにあるからでしょう。
 その意味でアラン・ガムスは本当に上手くて、ちょいと慣れた耳にもハッとさせられる音の選び方は流石! 今日までの過小評価が惜しまれますねぇ……。
 それと個人的には当時から大好きだったクリント・ヒューストンの手数の多いベースソロも用意されていますが、こういう遣り口が忙しないとか、ちょいと無視されているのも、何か勿体無い感じです。

B-1 It All Comes Back To You
 アラン・ガムスが書いた、ボサロック系のモード曲で、こういうアフリカ色も滲む演奏は、例えばリアルタイムの渡辺貞夫あたりもやっていた、ひとつの流行りものでした。
 しかし、流石はウディ・ショウ組のやる事はブレないというか、カーター・ジェファーソンのソプラノにしても、またウディ・ショウのフリューゲルホーンにしても、自分だけの文法に沿った歌心は大切され、そこに妥協は一切無いと思われます。
 ちなみに、こういう雰囲気になると、ウディ・ショウとフレディ・ハバードの比較検証もあれこれあって、そんな論争をやっていた事も今は懐かしい思い出になっています。
 もちろんアラン・ガムスを含むリズム隊の良い雰囲気は、ジャズを聴く楽しみに他なりません♪♪~♪

B-2 Seventh Avenue
 ビクター・ルイスが書いた、これはなかなか硬派なモード曲で、流石はドラマーの作だけに、テンションの高いリズム的興奮が煽られますよ♪♪~♪ もちろんテーマアンサンブルにおける熱気が、そのまんまウディ・ショウのアドリブに引き継がれるのは言わずもがな、こういうバンド全体のグルーヴィなノリこそが、ジャズ永遠の魅力じゃ~ないでしょうか。
 思わず、それを痛感させられてしまいますねぇ~~~!
 またカーター・ジェファーソンのソプラノサックスが、これまたモードジャズ中毒患者には絶対的な快楽を提供してくれますし、ちょいと独得の浮遊感は侮れません。
 そして再び激ヤバなのが何時までも終りが見えないようなリズム隊の演奏で、極めて正統派をやっているアラン・ガムスを、ほとんどジャコ・パストリアスみたいな動きで翻弄するクリント・ヒューストンの対抗処置は、何かバラバラになりそうな気もするんですが、こういう暗黙の了解をビシッと纏めるのがビクター・ルイスのドラミングで、大技小技の駆使しながら、グイグイとバンドをノセていくのは、作者としての責任感以上の存在だと思います。

B-3 Theme For Maxine
 これは短い、僅か1分ほどの演奏で、おそらくはバンドチェンジのテーマなんでしょうが、タイトルからしてヴィレッジ・ヴァンガードの当時のオーナーだったマックス・ゴードンに捧げられた??
 そんな素朴な疑問も含めて、素晴らしいアルバムを締め括るアクセントになっています。

ということで、こんな痛快至極なライプ盤がフュージョン全盛期だった1978年に作られていた事実は重大!

つまり本物のジャズは決して死んでおらず、もちろんフュージョンが偽物ジャズとは申しませんが、少なくともリアルタイムの我国ではジャズ喫茶でも両者同列の扱いで、鳴らされている頻度ではフュージョンが多かった店もあった現実の前では、こういう真っ当な演奏こそが新しかったのです。

もちろんそれが後の所謂新伝承派という、4ビート再発見運動に繋がるんですが、その時になってもウディ・ショウは恵まれていたとは言えず、既に述べたとおりの窮状……。

なんか、真面目にやってバカを見たような受け取られ方さえあったのは、本当に哀しいばかりです。

しかし、だからこそ、ウディ・ショウは決して忘れられないし、過去を探索する新しいジャズファンの心を鷲掴みにする魅力に溢れた存在!

なによりもフラフラした真似をしない、美学とは一概に言えないかもしれませんが、確かな矜持は不滅だと思います。

そして、例えジャズが出来たとしても、今の永田町のボンクラどもには、こういう任侠精神の演奏は絶対に出来無い!!

そう、確信しております。

最後になりましたが、このアナログ盤にはちょいとしたミステリがありまして、まず「In A Capricornian Way」の項で述べた、演奏開始前のMCの「有る」「無し」の問題が!??

おそらくはプレス時期、あるいはマトリックス関連の諸々に起因していると思われますが、とりあえず現行CDには入っているという噂で、確認出来ずに申し訳ございません。

そしてもうひとつ、このLPのアメリカプレスのプロモ盤には、別テイクか別編集バージョンが入っているという噂もありましたが、これについてはサイケおやじの私有盤では確認出来ていません。

ただし現在では、この時のセッションのアウトテイクが海外盤CDに収められている実情から、やはりそれは「有り」だったのかもしれませんねぇ。

なかなか音楽を聴く喜びは尽きません。

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モーニングサービスのバド・シャンク

2012-04-15 15:43:25 | Jazz

Michelle / Bud Shank (World Pacific)

西海岸派のジャズプレイヤーとしては特に有名なバド・シャンクは、また同時にハリウッドポップスのセッションにも欠かせない優れた人材でしたから、所謂イージーリスニング物でもヒット盤を多数出しいてます。

特に本日ご紹介のアルバムは1967年頃に世に出た、まさにそうした中の代表的な1枚でしょう。

 A-1 Michelle
 A-2 Petite Fleur / 可愛い花
 A-3 Girl
 A-4 As Tears Go By / 涙あふれて
 A-5 You Didn't Have To Be So Nice / うれしいあの娘
 B-1 Love Theme, Umbrellas Of Cherbourg / シェルブールの雨傘
 B-2 Sound Of Silence
 B-3 Ture! Turn! Turn!
 B-4 Yesterday
 B-5 Blue On Blue

収録された上記演目は、リアルタイムでのポップスヒットであり、また永遠のスタンダード曲ばかりという構成ですから、ボブ・フローレンスによるアレンジも当時流行のボサノバ~ボサロックを基調にしたライトタッチのグルーヴが良い感じ♪♪~♪

しかも演奏にはバド・シャンク(as,fl) と同格に参加するチェット・ベイカー(tp,flh) のメロディアスなプレイが随所に聴かれるという、なかなか最初っからの狙いが鮮やかにキマっているんですねぇ~♪

ちなみにアルバムセッションに参加したメンツでジャケットに明確な記載があるのは前述の3人だけですが、もちろん脇を固めたのは当時のハリウッドではトップのスタジオ系ミュージシャンである事は、あらためて言うまでも無いと思います。

で、とにかく爽やかにして心地良い演奏は、A面ド頭に置かれたビートルズのリアルタイムでの代表曲「Michelle」から全開で、お洒落でアンニュイな原曲メロディがソフト&ジャジーなアレンジで彩られる時、バド・シャンクのアルトサックスはクールな色っぽさを表出させますし、オリジナルに忠実な裏メロをジェントルに吹奏してくれるチェット・ベイカーは流石の上手さですよ。

あぁ、もう、ここだけで辛抱たまらん状態なんですが、その意味でボビー・ヴィントンが1963年に歌った大ヒット「Blue On Blue」におけるストレートなジャズっぽさでは、バート・バカラック十八番の節回しを巧みなモダンジャズに解釈したチェット・ベイカーのアドリブが最高♪♪~♪

そしてもうひとつ、特筆すべきは全体のアレンジから濃厚に感じられる我国歌謡ポップスへの影響の大きさで、特に女性コーラスの使い方やバンドアンサンブルの中のリズムアレンジ等々は同時代以降の昭和歌謡曲や歌謡ムードミュージック、おまけにテレビ&映画サントラ音源に親しむほど、溜息が出てくるでしょう。

中でもビートルズの「Girl」やバーズの「Ture! Turn! Turn!」は、あの「Play Girl」の元ネタがミエミエですし、同じく「夜明けのスキャット」になっている「Sound Of Silence」、いずみたく~中村雅俊の「ふれあい」系「シェルブールの雨傘」には、おもわずニヤリですよねぇ~~♪

さらにボサロックアレンジの上手さという点では、シドニー・ベシェというよりもザ・ピーナッツの「可愛い花」やストーンズの「涙あふれて」が秀逸で、もちろんアドリブパートの出来過ぎも憎めません。

ということで、美女ジャケとしての価値観も含めて、如何にも和みの演奏集なんですが、こういうレコードが昭和の我国では普通の喫茶店あたりの定番BGMになっていましたですね。

なにしろサイケおやじにしても、学生時代の友人のアパートの近くにあった喫茶店にモーニングサービスを目当てに行くと、ほとんど毎回のようにこれが流れていて、実は告白すると、そこですっかり気に入ってしまい、店のマスターにレコードを教えてもらってゲットしたのが、掲載の1枚というわけです。

で、その所為でしょうか、今でもこのアルバムを聴くと珈琲とトースト、ゆで卵なんかが欲しくなってしまうというパブロフの犬なんですよ!? 我ながら失笑してしまいますが。

結局、それほど刷り込まれ易い作りになっている事の証なんでしょうねぇ。

モロジャズじゃ~無いことは全ての外観において一目瞭然ではありますが、虚心坦懐に楽しめるアルバムに違いはありません。

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