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保安院の大罪(75) 国会事故調報告「(原因分析)結論」部分の要約① 文科系

2012年07月06日 14時02分23秒 | 国内政治・経済・社会問題
 福島原発事故国会調査委員会の調査報告書が、昨日発表された。早速、委員会サイトに直接アクセスしてみると、ダイジェスト版、要約版、本編と、三つの報告が掲載されている。要約版の中の「はじめに」の部分と、(調査分析)「結論」部分とをまず読んでみた。同じ調査報告が内閣とか東電とかからもすでに出ているが、流石に国権の最高機関という国会事故調だけのことはあって、以下に見るように公正な感じで胸のすくような表現が多い。国権最高機関の委託を受けて唯一強制力を有するこの調査報告によれば、東電以上に規制当局の完敗と言って良い内容と読めたのである。この(調査分析)結論部分最要点を以下に要約してみたい。

 なおここの構成は「認識の共有化」「事故の根源的原因」「事故の直接的原因」「運転上の問題の評価」「緊急時対応の問題」の五つ以下となっているが、この中の2、3番目をここでは扱う。というのは、これ以外の問題点は「この文章はこれから長くやっていくべき調査のまだ中間段階だ」との前置きとか、この二つからの必然的帰結とかと表現されているからである。根源がこんなにいい加減では、いざシビア事故が起これば「現場で打てる手は限られる」とか「いったん事故が発災した後の緊急事故対応について、官邸、規制当局(文科系注 内閣府原子力安全委員会と保安院)、東電経営陣には、その準備も心構えもなく」などの表現に、この2、3番目が事故原因全体に占める重要性が示されている。

 以上の中から本日は先ず、「事故の根源的原因」を抜粋する。

 ここの文末にある最重要結論部分はこんな表現になっている。
『当委員会は、本事故の根源的原因は歴代の規制当局と東電との関係について、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊」が起きた点に求められると認識する。何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である(提言1に対応)。これは規制当局が事業者の「虜」(とりこ)となって被規制産業である事業者の利益最大化に傾注するという、いわゆる「規制の虜(Regulatory Capture)」によっても説明できるものである』

 上記文中の主要部分がこれ以前に長く展開されているわけだが、最初に展開されているこの部分をまず見てみよう。『何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば』について。

『地震・津波による被災の可能性、自然現象を起因とするシビ アアクシデント(過酷事故)への対策、大量の放射能の放出が考えられる場合の住民の安全保護など、事業者である東京電力(以下「東電」という)及び規制当局である内閣府原子力安全委員会(以下「安全委員会」という)、経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」という)また原子力推進行政当局である経済産業省 、(以下「経産省」 という)が、それまでに当然備えておくべきこと、実施すべきことをしていなかった。 平成 18(2006)年に、耐震基準について安全委員会が旧指針を改訂し、新指針として保安院が、 全国の原子力事業者に対して、 耐震安全性評価(以下「耐震バックチェック」という)の実施を求めた。 東電は、 最終報告の期限を平成 21(2009)6月と届けていたが、 年耐震バックチェックは進められず、いつしか社内では平成 28(2016)年 1 月へと先送りされた。』
『東電及び保安院は、新指針に適合するためには耐震補強工事が必要であることを認識していたにもかかわらず、1 ∼ 3 号機については、全く工事を実施していなかった。保安院は、あくまでも事業者の自主的取り組みであるとし、大幅な遅れを黙認していた』
『このように、今回の事故は、これまで何回も対策を打つ機会があったにもかかわらず、歴代の規制当局及び東電経営陣が、それぞれ意図的な先送り、不作為、あるいは自己の組織に都合の良い判断を行うことによって、安全対策が取られないまま 3.11を迎えたことで発生したものであった』

 規制・被規制側の『逆転関係』についてはこう説明されている。
『このような事業者側の姿勢に対し、本来国民の安全を守る立場から毅然とした対応をすべき規制当局も、専門性において事業者に劣後していたこと、過去に自ら安全と認めた原子力発電所に対する訴訟リスクを回避することを重視したこと、また、保安院が原子力推進官庁である経産省の組織の一部であったこと等から、安全について積極的に制度化していくことに否定的であった。 事業者が、規制当局を骨抜きにすることに成功する中で、 「原発はもともと安全が確保されている」という大前提が共有され、既設炉の安全性、過去の規制の正当性を否定するような意見や知見、それを反映した規制、指針の施行が回避、緩和、先送りされるように落としどころを探り合っていた』
『これを構造的に見れば、以下のように整理できる。本来原子力安全規制の対象とな るべきであった東電は、市場原理が働かない中で、情報の優位性を武器に電事連等を 通じて歴代の規制当局に規制の先送りあるいは基準の軟化等に向け強く圧力をかけて きた。この圧力の源泉は、電気事業の監督官庁でもある原子力政策推進の経産省との 密接な関係であり、経産省の一部である保安院との関係はその大きな枠組みの中で位 置付けられていた。規制当局は、事業者への情報の偏在、自身の組織優先の姿勢等から、 事業者の主張する「既設炉の稼働の維持」 「訴訟対応で求められる無謬性」を後押しす ることになった。』

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