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サイケおやじの生活と音楽

ミンガスジャズの醍醐味

2007-10-12 16:03:11 | Weblog

う~ん、今日は仕事の信義を踏みにじられるような出来事がありました。自分の信条に照らし合わせて、これは絶対に許せん事なんですが、ここで怒れないのがビジネスのツライところ……。哀しいものがあります。

ですから、今日は怒りのこれを――

Mingus Ah Um / Charles Mingus (Columbia)

ジャズ界最高の怒れる男はチャールズ・ミンガスでしょうか。とにかく我侭に自分を押し通し、徹底した白人社会嫌いなのに、自分の妻は白人だし、バンドレギュラーにも白人を入れているという自己矛盾した姿に共感を覚えます。

また作り出す音楽は、黒人教会のゴスペルをデューク・エリントン風のサウンドで彩った膨らみが特徴的で、既にハードバップだとかフリーだとかの要素を1950年代から超越していました。

ズバリ、それがミンガスサウンド!

で、このアルバムは全盛期に吹き込まれた濃厚な1枚です。

録音は1959年5月5&12日、メンバーはチャールズ・ミンガス(b) 以下、ジミー・ネッパー(tb)、ウィリー・デニス(tb)、ジョン・ハンディ(as,cl)、シャフィ・ハディ=カーティス・ポーター(as,ts)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ホレス・パーラン(p)、ダニー・リッチモンド(ds) というコワモテ揃い! もちろん全曲がミンガス親分の作編曲です――

A-1 Better Git It Your Soul (1959年5月5日録音)
 この時期のチャールズ・ミンガスを代表するゴスペルモダンジャズで、もちろんステージでは定番になっていた傑作曲です。
 不気味なイントロから重厚なホーンアンサンブルで演奏される熱血のテーマメロディには、思わず腰が浮きますねぇ♪
 アドリブパートではジョン・ハンディ、ホレス・パーラン、ブッカー・アーヴィンの活躍もありますが、それよりも情念のホーンアンサンブルや怒りのリズム隊が烈しく対峙しながら盛り上がっていく演奏全体が強烈至極です! ブレイクで飛び出す手拍子や多分ミンガス親父の叫び声も印象的ですし、全篇でテンションの高いビートを敲きまくっているダニー・リッチモンドも凄いと思います。

A-2 Goodbye Pork Pie Hat (1959年5月12日録音)
 これまたあまりにも有名なオリジナル曲で、レスター・ヤングに捧げられた鎮魂歌♪ 緩やかなテーマメロディが膨らみのあるアンサンブルで演奏され、ムード満点のテナーサックスソロはシャフィ・ハディこと、カーティス・ポーターによるものでしょう。
 ちなみにこの人は、ハンク・モブレーの「Blue Note 1568」での快演が有名ながら、極めて録音の少ない隠れ名手で、ここでの見事なアドリブを聞けば、あぁ、勿体無いとしか言えません。私は大好きですし、ジョニ・ミッチェルは歌詞をつけて歌っているほどです。
 ズバリ、畢生の名曲・名演だと思います。

A-3 Boogie Stop Shuffle (1959年5月12日録音)
 またまた激烈なゴスペルハードバップ! しかもデューク・エリントン風味がたっぷりとつけられていますから、たまりません♪
 ド迫力のバンドアンサンブルを縫って繰り広げられるアドリブは、ブッカー・アーヴィンとホレス・パーランがストイックなまでに自己を追いつめた結果として、見事だと思います。
 もちろんダニー・リッチモンドも熱演していますよっ♪

A-4 Self-Portrait In Three Colors (1959年5月12日録音)
 ちょっと感傷的過ぎるテーマメロディがふくよかなバンドアンサンブルで演奏される、それだけで満足してしまいます。あぁ、泣けてきますねぇ……。
 
A-5 Open Letter To Duke (1959年5月12日録音)
 いきなりブッカー・アーヴィンの大ブローが炸裂し、豪快なアップテンポの演奏が始ります。しかも鋭さいっぱいのリズム隊が手加減していませんから、本当に熱くさせられます。
 そして中盤ではテンポを落として、タイトルどおり、デューク・エリントンへ公開質問状を出すのですが……。
 個人的には短い演奏時間内に欲張りすぎた感じが???
 それでもバンドアンサンブルの妙やアドリブの集団的構築が素晴らしいと思うのでした。やっぱり凄いのか???
 最終パートは突如としてカリプソ~アフロキューバンになっていくという稚気も!?
 
B-1 Bird Calls (1959年5月5日録音)
 フリーとハードバップの折衷が楽しい熱演です。
 烈しいドラミングのダニー・リッチモンドが強い印象を残しますが、ブッカー・アーヴィンとホレス・パーランは若干、マンネリ気味でしょうか。中盤のアルトサックスはジョン・ハンディかと思われます。

B-2 Fables Of Faubus (1959年5月5日録音)
 これも邦題「フォーバース知事の寓話」として名高い名曲で、以降、ミンガスバンドのステージでは定番になっていきます。
 曲に関する経緯は、アーカンソー州知事の白人偏重主義を強烈に非難したものという、つまり怒りのミンガスの真骨頂だとか!? ですから毎回の演奏では、各人のアドリブから常に黒い情念が滲み出ると言われています。
 ここでの演奏はミディアム・テンポを基調にしながらも、時折アップテンポに走るテンションの高さがあって、特にホレス・パーランのアドリブからは、こみあげてくるものを感じます。

B-3 Pussy Cat Dues (1959年5月5日録音)
 怠惰な雰囲気が横溢したところは、これぞジャズという感じでしょうか。
 トロンボーンのアドリブソロは、多分、ジミー・ネッパーでしょう。名演だと思います。

B-4 Jelly Roll (1959年5月5日録音)
 オーラスはデューク・エリントン味が強いオトボケ演奏で、タイトルどおりにジェリー・ロール・モートンとニューオリンズに思いをはせた名曲になっています。
 スラッピーベースを聞かせるチャールズ・ミンガス、熱血のジョン・ハンディ、珍しくボケるブッカー・アーヴィンとアドリブも素晴らしいのですが、惜しむらくはテープ編集によって演奏が短縮されたところです。

ということで、チャールズ・ミンガスの入門用にも最適な名演集だと思います。聴き易くて濃厚なんですねぇ~♪ それは大手レコード会社で作られたというところがミソでしょう。

しかし既に述べたように、何箇所かにテープ編集の痕跡がありますので、必ずしも自然体の演奏ばかりではありません。そこが、ちょっとおもしろくない! これは正直な気持ちです。

ただし近年の復刻CDにはノーカット盤もあるらしいですね。こう書いているうちに、それまで聴きたくなっているのでした。


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