■名前のない馬 / America (Warner Bros. / ワーナーパイオニア)
サイケおやじは所謂「二番煎じ」が嫌いではありません。
というか、映画でも「続」や「新」、あるいは「PRAT-2」が相当に好きですから、それは音楽の世界でも柳の下のなんとやらが大好きなのです。
そして、とくれば、本日の主役たるアメリカはご存じ、CSN&Yの味わいを強く受け継いだ人気3人組として、ご紹介のシングル曲「名前のない馬 / A Horse With No Name」で世界的に大ブレイクしたのが1972年でした。
もちろんそれは我国でも同様で、ちょうど歌謡フォークと生ギターのブームが合致したこともあり、昭和47(1972)年の洋楽ラジオ番組ではチャートのトップを独走するという異常事態! なにしろ当時はレッド・ツェッペリンやディープ・パープル、マウンテン、グランドファンク、フリーあたりのハードロックの直球ど真ん中が絶頂でしたからねぇ。
と同時に、キャロル・キングやジェームス・テイラー、ドン・マクリーン等々のシンガーソングライター組も人気を集め、当然ながらCSN&Yのメンバー各人も大活躍していた頃ですから、こういう「二番煎じ」が堂々の登場となったのは、明らかにブームの流れが変わったことを感じさせました。
それは実際、まるで定番ボサノバの「One Note Samba」の如き抑揚の無い曲メロとシンプルすぎるアコギのカッティング、さらに虚無的なボーカル&コーラスが特徴的なわけですが、これが当時の若者の風潮だった「三無主義」と絶妙にリンクしていたという感じも、今はしています。
しかし演奏そのものは用意周到に組み立てられたもので、軽快なパーカッションと印象的なエレキベースの使い方は、後のフォーキーロック路線に繋がるものでしょうし、何よりも気だるいコーラスワークがCSN&Yとザ・バーズを足して、さらにビートルズの隠し味で仕上げたような、丸っきり王道ポップスファンの琴線に触れまくりのスタイルになっています。
ちなみにアメリカのメンバーはジェリー・ベックリー(vo,g,b,key)、ダン・ピーク(g,vo)、デューイ・バネル(g,vo) という高校時代の学友トリオで、しかもアメリカ人でありながらイギリスからデビューしたという、ちょいと面倒くさいキャリアがあるのですが、それゆえに「名前のない馬」を含むデビュー作のセッションはイギリスで行われています。
とすれば、スタイルはアメリカ西海岸風ながら、どこか霧に霞んだような、あるいは重心の低いロックビートの感じさせ方とか、やはり同年にデビューするイーグルスも最初の公式レコーディングがイギリスだったことを思えば、所謂「1970年代のウエストコーストロック」はイギリスにルーツがあるという、実に納得するのに時間がかかる学説さえ浮かんでくるのです。
そして既に述べたように、グループとしての音楽性にはビートルズの味わいが隠しようも無く、それはこのシングルヒットを含む最初のアルバムに色濃く滲んでいるわけですが、そうした「全て分かっている楽しみ」というのは、意外に心地良いものです♪♪~♪
さらに穿ったことでは、二番煎じの個性というか、それは良いとこ取りかもしれませんが、一説にはロックの進化は1969年の大晦日で終り、以降は順列組み合わせとする意見も肯定出来るところでしょう。
ということで、本日も理屈っぽくなりましたが、この「名前のない馬」ように、素直に好きなものだけやって成功するのは羨ましい限りです。
二番煎じ、万歳!
最後になりましたが、B面集録の「カリフォルニアの仲間 / Everyone I Meet Is From California」はアルバム未収録曲だと思いますので、要注意!
そういうところも、当時のシングル盤ならではの楽しみなのでした。
アメリカの名前のない馬も当時の民放ラジオで四六時中これでもかって言うほど、かかってました。
あとフォークロックと言えるかどうか分かりませんが、個人的にCCRのサムデーネバーカムズ等大好きでしたし、ソフトロックと言われてたブレッドの曲など等、、、
そんな流れの一方でT.REXに代表されるお化粧ギラギラのグラムロックと、、まさしく静と動のロックが同じ土俵にあった時代で、
リスナーもそういった音楽を同時に何の違和感もなく聞いてた時代だったのではないでしょうか?
ビートルズが解散してまだ2年ほどと言うこともあり後期のレットイットビーなどラジオでまだよくかかってました。
S&G特集等と銘打たれ「明日に架ける橋」もよくビートルズのレットイットビーと比べられてかかってましたね。
地元のラジオ局のKBC九州朝日放送で毎週土曜日ビッグサタデーと言う番組がありまして、
そのテーマ曲で「♪ザ、ビッグサタデー」歌いだすところはもろアメリカかCSN&Yをパックったようなメロディでした。
やはり時代の空気と言うものを反映させるものですね!!
コメントありがとうございます。
そうそう、時代の空気♪
今となっては大切にしたいですよね。
仰るとおり、1972年は洋楽のひとつの全盛期だったと思います。本格的なロック、シンガーソングライター、ポップスやニューソウル等々がラジオではひとつのヒットチャートで存分に聴けましたから♪
と同時に、そんな影響をモロに受け、そのパクリにニヤリとさせられた歌謡曲やフォークが、所謂ニューミュージックに転化していく分岐点だったかもしれませんね。
良い時代でした。