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改めて「アメリカ没落」いろんな数字   文科系

2017年04月10日 10時29分23秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 はじめに

 シリア急襲のような「一見強気なこと」が起こると、僕はいつも標記の世界現状認識に立ち戻ることにしている。7日エントリーの「ヤクザ国家論」にも書いた2碩学による世界情勢認識を、お二人が示した多くの数字などで補強、解説してみたい。

【 『アメリカは、その経済力の名残がその強大な軍事力として残っている内に、中国を冷戦に引きずり込もうと決意したのだろうか。あわよくば、ソ連を潰したように・・・』
 この予想内容は、最近ここで紹介した2冊の本の2人の著者なら、同意するだろうとも考えこんでいたものだ。
『詳しく論じる余地はなかったが、3、40年も経てば、西太平洋における覇権国家は中国になっているだろう』
 こう語ったのは、「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」における伝統的政治経済学者ロナルド・ドーア。
「アメリカ帝国の終焉」で進藤榮一は、新自由主義の罠、軍事化の罠、ナショナリズムの罠の三つを上げて、こう語っていた。
『それら三様の方策を進めれば進めるほど、成長が鈍化し、社会が衰えて分断され、衰退を強めざるをえない。トランプのアメリカがそれを象徴する』 】

1 アメリカの累積赤字 

 何よりも先ず、アメリカの累積赤字。アメリカの会計検査院の元院長デイブ・ウォーカーは2015年に、政府の未払い金などを含めると65兆ドル近くになると公表した。リーマンショックで雲霧消散した政府積立金なども含むのだろうが、政府公式発表は18兆ドルだから3倍を優に超え、これが自動的に増えていく金額だとも。何故こんなことになったのかは、日本と同じはずだ。
 まず「景気さえ良くできれば・・・」として赤字予算を組み続けた。冷戦が終わっても米軍事費は倍増して、年間60兆円。というような借金財政下で、マイナス金利なども日本よりずっと早くから始めてきた。金融グローバリゼーションで外貨を稼ぐ必要から、1%金持ち層への課税をどんどん下げてきた。同じ理由から、ケイマンやパナマ(を使った脱税体制)も見逃してきた。
 その分大衆課税を強めたし、以下のこともあるから一般消費は沈滞しただけである。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済」の要約である。

2 アメリカ中の金が金融へ

【こうして、こういうギャンブル市場がどんどん膨張していった。政府も国際競争力強化と銘打って証券文化を大いに奨励した事も預かって。各国年金基金の自由参入、確定拠出年金・・・。これらにともなって、機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった。
「経営者資本主義から投資家資本主義へ」
そういう、大転換が英米圏で起こり、日本はこれを後追いしてきたと語られる。
 この大転換の目に見えた中身は語るまでもないだろう。企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。
 彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。
「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・。】

3 世界貿易、米日の衰退

 進藤榮一が上げる米国経済衰退の数字も見ておこう。主としてIMF等国連関連機関発表の資料である。
・2014年のIMF報告によるGDP比較。「新興G7」のGDPは37兆8000億ドル、いわゆるG7のそれ(34兆5000億ドル)を追い越したと言う。前者は、BRICs4国に、トルコ、メキシコ、インドネシアを加えたものだ。ちなみに後者は、米日独英仏伊加である。

・2015年の世界貿易シェアは、EU5兆3968億ドル、東アジア4兆8250億ドル、北米2兆2934億ドルである。

・世界からの直接投資受入額で言えば2013年既に、中国・アセアンの受入額だけで2493・5億ドル。EUの受入額2462・1億ドルを上回っている。北米は問題にならない。

・中国への各国直接投資額が、2011年から2015年にかけてこう換わったと指摘される。増えたのが、韓国、フランス、ドイツ、EU4か国などからの投資額で、それぞれ58・0%、58・4%、38・0%、24・4%の増加。減ったのがアメリカ(11・8%減)と、日本に至っては49・9%減なのである。これは、中国、アセアンが世界最大の工場兼市場になったことの現れなのだ。日米がマイナス金利なのに東南アジア諸国の利子率が高いから、世界の金が集まるとも言える。

・「東アジア主要産業の対世界輸出における各国シェア」という資料もあった。電気機械、一般機械、輸送機械三区分の世界輸出シェアで、1980年、2000年、2014年との推移資料でもある。三つの部門それぞれの、1980年分と2014年分との比較で、日中のシェアを見てみよう。電気は、日本69・7%から11・1%へ、中国は、0・7%から42・8%へ。同じく一般機械では、日本88・6から19・1と、中国1・5から51・7。輸送機械は日本が最も健闘している部分でそれでも、97・4から44・8、中国0・2から18・5。

4 結論

 こうして結論。米英日の物作りは、過去の自動車のような画期的新商品の開発など余程のことができない限り終わった。物作りを金融の食い物にすることによって、失業者、不安定労働者を自他国に溢れさせ、世界の内需を荒らしてきただけだから。その分を国際金融収支で取り返す戦略を採ってきた訳だが、リーマンショックによって金融の世界的信用は既に地に落ちている。先に見たように日米の対中国直接投資が著しく減っているというのは、会社乗っ取りやデリバティブ、アジア通貨危機など過去世界でやって来た遣り口が嫌われているのだろう。折角東アジアには利子率の高い世界があるのに。
コメント (11)
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