■Underground Fire / The Ventures (Liberty / 東芝)
A-1 Fire
A-2 ワイルドでいこう / Born To Be Wild
A-3 Sunshine Of Your Love
A-4 The Weight
A-5 ハートに火をつけて / Light My Fire
A-6 Down On Me
B-1 Underground Fire
B-2 E・マイナーの残り火 / Embers In E Minor
B-3 草原の海 / Sea Of Grass
B-4 Higher Than Thou
B-5 Up, Up And Down
B-6 田舎者のカチカチ頭 / Country Funk And The Canned Head
最近の訃報と云えば、やはりベンチャーズに在籍していたギタリストのジェリー・マギーも、天国へ召されましたですねぇ……。
洋楽ファンの中には「ベンチャーズの」というよりは、むしろ凄腕のセッションプレイヤーとしてのスタジオの仕事、殊更スワンブロック系のレコードに聴かれるプレイこそが神髄という評価がコアなマニアの証明みたいになっておりますが、しかしベンチャーズでの活動が決してアルバイト的なものではなかった事は、世界中の共通認識と確信するところです。
もちろん、ベンチャーズでは前任がノーキー・エドワーズという一座の大スタアでありましたから、ライブの現場でも、また新しく発売されるレコードにおいても、常に比較され続けたという不利な状況は避けえない現実でした。
しかし、ジェリー・マギーがレギュラーメンバーとなって以降のベンチャーズが、確かに第二期黄金時代を築いた事も確固たる事実です。
それは殊更日本では昭和40年代後半のベンチャーズ歌謡の大流行は言わずもがな、リアルタイムで発売されていたベンチャーズ名義のアルバムが、そりゃ~確かに売り上げは落ちていたでしょうが、そのジェリー・マギーを迎えた事による新しい魅力は決して蔑ろにされるものではありません。
例えば本日ご紹介のLPは1969年に発売された意欲作で、タイトルどおり、当時はアングラとの関連も密接だった所謂ニューロックな演目に拘った演奏集!
説明不要とは思いますが、メンバーはドン・ウィルソン(g)、ボブ・ボーグル(b)、メル・テイラー(ds)、そして新参のジェリー・マギー(g) に加えて、実際にレコーディングされた演奏には正体不明のオルガン奏者の活躍が強い印象を残しています。
それはA面ド頭が今も人気のアーサー・ブラウンの「Fire」から全開で、そのオリジナル演奏が基本的にオルガンロックでしたから、ここでもメインのギターサウンドのバックで暴れるオルガンはお約束ながら、しかしスピードに乗ったギターインストの魅力はきっちり楽しめるんですねぇ~~♪
イントロ前(?)の掛け声も、ちゃ~んとオリジナルを意識していて憎めません♪♪~♪
またメル・テイラーのハッスルしたドラミングもニューロックには違和感無く、ジェリー・マギーのリードギターがロック最先端を感じさせるスペーシーな響きと粘っこいノリを聴かせてくれるのですから、たまりませんよ ♪♪~♪
それはオルガンロックの代表的なヒット曲、ドアーズの「ハートに火をつけて / Light My Fire」にも顕著で、オリジナルを意識したオルガンがメインで活躍するとはいえ、キメのリフから入っていくギターのアドリブソロはニューロックがド真ん中のソウルジャズ風味がニクイところでしょうか、ジェリー・マギーの本気度の高さは侮れません。
しかし、それでもベンチャーズが本来の魅力を失っていないのがステッペンウルフの「ワイルドでいこう / Born To Be Wild」のリズム的興奮を煽るギターアンサンブルの凄さであり、大いに気になるクリームの「Sunshine Of Your Love」は流石に長尺なアドリブパートは出ませんが、ジェリー・マギーのギタープレイはエリック・クラプトンに見事な挑戦状を提出しているんじゃ~ないでしょうか。少なくともクリームのオリジナルスタジオバージョンをここまで堂々とインスト化出来るのは、ベンチャーズだけでしょう。ボブ・ボーグルもメル・テイラーも負けていませんよっ!
さて、そこで巷間常識的に語られるジェリー・マギーのスワンブロッカーとしての魅力は、ここではザ・ハンドの「The Weight」のカバーで流石の冴えを聴かせてくれますよ。多重録音によるダブルトラックのギターソロとか、たっぷりと雰囲気を作ってくれるピアノの伴奏もクリソツで楽しいです。
そしてジャニス・ジョプリンの「Down On Me」ではヘヴィなビート感を押し通すベンチャーズのロック魂がイイ感じ ♪♪~♪
で、ど~してもここで書いておかなければならないのが使用楽器、特にギターについては明らかにベンチャーズの代名詞たるモズライトでは無い事が聴いているうちに必ずや納得されるはずで、特にジェリー・マギーが弾いたであろうリードギターはギブソン系と推測する他は無いほどですし、もしかしたら「レスポール」か「335」あたりかもしれません。またカントリーロック系のリックを弾いている時はテレキャスターっぽい感じが確かにあり、これはドン・ウィルソンのリズムギターも同様のような気がしていますが、いかがなものでしょう。
ちなみに来日公演のステージショットやサイケおやじが実際に接したライブギグでのジェリー・マギーは、レスポールの他にファイアーバードも使っていましたですねぇ。
それとジェリー・マギーのピッキングはサムピックを用いたフィンガーピッキングが主体ではありますが、当然ながらフラットピックも使っているのかもしれません。
そんなこんなを思いつつ、ベンチャーズのオリジナルで固めたB面こそは、まさにニューロックなインストばかりという、感じ方次第では早すぎたフュージョンでもあり、ソウルジャズのニューロック的解釈でもあろう、当時としてサイケデリックな雰囲気も彩にした相当に進んだ演奏が徹頭徹尾、楽しめますよ ♪♪~♪
当然ながらサウンドの作り方そのものにしても、様々なエフェクターを使ったり、多重録音の面白さやリズムパターンの変化の付け方等々、本当に頭脳的なプレイが各所に聴かれますし、それでいて何よりもベンチャーズらしさを大切にした伝来の魅力が、聴くほどに伝わってくるんですねぇ~~♪
ただし、ここまで偉そうなことを書き連ねたサイケおやじにしても、このアルバムに覚醒したのは翌年末の事で、告白すれば新しくジェリー・マギーが入った昭和43(1968)年の来日公演から作られ、年末に発売されたライブ盤「イン・トーキョー」に違和感が隠し切れなかったもんですから、続けて翌年春に出たこのLPには不吉な予感がしていましたし、実際にレコード屋の店頭で聞かせてもらった時には、それがB面であった所為もあり、ほとんど???の気分でありました。
ところが同時に発売された「Fire」と「ワイルドでいこう / Born To Be Wild」がカップリングされたシングル盤を友人から借りて聴いているうちに、これはっ!
と思わざるを得ませんでした。
そこで苦心惨憺、ど~にか中古で入手できた掲載盤に針を落とせば、そこにはニューロックなベンチャーズが確かに存在し、このバンドの十八番であるインストによるカバーバージョンの魅力と共に、しっかり組み立てられたオリジナル曲の演奏には凄みすら感じたほどです。
ちなみに後に知ったことではありますが、アメリカで発売されたオリジナルのLPは、この日本盤とはA面とB面が逆になっており、曲の配列も異なっていますし、ジャレットデザインも大きく違いますので有注意!
ということで、1971年の夏、ジェリー・マギーが在籍していたベンチャーズの来日公演にサイケおやじは意気揚々と出かけ、実は初めて接するベンチャーズのフルコンサートでしたから、大いに楽しんだんですが正直、このアルバム「Underground Fire」からは「ワイルドでいこう / Born To Be Wild」と「ハートに火をつけて / Light My Fire」そして「Fire」ぐらいしか演奏してくれず、残念な気持ちが残りました。
それでも大きくテンポアップされていた「Fire」、また「Classical Gas」でジェリー・マギーが大名演を聴かせてくれたのは、今も大切な思い出であります。
ということで、不遜な事ばかり書いてしまいましたが、ジェリー・マギーが偉大なるギタリストであったという真実は不滅!
報道によれば来日公演のスケジュールの最中に体調を崩し、そのまま帰らぬ人となったそうで、もしも故人が日本に対して並み以上の好感を抱いていたとしたら、以て瞑すべしというか、ひとつの幸せな人生だったのでしょうか……。
ありがとう、ジェリー・マギー、また、会おう!
合掌。
SIDE ONE
①アンダーグラウンド・ファイアー
②E・マイナーの残り火
③草原の海
④ハイアー・ザン・ゾウ
⑤アップ・アップ・アンド・ダウン
⑥田舎者のカチカチ頭
SIDE TWO
①ワイルドでいこう
②サンシャイン・オブ・ユア・ラブ
③ザ・ウエイト
④ハートに火をつけて
⑤ダウン・オン・ミー
⑥ファイアー
US盤はこの頃からMONO盤が無くなりSTEREO盤オンリーの発売となってます。
但しイギリスではMONO盤とSTEREO盤の両方が発売されてファンの人は皆さん喜んでます。
☆もちろんUS & UK盤は全く同じです。