■悲しきウェザーガール / レインボー・シスターズ (ポリドール)
今となっては行き過ぎの感も強い、我が国における昭和50年代からのフィル・スペクター再発見ブームは、もちろん大瀧詠一を筆頭にした往年のポップス少年団の主導によるものでしたから、それを否定しようものなら、忽ち――
お前は、分かってないっ!
―― なぁ~んていう、手厳しいお叱りに加え、時には軽蔑の眼差しさえも……。
ですから、そんなこんなの空気を読んだ業界が、フィル・スペクターに肖った商品、つまりは疑似スペクターサウンドとしか云い様のない歌謡曲を相当数制作発売し、例えば昭和59(1984)年に出された本日掲載のシングル盤A面曲「悲しきウェザーガール」は、聴けば一発!?!
何をか言わんや、とにかく初っ端に置かれている悪天候のSEからして、ロネッツの「恋の雨音 /Walking In The Rain」からの引用なのは、当然ながら曲タイトルの意味付け強化策であり、続けてイントロをリードするドラムスの用い方にしても、これまたロネッツの「Be My Baby」がモロ出しという臆面の無さとはいえ、全体的にテンポアップさせているが故に、そのまんま楽曲本篇に入ってからのバックのサウンドやイマジネーションの基本は、クリスタルズの「ハイ・ロン・ロン / Da Doo Ron Ron」をベースに、その他にも前述したとおり、フィル・スペクター所以の耳に馴染んだ(?)リフメロディや仕掛けが散見されるんですから、ニヤリ♪♪~♪
とするのが、ツウの態度なんでしょうが、生来天邪鬼なサイケおやじとしては、このシングル盤で提示されているサウンド作りが、あまりにも綺麗過ぎて…… (^^;
もちろん、フィル・スペクター流儀の「音の壁」を意識した分厚い演奏の響きは入っているんですが、それがスッキリしたステレオミックスであり、またユニゾンスタイルのグループボーカルとの対比においても、分離がきっちりしているもんですから、矢鱈に作為的なエコーの使い方ばかりが、失礼ながら、イヤミにさえ思えるんですが、いかがなものでしょう。
ちなみに歌っているとされるレインボー・シスターズとは当時、テレビ朝日で放送されていた「ウェザーショー」という天気予報番組に日替わりで出演していた女性タレント7人によって結成されたグループらしいんですが、それじゃ~、ジャケ写に登場している3人組の女の子達は???
う~ん、サイケおやじは、件の天気予報番組に接していた記憶が皆無なので、その真相には近づく事さえ出来ませんが、それにしても作詞:大津あきら&作編曲:大森敏之が作ってしまった「悲しきウェザーガール」は堂々の敢闘賞じゃ~ないでしょうか (^^)
ということで、様々に不遜な戯言を書き連ねてしまいながら、実はサイケおやじは、その頃に偶然、この「悲しきウェザーガール」を耳にした瞬間、レコード屋へ気持ちが向かってしまったんですよ (^^)
最後になりましたが、フィル・スペクターが全盛期に作り出していたシングルヒットの数々は、基本がモノラルミックスであり、7吋のシングルに収められていたのは、45回転のアナログサウンドでしたから、ちょい聴きにはモコモコの「音の壁」が、その条件では最高の迫力を伴った押しの強いロックとして楽しめるということは、AMラジオ放送や低出力の家庭用レコードプレーヤーが一般的だった庶民の音楽鑑賞には、ジャストミートしていたと思っています。
その意味で、本物のスペクターサウンドを33回転のアナログ盤LP、同じくステレオミックスで再集録したレコード等々、さらにはデジタル化したCD等々では、なかなか再現は難しいという現実は皆様ご存じのとおりですし、だからこそ、元祖本家に尊崇の念を抱きつつ、後追いて作られる疑似スペクターサウンドがイマイチ、迫真とならない困難さは推して知るべしでしょうか。
う~ん、この世の理は……、ねぇ…… (^^;