OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

J.J.ケイルの魔力に中毒

2012-09-07 13:42:53 | Singer Song Writer

Crazy Mama / J.J.Cale (Shelter / 日本フォノグラム)

所謂「渋いミュージシャン」が語られる時、必ずや登場するのが本日ご紹介のJ.J.ケイルでしょう。

また、1970年代前半に大ブームとなったスワンプロック云々で注目されるシンガーソングライターでもありますが、それはレオン・ラッセルやエリック・クラプトンとの関連によるものでした。

それは特にエリック・クラプトンの1stアルバムに収録され、シングルカットもされてヒットした「After Midnight」がJ.J.ケイルの作だったという真相から、その影響力が忽ちにして喧伝された事は今や伝説!?

なにしろ日本はもちろん、本国アメリカにおいても全く無名であったJ.J.ケイルが実は同じ頃、裏方から表舞台のスタアに転身していたレオン・ラッセルの古くからの盟友という履歴も良い方向に作用したのでしょう、ついには本格的なレコードデビューに至り、一躍時の人(?)になったのが1972年でありました。

本日掲載のシングル盤A面収録の「Crazy Mama」は、まさにそれを象徴する、全米チャート上位にランクされた大ヒット曲なんですが、それと知らずに聴いてしまえば、なんでこれが……???

と思わざるをえないほど、地味~~な歌というのが、率直な感想でしょう。

とにかく曲調は一応、ロケンロールの常套手段で作られているんですが、リズム&ピートがユルユルに緩く、さらにJ.J.ケイルの歌いっぷりが脱力の極みなんですねぇ~~。

しかもバックを務めているスライドギターに至っては、丸っきり欠伸をしているようなフレーズを弾いているほどです。

もちろん、それは狙ったものであることは言うまでもないでしょう。

当時の流行最先端であった「レイドバック」を象徴する歌と演奏でもあります。

そして聴くほどに妙な心地良さというか、蒸し暑い曇り空の下、真昼間から安いワインでも飲んで、木陰でウトウトしている感じとでも申しましょうか、それはレコードに入っている2分半に満たないトラックを何時までも聴いていたいという欲望を誘発させる、麻薬的な快感♪♪~♪

う~ん、ちょっと聴きにはダレダレの演奏に聞こえますが、しかしこれを同じフィーリングでやろうとすれば、実はしっかりと強靭なピートや流れないリズムの維持は容易な事ではありませんよねぇ~~♪

ちなみにJ.J.ケイル本人のギタースタイルは、ここではリズムプレイが主になっていますが、リードを弾いても、そのモヤモヤと煮え切らないフレーズと「間」の取り方は過言ではなく、一芸主義の極みつき!

あえて言わせていただければ、技術的に凄いとは思えませんが、なにか常識を外れたイントネーションやタイム感覚、カッコ悪いことがカッコ良いという感覚に近い変態性があるんじゃ~ないでしょうか?

それは例えばライ・クーダーがやっている事とは似ているようで、実は絶対的に異なる世界であって、そこまでの超人的なテクニックなんて必要とされない
スタイルながら、これまた絶対に真似出来ない個性だと思っています。

また、J.J.ケイルの曲作りや歌い方にも、それが大きく関与しているであろう事の推察も易く、確かに「Crazy Mama」以外のレコードを後追いで聴いてみると、ほとんど金太郎飴の如し!?!

ですから、本人が自然体で持っている唯一無二のフィーリングを「個性」という言葉で音楽性のウリにしている事は、なかなかの計画性があるんでしょうかねぇ~。

そして不思議なのは、エリック・クラプトンが影響を受けた云々という諸説は何か?

という点です。

もちろんギタープレイは違うでしょう。

また、ボーカルスタイルはデラニー&ポニーのデラニー・プラムレットと節回しが極めて良く似ている事が否定出来ません。

とすれば、全くJ.J.ケイルが作った楽曲そのものが気に入ったという真相が……!? ちなみに後年、やはりJ.J.ケイルのオリジナル「Cocain」をエリック・クラプトンがカパーして、自身の人気演目にしてしまった現実も!?

まあ、このあたりはレオン・ラッセル経由の「何か」があるのかもしれませんが、J.J.ケイルはレオン・ラッセルと一緒にハリウッドに出ていた時期もありながら、結局は故郷のタルサに戻り、1971年まではローカルな活動をやっていたそうですから、言わば一度の恵まれたチャンスを自分のものに活かせた、なかなかの幸せ者なんでしょう。

ということで、J.J.ケイルは既成概念にとらわれると面白くないミュージシャンかもしまれませんが、中毒性もアブナイほど!?

本質は、そういう「ヤバさ」を持ったミュージシャンだと思います。

最後になりましたが、掲載した私有盤は、後にサイケおやじが中古でゲットした、例によっての1枚なんですが、その時既に幾枚か出されていた本人オリジナルのLPを友人から借りたり、国営FMラジオ放送で聴いた時の脱力的肩すかし感が、これにはありません。

というか、収録時間が前述したとおり、2分半に満たないところが逆に集中力を高められる結果は、もっと聴いていたいなぁ~~♪ と思わせられたところで勝負有りって事でしょう。

それは完全にJ.J.ケイルの術中に落ちた……、その一言が全てなのでした。

コメント (2)
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