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今後の世界経済情勢に関わって(2)  文科系

2008年07月29日 11時24分49秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
経済動向を現象的・断片的に知るのと、その全体を根本から捉えるのとは、全く違ったものだろう。その知識の応用力や将来予測の確かさやを、決定的に左右するからである。あれこれの断片、現象だけをとらえれば「アメリカもまだまだ何とかなる」とか「5年で改善に向かう」と言うことができるようでも、根本から捉えれば、こうなることもありうるのだ。日本有数といわれるあるアナリストの見解を先回ご紹介したように、「アメリカの株価が上がり始めるには20年はかかる」と。これに比べれば、日本の「失われた10年」など小さなものだと言えるのではないかと、こういうことも前回に見た。アメリカのバブル弾けは、消費不況、資金の流動性滞留、就職氷河期などとなって、一体いつまで続くことだろうか。

さて、今のアメリカ・世界経済の「全体の根本」とは何か。言うまでもなくサブプライム住宅ローン組み込み証券と並んで、素人には非常に難しいデリバティブ(の破綻)問題があろう。
このデリバティブ、理論は勉強すればなんとか手に負えても、その実態は、全く世に知らされていないのである。公開・規制の法律が全く不備だし、行動を極秘にしておいた方が儲けやすいのだし、破綻したら破綻したで今度は世界景気への大きすぎる影響からこれをひた隠しにしなければならない。実態の全貌が一気に知れ渡れば、「失われた30年」にもなるかも知れないのである。

大破綻の予兆は1995年、イギリス名門銀行ベアリングズ社の倒産だと言われている。たった1人のデリバティブ・トレーダー(当時28歳だった)がアジアで7000億円の損失を出して、そうなった。日本の大会社が直接間接に大被害を受けたこの大事件は、影響の大きさゆえに英国国家が大銀行を集めて救済対策会議を持ったけれど、デリバティブの性質上、白紙の小切手を切るのと同様の無限責任となるといった様相と認識して、その救済を諦めたということだった。アメリカのデリバティブでは、1998年のLTCM社(ロングターム・キャピタル・マネージメント)、次いで2001年のエンロンの破綻が有名だ。

そしてさて、アメリカ国家はこの5月、大手証券会社ベア・スターンズに公的資金を注入した。ベア・スターンズ傘下の大ヘッジファンドがサブプライムローン組み込み債券投資が原因で破綻したからだ。個人金融資産などに余裕があって護送船団方式を取る日本と違って、アメリカ政府の民間会社への資金注入は世界大恐慌の1929年以来のことである。その影響が半世紀単位ぐらいの大きなことだと米政府も見たからに他ならないだろう。それぐらいの非常事態が起こっているということである。もっとも、これでさえ、まだまだ氷山の一角なのではないか。なにしろ、デリバティブの金額、損失はそれぐらいに大きすぎるのだ。その全体を一応ながめておきたい。

デリバティブ残高は、国際決済銀行発表でこうなっている。
「国際決済銀行(BIS)の最新の調査によると、昨年(06年)6月末から今年(07年)6月までの12ヶ月間で、店頭デリバティブ契約の建て玉残高が40%増加して、516兆ドルになった。2005年6月末時点での281兆ドルと比較すると83%増となる」
例えば1ドル100円程度と計算してもこの残高は5京2000兆円である。ただし、これだけのお金が実際に必ず動くというわけではない。デリバティブ売買金額の数%とされている証拠金と、デリバティブ売買の差額分とが実際に動くという仕組みだ。それでも、5京2千兆円の証拠金率を4%としても、2100兆円である。少し前の世界年間総生産が確か30兆ドルほどだったと聞いたから、ここからこの額の大きさを想像して欲しい。また、手元にこんな数字もあったから参照されたい。日本の1999年のGDPが4兆3500億ドルで、今のアメリカのGDPは13兆ドル超である。また、世界のトヨタの売上高は、約21兆円とある(多分05年度?)。
ところで、こんな金額をやりとりするデリバティブの大きい所が一つ潰れたらどうなるか。そこと取引のある会社などから連鎖的に決済不能が出ないはずはないのである。トヨタが潰れたらどれだけの会社が連鎖倒産するか。そう考えながら、先述の4社の破綻を考えてみていただきたいのである。こうして世界は今、大赤字を隠した大会社などをいっぱい抱えているのではないかとも。そして、エンロン倒産と結びついた世界5大会計事務所の一つ、アーサー・アンダーセンがエンロンの粉飾を指弾されて潰れたが、今でも粉飾決算が横行しているのではないかとも。何しろ、エンロンはその破綻直前まで、超優良企業と報告されていたのである。そう報告していたのは、今や企業の命運を左右しうるほどに大きな力を持つにいたったムーディーズなどの「格付け会社」だった。

ちなみに、デリバティブで大損をする例を見てみよう。
Aさんが今、B社の現在高1株千円のもの十万株(総額1億円分)を「3ヶ月後に今の値段千円で買う権利」を持っているとする。そして、AさんがB社の株価は下がるというなんらかの情報をつかんだとする。こんな時のAさんは、この権利を人に売って証拠金3%分(300万円)を稼ごうと動く。株が900円に下がればAさんは9000万円で買った株を相手に与えて1000万円の儲けになるが、この場合は同じく9000万円で買える相手も買う権利を放棄するから、証拠金300万円が丸まる手に入るというわけだ。ところが3ヶ月後に1株1300円と値上がりしたら事態はこうなってしまう。Aさんは、時価で十万株(1億3000万円)を調達して、その株を1億円で相手に渡さなければならない。3000万円引く300万円の損失となる。
デリバティブ関連の世界では、こんな取引が日常的にもの凄い規模で行われているのだ。また、住宅バブル破綻が始まったころなどには、あちこちでその(組み込み)債権を買うデリバティブの権利が放棄されて、証拠金を取られるという事態が起こったはずなのである。

さて、証拠金だけで2100兆円というような世界の中の超大金融企業などで、住宅バブル破綻と相まってこんな事態が起こったとしたらと、考えてみていただきたい。世界経済はもうぐちゃぐちゃになっていて、その全貌は誰も捕まえていないのではないか。さらに、こんな暗い全貌であるものを正しくつかまえられる「世界機関」というものがそもそも存在するのかとも指摘したい。

世界経済は、「ご破算から始める」しかないのではないか。それにしても今後、世界を自由に動き回るこんなに膨大で影響力も大きい金を、一体どんな機関が、どういう法律で見張るのか? 見張る機関も法律もないのに「市場は賢いはず。『規制緩和』だ!」などとしてきたからこういうことになったのではなかったか。なんせ、それ自身が世界のトヨタでさえも目がくらむように膨大な手持ちの金の、その25倍などという取引をして、失敗したら責任を取れるどんな金融機関もないというような金額なのである。


以上、不案内のことを、読んだ本などを参考にして敢えてまとめてみた。世のみんなが絶対に知らねばならないことのはずだが、マスコミなどが論じるのを明らかに遠慮しているようなので、自分の勉強という積もりもあって。
いっぱい誤りがあるかも知れないから、そういう点はご指摘願いたい。
コメント (2)
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