■Oasis / Jimmy Messina (Columbia)
いけないなぁ……、と思いつつも否定出来ないのが、所謂AORのソフト&メロウな世界ですよね。常にロック魂やジャズスピリット云々を力説しているサイケおやじにとっては、全く面映ゆいところなんですが、好きなんだからしょ~がねぇ、と無様な言い訳をしつつ、この季節になると聴きたくなるのが、本日ご紹介のアルバムです。
主役のジム・メッシーナはご存じ、ポコやロギンス&メッシーナで活躍したギタリスト&シンガーですが、曲作りや制作現場でのプロデュース力も高く評価される才人ということで、古くはバッファロー・スプリングフイールド末期に暗躍したことも忘れられません。
しかし表面的には常に脇役という印象が強く、前述したロギンス&メッシーナ解散後は相方のケニー・ロギンスがフュージョンサウンドを活かした意欲的な人気アルバムを出し続けていたのは対照的に、しばらくの沈黙期に入ってしまったのは残念でしたから、ついに1979年になって発表した、このソロアルバムは、如何にも「らしい」爽快なジャケ写同様、実に鮮やかな仕上がりでした。もう、サイケおやじは聴いた瞬間、シビレっぱなし♪♪~♪
A-1 New And Different Way
A-2 Do You Want To Dance
A-3 Seeing You
A-4 Free To Be Me
A-5 Talk To Me
B-1 Love Is Here
B-2 Waitin' On You
B-3 Lovin' You Lady
B-4 The Magic Of Love
まず、爽やかなラテンフュージョンサウンドを堪能させてくれる「New And Different Way」が如何にも1979年! ライトタッチのボーカル&ギターソロ、気持良すぎるエレピのアドリブ、さらにリミッターをかけたと思しきドラムスの強いビート♪♪~♪ ほとんど我国の松岡直也にも通じるフィール・ソー・グッドな世界です。
そして続く「Do You Want To Dance」は、丸っきりボズ・スキャッグスが十八番のパターンを借用したAORとソウルミュージックの幸せな結婚ですが、ジム・メッシーナの節回しは決して黒くありません。まあ、そこがイヤミにならない秘訣でしょうか。
さらに「Seeing You」は、これぞっ、ソフト&メロウの極みつきとでも申しましょうか、曖昧な中にもフックの効いた曲メロ、それを見失ったかのように浮ついて歌うジム・メッシーナの深遠な目論見が、色彩鮮やかな演奏パートと完全融合した傑作トラックだと思います。
で、この冒頭からの三連発にアルバム全体の趣向が集約されているのですから、後は一気呵成に聞き流すというか、実際、春先から初夏にかけてのドライヴとか、リアルタイムで流行り始めたカフェバーなんていうお洒落な場所には定番でしたねぇ~♪
ところがオーラスの「The Magic Of Love」は、ある意味での悪いクセというか、妙にプログレや硬派フュージョンを意識したような長尺演奏……。こういう試みはロギンス&メッシーナ時代からの得意技とはいえ、個人的には???
とはいえ、それすらも後味は爽やかです。
ということで、各曲を解説するまでもなく、いずれもどっかで聞いたようなメロディとアレンジが効いていますから、聞き流すところに気持良さが収斂していく感じです。
まあ、そのあたりを姑息と決めつけるか、匠の技と受け取るかによって、このアルバムの意味合いは違ってくると思いますが、私は好きです。
もちろんジム・メッシーナならではの乾いた音色で淡白なギターソロも楽しめますし、なによりも優秀なスタジオ系ミュージシャンを使いこなしたプロデュースの力量共々、AORのブームにトドメの一撃が、これでした。
今となっては多少の思い入れが無いと聴けないかもしれませんが、サイケおやじは今日も車の中で鳴らしているのでした。