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「対米同盟を相対化せよ」という主張紹介   文科系

2017年04月28日 17時03分11秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 表題は、ここで紹介してきた「アメリカ帝国の終焉」において、著者・進藤榮一筑波大学名誉教授が提起している論議だ。進藤は日本とよく似た立場にあるカナダを例にとって、おおむねこう述べている。

『 日本と同じアメリカの同盟国カナダの対米外交史を、日本が見本とすべきだと、こう示していく。アメリカと同盟関係にありつつも、中国との国交回復では米国に先行してきた。この時の元首相トルドーはアメリカのベトナム戦争に反対したし、その後のカナダもまたアメリカのシリア軍事介入に反対した。このように、カナダの対米外交は対米同盟絶対主義ではなく、国民民生重視の同盟相対主義なのだと解説される。その対中累積投資額は580億ドルとあって、カナダにとって第2位の貿易パートナーが中国なのである。アメリカ帝国の解体と日本の対中韓孤立状況を前にして、カナダのこの立場は極めて賢いものと述べられている』

 他方日本の現状は、カナダとは対照的と語られていく。まず、対中投資額。
『 中国への各国直接投資額が、2011年から2015年にかけてこう換わったと指摘される。増えたのが、韓国、フランス、ドイツ、EU4か国などからの投資額で、それぞれ、58・0%、58・4%、38・0%、24・4%の増加。減ったのがアメリカ(11・8%減)と、日本に至っては49・9%減なのである』

 次いで、日本の対東アジア及び対米、輸出依存度。
『例えば日本の東アジアへの輸出依存度を見ると1985年、2000年、2014年にかけて17・7%、29・7%、44・5%と増えた。対して対米国の同じ依存度は、46・5%、29・1%、14・4%と急減である』

 さて、以上の現状を概観できるならば、日本人の誰もがこう訝るのではないか。日本の対アジア輸出が総輸出の5割を超え、対米輸出がこんなに減っているのに、日本の対中投資額がどうしてこんなに減っているのか? カナダは上記のごとくだし、EUはもちろんのことトランプでさえ世界最大市場としての中国に接近を図っているのだ。対するに、日本政府は中国との間にわざわざ波風を立てているとしか思えない。などなどである。靖国、南京などの歴史問題しかり、アジアインフラ開発銀行敵視しかり。こう述べる識者は進藤榮一だけではなく、とても多いのであって、寺島実郎、水野和夫、丹羽宇一郎に、小沢一郎はじめ旧民主党政権もそういう姿勢だったはずだ。
 寺島実郎はこう述べている。
『米国のアジア政策の基本は「分断統治」。日中間の対立をテコにして影響力を最大化しようというものだ。一方、日本は欧米に目が向きがちだが、まず視界に入れるべきは経済成長が続くアジアだ。対米貿易の割合が下がっている一方、アジアとの貿易は五割を超えた。中国が本気で世界的な覇権を握ろうとする中、日本に欠けているのは構想力だ。成熟した民主国家として、東アジアにどんな仕組みと平和をもたらそうとしているのかが問われている』(2017年3月30日、中日新聞)
 同様に、水野和夫法政大学教授も『外交では米国が内向きに転換する以上、日本は日中韓プラスASEAN(東南アジア諸国連合)との連携を模索するしかない』(2016年11月24日中日新聞)。

 ちなみに、こういう対外経済政策をとっているからこそ貧しくなるそのしわ寄せが、国民に転嫁されているとしか思えない現状も多い。こういう問題を、日米がろくに守っても居ない「(自由と民主主義、法の支配などの)共通の価値観」とか「仮想敵国」などを持ち出して正当化するやに見えるのは,愚かなやり方という他はない。両国ともに猛烈に増えた選挙資金・政治献金は自国の民主主義を酷く妨げているのだし、世界の「法による支配」「国連法による平和」を最も妨げ、乱しているのはアメリカではないか? そのアメリカに経済政策までただ追従するだけに見える現政権は愚かの一言である。

関係してさらに、こんなことを語る国がどうして民主主義国と言えるか?
『国連は集まって話すだけの社交クラブだ』(トランプ)
『米国を支持しない国には断固たる姿勢で臨み、相応の対応を取る』(米国連大使。上のトランプ発言とともに、この2月7日中日新聞より、ニューヨーク支局・北島忠輔記者)
 こういう「米国第一」(自分勝手)路線に対するに、国連新事務総長グテレスは年始挨拶でこう述べている。
『テロや難民問題が深刻化する中、今こそ多国間主義の価値を主張すべき時だ。国連こそが多国間主義の礎だ』
 この新しい国連事務総長もどうやら、アメリカと対立しそうだ。どうやら、誰が総長になっても、その任務を忠実に果たそうとする人ならば、そうならざるをえないのだろう。シリア内乱工作介入問題しかり、アフガンにおける特殊爆弾の史上初の使用しかり。
 経済的・国家財政的窮地にあるアメリカは、その精神機能さえ疑われ始めたトランプの下で、まだまだ暴走していくのだろう。
コメント (6)
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