またまた最近、物欲の煩悩に苛まれています。
買ったって楽しむ時間が無いくせに……。
はい、ご尤も……。しかし、ねぇ~。
ということで、本日は――
■Tenor Conclave (Prestige)
プレスティッジが十八番のジャムセッション&バトル物! しかもテナーサックス4人衆が、がっぷり組んだという白熱盤です。
録音は1956年9月7日、メンバーはアル・コーン(ts)、ズート・シムズ(ts)、ジョン・コルトレーン(ts)、ハンク・モブレー(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という、今では夢の豪華絢爛――
A-1 Bob's Boys
ハンク・モブレーが書いたハードバップのブルースで、擬似フォーブラザースのようなサックスアンサンブルの中をハンク・モブレーがテーマをリード、そしてアドリブ先発がジョン・コルトレーンという流れが、いきなり興奮を呼びます。
ポール・チェンバースが中心となったリズム隊のグルーヴも最高に気持ち良く、ジョン・コルトレーンが快適にフレーズを綴れば、アル・コーンがソフトに続きますが、これはジョン・コルトレーンに軍配が上がりそうです。
そして短いアンサンブルを挟んで、今度はハンク・モブレー対ズート・シムズ! タメとモタレのハンク・モブレーに続くズート・シムズが悠々自適のスインガーぶりを披露して、優勢勝ちでしょうか。
演奏はこの後、レッド・ガーランドとポール・チェンバースの短いソロがあって、いよいよ4者が入り乱れたソロチェンジがスタートしますが、アル&ズート対コルトレーン&モブレーというタッグマッチの様相が楽しめるものの、あまりソロ順に拘ると疲れたりしますね。苦笑です。
A-2 Just You, Just Me
楽しいスタンダード曲をアップテンポで熱く演じながら、各人の意地がぶつかりあった名演です。
まず簡単にアレンジされたテーマ合奏からアドリブ先発のハンク・モブレーが最高に素晴らしく、ソフト&パワフル、タメとモタレの至芸を聞かせれば、続くズート・シムズはドライブが効いた流麗なフレーズの連発で、ゾクゾクしてきます。
さらにジョン・コルトレーンがギスギスしながらウネウネと個性的な展開ながら、これが意外と気持ち良く楽しめるんですねぇ。そしてアル・コーンは歌心がいっぱい♪
各人のソロパートのバックをつけるリズム隊は、ご存知レッド・ガーランドのトリオということで、ワンホーンのセッションを楽しむという趣もあり、特にアル&ズートにとっては、ちょっとした「ミーツ・ザ・リズムセクション」でしょうか、実に良い雰囲気です。
またクライマックスのソロチェンジとバトルの部分では、ジョン・コルトレーンが如何にも浮いている感じなんですが、後年の事を思えば結果オーライだと思います。
B-1 Tenor Conclave
これもハンク・モブレーのオリジナル曲で、元ネタはスタンダードのコード進行から「I Got Rhythm」だそうですが、けっこう凝ったテーマのアンサンブルが乱れがち……。
しかしアドリブパートに入ると先発のハンク・モブレーが最高で、幾分モゴモゴした音色ながら、流れて粘っこいモブレー節の大サービス♪ するとズート・シムズが負けじと良いフレーズを吹きまくりです。リズム隊との息もバッチリですから、グイノリのドライブ感も強烈ですねぇ。
そしてアル・コーンが、これまたレスター・ヤング直系のブロースタイルというか、本当はメロディ優先なんですが、随所に強引な熱血フレーズを入れたりして流石だと思います。
しかしジョン・コルトレーンは些かヒネクレというか、決して歌うフレーズではないのに、妙にフックの効いたアドリブが、たまりません。続けてレッド・ガーランドの快演ピアノが入ってくるところなんか、この時期のマイルス・デイビスのセッションの様です♪ ポール・チェンバース&アート・テイラーも凄い熱演! これがハードバップ全盛期の勢いというやつですね♪
クライマックスのソロチェンジはバトルの醍醐味が満喫できますよ。
B-2 How Deep Is The Ocean ?
オーラスは良く知られた歌物スタンダードを素材に4者が歌心の競演♪ 全体がジンワリとしたスローテンポで、まずテーマをリードするのはアル・コーンでしょう。サブトーンを効かせたテーマ変奏が見事です。
続くレッド・ガーランドが和みのブロックコードを響かせた後は、いよいよズート・シムズがハードボイルドな歌心を披露♪ 実に味わい深いと思います。
ところがポール・チェンバースのアルコ弾きが、あぁ、勘違い……。
しかしそれを見事に軌道修正するのがジョン・コルトレーンの隠れ名演です。実際、素直な感情吐露というか、真摯なフレーズを綴るところは好感が持てます。
そしてラストテーマは、もちろんハンク・モブレーがアドリブの変奏から見事な締めくくり♪ 全体で15分を越す演奏ですが、最後の無伴奏ソロまで、緊張感と和みのコントラストが秀逸だと思います。
ということで、局地的には「テナー根競べ(こんくらべ)」なんて呼ばれていた人気盤です。特にタイトル曲は熱血の名演でしょう。サックスのアンサンブルに所謂フォーブラザース系の合奏が用いられているのはアル&ズートの成せるワザですし、ハードエッジなリズム隊とのミスマッチの面白さも素敵です。
ただし残念なのはモノラル録音ということでしょうか。これが左右からテナーバトルになっていたら……、という夢をみるほどに豪華なセッションというわけです。