午前中はオヤジバンドの練習、午後からは観桜会というスケジュールでした。
残念ながら午後から時折チラチラと雨が落ちてきましたが、ダンダンダンと盛り上がったのは良かったです。
ということで、本日は――
■Saturday Mornig / Sonny Criss (Xanadu)
ソニー・クリスほどジャズ喫茶が似合うプレイヤーもいないと思います。
そのスタイルはチャーリー・パーカー直系という黒人アルトサックス奏者なんですが、リアルタイムではジャズのガイド本で紹介されることも稀でした。しかしジャズをある程度聞き込んでいる愛好者、つまりジャズ喫茶族を虜にする魅力満載の演奏やアルバムを、しっかりと残していたのです。
さて、このアルバムはそんなソニー・クリスが、我国で本格的にブレイクするきっかけとなった1枚です。
録音は1975年3月1日、メンバーはソニー・クリス(as)、バリー・ハリス(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、レニー・マクブラウン(ds) というシブイ本格派が揃っています。
ちなみに製作のザナドゥというレーベルは、ジャズ評論家でありマニアでもあるドン・シュリッテンによって当時創設されたばかり! しかもウリが本格的モダンジャズということで、1970年代に蔓延っていたジャズロック~クロスオーバーに対抗する真正4ビート作品がジャズ喫茶では歓迎されていたのです。
そしてその決定打になったのが、このアルバムでした――
A-1 Angel Eyes
マット・デニスが作ったモダンジャズでは名曲の中の大人気曲です。
そのキモは愁いを含んだ「泣き」のメロディにありますが、ここでのソニー・クリスはそのあたりを踏まえ、尚且つ、自らの資質である幾分「クサイ泣き」を存分に聞かせてくれます。
とはいって、その持ち味たる大袈裟なところが、ここにはありません。
実はソニー・クリスという人は正統派ビバップを継承していながら、野放図というか投げっ放しバックドロップというか、とにかく派手な吹き流しが特徴で、それゆえに好き嫌いが烈しい恨みがあります。
なんというか吹き過ぎなんですねぇ……。
ところが、ここでは見事に抑制された感情の吐息とでも申しましょうか、ジンワリと滲む哀しみのような「泣き」が見事です。まさに日本人好み♪ あぁ、このテーマメロディの歌わせかたは、唯一無二の忍び泣きです。
もちろんアドリブパートに入っても絶妙のサブトーン、また艶やかな高音域のコントラストが素晴らしく、自らの悲しみを振り絞るようなところにグッときます。
さらにバリー・ハリスのサポートが絶品です。録音の按配が如何にも1970年代という空虚な電気増幅があったりしますが、それが逆に幸いしたようなリズム隊の存在感も、ここでは良いと思います。
あぁ、ラストテーマで、私はまたまた、泣いてしまいます。
A-2 Tin Tin Deo
ラテン系ハードバップの名曲を下世話に解釈した名演です。
ここでもソニー・クリスはサブトーンを駆使したテーマメロディを下卑た音色で大衆的してしまうという裏ワザを出してしまいますが、本当にたまらん世界!
そしてアドリブに入ると本性ムキ出しというメチャ下品なフレーズの洪水です。あぁ、韓流ドラマの男性主人公のような、大袈裟に泣きまくり!
このあたりが日本人の感性に合わなかったのが「昭和」でありました。
しかしそこはバリー・ハリスが、グッと感情を押し殺したクールな熱演で帳消しにするのでした。
A-3 Jennie's Kees
ソニー・クリスが書いたスローなブル~ス♪
イントロからバリー・ハリスが雰囲気満点にピアノを鳴らせば、ソニー・クリスはソフトで黒~いアルトサックスの真髄を聞かせてくれます。う~ん、この素敵なフレーズの連続には心底シビレますねぇ~♪ クサイ思わせぶりもキマッています。
さらにバリー・ハリスが、良いんです。ただ、ただ、良いとしか言えませんねっ♪
B-1 Saturday Mornig
ここから始まるB面が、当時のジャズ喫茶では定番でした。
その初っ端からソニー・クリスが思わせぶりたっぷりの吹奏、そして哀愁満点のテーマメロディ、それを絶妙にフェイクして忍び泣きするんです。これでシビレないジャズ者はいないでしょう!
バリー・ハリスも流石のアドリブですし、かなりグイノリになっているリズム隊もシンプルで素晴らしいと思います。
終盤でのソニー・クリスは、もう薬籠中の名演! 気分はすっかりジャズ喫茶です♪
B-2 My Heart Stood Still
これは何故かソニー・クリスが抜けたリズム隊だけの演奏になっています。つまりピアノトリオでバリー・ハリスが十八番を演じたというわけですが、どうやらソニー・クリスが先に帰ってしまったという気まぐれがあったようです。
しかしアルバム全体からすると、このトラックが抜群のアクセントになってしまったんですから、結果オーライでしょう。如何にも1970年代らしい録音を楽しむ(?)というのも、今となってはオツなものです。それは電気増幅されたベースの音であり、妙に分離が良すぎるドラムスの音であり、時代に逆行したような安っぽいピアノの響きなんですが、演奏そのものは極上です♪
B-3 Until The Real Thing Comes Along
これが悲しみに満ちたスタンダードの隠れ名曲ですから、ソニー・クリスにはぴったりの選曲です。
烈しい感情を迸らせるテーマ解釈の妙は何度聴いても最高ですし、その艶やかでソフトな音色も大変に魅力的♪ もちろんアドリブも絶品で、全てが「歌」というフレーズは、早い音符の羅列さえ、単なるスケール吹きではない世界です。
そしてバリー・ハリスが、ここでも本当に良いです♪
大袈裟じゃなくて、涙がボロボロ……。
ということで、人気盤が多いソニー・クリスですが、まずはこれから!
ちなみに私には、これでソニー・クリスに目覚め、過去のアルバムを集めまくった前科があるのですが、結局はこれに帰るという放蕩なのでした。
韓流スターの情報を集めていて自分でもサイトを作ってしまいました
もしよろしければ遊びに来てみてくださいね
ほんとに涙をボロボロと流しますよね。