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随筆紹介  地に墜ちた芥川賞    文科系

2018年11月27日 20時58分20秒 | 文芸作品
  地に墜ちた芥川賞  井戸 児石さんの作品です


 明日発表の芥川賞の候補作品の一つが剽窃(ひょうせつ)問題で揺れている。北条裕子の「美しい顔」が、群像新人賞をとり、さらに芥川賞の候補作に躍り出た。ところが剽窃だとネットで騒がれると、群像を出版した講談社は、出典の掲載を忘れたに過ぎず、剽窃には当たらず、この小説の素晴らしさの根底を揺るがさないとし、異常とも言える無料公開を開始した。白熱した事態となった。
 剽窃とは、他人の文章、語句、説を盗用することである。盗用された作品「遺体」を私は購入した。ネットに公開された美しい顔の最初の部分を読み始めたが、十日後に突然、予告なく講談社は中断してしまい、剽窃の詳細を自分では調べられない。仕方なく、毎日新聞他に頼った。

①遺体の『その横に名前、性別、身長、体重、所持品、手術痕などわかっている限りの情報が書かれているのだ』を、美しい顔では「その横に名前、身長、体重、所持品、手術跡といったことがある。今現在わかっている限りの情報だという」
 
②遺体の『床に敷かれたブルーシートには、二十体以上の遺体が蓑虫のように毛布にくるまれ一列に並んでいた。』『うっすらと潮と下水のまじった悪臭が漂う』を美しい顔では「すべてが大きなミノ虫みたいになってごろごろしているのだけれど、すべてがピタッと静止して一列にきれいに並んでいる。うっすらと潮と下水のまじった悪臭が流れてくる。」
 
③遺体の『今日までに見つかっている遺体はこれがすべてです。ご家族と思われる特徴のある方がいれば何体でもいいので番号を控えて教えてください。』を美しい顔では「今日までに見つかっている遺体はこれがすべてです。お母さんと思われる特徴の番号があればみんなここに。あとで実際に目で確認いただきますから」
 
④遺体の『毛布の端や、納体袋のチャックからねじれたいくつかの手足が突き出している』を、美しい顔では「毛布の隅や納体袋のチャックから、ねじれたいくつかの手足が突き出していた」   

⑤遺体の『死亡者リストに記載されている特徴にはかなり違いがあった。すでに名前や住所まで明かになっているものもあれば、波の勢いにもまれて傷んでいるために「年齢二十歳~四十歳」「性別不明」「衣服なし」としか情報が載っていないものもある』を、美しい顔では「壁の遺体リストに記載されている特徴にはかなりの違いがあった。すでに身元が特定され、住所や勤め先の会社名まで記してある番号もあれば〈性別不明〉〈所持品・衣服なし〉としか情報が載っていないものもある。〈年齢三十歳~六十歳〉とものすごい幅のあるものもある」

⑥3・11慟哭の記録の『なぜ警察も自衛隊も助けに来てくれないのか。日本はどうなってしまったんだろうとおもいました。』を、美しい顔では「なぜ警察も自衛隊も助けに来てくれない。日本はどうなってしまったんだ」

 この①②③④⑤⑥からすれば、明かな剽窃である。小説とは、作者が自由な方法とスタイルで、人間や社会を描く様式。フィクションは散文で作成された虚構の物語として定義される。(wikipediaより)
 だとすれば、小説家は自分の文章、語句、言葉で語るべきである。他人の書物を参考にしても、十分に消化し、自分の言葉とすべきであり、北条は軽薄にも脱線し、剽窃におよんでいる。そのことを本人も、講談社も素直に認めればいい話し。それができない。
 さて、ここまでくると芥川賞の選考委員は、単に彼女の作品を落選させただけでは事がすまない。候補にした総括、そもそも小説とは何か、彼女の犯した行為は何が問題か、再発防止はどうするのか、を個別論と普遍的な全体論とを語る絶好のチャンスであり、またそうすべきだと私は思う。今の騒ぎを解決する指針を投げかけるべき。これをせず、単に芥川賞を選ぶだけの選考委員であれば、まさに失格ではないだろうか。お手並み拝見としよう。明日の夕方には判明する。
 
 選考委員は小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、高樹のぶ子、堀江敏幸、宮本輝、山田詠美、吉田修一の九人。論客の村上龍が今回から抜けて、果たして、日本を代表するコメントを出せる力量があるか、はなはだ不安である。私の仮説では、「選考委員はこういった文芸問題には対処する力量が乏しく、剽窃の批判声明は出ない。彼らに替わり、週刊紙が大いに活躍するのでは」。小説家ではない週刊紙の記者、ルポライターが、経験豊かな知見をベースに、批判記事を積極的に掲載するだろう。
 日大アメフト部問題での大学トップのごとく、実際は力量のない、過去に運よく賞を得た選考委員の皆さんではないか。もっと根は深く、日本のいわゆる一流作家は、時代の先陣を切れないどころか、自分たちに関係する問題さえ解決できないのではないか、まさにことなかれの小心者。ますますインテリ、学者のスケールが小さくなってきている事例にならなければいいが。

 一日が過ぎ、芥川賞の発表の日を迎えた。美しい顔は勿論落選した。島田選考委員は「法的には盗用に当たらないとの意見で一致したが、自分なりのフィクションに昇華する努力が足りなかったのでないかとの意見もでた」と会見した。待てよ。法的にも、文学的にも問題があるのではないか。単なる努力不足というよりは、文学的には犯罪であり、文学を志す人は、このようなことがないようにと警鐘を鳴らすべき。これでは、盗作を上手くやれ、そうすれば芥川賞も取れるんだと、上手な剽窃を推奨しているようなもの。肌寒い。出版会社の講談社らに迎合し、忖度する選考委員の力量の不足こそ問題ではあるまいか。正義は次々に消えていく。週刊紙の反撃を期待する。
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随筆  ラン仲間が増えた   文科系

2018年11月27日 20時44分15秒 | スポーツ
行きつけの市営ジム、早春のある日。一番遠くのランニングマシンに彼の姿を見た時は、ちょっと目を見張った。
「彼が、走っている。あの、彼が?」
 スピードは遅く、速歩き速度程度だが、ゆったりとして結構大きく確実な一歩一歩は、はっきりと立派なランナーの足取りだ。〈あれほど、とうてい無理とか、死んでしまうとまで言っていたのに……〉。

 彼と初めて会話する気になったのは、二か月ほど前のことだったろうか。七十台半ばと見えた小柄ながら中肉で血色の良い彼は、いつも確実に三十分ほどをマシンで歩いて帰られるお人だ。〈こういう人ならば、絶対に走れるようになるよなー〉というわけで、僕が試行錯誤してきた「走れるようになるノウハウ」を初めて他人に話す気になった。自分が良かったと思う知識は、どんなことでも他人に教えたくなってしまう。僕はどうも教え魔の血を具えているらしい。こんなノウハウなのだが、とにかく懸命に話してしまった。
 ①先ず十五分歩き続けられるできるだけ速いスピードを見つけ、その時間を延ばしていく。
 ②やっと三十分早歩きできる速度が見つかったら、その後半の方にこれより遅い走りを入れてみる。この走りを五分、十分と延ばしていく。
 ③三十分の後半十五分がこんな走りに換わったら、最初の歩き十五分を含めて一時間を目指す。疲れたらまた歩いても良いから一時間ということだ。
 ④以上と同時に、ストレッチと脚筋補強運動とが必要である。前者は、走った後に脚の表裏や腰の筋肉などを必ず伸ばすこと。後者は、スクワットと片足つま先立ちなどのことである。

 この内容を話し終わったとき、こんな会話になった。
「とても無理ですよ。ちょっと走っただけで、心臓がぶわーっと死んでしまうようになる」
「スピードが速すぎるからですよ。歩くスピードよりも一キロ時ほど遅くても、走りは走りです。マシンにはスピードも心拍数も、メーターが付いてますからそれを使って……」
「そんなに遅く走って、意味あるんですか?」
「あります。それで三十分も走れるようになれば、続けているうちに自然に、だんだん速くなっていきますから」
「そんな簡単なわけないじゃないですか。何回かやってはみたんですが、とても無理です。この歳ですし」
 こんな風に終わったその日の会話は、わずか五分。ただ、その十日ほど後には、歩くスピードがかなり速くなっていた。以来今日初めてお会いしたことになる。この真冬に近い季節に空色の短パンと白い半袖で大きめの一歩一歩をゆったりと進む姿は、何かベテラン・ランナーのウオーム・アップ・ランにも見えたものだ。そんなランが十分も続いたろうか。走り終わるのを待つようにして、彼に歩み寄り、語りかけた。
「立派に走ってましたねー。素晴らしいです」
「いやこっちこそ、すごいノウハウですよ。この歳でまた走れるなんて、とにかく驚いています!」と始めて、こんな話をしてくださった。糖尿病があってずっと走りたかったが、何度か挑戦して諦めた歴史があること。だからせめてと、懸命に歩いてきたこと。それで体重が減ってきただけに、ずっとランに憧れてきたことなどである。「頑張って歩いてきて、体重も適正だから、すぐにこれだけ出来たんですよ」と僕。「いやいや、このノウハウがいいんですよ」。「今の速度で走っている内にだんだん心拍数が下がって来ますから、十も下がったら今度は、前の心拍数まで速度を上げればよいんです。お見受けしたところ八キロ時までは保証しても良い」。「普通の歩きの二倍速ですねー。ますます夢みたいだ」。そう語った彼を、僕はますます気に入ってしまった。
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