■Jennifer Eccles c/w 目をひらけ! / Hollies ((Parlophone / 東芝)
ホリーズと言えば、今でも我国ではCSN&Yのグラハム・ナッシュが以前に在籍していたバンドで、「Bus Stop」が永遠のヒット曲!
そういう認識が定着していると思います。
もちろん、それは間違いではありません。
しかし、それ以外にも素晴らしいのがホリーズの真実であって、人によっては小型ビートルズであり、またソフトロックの王者でもあり、時には英国におけるサイケデリックポップスやフォークロックの先駆者という位置付け等々、様々な評価を得ているグループですから、もっと日本でも人気があって良いはずなんですが……。
まあ、そのあたりの捕らえどころの無さが日和見主義だとか、基本的にやっている事が軟弱だとか、とにかくホリーズ独得の素敵なメロディ&コーラス優先主義が裏目に受け取られてしまう結果と言えば、贔屓の引き倒しでしょうか。
そこで本日のご紹介はホリーズが1968年春に出したシングル盤なんですが、収録曲は両面とも当時の慣例として、英国では同時期発表のオリジナルアルバムには入れられず、つまりはこれでしか聴けない名唱&名演♪♪~♪
しかもグラハム・ナッシュがホリーズを辞めてしまう直前のヒット曲ですから、結果的に後追いのファンには、そういう興味もあろうかと思います。
ちなみに当時のメンバーはグラハム・ナッシュ(vo,g)、アラン・クラーク(vo,hmc)、トニー・ヒックス(vo,g,etc)、バーナード・カルバート(b,g,key)、ボビー・エリオット(ds,per) とされていますが、実際のレコーディングには数名の助っ人が参加している事は確実でしょう。
ただし以前にブートのビデオで見た「Jennifer Eccles」のプロモーション映像では、グラハム・ナッシュも登場していましたから、なんとも言えませんが……。
で、肝心の楽曲は、まずA面の「Jennifer Eccles」がスティールドラムも入った、実にトロピカルなフォークロックで、その楽しさは絶品♪♪~♪ 当然ながら爽やかなハイトーンのコーラスに加え、微妙に翳りのあるメロディ展開が素晴らしい隠し味なんですよねぇ~~♪
太く蠢くエレキベースやウキウキさせられるアコースティックギターも良い感じ♪♪~♪
一方B面の「目を開け / Open Up Your Eyes」は、これまたホリーズならではの明るいビートロックで、ホリーズが十八番のアラン・クラーク~トニー・ヒックス~グラハム・ナッシュという順番で歌い回すボーカルパートに絡むハイトーンのコーラスワークが最高ですよっ!
しかも間奏では、カントリーロックなバンジョーが使われるという、なかなか上手いコントラストが素晴らし過ぎますねぇ~~♪
なによりもアップテンポで繰り広げられるメロディのポップなフィーリングは、「Jennifer Eccles」も同様なんですが、どこかしら「せつない泣き」が仕込まれていて、胸キュンなんですよ♪♪~♪
そういうところがホリーズの魅力のひとつであって、さらにこれ以前はサイケデリックにどっぷり浸かっていた方向性から良い意味で目覚めたというか、ホリーズ本来の持ち味に立ち返ったような姿勢は好ましいかぎりです。
実はこの背景にはサイケデリック路線がど真ん中で作られた前作アルバム「バタフライ」、及びシングル「キング・マイダス / King Midas In Reveres」のセールス伸び悩みというリアルタイムでの事情があったらしく、しかもそれを主導したグラハム・ナッシュの責任問題(?)もありましたから、必然的にグループ内部の不協和音やビジネス面のあれこれも影響していたんじゃないでしょうか。
ですから、グラハム・ナッシュが、このシングル盤両面の作曲に関わってはいますが、時代性とか社会性から目を背け、お気楽主義に戻ってしまうが如きホリーズに物足りなさを感じ、脱退してしまうのも無理からん話だったと思うのは、サイケおやじの妄想でしょうか……。
それは「Jennifer Eccles」がヒットしたにもかかわらず、かなり長い間、ベスト盤に収録されなかった事実とも符合するように思います。
今日の歴史からすれば、この後のホリーズはアルバム「ボブ・ディランを歌う」で一応は社会性を強調した姿勢を見せるのですが、皮肉にもそれが他力本願のように受け取られた評価もあり、さらにグラハム・ナッシュが元バーズのデイヴィッド・クロスピー、そして元バッファロー・スプリングフィールドのスティーヴン・スティルスの3人で組んだCS&Nが大成功した事から、ホリーズは何か時代遅れの象徴になってしまったのは、ファンとして残念至極です。
しかしホリーズは、あくまでもホリーズとしての魅力を失うなんて事は絶対にありません!
それが所謂過渡期に出された、この傑作シングル盤には殊更顕著に記録されていると断言して、サイケおやじは後悔しないのです。
そして願わくば、ホリーズの再評価を強く望んでいるのでした。