Jリーグに歴史的強豪誕生(2)川崎の強さについての一考察
川崎フロンターレがJリーグ二連覇を果たした。のみならず、この三年続きでリーグMVP選手を出している。その原動力の一つがゲーゲンプレス戦術の取り入れだと僕は観ていたが、それを解説してくれる中村憲剛のインタビューを読むことが出来た。「Jリーグ サッカーキング」2月号、J1、2、3各リーグ優勝チーム特集号である。
なお、ゲーゲンプレスというのは、二〇一〇年頃から世界を席巻している「攻勢的守備即得点」というある戦術であるが、初めに、その定義をしておく。この得点戦術の元祖ドイツはドルトムント時代のユルゲン・クロップ監督の解説を要約すればこういうものである。なお、このクロップはその後イングランド・プレミア古豪リバプールに行って、今年はついに、世界有数の名監督ジョゼップ・グァルディオラ率いるマンチェスターシティーと優勝争いを演じている真っ最中である。
①相手陣地に押し込んだ時、相手が自ボールを奪って攻めに出た瞬間こそ、そのボールを奪えればゲーム中最大の得点チャンスができる。急に前掛かりになった相手こそ、守備体制としては最も乱れている時だというのが、この得点戦術そのものの着眼点である。
②そこから、敵陣に攻め入った時にあらかじめ①を意識しつつ攻めることになる。例えば、DFラインを押し上げて縦に陣地を詰め、そこに身方を密集させる「コンパクト」布陣もこのための準備だ。また、身方後方にフリーな相手を作らないようにしつつ攻める。奪われた時にボールの受け手になる人間を作らないようあらかじめ準備をしておくということだ。
③その上で、ボールを奪われた瞬間に敵ボールに近い数人が猛然とプレスに行き、他はパスの出先を塞ぐ。この「攻から守への切替」をいかに速く激しくしてボールを奪い切るかが、ゲーゲンプレスの要だ。言い換えれば、そうできる準備を、敵陣に攻め入った時いかに周到にしておくか、そういう組織的訓練がゲーゲンプレスの練習になる。
さて、憲剛の優勝総括文章を読んでみよう。
『例えば、鬼木(監督)体制になってからの変化として、守備の楽しさを覚えたと話している。……ボールを失った瞬間に、素早く切り替えてボールを取りに行くこと。そして球際の局面で力強さを出すことである。……それこそが鬼木監督が掲げているサッカースタイルなのだ。……もちろん、守備に楽しさややりがいを見出したと言っても、それが目的というわけではない。守備が目的ではなく、目的はあくまでもゴールである。「攻撃のための守備」というのが鬼木体制における合言葉だ。……「相手がボールを取った瞬間に、取り返しに行く。息をつかせない。今は、それがチームの戦術にもなっているし、周りの身方も早く反応してくれる」……そんな守備のスイッチ役としてプレッシャーを掛ける仕事には、時に嬉しい見返りもある。相手のボールを狩りに行き、そのままゴールに繋がる形がそれだ。……』
川崎は、ボール繋ぎ指導が得意な前の風間監督時代にはどうしても優勝できず、鬼木時代になったとたんに二連覇。この繋ぎ上手チームの優勝への画竜点睛こそ、ゲーゲンプレスの取り入れ、『「攻撃のための守備」というのが鬼木体制における合言葉』だと分かるのである。川崎の時代は今年も続くはずだ。今年三九歳になる憲剛の後にも今年のMVPで今や怪物と言って良い家長昭博がいるからだ。この怪物が近年燻っていたのは、繋ぎサッカー全盛の日本でボールが持てすぎて繋ぎが遅れると見られた時もあったのではないか。ゲーゲンプレス以降のゴール前では、身体も強靱な家長のこの力は、正真正銘の宝物だ。前掛かり守備で奪ったボールを彼に預けて、敵ゴール前に身方選手を増やす時間を少しでも多く作り出せるということだろう。
川崎フロンターレがJリーグ二連覇を果たした。のみならず、この三年続きでリーグMVP選手を出している。その原動力の一つがゲーゲンプレス戦術の取り入れだと僕は観ていたが、それを解説してくれる中村憲剛のインタビューを読むことが出来た。「Jリーグ サッカーキング」2月号、J1、2、3各リーグ優勝チーム特集号である。
なお、ゲーゲンプレスというのは、二〇一〇年頃から世界を席巻している「攻勢的守備即得点」というある戦術であるが、初めに、その定義をしておく。この得点戦術の元祖ドイツはドルトムント時代のユルゲン・クロップ監督の解説を要約すればこういうものである。なお、このクロップはその後イングランド・プレミア古豪リバプールに行って、今年はついに、世界有数の名監督ジョゼップ・グァルディオラ率いるマンチェスターシティーと優勝争いを演じている真っ最中である。
①相手陣地に押し込んだ時、相手が自ボールを奪って攻めに出た瞬間こそ、そのボールを奪えればゲーム中最大の得点チャンスができる。急に前掛かりになった相手こそ、守備体制としては最も乱れている時だというのが、この得点戦術そのものの着眼点である。
②そこから、敵陣に攻め入った時にあらかじめ①を意識しつつ攻めることになる。例えば、DFラインを押し上げて縦に陣地を詰め、そこに身方を密集させる「コンパクト」布陣もこのための準備だ。また、身方後方にフリーな相手を作らないようにしつつ攻める。奪われた時にボールの受け手になる人間を作らないようあらかじめ準備をしておくということだ。
③その上で、ボールを奪われた瞬間に敵ボールに近い数人が猛然とプレスに行き、他はパスの出先を塞ぐ。この「攻から守への切替」をいかに速く激しくしてボールを奪い切るかが、ゲーゲンプレスの要だ。言い換えれば、そうできる準備を、敵陣に攻め入った時いかに周到にしておくか、そういう組織的訓練がゲーゲンプレスの練習になる。
さて、憲剛の優勝総括文章を読んでみよう。
『例えば、鬼木(監督)体制になってからの変化として、守備の楽しさを覚えたと話している。……ボールを失った瞬間に、素早く切り替えてボールを取りに行くこと。そして球際の局面で力強さを出すことである。……それこそが鬼木監督が掲げているサッカースタイルなのだ。……もちろん、守備に楽しさややりがいを見出したと言っても、それが目的というわけではない。守備が目的ではなく、目的はあくまでもゴールである。「攻撃のための守備」というのが鬼木体制における合言葉だ。……「相手がボールを取った瞬間に、取り返しに行く。息をつかせない。今は、それがチームの戦術にもなっているし、周りの身方も早く反応してくれる」……そんな守備のスイッチ役としてプレッシャーを掛ける仕事には、時に嬉しい見返りもある。相手のボールを狩りに行き、そのままゴールに繋がる形がそれだ。……』
川崎は、ボール繋ぎ指導が得意な前の風間監督時代にはどうしても優勝できず、鬼木時代になったとたんに二連覇。この繋ぎ上手チームの優勝への画竜点睛こそ、ゲーゲンプレスの取り入れ、『「攻撃のための守備」というのが鬼木体制における合言葉』だと分かるのである。川崎の時代は今年も続くはずだ。今年三九歳になる憲剛の後にも今年のMVPで今や怪物と言って良い家長昭博がいるからだ。この怪物が近年燻っていたのは、繋ぎサッカー全盛の日本でボールが持てすぎて繋ぎが遅れると見られた時もあったのではないか。ゲーゲンプレス以降のゴール前では、身体も強靱な家長のこの力は、正真正銘の宝物だ。前掛かり守備で奪ったボールを彼に預けて、敵ゴール前に身方選手を増やす時間を少しでも多く作り出せるということだろう。