※写真は完成した灌漑水路の様子
アフガンのテロ撲滅と称して「国際協力」という名目の軍事協力が問題になっている。アメリカを中心とした爆撃でタリバンの拠点に激しい空爆をし多くのアフガン農民が避難民となり死傷している。
私が尊敬する中村哲氏はこのアフガンの地の医療、灌漑の為に半生を捧げ、その資金作りのために日本にペシャワール会を組織して政府のひも付きでない活動を続けている真の国際人である。
その中村氏がペシャワール会の年頭の挨拶に次のように述べている。
テロ特措法が焦点になり、日本の国際協力のありかたが根底から問われようとしているとき含蓄の深い言葉である。
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「2006年度の活を振り返って」 中村哲
皆さん、お元気でしょうか。
いつもの暑い暑い夏がやってきました。この一年をふりかえると、随分と多くのことがありました。
ペシャワール会の現地活動は、今年6月を以て、24年目に入った。毎年、報告書を書こうとすれば、「激動」だの、「流動的情勢」だのという表現がやたらに多
い。気がつくと、動いていたのは周りの方で、私たちが努力してきたのは、いつも
出発点に帰ることであった。換言すれば、時代遅れになったということだ。また、国際的でもない。知るのは九州とアフガン東部だけである。それでも難儀しているのだから、優れて地域的な骨董品だと云える。この4年間、用水路工事で河との戦いを通じて、特にそう思った。
だが骨董品といえども、バカにはできない。日本の古い水利施設を見ていると、過去は現在を知る無尽蔵の宝庫である。真似て良くないこともあるが、徒 に進歩や改革を繰り返して失うことも多い。何だか目まぐるしくなるばかりで、本来私たちが持っていた寛容さ、律儀さ、自然との同居の知恵、人間らしさが退化しているようにさえ思われる。
「テロとの戦い」に拳を振り上げ、殺戮を繰り返すことが「進歩」だとは思わない。景気回復で貧富の差を増し、華美と精神の貧困が蔓延することが「改革」だとは信じない。この進歩改革の妖怪が、普遍的な真理のごとく、「世界の骨董国・アフガニスタン」に来襲して多くの血を流し、人々を追い詰めたのである。
戦を語り、政情を語ることにも疲れてきた。時代の流れに乗るのは、なおさら疲れる。変わらぬものは変わらないし、虚構は一時的に力を振るっても、長くは続かないからだ。
異国の人々がやってきて、改革を叫んでは血が流れ、評論と虚偽がはびこり、そして去ってゆく。しかし、確たる事実は、彼らが何を守ろうとしているのか不明だが、我々には守るべき人間としての営みがあることである。敢えて信念らしきものがあるとすれば、これに尽きる。私たちの活動をささえるものは、それ以上でもそれ以下でもない。
07年度も、なおさら変わらず、仕事を続けて行きたい。
※ペシャワール会について感心のある方は「ペシャワール会」または「中村哲」で検索ください。
アフガンのテロ撲滅と称して「国際協力」という名目の軍事協力が問題になっている。アメリカを中心とした爆撃でタリバンの拠点に激しい空爆をし多くのアフガン農民が避難民となり死傷している。
私が尊敬する中村哲氏はこのアフガンの地の医療、灌漑の為に半生を捧げ、その資金作りのために日本にペシャワール会を組織して政府のひも付きでない活動を続けている真の国際人である。
その中村氏がペシャワール会の年頭の挨拶に次のように述べている。
テロ特措法が焦点になり、日本の国際協力のありかたが根底から問われようとしているとき含蓄の深い言葉である。
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「2006年度の活を振り返って」 中村哲
皆さん、お元気でしょうか。
いつもの暑い暑い夏がやってきました。この一年をふりかえると、随分と多くのことがありました。
ペシャワール会の現地活動は、今年6月を以て、24年目に入った。毎年、報告書を書こうとすれば、「激動」だの、「流動的情勢」だのという表現がやたらに多
い。気がつくと、動いていたのは周りの方で、私たちが努力してきたのは、いつも
出発点に帰ることであった。換言すれば、時代遅れになったということだ。また、国際的でもない。知るのは九州とアフガン東部だけである。それでも難儀しているのだから、優れて地域的な骨董品だと云える。この4年間、用水路工事で河との戦いを通じて、特にそう思った。
だが骨董品といえども、バカにはできない。日本の古い水利施設を見ていると、過去は現在を知る無尽蔵の宝庫である。真似て良くないこともあるが、徒 に進歩や改革を繰り返して失うことも多い。何だか目まぐるしくなるばかりで、本来私たちが持っていた寛容さ、律儀さ、自然との同居の知恵、人間らしさが退化しているようにさえ思われる。
「テロとの戦い」に拳を振り上げ、殺戮を繰り返すことが「進歩」だとは思わない。景気回復で貧富の差を増し、華美と精神の貧困が蔓延することが「改革」だとは信じない。この進歩改革の妖怪が、普遍的な真理のごとく、「世界の骨董国・アフガニスタン」に来襲して多くの血を流し、人々を追い詰めたのである。
戦を語り、政情を語ることにも疲れてきた。時代の流れに乗るのは、なおさら疲れる。変わらぬものは変わらないし、虚構は一時的に力を振るっても、長くは続かないからだ。
異国の人々がやってきて、改革を叫んでは血が流れ、評論と虚偽がはびこり、そして去ってゆく。しかし、確たる事実は、彼らが何を守ろうとしているのか不明だが、我々には守るべき人間としての営みがあることである。敢えて信念らしきものがあるとすれば、これに尽きる。私たちの活動をささえるものは、それ以上でもそれ以下でもない。
07年度も、なおさら変わらず、仕事を続けて行きたい。
※ペシャワール会について感心のある方は「ペシャワール会」または「中村哲」で検索ください。