さて、今日から6月ですねっ。時の流れが早いです。
1日を大切にと思っても、最近、なんとなく流されて気味……。
それじゃ、今までは充実していたのか?
と自問しても、結局は流されてここまで来たわけですが……。
ということで、今日は、これです――
■Best Coast Jazz / Clifford Brown All Stars (EmArcy)
ジャムセッションはジャズの華! アドリブが優先される音楽ですから、あたりまえかもしれませんが、ステージでは良しとするものの、最初からレコード化する目的のスタジオジャムになると、一部のファンからは安易だっ! と顰蹙……。
しかし頑なな製作方針を守らんがために、こじんまりとしたスタジオ録音盤になってしまうよりは、自然体のミュージシャンの姿が楽しめるんじゃないでしょうか?
だいたい、モダンジャズ全盛期の1960年代前半までは、スタジオでも一発録りが主流でしたから、あながちジャムセッション盤が格下ではないでしょう。
さて、本日のアルバムは、不滅の天才トランペッター=クリフォード・ブラウンをメインにしたジャムセッション盤という体裁ですが、実は発売されたのが、クリフォード・ブラウンの死後だと言われていることから、製作側の意図が見え隠れしています。
録音されたのは、マックス・ローチとの双頭バンドのスタジオセッション最初期と同じ頃です。つまり、製作者側はとにかくこの天才を1音でも多く記録しておきたかったのでは……? 私がプロデューサーだったら、間違いなくやってしまいます。
で、録音は1955年8月11日、メンバーはクリフォード・ブラウン(tp) とマックス・ローチ(ds) をメインに、ハーブ・ゲラー(as)、ジョー・マイニ(as)、ウォルター・ベントン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、カーティス・カウンス(b) という、西海岸ハードバップの精鋭が集っています――
A-1 Coronado
自然体のファンキーフィーリングが滲み出たケニー・ドリューのピアノがイントロとなって始るリフブルースです。ちょっと入りがモタレたマック・ローチが珍しいところでしょうか。直ぐに炸裂する、テレ隠しのような張り切りが微笑ましいです。
アドリブパートでは、まず細身のナイフのようなジョー・マイニのアルトサックスが鋭く魅力的! もちろんチャーリー・パーカー直系のフレーズ展開で迫っていますが、所々にアート・ペッパーっぽい雰囲気が滲んでいます。
そして続くのがクリフォード・ブラウン♪ ただし、出だしがちょっと遠慮気味なんですねぇ……。するとマックス・ローチが直ぐに激烈な煽りを繰り出して、クリフォード・ブラウンが目覚めたかのように火を吹く流麗なフレーズの嵐! う~ん、でも、やや雑でしょうか。
しかし次に出るハーブ・ゲラーは豊かな音色のアルトサックスで見事です! その艶ややかなフィーリングは、このセッションのハイライトかもしれません。
またテナー・サックスのウォルター・ベントンは、如何にも黒人らしい黙々とした労働感覚がありますねぇ。それほど多彩なフレーズは出していませんが、途中で誰かが、思わず歓喜の声を出しているほどですから、ノリは熱いです。
それとケニー・ドリューの真っ黒なピアノとグリグリに弾けるカーティス・カウンスのベースには、本当に黒人にしか出せないグルーヴを感じます。マックス・ローチのビシバシドラムスは言わずもがなですねっ♪
演奏はそれぞれに烈しくアタックの強いリフが重なったりして盛り上がりますが、クライマックスはホーン陣のソロチェンジです! それは最初8小節で始まり、4→2→1と短くして、何と最後には半小節にまで凝縮される意地の張り合いです! やや不調だったクリフォード・ブラウンも、ここでは絶好調の輝きですねぇ~~~。
マックス・ローチの暴れも、爽快です!
B-1 You Go To My Head
こちらは一転して、スタンダード曲を素材にしたスローバラードでの好勝負♪
まずケニー・ドリューが無伴奏で雰囲気を作りますが、インテンポしてからはジョー・マイニがお馴染みのテーマメロディをフェイクしつつ、独自の歌心を聞かせてくれます。それはズバリ、男の涙、でしょうか、泣いています。
するとウォルター・ベントンが悠々自適の男の世界を表現してくれます。幾分もっさりした音色とフレーズ展開ではありますが、ここぞっ、で泣くというキメがきちんとあるんですねぇ~。サブトーン寸前のソフトな音色も聞かせたりして、素晴らしい好演だと思います。あぁ、何度聞いても、シビレます♪
また続くハーブ・ゲラーが、これまたイカシています。一応、正統派ビバップフレーズで勝負しているんですが、この人にもまた、アート・ペッパーの影響が見え隠れしているのが、味わい深いところでしょうか。
そしてお待たせしました、いよいよ登場するクリフォード・ブラウンは、全てが「歌」という、間然することのないアドリブを聞かせてくれます。あぁ、これが即興でしょうか!? 相当に細かいフレーズの連なりは緩急自在のビート感に溢れ、伴奏のリズム隊とのコンビネーションも完璧ですし、優しさと強さを併せ持った、あの有名な私立探偵のフィリップ・マーロゥのようです。もちろん感傷的なところも、満点なんです♪ 特に13~14分にかけてのノリと、その後の展開は、もう奇跡の瞬間だと思います! 完全に虜になってしまいますねぇ~~~♪
というフロント陣を支えるリズム隊では、やはりマックス・ローチ! ブラシ、ステック、マレットを自在に操って、非常に丁寧なビートを敲き出していますから、ジャムセッションとはいえ、最後までダレない演奏が完成しているのでした。
ということで、片面1曲ずつの長尺演奏集ですが、聴いていて気持ちが良い仕上がりです。
一般に西海岸ジャズは軽いとか白いとかで、必ずしも本物ではないという風評がありますが、ちゃ~んとハードバップが存在していたという証のような演奏ですねっ♪
個人的には、このアルバムを聴いてから、ウォルター・ベントンというテナーサックス奏者が気になって、いろいろと探索したのですが、残された録音は多いとはいえません。それゆえに、このジャムセッションには愛着があるのでした。
ちなみにAB面が逆に表記された盤もあるという噂ですが、真偽は?