■Barbara Ann / Beach Boys (Capital / 東芝)
今年も、やっぱり暑くなりそうですねぇ。というよりも、既に暑くなっていますが、気がつけば今年も半分まで来ています。
さて、そんな夏といえば、やっぱりビーチホーイズが永遠の定番でしょうか。
本日ご紹介のシングル盤は、私が初めて買ったビーチボーイズのレコードで、それは昭和41(1966)年のことでした。
A面は、バ~バ~バ~、バーバラア~ン♪ という実に楽しいコーラスと、その場しのぎっぽい陽気なボーカルが一緒に歌えるという、最高にヒット性感度の高い楽曲で、これは彼等がスタジオライブ形式で作り上げたアルバム「Beach Boys' Party!」からのシングルカットでした。
ご存じのように当時のビーチボーイズは全盛期でありながら、同時にある種の「壁」にもぶつかっていた頃で、その「壁」こそがイギリスから世界を征服していたビートルズの存在だったことは言わずもがなでしょう。
しかしビーチボーイズの面々は、実はビートルズのファンでもあり、それゆえにバンドの中心人物だったブライアン・ウィルソンは意識過剰……。
さらにレコード会社からは、クリスマス商戦用のアルバムを要求され、ついに苦肉の策となったのが前述の「Beach Boys' Party!」だと言われています。
その内容はレコーディングスタジオをホームパーティのようなムードにし、実際に彼等の家族や友人を招き入れ、皆で飲み食いしながら、ビーチボーイズが好きな歌を演奏し、そのまんまをレコード化するという、ポップスの分野では、それまで誰もやったことのなかった試みでした。
もちろん歌と演奏は自分達のオリジナルヒット以外にビートルズやボブ・ディランの曲までも歌ってしまうという、まさにビーチボーイズという偉大なバンドの矜持を疑われるような企画でしたが、そのファジーな感覚が実に楽しく、目論見どおり、アルバムは大ヒットしています。
そしてその中でオーラスに演じられていたのが、この「Barbara Ann」で、オリジナルは Regents というグループが1961年に放ったヒット曲のカバーなんですが、ここでのビーチボーイズの歌と演奏は、その場の雰囲気を大切にしたノーテンキなノリが最高だったことから、レコード会社側がビーチボーイズには無断でシングルカットしたところ、Regents のバージョン以上に大ヒット! 以降、ビーチボーイズのステージでは必須の演目となるのですが、さらに驚いたことには、ここでのリードボーカルがレギュラーメンバーではなく、ジャン&ディーンのディーン・トーレンスだったんですねぇ~♪
もちろんリアルタイムで、この曲を聴いていた少年時代のサイケおやじには、そんな裏事情は知る由もありませんでしたが、それにしても、ここでのタガの外れたような楽しさは永遠に不滅♪♪~♪ バ~バ~バ~、バーバラア~ン♪ と歌いながら過ごした日々は、今も継続しています。
ザ・フーのドラマーだった故キース・ムーンの愛唱歌としても有名ですよね♪♪~♪
ちなみにビーチボーイズは、この昭和41年1月に来日公演を行っていますが、当然、そのライブでも「Barbara Ann」は歌われていたそうですよ。残念ながら、私はそれを体験していませんが、実際に会場へ行った友人のお兄さんの話では、前座のスパイダースの方が歌も演奏も上手かったと聞かれされ、妙に納得したものです。なにしろ、この「Barbara Ann」を聴く限りでも、ギターなんかはチューニングが怪しいし、コーラスもテキトーだし……。
まあ、このあたりのユルユルな楽しさが、ビーチボーイズのひとつの魅力なのかもしれませんね。
しかし当時のバンドは、中心人物のブライアン・ウィルソンが巡業には同行せず、曲作りとレコーディングに没頭していた頃で、もちろん来日もしていません。そしてその作業こそが、名盤「Pet Sounds」を生み出すセッションだったのですが、それはビートルズに対抗するためのビーチボーイズが意地の傑作というのが、今日の定説でしょうか。
ただし現実的には、この「Barbara Ann」が大ヒットしてしまったことにより、シンプルな楽しさではビーチボーイズのイメージに合わない「Pet Sounds」は、ブライアン・ウィルソン以外のメンバーやレコード会社、さらには大衆からもリアルタイムでは受け入れられなかったのが、歴史上の事実です。
その意味で、この「Barbara Ann」は相当な罪作りかもしれませんね。
現在では、その「Pet Sounds」は神格化されたアルバムになっていて、私もそれを否定することはありませんが、反面、やはりビーチボーイズは、それ以前の陽気なイメージこそが輝かしく、最高だったのも真実でしょう。
そして、この「Barbara Ann」はアルバムバージョンを上手く編集したシングルバージョンなので要注意!
またB面の「Girl, Don't Tell Me」は前作アルバム「Summer Days」で既に発表されていた、実に確信犯的なビートルズ模倣曲の決定版! おそらく元ネタは「涙の乗車券」でしょう。リード・ボーカルは珍しくカール・ウィルソンですし、パックもスタジオミュージシャンではなく、ビーチボーイズのメンバーだけで演奏されたものだと思います。何よりもビーチボーイズを特徴づけるコーラスが無いのも、決定的な証拠という雰囲気が素晴らしい♪♪~♪
ということで、夏はやっぱりビーチボーイズ♪♪~♪
ストライプのシャツが眩しいぜっ!