野暮用の追われた1日でした。
本当は映画観て、中古盤屋とかブート屋巡りをしたかったんですが……。本当に、ままならない人生というか……。
ということで、本日は――
■Bahia / John Coltarne (Prestige)
1950年代後半にプレスティッジに残されたジョン・コルトレーンの膨大な音源は、今日、歴史的な価値を有するわけですが、そこから製作されたアルバムは、玉石混合というのが正直なところです。
本日の1枚も、評価というか、好き嫌いが分かれる作品でしょう。
録音は1958年7月と&2月、ということは、同レーベルへの契約セッションとしては末期の音源ですから、続く上昇時代のアトランティック期に繋がる魂の萌芽が感じられるはずなのですが……。
メンバーはジョン・コルトレーン(ts) 以下、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)、ジミー・コブ(ds) 、ウィルバー・ハーディン(tp,flh)、フレディ・ハバード(tp) が入り乱れて参加しています――
A-1 Bahia (1958年12月26日録音)
アルバムタイトルになっただけあって、強烈な印象を残す名演です。ここでのメンバーはジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という気心の知れた面々なので、変則ラテンピートの定型リズムパターンと通常4ビートが交錯する展開も、自然体でハードバップに持っていけたという感じでしょうか。
そして何となくモード系の雰囲気も漂うあたりが新しくもあります。そのキモがジョン・コルトレーンの凄まじいシーツ・オブ・サウンド、つまり音符の洪水であるのは言わずもがな! スピード感溢れるスケールの連発と高音域での苦しそうな泣きが、興奮を誘います。
またレッド・ガーランドは何時もながらの玉を転がすようなピアノタッチから少し硬質なアプローチまで、ファジィなノリが味わい深いところです。
しかし本当に凄いのは、ベースとドラムスの安定感満点というグルーヴでしょう。特にアート・テイラーは出来上がっているリズムパターンから様々なバリエーションを敲き出しています。ポール・チェンバースのアルコ弾きは、言わぬが花……。
A-2 Goldsboro Express (1958年12月26日録音)
このアルバムの目玉演奏です!
前曲からレッド・ガーランドが抜けたトリオで演じられますが、アップテンポで、ほとんどが即興の進行であり、アート・テイラーとジョン・コルトレーンの死闘が強烈至極です! もちろんこれは、例の名盤「ジャイアント・ステップス」にダイレクトに繋がっています。
あぁ、これがジョン・コルトレーンです! 痛快&爽快! 聴く度に熱くさせられます。
A-3 My Ideal (1958年7月11日録音)
前曲で熱くさせられた気持ちが和んでいく会心の演奏というか、非常に上手いアルバム編集に拍手喝采です♪
曲は有名スタンダードで歌心優先の展開が心地良いかぎりですねぇ。
メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、ウィルバー・ハーディン(tp)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という珍しいクインテットですから、ジョン・コルトレーンもそれほど無茶はやっておらず、倍テンポ吹きも刺激がほどほどですし、何よりもテナーサックスのダークな音色に仄かな泣きがあって、良い感じです。
またリズム隊の落ち着きが流石というか、レッド・ガーランドには自分が楽しんでいるような雰囲気さえ感じられ、十八番のブロックコード弾きで押し通すアドリブは、もうこの人だけの「和み芸」で嬉しくなります。
またウィルバー・ハーディンは、アドリブの閃きはイマイチながら、そのハスキーな音色は魅力絶大という好演になっています。
B-1 I'm A Dreamer, Aren't We All (1958年7月11日録音)
あまり有名でないスタンダード曲を正統派ハードバップにしようと試みた演奏ではありますが、全体的にそれほどの冴えが感じられません。
メンバーは前曲と同じですが、失礼ながらウィルバー・ハーディンの精彩の無さが……。しかしジョン・コルトレーンはスピード感満点のシーツ・オブ・サウンドで突出した弾けっぷりです。
B-2 Something I Dreamed Last Night (1958年12月26日録音)
マイルス・デイビスが決定的な名演を残しているスタンダード曲ですが、それはジョン・コルトレーンが在籍していた時期のバンドでのセッションでありながら、自身は演奏から外されていたという屈辱を、ここで見事に晴らす快演を聞かせてくれます。
このあたりは、後年の名盤「バラード」に通じる味わいが既に感じられ、心地良いですねぇ~♪ またレッド・ガーランドの伴奏も名人芸ですが、ちなみにここでのメンバーはジョン・コルトレーン(ts)、フレディ・ハバード(tp)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) で、最後のパートで登場するフレディ・ハバードが未完成ながら溌剌として味のあるトランペットを披露してくれるのが、ミソです。
ということで、いろんな味が楽しめる幕の内弁当ではありますが、ほぼスタイルを完成させたジョン・コルトレーンは、やっぱり良いです。ちなみにジャケ写にはソプラノサックスを吹く姿がありますが、もちろんここでは吹いておらず、実はこのアルバムの発売が1960年代だったための詐術になっています。
ただし内容は充分に刺激的ですから、結果オーライの納得盤ではないでしょうか。