固定観念は、いけませんね。実際に接してみると、意外なというよりも、これだっ、という新しい発見と感動があります。
例えば、これも――
■The Art Pepper Quartet (Tampa)
言わずとしれたジャズの大名盤、日本では通称「ベサメのペッパー」と呼ばれています。それはもちろん、日本人が大好きなラテンの名曲「Besame Mucho」が最高のテンションで演じられているからです。もしかしたら、ここでの演奏によって好きになった人が多いのかもしれません。
ですからジャズ喫茶では、それが入っているB面ばかりが鳴っているのですが、私はA面が好きですね。尤もそうなったのは、このアルバムを入手してからですが♪
まずド頭の「Art's Opus」のイントロ、このファンキーなピアノは白人のラス・フリーマンですが、最初に聴いた時は黒人かと思いましたね~♪ 主役のアート・ペッパーはもちろん文句無しの快演で、タメのきいたブレイクから泣き濡れていくようなフレーズの積み重ねは何度聴いても素晴らしいの一言です。
そして私が一番好きなのが2曲目の「I Surrender, Dear」です。これがアップテンポにラテン味も仄かに入れて、哀愁のメロディを崩しつつ思わせぶりを演じるこのバンドは、なかなか味があります。もちろんアート・ペッパーは1分11秒目あたりから、螺旋塩基のようなクルクル回るフレーズと得意のブレイクを披露して、哀しく燃えていきます。まさに余人が真似出来ないペッパー・フレーズの洪水です。天才的なリズム感も凄いです。
そしてA面ラストは、これまた泣きのバラード「Diane」が情感たっぷりに♪
ということで、これはA面も必聴の大名盤! ジャズ入門者にも絶対の推薦盤ですが、そうかといって、B面も否定出来ません。「ベサメ」も最高ですが、オーラスの「Val's Pal」の完全燃焼スタイルが物凄いです。
結論としては隅から隅まで名盤という、奇跡のアルバムです。
このアナログ原盤は物凄い高値がついていますが、LP時代から日本盤が出ていたのは本当に嬉しかったですね。現在はオマケトラック付で、しかも安価でCD化されていますよ。