昨日、フットボールの欧州杯戦で、なかなかないような番狂わせが二つ起こった。レアル・マドリッドとアーセナルが負けたのである。しかも、二つともドイツのチームに。レアルがドルトムントに、アーセナルがシャルケに負けた。ドイツ2連覇を果たしたドルトムントの勝利は僕としてはここにも書いたように分からないではないが、シャルケの対アーセナル2対0勝利には驚いた。しかもこのチームには日本の内田篤人がいて、このゲームで先発フル出場している。近年のドイツはパスサッカーを取り入れて代表なども急に伸びているが、その成果が出てきたのだと思う。
パスサッカーをドイツが取り入れてきた程度はどうも、同じくこれを急いでいるイングランドよりも速く、深いのではないか。イングランドとしては最もパスサッカーに通じたアーセナルが、ドイツのシャルケに負けたというのがその証拠のような気がする。ドイツではこの2年どこも、香川のいた2連覇ドルトムントのパスサッカーを負かそうと必死になってきたのだから。その成果なのだろう、今年の欧州杯決勝トーナメントには、ドイツの3チームが残る勢いである。代わって没落しつつあるのがイタリア。ひょっとしたら、グループリーグで全滅の可能性さえもある。財政難を抱えたこの国の凋落は、しばらく続くだろう。同じ国家的財政難にあえぐスペインの二つの強豪は、会員制度などチーム独自財政が世界有数に豊かだから、同じく国家的不況の影響は受けていないはずだ。
実は昨日、もう一つの番狂わせもあった。イングランドの昨年度優勝チーム・マンチェスターシティーが、オランダのアヤックスに負けた。しかも3対1で。よってこの激戦グループDの一巡当たり合った段階での順位表はなんとこうなっている。1位がドルトムント(昨期ドイツ2連覇の新鋭)で勝ち点7、2位がレアルマドリッド(昨期スペイン優勝)で同6、3位がオランダ・アヤックスで同4、最下位にマンチェスターシティー(同じくイングランド優勝チーム)が同1。こんな予想をした人は先ず世界にはいまいという大変な大番狂わせと言える。まだ一巡、前半の一当たり目が終わっただけの段階だとしても。
さて、以上の結果を受けて、ザックジャパンを論じてみよう。まだ1巡目だから2巡目の結果を見るまでは正確な資料とは言えないにしても、こんな事が言えるのではないか。
世界最高水準の最新鋭チーム・ドルトムントがレアル戦を勝ったことによって、去年までここのエースとして君臨していた香川真司が世界最先端能力を装備した選手だと証明されたと言える。その香川をとったマンチェスターユナイテッドは、中盤ダイヤモンド型も取り入れるなどパスサッカーで敵陣中央をも破るべくチーム改造の真っ最中であるからして、もはや香川をベンチに置く方向など出来難くなったのではないか。マンUが一昨年対戦して歯が立たなかったバルサと、今のレアルは互角以上にやりあっているのだから。香川やクレバリーを大いに活用できるマンチェスターであってこそ、明日に向けての世界最強復活が望めるはずだ。
シャルケがアーセナル戦に勝ったゲームで先発完投した内田自身も、成長を確信したに違いない。彼らしく大変な努力を重ねたのだろうが、頼もしい限りである。代表に酒井宏樹という強力なライバルが現れたことも新たな、大きな刺激になったのだろう。
こうしてザックジャパンは、前途洋々である。あとは本田がイングランドかドイツに行かないかなと、これが代表ファン一番の関心事だろう。そして、一昨年の香川と同じくドイツ中を今騒がせている乾貴士と、あと変わったところでは、オランダ・ユトレヒトにいる高木善朗(19歳)の急成長を僕として予測し、大いに期待したい。この名前、ブラジルワールドカップに向けて是非覚えておきたいと僕は思っている。この高木善朗は、ロンドン五輪予選の大詰めに呼ばれて、即世界水準の片鱗を見せたと観た。かっての長友佑都を思わせるように大男相手に一歩も引かない当たり強さなのである。シュートもよく打つし、基本技術も高いこの選手が高卒後1年目なのだ。プロ野球かっての名選手・高木豊の次男で、彼の兄は早くも清水のエースとも言える21歳の大ホープ。3番目の弟もベルディの選手である。兄弟3人がJリーガーというのは、過去に例がないのではないか。大変良好な,十分すぎるほどの育成を受けてきたということを示している。