あぁ、今日はメチャクチャに不味い昼飯食いました。
その店の味も好みじゃなかったんですが、仕事絡みの食事会で、雰囲気は最悪……。腹の探り合いは、どうも自分には向いていないです。
ということで、本日は――
■Two Jims And Zoot / Jimmy Raney (Mainstream)
私にとって「震えがくる」という言葉にぴったりのアルバムが、これです。
それは狙って集められたメンバーの凄さ、演奏の凄みと妙味、さらに演目の不可思議さとベタなシャレのようなアルバムタイトル! 全てが私の琴線に触れています。
録音は1964年3月11&12日、メンバーはジミー・レイニー(g)、ジム・ホール(g)、ズート・シムズ(ts)、スティーヴ・スワロー(b)、オシィ・ジョンソン(ds) という、好きな人にたまらない面々ですから、これだけで「震えがくる」というわけです。
ちなみにジミー・レイニーとジム・ホールは共に白人のクール派ギタリストで、資質も似通っていますが、あくまでも青白い炎のような情熱のジミー・レイニーに対し、ちょっと難解な奥行きと優しさのジム・ホールというのが、私のイメージです。もちろん両者ともに素晴らしい歌心とテクニックの持ち主なのは、言わずもがな!
しかも間に入っているのが頑固一徹なスインガーのズート・シムズですからねぇ♪ 新感覚派のスティーヴ・スワローと色々なスタイルにも自在に対応する実力者のオシィ・ジョンソンというリズム隊も、強烈な存在感があります――
A-1 Hold Me
と、喜び勇んで針を落としてみると、これがモヤモヤして煮え切らない演奏……。一応ボサノバのようでもあり、新主流派のシャリコマ曲のようでもあり……。
左チャンネルにはジム・ホールとスティーヴ・スワロー、右チャンネルにはジミー・レイニーとズート・シムズ、オシィ・ジョンソンが振り分けられたステレオミックスも???
う~ん、先が思いやられるなぁ……、と思っていたら演奏は終わっていたという……。
A-2 A Primera Vez
ところが一転して痛快至極! 豪快にドライヴした演奏が始ります! しかもここからはズート・シムズが真ん中に定位したステレオミックスになっていますから、全体の音像がスッキリとして気分は最高♪ まずズート・シムズがリードする躍動的なテーマメロディがたまりません。続けて突入するアドリブも快調そのものです。
そして続くジミー・レイニーが流麗なフレーズを連発すれば、ジム・ホールは柔らかく温か味のあるハーモニーで対抗し、さらに互いのバックでは個性的なコードワーク♪ おまけに2本のギターの絡みにはゾクゾクさせられます。
またシャープでメリハリの効いたオシィ・ジョンソンのドラミング、ブンブンに唸るスティーヴ・スワローのベースが作り出す強烈なアップテンポの4ビートは、当にモダンジャズの醍醐味でしょう。あぁ、何度聴いても飽きません。
A-3 Presente De Natal
これも前曲と似た雰囲気の演奏です。
アドリブパートは先発がジム・ホール、次にズート・シムズを挟んでジミー・レイニーが登場して、場を盛り上げていきますが、個人的にはオシィ・ジョンソンのドラミング中心に聴いてしまいます。またスティーヴ・スワローの烈しいベースソロも、絶妙のスパイスになっています。
A-4 Morning Of The Carnival / カーニバルの朝
有名なボサノバ曲ですが、ここでは擬似ドドンパのような変態ビートの演奏になっています。
しかしジミー・レイニーがテーマメロディを絶妙にフェイクし、ジム・ホールのアドリブに入っては、もう歌心が溢れて止まらない展開になります。もちろんジミー・レイニーのアドリブも素敵♪
たたじ個人的には、ここでも2人のソロよりもバッキングに耳がいってしまうのでした。
A-5 Este Seu Olhar
アップテンポですが、不思議な安らぎのテーマメロディが素敵です。ズート・シムズの気楽な吹奏が良い感じ♪
しかしジム・ホールがアドリブを始めると緊張感が高まり、ズート・シムズのグルーヴィなノリがジャズの楽しさを痛感させてくれます。
またジミー・レイニーのクールなカッコ良さと妥協しないスティーヴ・スワローの存在感も見事! ちょっとマヌケたようなオシィ・ジョンソンのドラミングは奥が深いのでしょうねぇ……。
B-1 Betaminus
これまた強烈なビートで突っ走るアップテンポのバカノリ演奏です。オシィ・ジョンソンのドラミングが痛快なんですねぇ~♪
アドリブパートでは、まずジミー・レイニーが本領発揮のクール節を聞かせれば、ズート・シムズは豪快にハードバップしています。
しかしここでのハイライトは、続くジム・ホールとオシィ・ジョンソンの対決でしょう。本当にスリル満点の絡みからシャープなドラムソロに移行していくあたりは緊張感がいっぱいです。そしてそれがラストテーマの爽快さに繋がっていくのでした。
B-2 Move It
ジム・ホールが書いた過激なモダンジャズです。
というか、これは完全に新主流派のノリでしょう。オシィ・ジョンソのフリーを内包したドラミングも流石だと思いますし、ジム・ホールの自己満足的なギターソロにも、アブナイものを感じます。
しかしズート・シムズはマイペースですからねぇ、この一瞬の和みが眩しいかぎり♪ またジミー・レイニーは迷い道ながら、ちゃ~んと自分なりの文法を貫いているのでした。
クライマックスで堪能出来る2本のギターの絡みとコードワークも見事の一言です。
B-3 All Across The City
これもジム・ホールのオリジナルで、ちょっと幻想的なテーマが、なかなか魅力的です。スローな展開ながら、濃密なグルーヴが感じられるんですねぇ。メンバー全員の協調性と自己主張のバランスも素晴らしいと思います。
ちょっと意味不明のジミー・レイニーに対し、素晴らしい歌心を聞かせるズート・シムズ、さらに絶妙のコードワークが凄いジム・ホールという持ち味が楽しめます。
B-4 Coisa Mais Linda
良く知られたボサノバ曲で、ジミー・レイニーが一人舞台のギターソロから、いきなりアップテンポの4ビートに移る、その瞬間が賛否両論でしょう。ここは正統派ボサノバを聞きたかったのが私の本音です。
しかし各々のアドリブパートは余裕の展開ながら、決してダレていません。特にジム・ホールのコードワークが冴えた伴奏とか、ジミー・レイニーの流麗なソロ、さらにズート・シムズのグルーヴィなノリは流石だと思います。
また短いながらも強烈に新しいスティーヴ・スワローのベースも憎めません。
B-5 How About You
オーラスは有名スタンダード曲が軽快に演奏されます。あぁ、如何にもこのメンツに相応しいノリですねぇ~~♪
ジミー・レイニーは十八番のフレーズを大サービスしてくれますし、上手いアレンジで絡んでくるジム・ホールとズート・シムズも楽しいところです。
もちろんジム・ホールも穏やかな歌心が絶妙ですし、ソフトな音色でドライヴするズート・シムズも安心感があります。
そしてクライマックスは2本のギターの絡みなんですが、短いのが残念無念……。
ということで結論から言えば、なんとなくブラジル系と思われる曲が多く演奏されていながら、単なるボサノバジャズではなく、むしろ4ビート主体の正統派演奏集です。そしてキメのアレンジが痛快なところもあれば、秘められた過激な部分も侮れません。
ギター好きの皆様には、特に聴いていただきたい1枚ですが、個人的にはオシィ・ジョンソンのドラミングが摩訶不思議な痛快さで、強い印象となっています。