OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

目眩くイエス

2010-02-08 14:35:14 | Rock Jazz

Relayer / Yes (Atlantic)

1970年代のクロスオーバーからフュージョンに至る大ブームは、大衆音楽のあらゆる分野に影響を及ぼしましたが、それは緻密なアレンジとバンドアンサンブル、躍動感とリラックスしたアドリブを含む演奏能力、そしてもちろん素敵なメロディと歌の魅力が必須でした。

そして当然、ジャズ畑からの台頭が目立っていた現実にロック系の歌手やバンドは押され気味だったんですが、どっこい、プログレをやっていた連中にとっては、まさに水を得た魚!

本日ご紹介の1枚は、中でも特に凄まじい結果を出してしまったアルバムで、主役のイエスは説明不要、プログレの代表選手として本国イキリスはもちろん、世界中で決定的な人気があるウルトラテクニック集団!

これを出した1974年当時のメンバーは、ジョン・アンダーソン(vo,per)、スティーヴ・ハウ(g)、パトリック・モラーツ(key)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds,per) という、実はこれっきりの集合体でした。

というのも、前作の2枚組アルバム「海洋地形学の物語」を出した後の巡業をもって、人気キーボード奏者のリック・ウェイクマンが脱退し、その後任オーディションの最中も、グループはレコーディングをやっていたという事情のようですから、新参加のパトリック・モラーツにしても、本人の意向もあっての準レギュラー扱いだったのです。

ちなみにイエスの音楽性としては初期2枚が、テーマ~アドリブ~テーマという構成のロックジャズ系だったものが、ピーター・バンクス(g) やトニー・ケイ(key) からスティーヴ・ハウとリック・ウェイクマンが交代参加した3枚目以降のアルバムで聞かれるそれは、ひとつのテーマ曲の前後左右に緻密なアレンジや秀逸なアドリブで彩りを添え、歌と演奏全体を膨らませていく手法へと転換した、まさにプログレの王道をいくスタイルとなって作られた「こわれもの」や「危機」により、ようやく世界的にブレイクしたのですから、またまたのメンパーチェンジは如何に!?!

結論からいうと、リアルタイムで聴いたサイケおやじは、そのあまりのテンションの高さと完成度の凄さに圧倒され、唖然とさせられましたですねぇ~~。

 A-1 The Gates Of Delirium / 錯乱の扉
 B-1 Sound Chaser
 B-2 To Be Over

アルバム1枚で、全3曲! こういう大作主義はイエスの十八番とはいえ、ここで聴かれる演奏の恐るべき緻密さは、まさにフュージョン!

強烈な変拍子の嵐! アドリブの応酬と複雑なアレンジが施されたバンドアンサンブルの徹底的な追及! 緊張と緩和が見事な曲構成! 

それは当然ながら、スタジオ内の仕事ですから、綿密なリハーサル、テープ操作やダビング作業の繰り返しで仕上げられたのでしょう。しかしイエスの凄いところは、レコードに収められたものと大差の無い演奏がライプステージでもやれたことが、後に発売されたライプ盤「イエスショウズ」で証明されるのですから、圧巻!

まずアナログ盤A面全部を使った「錯乱の扉」からして、タイトルに偽り無しの劇的な演奏で、いきなり多重層的に絡み合うギターとキーボードのカラフルな導入部から、重心の低いドラムスとベースの蠢き、さらにメルヘンで哲学的な歌詞を爽やかな子供の歌みたいなボーカルで表現した後は、激しいテンションが満ち溢れた変拍子大会! 随所で自己主張する各人のアドリブプレイもヤバすぎますが、既に述べたように、これほどの緻密なモザイクジグゾーパズルがライプの現場では、ちゃ~んと再現出来るんですから、決してハッタリではありません。

例えばアル・ディメオラ(g) が在籍していた時期のリターン・トゥ・フォーエバーにしても、ここまで過激で緻密な演奏が出来るでしょうか!?

なんて冒涜的妄想が、至極真っ当に思えるほどですよ。

ちなみに終盤のパートは後に編集され、「Soon」と題されてシングルカットされたほどの和みも忘れていないのは流石です。

そしてB面が、これまた強烈に熱くて、目眩がするほどの完成度!

初っ端からビシバシにキメまくるメンバーの個人技の応酬から、フルスピードでブッ飛ばす「Sound Chaser」は、並みのフュージョンバンドには太刀打ちできない世界でしょう。本当に一瞬も弛んだところなんか、見つけようとしても無駄な抵抗です。

思わず、うぁっ、うぁぁぁ~、なんて唸ってばかりの私の気持は、何時聴いても変りません。

もちろん素晴らしい和みの時間も用意されているのは、憎たらしいほど♪♪~♪

それがオーラスの「To Be Ove」で、スティーヴ・ハウという天才ギタリストが如何にメロディを大切にしているかが実感出来ると思います。本当に全篇、夢見るようなギタープレイとアグレッシプな早弾き、幅広い音楽性に裏打ちされた一期一会の名演じゃないでしょうか。

ということで、サイケおやじは最初に聴いた瞬間から、何時までも驚きと新鮮な感動を持ち続けているわけですが、本当のイエスファンからの評判は芳しくありません。

というか、イエスの一連の作品の中では明らかに異なる色彩ゆえに、異端児扱いのようです。人気者のリック・ウェイクマンの後釜に入ったパトリック・モラーツのジャズフュージョン志向が目立ち過ぎるのも、その要因だと言われていますが……。

しかし、これまでよりもずっと前向きに過激なスティーヴ・ハウのギターに象徴されるように、フュージョンだろうが、ロックジャズだろうが、はたまたプログレだとして、イエスという超絶技巧集団には何時か通過せねばならない王道の儀式が、このアルバムだと断言しても、私は後悔しません。

それほど圧倒的な完成度、過激で濃密に仕上がったフュージョンアルバムだと思います。

特にドラムスとベースの存在感は凄いとしか言えませんし、辛辣なテンションで大活躍していた前任ドラマーのビル・ブルフォードと常に比較される宿命のアラン・ホワイトにしても、このアルバムでは常日頃の冷静さに加えて、ジャズならではの瞬間芸的な大技小技を周到に積み重ね、実は主役ではないかという嬉しい疑念も浮かんでくるほどです。

そしてイエスを語る時、必ず言われるのが、所謂「ロック魂」云々でしょう。

確かにロックはテクニック至上主義よりは、スピリットの問題とか、感性の鋭さがリアルタイムで求められているのは否定出来ません。しかし、だからといって、テクニックに優れて、それをウリにしているミュージシャンを貶すことで自己主張するのは、間違いじゃないでしょうか。

悔しかったら、やってみろっ!

なんてことをイエスの面々は言うはずもありませんが、現実的に残された凄い演奏は、何時まで経っても聴く人を圧倒するものがあります。なんというか、行きついたプログレが、一回転してロックジャズに戻ってきたのが、このアルバムかもしれません。

あとは、好き嫌い、それだけでしょうね。

私は好きです。


ビートルズ来日のリアル映像集

2010-02-07 16:08:24 | Beatles

The Beatles In Japan 1966 (innergroove = bootleg 3 disc set)

我国の昭和40(1965)年からのエレキブームをロックへと導いた偉業こそ、翌年のビートルズ初来日公演でした。

その私的な感想や体験については、以前にも書きましたが、本日のご紹介はプートながら、それを確実に追体験し、ビートルズ来日の凄さをあらためて検証するには最適のブツ! なんと2枚のDVDRに収められたニュースフィルムやコンサートのライプ映像は、同じメーカーから出た「The Beatles AT Shea 1965」同様、時系列の編集によって臨場感が満点♪♪~♪ そしてもう1枚、CDには2回の公式記録ライプ音源が収められているという、実に強烈なセットです。

☆DVDR-1:約63分
 01 Opening Montage
(sound;Paperback Writer)
        / Haneda Arrivals (1966年6月29日)
        / Tokyo Highway (sound;Mr. Moonlight)
 02 Outside Hotel Footage (sound;Day Tripper)
 03 Interview at 10th floor
 04 Press Conference at Tokyo Hilton Hotel Pink Pearl Room
 まずは来日公演に至る顛末が、いろんな映像をバックに字幕で解説され、ビートルズの入国が幾分遅れたのは台風の所為だったとか、リアルタイムのテレビ放送でも特に印象的だった「Mr. Moonlight」をBGMにした首都高速の場面、武道館を使った興行に反対する右翼団体、そしてインタビューの映像がたぷりとご覧になれます。
 もちろんそれらは丁寧な字幕入りですが、映像はモノクロ主体で、中には公式記者会見の場面のように、フィルムが完全でない部分もありますし、司会者のトンチンカンな仕切りや分かっていない質問も、今となっては恥ずかしくなるばかりとは言え、それも貴重な記録だと思います。
 中でも今や伝説となっている、MB勲章をもらったことへの関連質問で、ジョンがコースターをひらひらさせたシーンは必見!

☆DVDR-2:約72分
※1966年6月30日
 01 Outside of Budokan Footage
(sound;Nowhere Man)
 いよいよ歴史的な公演の初日!
 もちろん武道館や会場周辺には夥しい警官が動員され、集まったファンの様子も緊張気味に映されているのが印象的です。
 またメーカー側が入れた字幕解説も面白く、中でもホテルから武道館への移動時間がリハーサルでは5分だったものが、本番では7分かかってしまい、警視総監が遺憾を表明とは笑えますが、それだけリアルタイムでは真剣な出来事だったのです。

※武道館ライブ:1966年6月30日、夜の部
 02 Opening
 03 Rock And Roll Music
 04 She's A Woman
 05 If I Needed Someone
 06 Day Tripper
 07 Baby's In Black
 08 I Feel Fine
 09 Yesterday
 10 I Wanna Be Your Man
 11 Nowhere Man
 12 Paperback Writer
 13 I'm Down

 今では良く知られているように、ビートルズの来日公演のテレビ放送は2回録画され、これがその最初の映像ですが、リアルタイムではオクラ入りしています。それはマイクの不備から演奏中にメンバーがそれを直したりする場面があって、マネージメント側から不許可になった所為でした。
 しかしビートルズ本人達のノリは悪くありませんし、カメラワークも基本に忠実というか、良く撮れていると思います。またメンバーの衣装がダーク系の上下というスーツに赤いシャツ! これが実にカッコ良すぎますねぇ~♪
 ちなみにこの29日の映像が初めて公開されたのは昭和54(1979)年、「たった一度の再放送」をウリにした日本テレビの特別番組でしたが、リアルタイムを体験した多くのファンがびっくりしたのは、実際に放送されたライプとは別物だったという喜びでした。つまり現実の放送では、翌日の昼の部が使われていたというわけです。
 しかもカラー映像ですからねぇ~♪
 というのも、実はリアルタイムでもカラー放送だったのですが、当時はカラーテレビそのものが普及しておらず、私も含めて、多くの日本人はモノクロ映像を楽しんでいたはずですから、感動もさらに深いということです。
 肝心の演奏では、いきなり「Rock And Roll Music」と「She's A Woman」のR&R二連発で煽っておいて、ジョージの会心作「If I Needed Someone」へともっていくプログラムが絶妙! ここでバンド全体のグルーヴとビート感が、ガラっと変化するのは快感ですよ♪♪~♪ また「She's A Woman」の最初では、出番の無いジョージが観客に愛想を振りまくあたりが、如何にも当時のショウビジネスの実態かもしれません。お馴染み、ジョンのハナモゲラMCに導かれた「Day Tripper」も流石です。
 そして貴重なのが「Yesterday」のエレクトリックバンドバージョンでしょう。
 さらに当時ピカピカの新曲だった「Paperback Writer」のリアルライプバージョンも、危険きわまりないロックのビートが完全炸裂した名演だと思います。というか、明らかにニューロックって感じですねぇ。サイケデリックなコーラスも良い感じ♪♪~♪
 またヒット曲の定番演奏としては狂熱の「I Feel Fine」、リンゴの歌がノリノリの「I Wanna Be Your Man」、何時聴いても胸キュンな「Nowhere Man」や「Baby's In Black」のソフトロックな味わいも素敵です。
 ただし、これは各方面で指摘されていて、私も同じ思いなんですが、ビートルズ本人達のライプの現場でのテンションが、前年に比べると落ちているのは否めないと思います。それは巡業でもホテルに缶詰め状態、会場内外での狂騒、一般マスコミの無理解やビジネス面のあれこれ……、等々がビートルズが絶頂期の音楽性と必ずしも合致していない現実の現れだったのでしょう。
 ところでこのパートは後にビデオ化され、確かLDも発売されていたわけですが、今回のリマスターはプートでありながら、これまでで最高だと思われます。しかし例のアンソロジープロジェクトで使われた映像には叶いませんので、念のため。

 ※1966年7月1日のドキュメント
 14 John & Paul's Breakout
(sound;If I Needed Someone)
 このパートでは、これも伝説になったジョンとポールのホテル脱出が解説されます。
 それによるとジョンは原宿と材木町の骨董屋で買い物、ポールは皇居へ行ったというスチールが証拠提供でご覧になれますよ。
 また当時の東京の戒厳令的な様子も、ヤバイ雰囲気のフィルムで収められています。

※武道館ライブ:1966年7月1日、昼の部
 15 Opening
 16 Rock And Roll Music
 17 She's A Woman
 18 If I Needed Someone
 19 Day Tripper
 20 Baby's In Black
 21 I Feel Fine
 22 Yesterday
 23 I Wanna Be Your Man
 24 Nowhere Man
 25 Paperback Writer
 26 I'm Down
 これが現実的にテレビ放送されたパートで、約30分のステージはカラー映像ですが、部分的な劣化が勿体無いかぎりですねぇ……。しかしリアルタイムではモノクロでしか体験出来なかったことを思えば、贅沢は今のところ、敵でしょう。
 メンバーの衣装は薄いブルーに赤っぽい縞のジャケット、赤いシャツに黒いスポンという、これも垢ぬけたファッションがニクイばかりです。
 またテレビ放送の時にも思っていましたが、ジョンとジョージのギターが、それまで見ていたものと違っていて、それは実に素敵なエピフォン・カジノ! また「If I Needed Someone」でジョージが弾くリッケンバッカーの12弦も強烈な存在感でした。
 ちなみに演目は6月30日と同じですが、このブツに関する限り、音質は前者の方に迫力が感じられます。
 そして演奏面では、まず「She's A Woman」でのジョンのリズムギターなんですが、6月30日ではシャープなカッティングで全篇を押し通していたものが、こちらでは前年のシェアスタジアム公演と同じく、中盤からのストーンズ風なノリを復活させています。
 また「I Feel Fine」ではレコードと同じく、あのフィードバックからイントロのリフに入るパターンをやってくれるんですから、たまりません。「Day Tripper」でのツインリードも強烈ですよっ!
、それとジョージのギターが、それなりに安定していますし、弾き方の指使いも、わりとはっきりと映っているのが嬉しいところでしょう。
 その意味でポールのMCの安心感、リンゴのドラミングの上手さも、あらためて実感されると思いますから、オーラスでポールが激唱する「I'm Down」は最高の極みつき! 冷静に聴けば、相当にハチャメチャな演奏なんですが、テレビの前でエキサイトさせられた少年時代の気分が完全に再燃します。

※Beatle Costume Repor
 27 ビートルズの衣装分析、テレビ視聴率等々の解説
 28 スタッフのトニー・バロウズが撮った8ミリフィルム映像

 これが貴重な7月2日のステージライプ映像!
 広報担当のトニー・バロウズが記録した8ミリフィルムで、非常に短いながらも感動的です。

 29 ビートルズの離日:1966年7月3日
 公演終了後からのビートルズの動向をスチール写真と字幕で解説しています
 フィリピン暴動やキリスト発言、そんなこんなの経緯からライプをやめてしまうビートルズの行く末が……。

☆CD
※武道館ライブ:1966年6月29日、夜の部
 01 Opening
 02 Rock And Roll Music
 03 She's A Woman
 04 If I Needed Someone
 05 Day Tripper
 06 Baby's In Black
 07 I Feel Fine
 08 Yesterday
 09 I Wanna Be Your Man
 10 Nowhere Man
 11 Paperback Writer
 12 I'm Down
※武道館ライブ:1966年7月1日、昼の部
 13 Opening
 14 Rock And Roll Music
 15 She's A Woman
 16 If I Needed Someone
 17 Day Tripper
 18 Baby's In Black
 19 I Feel Fine
 20 Yesterday
 21 I Wanna Be Your Man
 22 Nowhere Man
 23 Paperback Writer
 24 I'm Down
 こちらは映像から音源だけを抜き出したCDで、当然ながらモノラルミックスですが、マスタリングがきっちりしていますから、聴き易いです。そしてリンゴのドラムスの上手さとか、ポールのペースの躍動感が、個人的には高得点でした。
 映像では、そんなに感じなかったんですがねぇ。

ということで、これまた先日ご紹介の「The Beatles AT Shea 1965」と同じメーカーよる良い仕事♪♪~♪

なんとも熱くて、実にせつない映像集ですよ。

気になる画質は「-A」から「+B」程度なのが悔やまれますが゛、それでもこれまでで最良の素材を丁寧にリマスターしてありますし、音源とのシンクロも絶妙です。おそらく将来、絶対に公式復刻される映像のはずですが、ここまで日本側の記録を集められるか否かは、このブツが参考にされるんじゃないか?

本当に、そう思っているのでした。


いとしのマックスの寒い休日

2010-02-06 15:49:43 | 日本のロック

いとしのマックス / 荒木一郎 (日本ビクター)

久々にバンド練習してます。しかもお題がエレキ歌謡の大傑作「いとしのマックス」ときては、中年者が浮かれてハッスル♪♪~♪

しかし、今日は寒い、寒すぎて、指も身体も動かんですよ……。

というのも実は、たまにしか全員集合しないので、合わせられない言い訳ではありますが、この曲に限ってはイントロのドラムソロからギターとベースのリフに入っていくタイミングが、強烈に難しいですねぇ。

それと荒木一郎の軽く流す歌い方が、素人には意外と難しくて、~ドゥドゥドゥ~~、ゴォ~! というキメに力が入り過ぎると、完全なイモになってしまうという、汗びっしょりの素敵な昭和歌謡なんですよ♪♪~♪

それと間奏で聞かれる、熱いタフテナーのアドリブを、こっちはオルガンでやっているんですが、やっばり味わいが足りません。しかしギターっていうのも芸が無い……。

このあたりは実際にオリジナルバージョンを楽しまれた皆様には、ご同感いただけると思うのですが、さりとて素人のバンド演奏では限界があるという、あきらめも……。

ということで、本日は「……」が多くなりましたが、節分過ぎても寒さが去らない休日には、やって楽しいエレキ歌謡ということで、ご理解願います。


1969年型のマウンテン

2010-02-05 17:05:43 | Rock

Mountain / Leslie West (Windfall)

音楽鑑賞には「音で聴く」という楽しみがあって、例えばモダンジャズではブルーノートで有名な録音技師のルディ・ヴァン・ゲルター直々の「音」が聴きたくて、オリジナルアナログ盤を高級オーディオで鳴らすのが天国♪♪~♪

あるいはCDで知ったお気に入りの楽曲を、あえてアナログのオリジナル7インチシングル盤を探し出して聴くのも、最近の流行らしいですね。

さて、本日ご紹介のアルバムは、1970年代前半に人気が爆発したマウンテンの実質的なスタートを記録したLPで、発売されたのは1969年らしいのですが、そのジャケ写からしても、一応は主役のレスリー・ウェストのリーダー盤でありながら、同時にマウンテンというクレジットも入っているあたりが意味深です。

そして中身は元祖ハードロック王者だったクリーム直系の音楽スタイルと、これぞっ、まさに「ロックの音」が封じ込められた骨太な歌と演奏が楽しめるのです。

 A-1 Blood Of The Sun
 A-2 Long Red
 A-3 Better Watch Out
 A-4 Blind Man
 A-5 Baby, I'm Down
 B-1 Dreams Of Milk & Honey
 B-2 Storyteller Man
 B-3 This Wheel's On Fire / 火の車
 B-4 Look To The Wind
 B-5 Southbound Train
 B-6 Because You Are My Friend

と、書きながら、実はサイケおやじは初めてこれを聴いた時、失望したのが本音です。

何故ならばマウンテンといえば、以前にご紹介した人気盤「悪の華」でブレイクした後、クリームの魅力を蘇らせたドロドロにエグイ長尺アドリブ演奏を収めたライプ盤、あるいはギンギンにハードで泣きまくるギターや予想外にメロディアスな楽曲をウリにしたスタジオ録音盤という、如何にも当時のLPメインの洋楽ファンにアピールする制作方針を貫いていましたから、上記の演目をご覧になれば、1曲単位の演奏時間が短いトラックばかりでは消化不良の先入観は免れません。後追いでの負目も、当然あります。

実際、良いところで終ってしまう演奏ばっかりなんですねぇ……。

しかし同時に、妙に味わい深いというか、何度も聴きたくなってしまう中毒症状が隠されていたのも、また事実でした。

それは丁寧に作られたオリジナル曲の良さというのも、その秘密でしょう。

ただし、もっと訴えかけてくるのが、その「ロック的な音」の素晴らしさです。

このあたりは実際に聴いていただくのが一番で、私の文章ではとても表現出来ない感覚ではありますが、あえて言えば、「生々しさ」と「イキの良さ」でしょうか。ワイルドなボーカル、ベースのウネリ、ギターの泣きやカッティングのエグ味、さらにドカドカうるさいドラムスの鳴り! そういうものが、実際の現場ではダビングの作業も当然あったはずですが、見事に一発録りのナチュラル感に満ちているのです。しかも各パートの分離が素晴らしく良いのに、絶妙の団子状というか、グッと前に出て来る感じなんてすねぇ♪♪~♪

例えば冒頭の「Blood Of The Sun」では終始、同じリフをユニゾンでやりまくるギターとベースが左右のチャンネルに分かれていながら、真ん中に定位しているボーカルとドラムスを強烈に煽りつつ、イヤミなほどに「出しゃばり」です。なんとギターソロも無いのに、この熱いロック魂はっ!?!

また強烈な16ビートカッティングがハードロックギターのひとつのお手本となった「Better Watch Out」や「Long Red」でのアコースティックギターの主役度数が、完全に従来のハードロックを超えた存在感で、それはつまり「音作り」の良さじゃないでしょうか。

もちろんレスリー・ウェストならではの「泣きのギター」という魅力も御座なりにされず、「Blind Man」での正統派ブルースロックやエリック・クラプトンに敬意を表したウーマントーンが嬉しい「Baby, I'm Down」は、わかっちゃいるけど、やめられない♪♪~♪

ちなみに、このアルバムでのメンバーはレスリー・ウェスト(vo,g)、フェリックス・パパラルディ(b,key)、ND・スマート(ds) の3人組に加え、数名ゲストが参加していると言われていますが、やはりクリームを実質的に「作っていた」フェリックス・パパラルディの思惑がありますから、レスリー・ウェストも安心して身を任せたというところでしょうか。激情入れ込み型の歌いっぷり、泣き上戸気味のギターも冴えまくりですよ。

それはB面ド頭収録にしてライプでも定番となる「Dreams Of Milk & Honey」で、さらに遺憾なく発揮され、わずか3分半の演奏でありながら、相当に満腹感があります。う~ん、このギターソロとバタバタしたドラムス、蠢くベースの魅力には本当に血沸き肉躍りますねぇ~♪

またアメリカンハードの本領を聞かせてくれる「Southbound Train」、それとは対照的に英国流サイケデリックロックに拘った「Look To The Wind」という二律背反主義も潔いかぎりですし、スワンプロックの先駆けっぽい「Storyteller Man」、アコースティックギターの弾き語りで美しいメロディを歌ってくれる「Because You Are My Friend」は、来るべきシンガーソングライターの流行時代を予見していたのでしょうか。

まさに1969年という微妙な時代の分岐点に作られたのも、全く不思議の無いところでしょう。

その意味で、ご存じ、ボブ・ディランやザ・バンドで有名な「火の車」をハードロックで作り返した目論見は、ズバッと直球のど真ん中! 本当にクリームがやったら、こうなりますよっ! そうとしか言えないほど、フェリックス・パパラルディのプロデュースとバンドが一丸となった歌と演奏が、このアルバムのハイライトかもしれません。

ということで、長いギターソロやアドリブ合戦がありませんから、マウンテンの本領にシビレている皆様には物足りないアルバムでしょう。しかし「ロックの音」を自然体感出来る観点からすれば、これはビートルズの「アビーロード」と並び立つ、1969年の傑作じゃないでしょか。

もちろん収録各曲の密度も、聴くほどに感服する次第です。

やっばりマウンテン、最高♪♪~♪


エレキ歌謡だっ、ヨコハマ野郎!

2010-02-04 15:52:24 | 日本のロック

ヨコハマ野郎 / テリーズ (キング / ロンドン)

長年の念願叶って、ついに入手出来ましたのが、本日ご紹介の人気盤「ヨコハマ野郎」♪♪~♪

GSブーム全盛期に活躍した実力派のテリーズが昭和43(1968)年春、レコード会社を移籍して発売した、おそらく通算3枚目のシングルだと思います。

いゃ~、何度聴いても、このエレキ歌謡の傑作「ヨコハマ野郎」は最高ですよっ!

しかし実はB面扱いというのも微妙なところで、そのA面に収められた「バラの想い出」は、ちょっと気恥ずかしくなるようなメルヘンチックな恋の歌なんですよ。ほとんど青春歌謡みたいなイントロからのコーラス、自前だと思われる演奏もエレキバンドとしての実力を発揮することが出来ないアレンジで……。

それゆえにB面の「ヨコハマ野郎」の素晴らしさが際立つわけですが、実際、ダイナミックなグルーヴが炸裂するバンドの纏まり、イントロや間奏でキメまくりのツインリード、そして曲メロを活かしきったアドリブラインを聞かせてくれる、これぞ真髄のエレキギター♪♪~♪

もちろん楽曲そのものの出来も出色で、横浜の素敵な風景やムード、お洒落な恋愛を夢いっぱいに綴った歌詞とメロディの素晴らしさを見事に演出するアレンジも、まさに秀逸の極みで、爽やかさと湿っぽさを併せて表現するボーカルを見事に盛りたてています。

ちなみにA面の「バラの想い出」もそうですが、この「ヨコハマ野郎」にしても、テリーズはエレキバンドとしての演奏の上手さと共に、コーラスワークも良いですねぇ~♪

しかし現実的にはヒットすることもないまま、埋もれてしまったのが本当のところ……。

ちなみにテリーズは同年秋頃に、これもGSの隠れ名盤「森かげの小道 c/w サンセット・リバーサイド」を出した後、残念ながら解散するのですが、寺内タケシの薫陶によるサウンド作りが、当時としては如何にもお洒落過ぎたのかもしれません。

機会があれば、ぜひとも、お楽しみ下さいませ。


小山ルミのマイナー歌謡曲も好き♪

2010-02-03 13:48:27 | 歌謡曲

ひとりぼっちのレモンティーc/wたずね人 / 小山ルミ (ユニオン)


哀愁を表現する楽器として、私はマンドリンが大好きなんですが、それが歌謡曲に応用された名曲もまた、私は愛聴して止みません。

本日ご紹介のシングル曲「ひとりぼっちのレモンティー」も、全くその中のひとつで、歌っている小山ルミにとっては2枚目のシングル盤A面に収録され、昭和45(1970)年1月に発売されたものです。

とにかくマイナー歌謡曲の典型ともいうべき、せつない曲調を導くイントロのマンドリンが絶品の存在感で、それを彩るストリングスとイナタイ雰囲気のリズム隊のもっさりしたグルーヴが、見事に湿っぽい彼女の歌を演出しています。

そしてサビの展開が、ほとんど奥村チヨ調というか、後の名曲「終着駅」を完全に想起させられる素晴らしさなんですねぇ~♪

ちなみに作曲は、こういう雰囲気が今では信じられないという村井邦彦ですが、実はひたむきな乙女心を綴ったなかにし礼の歌詞が秀逸ですから、もしかしたら「詞先」だったのかもしれません。しかも編曲が、これまた私の敬愛する森岡賢一郎なのも、その秘密の鍵かもしれませんねぇ~♪

今となってはハーフのセクシータレント&歌手として一世を風靡した小山ルミのイメージとして、またジャケットのムードからしても、この曲調とアレンジ、及び歌詞の世界は似つかわしくないと思うのが、後追いで楽しむ皆様のお気持ちでしょう。

しかしリアルタイムのファン、あるいはイノセントな歌謡曲好きには、絶対にたまらない名曲名唱だと確信しています。

その意味でB面収録の「たずね人」も同系の地味なマイナー歌謡曲の決定版! しかしサビの4ビートな展開で控えめな情熱を解放する小山ルミの歌いっぷりは、もう、最高♪♪~♪ ちなみに、このトラックも作詞:なかしに礼、編曲:森岡賢一郎のコンビに作曲で鈴木邦彦が加わった、個人的には大好きな昭和歌謡の輝けるトライアングルとして、その英国ポップスの歌謡曲的な解釈が絶品ですよ。

ということで、どうして本日がこのシングル盤かというと、実は昨夜に開かれた安治川親方の会見をテレビで見ていたら、この「ひとりぼっちのレモンティー」のイントロを自然に口ずさんだ自分に気がついたからなんですよ。

どういう経緯で所謂「裏切り」を実行し、それを告白したのか、憶測は様々あっても真相は知る由もありません。しかし、どこか哀しいものがあるのは確かでした。

世の中には、そんな出来事や場面が幾つもあるわけですが、そんな時にジャストミートするのは、日本人なら、やっぱり昭和歌謡曲なんですかねぇ……。

別にそれに賛同出来なくとも、この小山ルミのレコードは素敵♪♪~♪

そう思っていただけるだけでも、本日ご紹介したサイケおやじは本望です。


4人が揃えば全盛期

2010-02-02 15:13:59 | Beatles

The Beatles At Shea 1965
      Genuine Edition with Naked Sound (Innergrove = Bootleg 2 Disc Set)

ビートルズの全盛期を何時にするか、もちろん様々な解釈があるわけですが、ショウビジネスという観点からすれば、それは1965年であったかもしれません。

それ特に実感するのが、当時としては画期的な大イベントになったニューヨークのシェアスタジアムで、なんと5万5千人以上の観客を動員するという破天荒な野外コンサートをやってしまったことです。そしてその模様はテレビ放送の企画としてフィルム撮影され、まず翌年、BBCによって英国で白黒放映され、さらに翌々年になってようやく米国でカラー放送されたわけですが、その狂騒とロック黄金時代の実相は、後に劇場用フィルムやビデオとなって、ビートルズの凄さを後世に伝えています。

しかし同時に、今日では、その一般公開されている放送用フィルムが諸事情により、様々な手直しや詐術の入ったフェイクだったことが明らかになっており、そこで本日ご紹介のCDとDVDRによる2枚組セットのブツによって、それがますますリアルに楽しめるのですから、いくら商売優先のプート屋の企みだったとしても、サイケおやじは喜んで先週末、餌食になったというわけです。

そして結論からいうと、これまでの似たようなプート物の中では最良の仕事!

まず映像のパートですが、前述の放送された番組の構成ではビートルズの演奏シーンをメインにしながらも、前座ミュージシャンの出演場面、観客の熱狂、舞台裏や回想等々が混在した編集によって、必ずしもビートルズのライプだけをストレートに楽しめませんでした。

しかも既に述べたとおり、当時のライプステージの音響システムや録音機材の事情から、残されたマテリアルは完全ではなく、特に音響関係の不備は決定的でした。そこで番組用に編集するにあたり、スタジオでのオーバーダビングでボーカルや演奏に手直しが施され、つまりそれはリアルなシェアスタジアムでのライプ音源ではなかったのです。

そこを今回のブツは、まずビートルズが実際に演じたライプ音源をサウンドボードで調達し、残されているライプ映像にシンクロさせるという丁寧な仕事に愛情がいっぱい♪♪~♪

しかも当日に至るビートルズの行動をニュース映像や例のエド・サリバン・ショウ出演場面のダイジェストで繋ぐというドキュメントタッチの編集が、これまた秀逸です。

☆DVDR:約110分
※Exclusive Opening Footage
 01 Opening Montage
(sound;Help!)
  02 JFK Airport Special Area Arrivals (8月13日 / 字幕入)
 03 Press Conference Warwick Hotel, NYC
(同 / 字幕入)
 04 Ed Sullivan Show Footage (8月14日収録 / 9月12日放送ダイジェスト)
 このパートは1965年夏の北米巡業、その幕開けとなったシェアスタジアムでのコンサートへ向けてのビートルズの動向が、当時のニュースフィルムやテレビ出演録画映像から時系列的に編集されています。
 特に混乱を避けてファンが集合出来ない特別エリアの飛行場に降りたビートルズ、ファジーな記者会見等々は、これが歴史に残るスーパースタアの実相だったという温故知新かもしれませんね。日本語字幕入りですから、今となっては様々な面白さが楽しめますよ。メーカーが独自に入れた解説字幕も親切です。

※Live At Shea 1965 / A Complete Edit with Real Live Sound (8月15日 / 字幕入)
 05 Opening
 06 Introduction

 07 Twist And Shout
 08 She's A Woman (sound only)
 09 I Feel Fine
 10 Dizzy Miss Lizzy
 11 Ticket To Ride
 12 Everybody's Trying To Be My Baby
(sound only)
 13 Can't Buy Me Love
 14 Baby's In Black
 15 Act Naturally
 16 A Hard Day's Night
 17 Help!
 18 I'm Down

 いよいよ本番のコンサートライプは、当時から言われていたように、メンバーのテンションが異様なほどに高いです。日頃は冷静なポールまでもが「A Hard Day's Night」ではリズムとビートを外した歌いっぷりとか、ジョンは自己流儀のハナモゲラ語のMC連発、ジョージのコケまくるギタープレイはご愛嬌ですが、リンゴも「Act Naturally」では調子っぱずれのオトボケが憎めません。
 まあ、このあたりは一説によると、アレでキメていたのかもしれませんが、やはり今では歴史の大観衆とショウビジネスの頂点に立ったというビートルズ本人達の気分の高揚があったのではないでしょうか。
 当然ながら終始熱狂する観客の様子も生々しく映し出され、フェンスを乗り越えたり、失神して運ばれるアメリカのおねえちゃん達の姿やファッションにも、青春の思い出以上のものがあろうかと思います。
 また歴史的にも8月11日には映画「ヘルプ」が封切公開され、13日にはサントラアルバムの「ヘルプ」が発売された最高のタイミングでの巡業スタートであれば、その場の熱気と騒乱も必然でした。
 肝心の歌と演奏、そして映像では、まず「Twist And Shout」が初っ端からジョージのギターがヘタレを演じ、「I Feel Fine」と「Help!」ではボーカルパートの一部が音響か録音システムの不備で聞こえなくなり、もちろんステージモニターも完備されていない時代のライプ演奏とあっては、他の曲の諸々にも拙い点は散見されますが、逆に言えば、ここで追体験出来る喧騒の中で、これだけの纏まったパフォーマンスを演じたビートルズの叩き上げの実力は流石の一言!
 しかしテレビ放送用の素材となれば話は別で、後に細述しますが、幾つかの曲でリメイクやダビングを施したのが、一般に流通しているシェアスタジアムの記録なのです。
 ちなみに、このブツでは演奏曲順を実際のプログラムどおりに編集してありますが、残念ながら「She's A Woman」と「Everybody's Trying To Be My Baby」は素材が現存していないのか、その2曲に限ってはスチール映像が使用されていますので、念のため。
 それと画質なんですが、これまでのブツの中では最良のリマスターが施されています。しかし、それでも例のアンソロジープロジェクトで部分的に使われたシーンの画質に比べると、落ちることは否めません。というか時折、ハッとするほど良い画質が現れるのは、そこからの流用だと思われますが、それでも例えば「Ticket To Ride」とか、ジョンとポールがひとつのマイクで一緒に歌う場面あたりには胸が熱くなること請け合いです!

※abc-TV Broadcast Version
 01 Color Bars
 02 Arthur Fiedler Intro
 03 Programme Opening
 04 I'm Down
 05 (ステージ準備)
 06 Murry The K
 07 The Discotheque Dancers
 08 King Curtis Band
 09 Brenda Holloway
 10 Sound Incorporated
 11 Shea Back Stage
 12 Ed Sullivan Introduction
 13 Twist and Shout
(Shea + Hollywoodbowl Remix)
 14 I Feel Fine (re-make vers.)
 15 Dizzy Miss Lizzy (dubbed bass)
 16 Ticket to Ride (re-make vers.)
 17 Act Naturally (studio LP vers)
 18 Can't Buy Me Love (dubbed bass)
 19 Baby's in Black (dubbed guitar)
 20 Hard Day's Night
 21 Help!
(re-make vers.)
 22 I'm Down (dubbed bass & organ)
 24 ABC Slate - "Invaders" Advert (番組予告)
 こちらのパートは実際にテレビ放送された素材を収めていますが、前述したとおり、曲順もビートルズの動向も編集によって実際とは異なりますし、前座ミュージシャンや解説、ドキュメント等々が入っていますから、これしか無かった頃はありがたかったものが、今では別角度からの楽しみが満載という仕上がりです。
 それは上記のように、各演目に手直しが入っていることに顕著で、「I Feel Fine」「Ticket to Ride」「Help!」のスタジオでのリメイクは、1966年1月5日と記録に残されていますから、その他のペースやオルガンのダビングも同時期と思われます。
 そして「Twist and Shout」が、なんとハリウッドボウルの、多分1965年のライプ音源でしょうが、それとミックスして作られたバージョンという真相には吃驚仰天! ちなみに、そうした注釈はジャケット裏に記載があるわけですが、問題のハリウッドボウルの演奏は、今や幻化している唯一の公式ライプ盤「アット・ザ・ハリウッドボウル」にも収録されていますからねぇ~~、感慨深いですよ。
 しかし、それにしても、リンゴがリアルタイムでやってしまった調子っぱずれは、流石にレコードからの音源に差し替える他はなかったというのが、いやはやなんともですねぇ。それと「Hard Day's Night」でのポールのミスは、回想談話を重ねることで逃げています。
 また映像的な面白さとしては、前座で登場のダンサーグループが演じるゴーゴーシーンで、当時のファッションとボディラインが素敵に楽しめる彼女達を見ているだけで、嬉しくなるのはサイケおやじだけでしょうか、ふっふっふっ♪♪~♪ まあ、それはそれとして、当時の狂乱を今に伝える手際の良い編集は、見事だと思います。
 気になる画質は「-A」程度ですが、これまで出回っていた正規版ビデオよりは良いと思います。

※abc-TV Old Master Version / sample short edit
 24 Color Bars - abc slate
 25 Opening
 26 Twist and Shout / I'm Down
 27 Ending
(abc TV slate)
 こちらのパートは、おまけというか、テレビ放送用のテスト素材だと思われます。

☆CD
※Uncensored Soundboard Live Mix / Aug.15,1965

 01 Opening
 02 Twist And Shout
 03 She's A Woman
 04 I Feel Fine
 05 Dizzy Miss Lizzy
 06 Ticket To Ride
 07 Everybody's Trying To Be My Baby
 08 Can't Buy Me Love
 09 Baby's In Black
 10 Act Naturally
 11 A Hard Day's Night
 12 Help!
 13 I'm Down
※abc-TV Original Soundtrack '66 Mix
 14 I'm Down
 15 Ed Sullivan Introduction
 16 Twist and Shout
(Shea + Hollywoodbowl Remix)
 17 I Feel Fine (re-make vers.)
 18 Dizzy Miss Lizzy (dubbed bass)
 19 Ticket to Ride (re-make vers.)
 20 Act Naturally (studio LP vers.)
 21 Can't Buy Me Love (dubbed bass)
 22 Baby's in Black (dubbed guitar)
 23 Hard Day's Night
 24 Help!
(re-make vers.)
 25 I'm Down (dubbed bass & organ)
 こちらは映像から関連音源だけを抜き出しものです。
 既に述べたように、テレビ放送バージョンの纏まり具合に比べ、リアルなライプバージョンの生々しさが、今となってはたまらないところだと思います。
 しかも映像では些かのトホホも、実は音源だけ聴いていると、そのバンド演奏の楽しさというか、なかなかのロック的な迫力は否定出来るものではないでしょう。もちろん公式の素材を利用していますから、音質的には何ら問題なく聴けますよ。
 私は好きです。

※Anthology 2003 Stereo Mix
 26 I Feel Fine
(Re-make vers.)
 27 Baby's in Black (dubbed guitar)
 28 Help! (re-make vers.)
 29 I'm Down (dubbed bass & Organ)
 このパートはアンソロジープロジェクトで使われた関連音源で、最新のリマスターが施されたステレオバージョンということになっていますが、正直、疑似ステレオっぽい音の広がりが懐かしくも面映ゆいです。
 ただ、映像パートのところでも書きましたが、願わくば残されている映像と音源の完全版リマスター作品の発売は、本当に望まれるところです。

ということで、ビートルズ全盛期を楽しむには最適のブツだと思います。

恐らくは公式再発計画の中にきっちり組み込まれてはいるんでしょうが、それが何時なるかは知る由もなく、結果的にプートに光明を見出すという悲喜こもごもの繰り返し……。だからプートはやめられないし、需要があるから無くならないという言い訳も、このブツの前には無用でしょう。

やはり4人が揃っている映像に接することは、せつなくも幸せな気分になりますね。


5年ぶりのローラ・ニーロ

2010-02-01 12:55:42 | Laura Nyro

Smile / Laura Nyro (Columbia)

大好きな歌手の新譜が出ることは、音楽ファンにとって至上の喜びですよね。

本日の1枚は私にとって、まさにそんな思いの結実というか、昭和51(1976)年早春に出た、ローラ・ニーロが実に5年ぶりの新作でした。しかも前作「ゴナ・テイク・ア・ミラクル」がカパー曲ばかりだったのに対し、こちらはオリジナル中心という情報が既に入っていましたから、もう辛抱たらまん状態のサイケおやじは輸入盤屋に予約まで入れていたという当時の心境の熱さは、今も変わりません。

そして入手したこのLPには、全くローラ・ニーロでしかない、伸びやかな声で表現される素敵なメロディと深い言葉で綴られた魂の歌がぎっしり!

 A-1 Sexy Mama
 A-2 Children Of The Junk
 A-3 Money
 A-4 I Am The Blues
 B-1 Stormy Love
 B-2 The Cat-Song
 B-3 Midnite Blue
 B-4 Smile

実はここまでの経緯として、その5年の間にはローラ・ニーロ自らの結婚と離婚、さらに最愛の母親との死別という出来ごとがあったそうです。

ですから歌われる内容はシニカルで自嘲的な視点を含みながら、この世の愛の姿と現実を時には冷たく、また夢見るように暖かく描いているのですが、そうした彼女の表現をバックアップするセッションメンバーが、これまた当時のニューヨークでは超一流の面々で、ジョン・トロペイ(g)、ヒュー・マクラッケン(g)、ジェフ・ミロノフ(g)、ジャン・ニグロ(g)、ウィル・リー(b)、リチャード・デイビス(b)、アラン・シュワルツバーグ(ds)、リック・マロッタ(ds)、クリス・パーカー(ds)、デイヴィッド・フリードマン(vib)、ランディ・ブレッカー(tp)、ジョー・ファレル(sax,fl)、ジョージ・ヤング(sax,fl)、マイケル・ブレッカー(sax,fl) 等々、震えがくるほどです。

しかもプロデュースを担当したのが東海岸ポップスの名匠たるチャーリー・カレロですから、ローラ・ニーロは歌と多重録音を駆使したコーラス、そしてピアノばかりでなく、なんとギターまでも弾くという意欲が新しい出発に相応しいところでしょう。

そして、と書いていながらA面ド頭が、これまた私が大好きなスイートソウルのモーメンツが1974年に放ったヒット曲「Sexy Mama」のカパーなんですから、たまりません♪♪~♪ いきなり「ストレンジ……!」なんていうローラ・ニーロの独り言があってのイントロの生ギターからジャズ風味のポリリズム、むせび泣くサックス、しぶといエレギギターの伴奏を得て、彼女だけの味わいが滲む節回しの妙こそ、ファンには感涙♪♪~♪ このアルバムでは唯一の他人の曲が、この仕上がりという嬉しさですよ。

実は裏ジャケットには、おそらくはローラ・ニーロ本人の手書きと思われるクレジットや歌詞がびっしり入っているんですが、それゆえに読みにくいところもありますから、現実的にはレコードを聴いて納得する部分が多く、その意味では用意周到な企みだったかもしれません。

それは後に発掘されたライプ音源で明らかにされたように、既に1970年代初頭から演じていた「Children Of The Junk」や「I Am The Blues」で、尚更に研ぎ澄まされ、完成度と説得力が強くなった表現に顕著だと思います。特に後者はランディ・ブレッカーのアドリブソロも含めた全体のアレンジとローラ・ニーロの弾き語りっぽいピアノ&ボーカルの存在感のが素晴らしいコラポレーション!

また、その前段として置かれたアップテンポの「Money」は当時最先端のフュージョン系AORが、ローラ・ニーロという冷静で情熱的なフィルターを通過して完成された事実を記録した人気トラック♪♪~♪ メリハリの効いたリズム隊のグルーヴ、マイケル・ブレッカーが自分の「節」をイヤミなく聞かせるアドリブソロ、多層的なコーラスの彩りも鮮やかすぎますよ♪♪~♪

そしてB面が、これまたローラ・ニーロ的桃源郷の素晴らしさ!

ギター主体の緻密な演奏バートも凄いの一言ですが、それにもまして愛の別れと新しい出発を強い決意で歌ってくれるローラ・ニーロは、やっぱり不滅です。特に最終盤のハミングと独白のフレーズは、涙が滲んで、胸キュンの禁じ手じゃないでしょうか。

さらに「The Cat-Song」は彼女が十八番の猫の歌を素直に表現しつつ、しかし全体のカラフルでハートウォームな仕上がりはニクイばかりですよ。「吾輩は猫である」のローラ・ニーロ版かもしれませんね。彼女は、読んでいたんでしょうか。

というホノボノとした時間がせつなくなるほど、続く「Midnite Blue」は悲壮なほどに愛する人への想いを歌い、それが実にジャズっぽい演奏パートと激しく対峙するのです。

また、そんなギスギス寸前の表現が、次曲の「Smile」ではイントロに入っている琴の音色で和らげられるというプロデュースも絶品! アルバム全篇で印象深い活躍のリチャード・デイビスのペースが、ここでも凄い音を聞かせてくれますし、ジョージ・ヤングのフルートとテナーサックスも流石ですから、最終パートの琴をメインにしたモダンジャズ的な展開も面白く、ですからローラ・ニーロのボーカルも素敵な余韻を残すんでしょうねぇ~♪

ということで、私には特に思い入れが強いアルバムなんですが、残念ながら世界的にも、それほどのヒットにはならなかったようです。

実はアメリカでは、この作品発表に合わせたプロモーションツアーとライプレコーディングが行われましたから、来日公演を楽しみにしていたんですがねぇ……。

ただし、このアルバムを実際に聴いた皆様には百も承知の事実として、我国の吉田美奈子や矢野顕子が如何にローラ・ニーロからの影響を強く受けているかは、言うまでもないでしょう。

また驚いたというか、嬉しかったのは、これが出たのと同じ年に作られた山下達郎の本格的なソロデビュー盤「サーカスタウン」のA面には、共通するメンツがセッションに参加していたという事実にぶつかったことです。

これまでも度々述べてきたとおり、私はローラ・ニーロ、吉田美奈子、山下達郎、さらにアル・クーパーやトッド・ラングレンという、何時も同じような曲ばっかり作って歌う人が大好きなんですが、それにしても、そんな好みが現実化していたという偶然は、もはや「偶然」なんていう言葉では表せませんよね。

私も「業」が深いなぁ~、なんて本日も自嘲するばかりです。