OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

圧巻の黄金三角!

2008-01-14 16:13:55 | Weblog

今日は寒いですね。

連休を終わって勤務地に戻ってみれば、辺りは真っ白な雪景色! 借りている家に辿り着けば、車を入れるために庭を除雪して疲れてしまいました。

そこで癒しの鑑賞は――

Please Send Me Someone To Love / Phineas Newborn Jr. (Contemporary)

ここ数回、拘っているステレオミックスのリズム隊トライアングルについて、それではピアノトリオ盤ならばと出してきたのが、本日の1枚です。

メンバーはフィニアス・ニューボーン Jr.(p)、レイ・ブラウン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、当に黄金の三角形ですから名演は当然のお約束! ちなみに録音は1969年2月12&13日とされています――

A-1 Please Send Me Someone To Love
 R&B歌手のパーシー・メイフィールドが1949年にヒットさせたブルース歌謡曲♪ 泣きのメロディと黒いフィーリングがたまらない名曲を、フィニアス・ニューボーンは華麗なテクニックで味わい深く演奏しています。
 寄添いながらも執拗に絡み、しかも的確な伴奏に撤するレイ・ブラウンも素晴らしく、地味ながらメリハリの効いたドラミングのエルビン・ジョーンズは、流石の存在感! スローなテンポでジンワリと醸し出される魂の演奏は、なんとも洒落た仕上がりになっています。
 ちなみにステレオのミックスは左にレイ・ブラウン、真ん中にフィニアス・ニューボーン、そして右にエルビン・ジョーンズという定位ですが、良く聴くとピアノは低音が右寄り、高音は左寄りという広がりの録音になっているようです。

A-2 Rough Ridin'
 エラ・フィッツジェルドが十八番にしていた歌物ビバップ曲ですから、ここでもアップテンポで奔放にスイングしまくるトリオの演奏が楽しめます。
 と言っても、決してハメを外したわけではなく、きちんと起承転結をつけたあたりに物足りなさを感じるのも事実……。ただしフィニアス・ニューボーンは両手ユニゾン弾きの連発連打で、お約束を打開しようと大奮戦! エルビン・ジョーンズも熱いので、ついつい音量を上げてしまうのでした。

A-3 Come Sunday
 デューク・エリントンが書いた大傑作曲で、厳かな雰囲気と優しいメロディが魅力ですから、フィニアス・ニューボーンもそのあたりを充分に考慮した演奏を聞かせてくれます。
 う~ん、淡々とした中にディープなソウルを感じさせるピアノが凄いですねぇ~~♪ 特に最初のワンコーラスは完全な無伴奏ソロピアノでじっくりとメロディを弾き、続く部分からはレイ・ブラウンとエルビン・ジョーンズが入ってきますが、ここからは華麗なテクニックで素晴らしいアドリブが展開されるのです。
 凄い名演だと思います。

A-4 Brentwood Blues
 レイ・ブラウンのベースがアドリブとイントロを兼ね、エルビン・ジョーンズの粘っこいブラシが冴えたところで登場するフィニアス・ニューボーン!
 このトリオが演奏するブルースは本当にモダンジャズの真髄かもしれません。もちろん両手ユニゾン&バラバラ弾きを駆使して山場を作るフィニアス・ニューボーンが全体をリードしているのですが、三角形の底辺はベースとドラムスがあってこその安定感でしょう。
 中盤からスティックに持ち替えながらも余計な手出しをしないエルビン・ジョーンズは、分かっていると思います。ですからフィニアス・ニューボーンのダイナミックなビアノが心底、楽しめるのですよ♪

B-1 He's A Real Gone Guy
 エルビン・ジョーンズを中心にラテンビートも入れた豪快な演奏で、烈しい3者のエモーションが爆発しています。
 とにかく疾走するフィニアス・ニューボーン、豪放に敲きまくるフィニアス・ニューボーン、全力で蠢くレイ・ブラウンという理想のトリオ演奏で、特にエルビン・ジョーンズは豪快無比! ドラムソロのところで気がつくのは、シンバルやタム&スネアが右チャンネルに在りながら、バスドラが左チャンネルから聞こえることで、これが演奏に広がりを感じさせる録音のミソというわけでしょうか。
 まあ、それはそれとして、エルビン・ジョーンズの意外な繊細さも感じられる快演! スカッとします。

B-2 Black Coffee
 そしてこれが決定的な名演です。
 曲はご存知、サラ・ヴォーンやペギー・リーの代表的な名唱が残されている歌物ですが、インストバージョンでは、このトリオ演奏が個人的に大好きです。
 じっくりと重いビートを出すレイ・ブラウンとエルビン・ジョーンズ、絶妙なコード解釈を聞かせるフィニアス・ニューボーンという構図は、名演の必要充分条件ですねっ♪ バカテクに裏付けられた過激で華麗なアドリブフレーズも嫌味無く楽しめるのでした。

B-3 Little Niles
 さらにこの演奏も素晴らしい!
 曲はランディ・ウェストンが書いたジャズワルツなんですが、テーマメロディに秘められた濃密な幻想性を力強く解釈したフィニアス・ニューボーン以下のトリオは、豪快で深遠な名演を披露していきます。
 とにかく美しい雰囲気は圧巻で、しかもジャズの恐さとか悪魔性までも表現していると感じます。

B-4 Stay On It
 ディジー・ガレスピーのビバップオーケストラが十八番にしていた楽しい名曲ですが、このトリオはオスカー・ピーターソン風に解釈するという、実に憎たらしいことをやっています。
 豪快にスイングするフィニアス・ニューボーンのピアノは、テクニック&歌心、そしてスイング魂までもがオスカー・ピーターソンとは似て非なるものなんですが、もちろん両者には共通する天才性がありますからねぇ~♪ 爽快な演奏はお約束ながら、納得して歓喜の仕上がりを素直に楽しむしかありません。
 エルビン・ジョーンズなんか、演奏を楽しんでいる風情さえ感じられますよ。

ということで、実に楽しく、濃密な作品です。個人的にはB面を愛聴していますが、もちろんA面も捨てがたく、つまりは名盤♪

ちなみにこのセッションは、久々にフィニアス・ニューボーンの病が癒えた時期を選んで行われたものらしく、2日間で全15曲が吹き込まれ、残りは「ハーレム・ブルース」というアルバムとなって後に発売されましたが、個人的にも甲乙つけがたい出来だと思います。

なによりもリーダーを盛り立てんとするレイ・ブラウン&エルビン・ジョーンズの協調性が美しいです。本音としてはエルビン・ジョーンズのドラムスが、もっと前に出たミックスなら最高だと思う瞬間もあるのですが、やっぱりこれで正解でしょう。あぁ、名盤♪

そして気になる録音は、このレーベルらしいスカッとした音とミックスが気持ち良く、しかしジャケットには「Produced and recorded by Lester Koenig」とされているのが??? ロイ・デュナンは、どうしたのでしょう? バスドラの音が歪みっぽいのは、その所為でしょうか……。

しかし、この豪快なトライアングルの演奏は圧巻ですから、やっぱり素直に楽しみましょうね。何度聴いても、飽きないアルバムのひとつです。

欲を言えば、モノラル盤を聴いてみたいですね。

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