OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

本家より好き

2008-01-10 16:59:43 | Weblog

Hotwax誌からの原稿依頼で、苦しんでいます。

というか内容は私の大好きなロマンポルノの名作紹介なので、本心はウキウキなんですが、文字数制限が厳しいので……。

なかなかブログのように気ままには書けませんねぇ……。

ということで、本日は――

The Vice‘Pres’/ Paul Quinichette (EmArcy)

アメリカでは大統領選挙が動き出しましたが、ジャズ界の大統領といえば、レスター・ヤングでした。そして副大統領と呼ばれたのがポール・クイニシェットです。

もちろんレスター・ヤングのスタイルを、まんま、受け継いだモダンスイング派のテナーサックス奏者で、流麗な歌心と本家に対する素直な憧れが魅力的です。

しかしその楽歴は1940年代においてR&Bのバンドで活動していた所為か、単にレスター・ヤングの物真似にならない、独特の黒っぽさと歌心が私の大好きなところです。

正直言うと、本家のレスター・ヤングよりも好きなのです。

もちろん、そうした実力とスタイルを買われて、1950年代前半には、カウント・ベイシー楽団の花形として入団・活躍しています。

このアルバムは、その当時のリーダーセッションを纏めたもので、当然ながらカウント・ベイシー楽団での同僚・精鋭が集っています。

そして、もう一度告白すれば、私はここに参加している天才ギタリストのフレディ・グリーンが、本当のお目当てだったのです――

1951年10月5日録音:Paul Quinichette Sextet
 A-1 Cross Fire
 A-2 Sandstone
 A-3 Prevue
 A-4 No Time

 メンバーはポール・クイニシェット(ts) 以下、ビル・ドゲット(org)、ケニー・ドリュー(p)、フレディ・グリーン(g)、ジミー・ルイス(b)、ガス・ジョンソン(ds) という魅惑の面々♪ ポール・クイニシェットの初リーダー録音と言われています。
 ビル・ドゲッドはジミー・スミス以前にオルガンの巨匠だった名手で、ジャズとR&Bの境目からラウンジ系の演奏までも得意としていた人気者でした。アレンジャーとしても優れていましたから、ここでは縁の下の力持ちだったという推察も可能です。
 肝心の演奏は、なんといってもカウント・ベイシー楽団から参加したリズム隊が素晴らしく、そこへ既にして真っ黒なケニー・ドリューの擬似ハードバップピアノが加わっているのですから、たまりません♪
 エグイ音で録音されているフレディ・グリーンのリズムギターも絶品ですし、全4曲にはスイングを超越した黒いフィーリングが滲み込んでいます。
 そしてポール・クイニシェットが滑らかで柔らかい歌心で歌いまくりですから、本当にたまりませんねっ♪
 演目は「No Time」だけがブルースで、他は有名スタンダード曲のコード進行をいただいたオリジナルとなっていますが、要所で上手くコードを変えているのがミソでしょうか。う~ん、それにしても「No Time」でのフレディ・グリーンは凄いですねぇ~~~♪

1952年1月30日録音:Paul Quinichette & His Orchestra
 B-1 The Hook
 B-2 Samie
 B-3 Shad Roe
 B-4 Paul's Bunion
 B-5 Crew Cut
 B-6 I'll Always Be In Love With You

 このセッションがまたまた強烈至極で、メンバーはバック・クレイトン(tp)、ディッキー・ウェルズ(tb)、ポール・クイニシェット(ts)、カウント・ベイシー(p,org)、フレディ・グリーン(g)、ウォルター・ペイジ(b)、ガス・ジョンソン(ds) という、まるっきり当時のカウント・ベイシー楽団からのピックアップ&同窓会という感じです♪
 まず「The Hook」がアップテンポで豪快にウネル演奏で、ポール・クイニシェットも徹底的にレスター・ヤングの役割を演じていますが、その豪快さは本家を凌ぐ黒っぽさ! リズム隊のノリも最高です。
 こうした楽しさは、この日のセッション全体に言えることで、フレディ・グリーンの凄いリズムギターがバッチリ録音されていますから、何度聴いても飽きません。
 またカウント・ベイシーのオルガンも、実に良い感じで、特に「Samie」は名演でしょうねぇ~♪ 唯一のスタンダード曲「I'll Always Be In Love With You」も素晴らしすぎて、涙がボロボロこぼれます。

1952年6月録音:Paul Quinichette & His Orchestra
 A-5 P.Q. Blues
 A-6 Bot Bot

 メンバーはジョー・ニューマン(tp)、ヘンリー・コーカー(tb)、マーシャル・ロイヤル(as)、アーニー・ウィルキンス(as,ts)、ポール・クイニシェット(ts)、チャーリー・フォークス(ts)、ボビー・タッカー(p)、フレディ・グリーン(g)、アル・マッキボン(b)、ガス・ジョンソン(ds) という、これも当時の擬似カウント・ベイシー楽団です♪
 しかし演奏は驚異というか、「P.Q. Blues」はファンキーどっぷりというブルースになっていて、ポール・クイニシェットはズート・シムズか!? という雰囲気です。
 それは「Bot Bot」でも同様で、目隠しテストならズート・シムズという答えが頻発するかもしれません。しかし音色とフレーズの柔らかさはポール・クイニシェットだけの個性であって、さらに演奏のキモが真っ黒という独自の個性が、たまらんのですねぇ♪
 もちろんここでもフレディ・グリーンのギターが大活躍♪ これも素晴らしい!

ということで、演目は全てがSPかEPのフォームですから、3分前後のトラックばかりですが、録音バランスの良さは特筆物ですし、仕上がりの密度は濃厚です。

特にフレディ・グリーンのギターが、本当に理想的に聞こえてきますから、ファンは納得して感涙でしょう。

一部、アナログ盤の時間的制約から、セッション順に聞けない欠点はありますが、この演奏の素晴らしさがあっては、それも気にならないと思います。

これは皆様に、ぜひとも聴いていただきたい、楽しい1枚です。

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