どうも気分が晴れませんね、いろいろとあり過ぎて……。一喜一憂です。
ということで、本日は――
■My Favorite Things / Dave Brubeck (Columbia)
モダンジャズ全盛期に最高の人気バンドだったデイヴ・ブルーベック・カルテットが十八番にしていたスタンダード作曲家シリーズの1枚♪ 発売されたのは、おそらく1965年頃でしょう。如何にも当時というジャケットデザインと美人のモデルさんも魅力です。
今回の取上げられた作曲家はリチャード・ロジャースで、いまではアメリカンスタンダードの典型と言える曲調も、実はユダヤ人モードでしょう。実際、リチャード・ロジャースはユダヤ人の御曹司だったそうです。
それはそれとして、このアルバムでの選曲&演奏は素敵な世界に違いなく、録音は1962年と1965年に離れていますが、流石はレギュラーバンドの強みというか、違和感はありません。ちなみにそのメンバーはデイヴ・ブルーベック(p)、ポール・デスモンド(as)、ジーン・ライト(b)、ジョー・モレロ(ds) という黄金期の面々です――
A-1 My Favoritet Things (1965年9月22日録音)
今となってはジョン・コルトレーンの代名詞と成り果てていますから、どうしても、あの怒濤のモード節が連想されてしまうのですが、ここでのデイヴ・ブルーベックはポール・デスモンド抜きのピアノトリオで、原曲が本来持っている味わいを活かしきった愛らしい演奏を聞かせてくれます。
ちなみに原曲は1959年に発表され、1965年に映画化された「サウンド・オブ・ミュージック」からの出典ですから、デイヴ・ブルーベックの思惑も深遠だと思います。
そして演奏はジョー・モレロの天才的なワルツビートに支えられて軽やかにスイングし、生硬なブルーベックピアノがダイナミックに響くのでした。アルバムの幕開けに相応しい、短いながらも絶妙のツカミでしょうね。
A-2 Over And Over Again (1962年10月25日録音)
ドリス・ディが映画で歌っていた小品で、ジャズバージョンが他にあるか、私は知りません。
この曲もワルツタイムなんですが、ポール・デスモンドのソフトに爽やかなアルトサックスが最高♪ メロディフェイクの上手さ、歌心の表現、そして音色の魅力と流れるような魔法の吹奏♪ たまらん世界です。
もちろんジョー・モレロのドラミングも完璧ですから、これは秘密の花園です。
A-3 Why Can't I ? (1962年7月19日録音)
これもあまりモダンジャズ化されていない隠れ名曲かもしれませんが、とにかくボール・デスモンドのアルトサックスが絶品のスローな演奏です。その前段ともいうべき、デイヴ・ブルーベックの思わせぶりに撤したピアノも良い感じ♪
何度聞いても感動が湧きあがる名演だと思います。必聴!
A-4 Little Girl Blue (1962年10月25日録音)
様々な名演バージョンが残されている有名曲ですから、どうしてもそれら過去の演奏と比べられる運命にある演目ながら、デイヴ・ブルーベックのカルテットは極めて自然体で、その難関を乗り越えています。
まずデイヴ・ブルーベックがピアノソロでテーマを変奏し、ポール・デスモンドが甘い音色のアルトサックスでアドリブを綴りながらリスナーを桃源郷に誘うという、このバンドが十八番の演出なわけですが、分かっているけどやめられない世界にどっぷりです。
控えめながら力強くスイングするベースとドラムスも存在感が強いので、デイヴ・ブルーベックのピアノも地味な歌心が良い方向に作用しているようです。
B-1 This Can't Be Love (1965年9月22日録音)
これも多くの名演が残されているリチャード・ロジャースの代表曲ですから、デイヴ・ブルーベックも過去に何度か吹き込んで十八番にしていますが、今回のバージョンはちょっと黒っぽい感覚が滲み出た演奏になっています。
そのミソはジーン・ライトのベースかもしれません。実際、伴奏の4ビートは何時もより粘っこく、ミディアムテンポのグルーヴが非常に気持ちよいところ♪ それを背景にアドリブを展開するポール・デスモンドも快調ですし、ジョー・モレロのブラシも粘りながら歯切れ良く、デイヴ・ブルーベックの些か迷い道のアドリブも逆に新鮮です。
そして素晴らしいのがジーン・ライトのベースソロ♪ 短いながら歌心とジャズ魂に満ちていると思います。
B-2 My Romance (1962年録音)
これも有名曲ですねっ♪ ビル・エバンスの十八番でもありますから、初っ端のデイヴ・ブルーベックの無伴奏ピアノも、なんとなく、それ風に聞こえてきます……。
しかしテーマメロディの提示が終わった次の瞬間、ポール・デスモンドがリズム隊を呼び込みながら、素晴らしいアルトサックスを聞かせてくれます。あぁ、極楽、極楽♪ 本当にフワフワと気持ち良い限りなんですねぇ~♪
B-3 The Circus On Parade (1962年7月19日録音)
いきなり景気の良いジョー・モレロのマーチングドラムから、快調にブッ飛ばしたディブ・ブルーベックの硬質ピアノ、スイングしまくってツッコミ鋭いポール・デスモンドのアルトサックスという仕掛けですから、楽しさは保証付き!
アナーキーなスイング感で疾走するデイヴ・ブルベックのピアノは、些かのあざとさもありますが、ポール・デスモンドは流石の魅力ですし、ジョー・モレロのビート感は天才の証でしょうねぇ~♪ 実に爽快です。
B-4 The Most Beautiful Girl In The World (1962年7月12日録音)
これまた魅惑のワルツ曲♪ デイヴ・ブルーベックのピアノはそれを自分の好きなように弄んでいる感があって、なかなか痛快です。つまり暗黙の了解でワルツも4ビートもゴッタ煮とした演奏なんですが、イヤミではありません。
逆にポール・デスモンドは正統派に撤して最高のアドリブを聞かせてくれますし、ドラムスとベースは頑固なほどにワルツビートに拘っていますから、デイヴ・ブルーベックの目論見が見事に成功したというところでしょうか。
つまり普通に聞いて充分に納得させられる、楽しい仕上がりというわけでした。
ということで、非常に楽しく爽やかなアルバムです。ただし、そういう分かり易さがリアルタイムでは仇になったのかもしれず、特にジャズ喫茶という独自の文化がある我国では、些か軽く扱われている作品でしょう。
ポップなジャケットも、言わずもがなの……。
しかし私は所謂ジャケ買いしてから愛聴し続けている1枚で、ジャケットは壁、中身はプレイヤーの傍にあるというほどです。裸足の彼女が美しい♪
ポップなジャケがイイですね!
CBSのブルーベックではあと数点美人・美脚ジャケがありますが、
大手のCBSらしいですね(いずれもジャズっぽくないところもいいです)。
日本でブルーベックが振るわなかったのは、
メロディック(マイナー調の)なピアノを好む日本人に合わなかったのでしょうか。
「米国人はコード・プレイ(?)を好む」なんて、以前何かで読んだ記憶があります。
いずれにせよ国民性の違いなんでしょうね。
彼のピアノ、味わい深いとは思うのですが…。
コメント感謝です。
一時の我国では評論家の先生方を中心に、「ブルーベックのピアノはスイングしない」という定説が流布されていたようですね。
私はそんなことは知らなかったものですから、虚心坦懐にブルーベックを聞いて楽しめましたが、ジャズ喫茶でリクエストすると、些か場違いな雰囲気になることもありました。
仰るとおり、ジャケットもジャズっぽくないし、演奏も分かり易いのが敬遠された理由でしょう。
個人的にはブルーベックのような硬質なピアノが好きで、例えばエディ・コスタとかジョン・ウィリアムスとか♪
ただしブルーベックのノリは独特ですよね。ですからジョー・モレロという天才ドラマーが、なおさらに輝くように思います。相性バッチリでしょう?