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随筆紹介 「料理嫌い」   文科系

2011年12月03日 17時00分25秒 | 文芸作品
 今回は18日の「つわり」、8日の「キュウリ」と同じ作者 、K.Kさんの作品です。この日本国、いろんな家同士の行き来がどんどん少なくなっていることが、子どもの育ちにどれだけ悪影響しているかと、いつも思うのですよね。自分の家、自分が普通だと、ずっと思いつづけてしまう。あるいは、あるときから逆に全く異常だと思ってしまう。そんなことと以下の作品とは直接的関連は全くありませんが、僕が連想したことでした。


【   料理嫌い K.K

 残暑がようやくおわり、秋の虫たちの声が微かに聞こえてくる。
そんなある日、息子、娘たち家族、妹夫婦、それにホームにいる母も来てくれた。身内ばかりで気を使う必要もないのに、このごろ、家に客が来るのが面倒になった。
 皆が揃って元気な顔を見せてくれるのは嬉しい。でも、気が重くなるのが先だ。準備、後片付け、料理は何にしようか悩む。
 それなら、外食すればとも考える。が、十ヶ月の孫のミルク、離乳食、二歳の食べ散らかしや泣き声など。出費もかさむ。やはり家の方が気楽になる。
 以前はこんなことはなかった。張り切っていたのに。夏の疲れが出たのか。年のせいか。ものぐさかな。そんな自分でもよく分からない、モヤモヤ感があった。
 でもある日、友人に「料理好きと、嫌いの違いかな?」と指摘され納得した。私は料理が苦手。義務で作るだけ。「おいしい物を食べようとする執念がない」と、夫にぼやかれたこともある。彼は料理している時、口笛を吹きながら楽しそうにする。そのためか、筑前煮、肉じゃがなど薄味が好評だ。幼子でも安心して食べさせられると、息子や娘は持ち帰るほどである。
 そう言えば、夫の生家へ、盆、正月などに出かけているが、その時、兄嫁が「今度は料理を持ち寄ろうか?」と、提案したことがあった。料理に自信のない私は、夫にポテトサラダを作ってもらい持って行った。彼の妹さんは、よく分からない凝った品を持参した。この計画は、義姉さんの思い通りにならなかったようで、一回で終わった。お姉さんも料理に頭を悩ましていたのだ。
 私も母が元気なころは、生家へ食事に行くだけでよかったと、懐かしく想い出される。その母もホームに入っている。跡を継いで長女の私の家へ集まるようになったのも仕方ない。
 そこで、料理は夫と妹に任せる。妹もあれこれ工夫するのが好きだ。「失敗しちゃった。でもどうかな?」と悪びれる風もなく、少し焦げた豚肉のカリカリ焼きなどを持って来る。私は場所を提供するだけ。
 すると、気持ちの負担が軽くなった。やはり原因は料理にあった。格好いいのを出さなければ……の気負いがあったのだ。出来もしないのに……。これで客嫌いは返上だ。
 澄んだ空気のなかに、萩の花の匂いが漂ってくる。私の気持ちも澄んできた。】
コメント
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