■うつろな愛 / Carly Simon (Elektra / ビクター音楽産業)
今では落ち着いてしまった感もあるカーリー・サイモンですが、この自作自演の大ヒットを飛ばした1973年当時は、快活で行動力のある女性シンガーソングライターというイメージでした。
実際、このジャケ写の乳首完全浮き出しというノーブラ姿は、まさにウーマンリブなんていう、今では懐かしい言葉が思い出されます。
また風貌からして女ミック・ジャガーなんていう人もいましたけれど、しかし決してそういうタイプの歌手ではなく、しぶとくて力強いものと合わせて表現される女性ならではのキュートな魅力が本質だったように思います。
さて、本日ご紹介のシングル曲は既に述べたように、カーリー・サイモンが大ブレイクを果たしたチャートトップの大ヒット♪♪~♪ 彼女自身のアルバムとしては3作目となる「No Secrets」のセッションと同時にロンドンで録音されていますから、参加メンバーは豪華絢爛! ジェームス・テイラー(g)、ニッキー・ホプキンス(p)、クラウス・ヴァマン(b)、ジム・ゴードン(ds)、ドリス・トロイ(vo) 等々に加えてミック・ジャガーまでもがコーラスで!
イントロのブルブルブルブルブンっというエレキベースの思わせぶりから、ちょっと言ってはならないカーリー・サイモンの囁きも絶妙ですが、重層的なアコースティックのリズムギター、些かヘヴィなピアノ、そしてキャロル・キングとエルトン・ジョンの折衷スタイルがモロに顕著な曲メロのキャッチーな魅力♪♪~♪ もちろん、そこが彼女だけの個性だと思いますし、自身のボーカルも、ほどよいエグミが印象的です。また、サビへ向かうところを盛り上げていくジム・ゴードンのドラミングも畢生でしょう。
そして実はノンクレジットだったんですが、聴けば一発、これぞミック・ジャガーというコーラスが入るサビの痛快感!
まさにヒット曲の要素がテンコ盛りですねぇ~~♪
当然、この曲は前述したアルバム「No Secrets」にも収められています。しかし何で私がこのシングル盤に拘るかといえば、ご推察のとおり、アルバムバージョンとはミックスが異なっていて、一応はステレオミックスのようですが、実際は団子状に歌と演奏が迫ってくるという、極めてモノラルに近いミックスになっています。
しかもミック・ジャガーのコーラスが、微妙に強調してあるように感じますが、いかがなもんでしょう?
このあたりはプロデュースを担当していたリチャード・ペリーの思惑なのか、あるいはレコード会社の独断なのか、ちょいと分かりませんが、とにかく私はシングルバージョンを愛聴しています。
肝心のカーリー・サイモンはご存じ、この頃にジェームス・テイラーと結婚した所為か、なんとなく以降の活動が落ち着いた雰囲気になりましたですね。もう、こんなノーブラ姿は見られないのかと思うと、ちょっと残念な気持ちに……。
ちなみに、このシングル盤のデザインはアルバム「No Secrets」からの流用ですから、その12インチLPのカバーでは、さらにしっかりと彼女のお姿が拝めますし、その前に出された2枚目のアルバム「Anticipation」では、スケスケのロングスカートで彼女のフェロモン系美脚が楽しめたわけですが、それは音楽的にも「No Secrets」に決して劣らない名盤だと思います。
あと、実際の彼女は予想以上に大柄な人なんですよねぇ~。ジェームス・テイラーと一緒に来日した時は、ちょっと吃驚させられましたですよ。
その彼女のキャリアでは、少女時代からサイモンシスターズなんていうファミリーグループをやっていたそうですし、マネージメントの意向で女版ボブ・ディランに仕立てあげられそうになっていた時期もあったそうです。
しかしその頃に盛り上がったシンガーソングライターのブーム、またジェームス・テイラーとの邂逅があって、ようやく彼女も本領を発揮出来たと言われていますが、人妻となって以降の活動がAORやスタンダード系のボーカルアルバムという、些かアクの薄いものになったのは、サイケおやじ的には残念でした。
一応、1982年頃にジェームス・テイラーとの破局もありましたから、もう少し、熟女っぽいエロキューションな歌唱を聞かせてくれると願ったのですが、それも……。
うつろな愛は叶わぬ願いとなるのでしょうか。You're So Vain ~♪