OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

コルトレーンのバラエティ盤

2007-09-01 16:44:55 | Weblog

午前中は防災訓練に参加、午後は映画鑑賞という贅沢な休日でした。何だかんだ言っても、平和と安逸が一番です。

ただし世の中はストレスがいっぱいで「怒り」が絶えません。あんまり怒らせないくれぇ~。

と願いつつ、本日は――

Coltrane Jazz / John Coltrane (Atlantic)

膨大な名盤・熱演盤を残したジョン・コルトレーンの中では、目立たない部類のアルバムかもしれません。

しかし私は愛聴している1枚♪ というのも、何となくリラックスした雰囲気と熱き魂のバランスが崩れそうで崩れない、そんな脱力寸前の魅力が良い感じなんですねぇ~♪

演目にも和みのメロディを持ったスタンダードが選ばれていたり、共演者も気心の知れた面々が揃っていますから、ちょっと予定調和な魅力があるのかもしれません。

まあ、それゆえに今日では目立たなくなったのでしょう。当時のジョン・コルトレーンを取巻く状況は、決して順調ではなく、今では超名盤として認定されている「ジャイアント・ステップス(Atlantic)」は1960年1月に発売されたものの、売行きは最悪だったそうです。

で、会社側は新作音源は録っていたものの、続くアルバムの発売を様子見したらしく、アトランティックでは2枚目となるこれが出たのは、「ジャイアント・ステップス」から1年以上経過した1961年2月でした。

ちなみに同年3月には、あの人気盤「マイ・フェバリット・シングス(Atlantic)」が発売されていますから、ジョン・コルトレーンに対する注目度は、この頃からグ~ンとアップしたのでしょう。

さて、アルバムは2つのセッションから構成されており、メインの録音は1959年11月&12月、メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、これは当時のマイルス・デイビスのバンドから、親分だけ抜いた演奏というわけです。

そしてもうひとつが1960年10月という、約11ヶ月後の録音で、メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、マッコイ・タイナー(p)、スティーヴ・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、当時のレギュラーバンドによるセッションです――

A-1 Little Old Lady (1959年11月24日録音)
 あまり有名でないスタンダード曲ですが、和みのテーマメロディとバンドの演奏がミスマッチ寸前のグルーヴを醸し出していて、楽しめます。まず冒頭からウイントン・ケリーのイントロがオトボケで良い感じ♪ もちろんアドリブパートでも飛跳ねグルーヴが全開ですし、ドラムス&ベースとのコンビネーションも最高です。
 肝心のジョン・コルトレーンはテーマ吹奏が縺れ気味ですし、アドリブもギクシャクと迷い道ながら、素晴らしいリズム隊に支えられ、直ぐに自己のペースを掴むと、後は一直線に疾走していくのですが、ちゃ~んと原曲メロディを大切にしているあたりが、この時期の魅力かと思います。

A-2 Village Blues (1960年10月21日録音)
 一転して重厚なブルース演奏は、約11ヶ月後のセッションで、リズム隊がガラリと入れ替わっているのがミソ! 特にエルビン・ジョーンズの存在感が強いですねぇ~。
 ジョン・コルトレーンも自分のやりたい事が存分に出来るようで、そのヘヴィな音符過多症候群を完全に吐露しています。
 またマッコイ・タイナーのミステリアスな雰囲気やスティーヴ・デイビスの独り善がりなウォーキングベースも素晴らしく、聴いているうちに、気分はジャズ喫茶全盛時代のあの頃へトリップしてしまうのでした。

A-3 My Shining Hour (1959年12月2日録音)
 弾みまくったリズム隊のイントロから軽快にテーマメロディを吹奏するジョン・コルトレーン♪ ハナからケツまで楽しい演奏です。
 特にジョン・コルトレーンは十八番の展開にどっぷり浸りきった快演フレーズを連続放射してくれますし、リズム隊の快適なサポートは言わずもがな! 完全に止まらなくなっているバンドの勢いは本当に痛快ですねぇ~~~♪
 このあたりはマイルス・デイビスのバンドだったら、絶対に「ありえない」グルーヴかと思います。だって、ここにマイルス・デイビスの思わせぶりなトランペットなんか、入ってこれないでしょう。
 それほどに爽快でスピード感に満ちた演奏であり、楽しさは百点満点です。

A-4 Fifth House (1959年12月2日録音)
 ジョン・コルトレーンのオリジナル曲で、エキゾチックな雰囲気からジャイアント・ステップな状況に変化していく、なかなかアブナイ雰囲気がたまりません。
 それをガッチリ支えるリズム隊のノリも厳しく、全く油断なりませんから、ジョン・コルトレーンも必死に自己の信じる道を突き進むという凄い演奏です。

B-1 Harmonique (1959年12月2日録音)
 このB面冒頭の演奏は、発売当時から同業者を仰天させたらしいです。
 なぜならば、タイトルどおり、ジョン・コルトレーンはテナーサックスでハーモニクスという、倍音の吹奏に挑戦しているからです。平たくいうと、2つの音を一緒に出そうとしているわけですが、これは弦楽器ならばなんとかなるものの、リード楽器では至難の技だと言われています。
 で、ここでの演奏は必ずしも成功とは言い難いのですが、その緊張感は凄いものがあり、このあたりからジョン・コルトレーンが唯我独尊の進撃を始めていく心意気!
 ですから、ウイントン・ケリーのピアノが出てる、ホッとするのでした。ジミー・コブのドラミングも絶妙です。

B-2 Like Sonny (1959年12月2日録音)
 これもジョン・コルトレーンのオリジナルで、めくるめくようなテーマメロディの構成から十八番のフレーズ展開まで、なかなか個性溢れる演奏を聞かせてくれます。
 もちろんそれは安定感抜群のリズム隊があればこそで、グリグリに吹きまくるジョン・コルトレーンに対して、ビクともしない強靭なスイング感は圧倒的! ウイントン・ケリー・トリオになってからの素晴らしさは、当にジャズを聴く喜びに満ちていると思います。ポール・チェンバース万歳♪

B-3 I'll Wait And Pray (1959年11月24日録音)
 これもあまり有名でないスタンダード曲ですが、しみじみ哀愁の吹奏に撤するジョン・コルトレーンは、持ち前の「泣き」が入った音色で魅了してくれます。いゃ~ぁ、実に良いですねぇ~~♪
 音符過多のスケール練習っぽいフレーズも巧みに使いながら、しかし原曲を大切にして丁寧に吹奏する時のジョン・コルトレーンの素晴らしさ! 最後の最後までリズム隊のとコンビネーションが崩れないところも、流石だと思います。

B-4 Some Other Blues (1959年12月2日録音)
 オーラスはバンドの息がぴったり合ったブルース大会! と言っても、決してバードバップではなく、既にして新しい領域に進んでいるジョン・コルトレーンの魅力が堪能出来ます。
 もちろんリズム隊のクールなグルーヴは、ジャストミートの快演! ポール・チェンバースのブンブンなノリ、ウイントン・ケリーの粘っこい飛跳ね、そしてジミー・コブの歯切れの良さ♪ これには流石のジョン・コルトレーンも煽られ気味という、モダンジャズの王道が楽しめる爽演です。

ということで、1曲毎の演奏時間は短めですし、バラエティ感覚の選曲構成には物足りなさを感じる事も確かにあるのですが、逆にそれが魅力のアルバムだと思います。

冒頭でも述べたとおり、ジョン・コルトレーンのリーダー盤の中では目立たない1枚ですが、そっとしておくには、あまりにも勿体無い作品でしょう。私は大好き!

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