仕事場でも風邪をひいている者が多く、また来客も同様です。
頼むからうつさないでね。
と祈りつつ、本日は――
■We Free Kings / Roland Kirk (Mercury)
黒人ジャズメンはブルースが上手くて当たり前と思われがちですが、モダン期になると、案外そうでもない人が増えてきます。
これはブルースといえども、ストレートなコードからわざと逸脱しての自己主張とか、平たく言えばカッコづけがモダンジャズの真髄かもしれないという行動?
逆に徹底的にブルース、あるいはファンキーR&Bに拘った者も大勢いたのですから、不思議な気分です。
さて、本日の主役、ローランド・カークはご存知のように盲目であり、自分で考案したリード楽器を駆使してのアクロバット的な演奏がウリでしたから、その大道芸人的な部分はライブが魅力的でしょう。ですからスタジオで作られたレコードはイマイチ、そういう芸風が楽しめないのですが、このアルバムはブルースに拘ったところから、素直な仕上がりかと思います。
録音は1961年8月16&17日、メンバーはローランド・カーク(ts,stritchk,Manzello,fl,per)、リチャード・ワイアンズ(p)、ハンク・ジョーンズ(p)、アート・デイビス(b)、ウェンデル・マーシャル(b)、チャーリー・パーシップ(ds) という手堅い人選です――
A-1 Three For The Festival
A-2 Moon Song
A-3 A Sack Full Of Soul
A-4 The Haunted Melody
A-5 Blues For Alice
B-1 We Free Kings
B-2 You Did It, You Did It
B-3 Some Kind Of Love
B-4 My Delight
――という演目では、「You Did It, You Did It」が圧倒的に素晴らしいです! ローランド・カークが自作のスローブルースなんですが、フルートによる呻くような吹奏に加え、所々で聞かれるローランド・カークのボーカルが、フルートから流れる音色と渾然一体になって、あぁ、ぶる~す! もちろんこれは多重録音ではありません。演奏時間は、わずかに2分半ほどですが、この濃密なブルースの味わいは、本当にたまりません♪ これ1曲だけで、このアルバムをゲットする価値があると断じます。
またステージでは定番の「Three For The Festival」は、これがオリジナルのスタジオバージョンながら、躍動的なリズム隊に煽られ、ローランド・カークが十八番の多重管一斉吹きやフルートによるアドリブがスリル満点! チャーリー・パーシップのドラミングも最高です。
それと正統派ハードバップを自己の芸風で変形させていく「Blues For Alice」や「My Delight」、ゴスペルファンキーな「A Sack Full Of Soul」はモダンジャズの王道路線♪
もちろん哀愁感満点の「Moon Song」や「Some Kind Of Love」もローランド・カークのウリですからねぇ♪ とにかくアルバム全体が間然することのない仕上がりで、アッという間に聞き終えてしまうのです。
ローランド・カークの代表作は、これかもしれません。