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世界の格差・「株主利益の最大化経済」の仕組(1)  文科系

2019年12月08日 20時07分24秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 本年8月20日の新聞にこんな見出しの記事が出て、こんな書き出しになっていた。
『株主最優先を米経済界転換』!? 
『米主要企業の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は19日、株主の利益を最優先する従来の方針を見直し、従業員や顧客、地域社会など全ての利害関係者の利益を尊重する新たな行動指針を発表した。これまで米経済界は「株主利益の最大化」を標榜してきたが、大きな転換点となる』
 この記事の意味が分かる人なら、こう読んだことだろう。誠実な転換表明であるならば約半世紀ぶりの大転換だが、まー様子を見よう。なお、この新聞記事を紹介したエントリーが、ここの8月21日にありますから、ご参照ください。
 
 ところで、この半世紀世界経済の中心用語「株主利益の最大化」方針とはなにか。短期投資も含めた投資というその性格からくる秘密主義もあって一応全貌が分かっている人もほとんど居ない。これが、現在世界諸国家、諸国民の隅々にまで行き渡った超格差の源なのに。日本で言えば、国民一人当たり購買力平価GDPがこの25年で世界4位から31位に落ちたその原因も、実はこの仕組にただ流されてしまった政治にあるのであって、日本の貧困化、未婚率急増問題などなどの遠因もここにあるとも言えるのだ。

 以上につき、今後4回にわたってある本の内容要約をしていく。これは、戦後の1950年にイギリスから東大に留学してきて、以来去年亡くなるまで大の親日家であり続けた老政経学者ロナルド・ドーアによる、大好きな日本に警告を発した遺書のような著作だ。これを要約した旧稿の第1回目は、いわば「世界経済の金融化」の輪郭、その全体像の大づかみに当たるもの。

旧稿を順序を変えているので読みにくい部分もあるが、そこは読み飛ばしていただきたい。この順序の方がよりわかりやすくなると考えたということで、ご了承を。
 


【 米大企業社長たちはこうして「金融の馬車馬」に  文科系 2016年09月28日

 以下は、24日エントリー、ある本の抜粋である。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月第一刷発行)。今後ここで、3部構成のこの本にあわせて、②、③と要約していく予定だ。この本の内容は、僕が10年ここで新たに勉強し直しては原稿を書き続けてきて、たどり着いた現代世界の諸不幸の大元の解説と言える。
 この本に展開されていることは、日本人にはなかなか書けないもの。ここに描かれた動きが日本で目に見えるようになったのは最近の事であるし、この最新の動きは、英米経済の動きと比較研究してはっきりと見えてくるというもの。作者は、イギリス経済学の伝統を学び継いだ上で、日本江戸期教育の研究目的で東大に留学され、以来熱心な日本ウォッチャーを続けられたというお方。しかも、この本自身も自分の日本語で書かれているようだ。訳者名が付いていないからである。
 以下は、その第一回目の要約のそのまた抜粋である。世界経済がこのようになったからこそ、今の世界の諸不幸が生じていると、そういう結論、大元解明のつもりである。

『米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される』

『機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった』

『企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった』

『彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には平均20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含めば475倍になっている。その内訳の大部分は、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ』

『「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・』

 最後のこれは、24日には書いてない事。以下のような数字は日本人には到底信じられないもののはずだ。この本の73ページから抜粋した、アメリカ資本主義の象徴数字と言える。
『2006年のように、ゴールドマン・サックスというアメリカの証券会社がトップクラスの従業員50人に、最低2,000万ドル(当時のレートで17億円くらい。〈この記述周辺事情や、最低と書いてあるしなどから、1人当たりのボーナスの最低ということ 文科系〉)のボーナスを払ったというニュースがロンドンに伝われば、それはシティ(ロンドン金融街)のボーナスを押し上げる効果があったのである』 
 これだけの強食がいれば、無数の弱肉が世界に生まれる理屈である。2006年とは、08年のリーマンショックを当ブログでも予言していた史上最大のバブル、サブプライム住宅証券組込証券が頂点に達していたウォール街絶頂の時だった。この結果は、失った家から借金まみれの上に放り出された無数の人々の群であった。しかもこの動きはアメリカのみに留まらず、イタリア、スペイン、ポルトガル等々にも、そこの失業者の大群発生にも波及していくのである。こんな所業を放置しておいて、どうして世界の景気が良くなるなんぞと言えるのだろうか。
コメント (11) 】


 なお、明日以降3回の目次はこうなっている。①経済の金融化現象とは何か、②政治、社会、教育も「金融化」、③各国、世界機関の金融改革
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生涯未婚者の数  文科系

2019年12月08日 09時09分02秒 | 国内政治・経済・社会問題
 直近の「生涯未婚率」関連で、過去ログを再掲します。一緒にして考えてみたいので。


【 「日本は終わった国」という数字  文科系 2019年10月12日 | 国内政治・時事問題

 内容としては知っていた知識でここにも書いてきたことだが、こんな数字を突きつけられると、改めてつくづく標記のことを思う。その原因についても、ここで書き続けてきたことにあると、改めて分かったもの。購買力換算の国民一人あたりGDPが、この20年ちょっとで世界4位から31位に落ちたということが、国民生活、その人生にとって以下のようにこんな悲劇的数字をもたらしている。

『国立社会保障・人口問題研究所によると、生涯未婚率(五十歳までに一度も結婚したことのない人の割合)は2015年に男性23・4%、女性14・1%と急増している。30年には日本男性の三人に一人、女性の五人に一人が結婚しない社会になる可能性が高いという

 これは昨日の中日新聞コラム「紙つぶて」に担当者が書いた数字だ。この文章の題名は「結婚困難社会」。筆者は「しんきん経済研究所理事長」俵山初雄氏。結婚には魅力を感じてはいてもできない理由があって,そのことがこう書かれていた。『経済力のある男性と出会う機会がない』。それにしても今でももう、男の四人に一人、女の七人に一人が50歳までに一度も結婚できていないわけだ。

 このままでは日本の人口は減っていくばかりだ。「日本すげー!」ならぬ「日本ひでぇー」である。誰がこんな国にしたのか! どうにかして、直せないのか。直す道はあると言いたい。なにしろ、社会の生産力はこの30年取ってみても、ほんとうに飛躍的に伸びているのだから。それが十分に発揮されて、世界の多くの人々に回っていないだけなのだ、と。そうする道とは、例えば、昨日書いたエントリ-「米大統領選、ウォーレンは卓見」の中の、ウオーレンの公約などがそうだ。「金融規制」やGAFA規制を中心としたあの公約は、従来のアメリカ大統領候補の公約とは本質的に違うものだと言いたい。世界の「99・9%と0・1%」の問題をこそ取り扱っている。

 ここ30年の世界を「自然成長的」にこのようにした金融グローバリゼーションについて、アメリカでこういう「根本的」反省が始まったのだから、日本でも同じことが始まるのを心から期待したい。ちなみに、アメリカの大企業経営者団体が最近「株主資本主義は誤りだったから、改善していく」という声明を出したが、これが本心ならばすぐに金融規制が始まると言うことになるはずだ。ウォーレンの公約とこの声明とが同根のものであって欲しいと、そんな可能性さえ期待しているのだが、はて?】
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内閣府の笑える「少子化分析」  文科系

2019年12月08日 08時51分00秒 | 国内政治・経済・社会問題
 日本の出生数が1970年代から減少に歯止めがかからず、2019年度が「近年日本史上最少」になることが確定したのだそうだ。近年日本史上というのは、統計を取り始めたこの130年でということだ。日本政府はこの対策に努めてきたのだが、その理由は急速な少子化が社会保障などに困難を来すようになるからと説明されてきた。今年も内閣府のその原因分析を発表して曰く。「未婚化、晩婚化が原因」なのだそうだ。
 こんなきれいな言葉だけ? そこで、こう問いたい。
「では、その未婚化、晩婚化の原因は何か?」と。

 これに関わると観られるこんな数字を政府は同時に発表している。50歳まで一度も結婚したことがない人の割合「生涯未婚率」が、この25年間で男は20%、女は10%上昇したのだそうだ。現在25歳の人々が生まれた時から今にかけて結婚しない男性が5人に1人も、女性が10人に1人も増えたのでは、確かに子どもは少なくなる理屈だ。が、なぜ男の方が女に比べて、こんなに生涯未婚者が多くなったのか。これを分析しなければ、まともな少子化分析とは言えないだろう。それは、容易に想像はつく。経済力で、選んでもらえない男が増えているからではないか。この25年と言えば、日本の国民一人当たり購買力平価GDPが、世界順位一桁代前半から31位に落ちたちょうどその期間に当たるのだから。自分が育った父の収入、家計など思いもよらぬほど貧しくなった日本で、さらに低収入の男性は結婚対象にされにくいと見るのが極めて自然な分析になるはずだ。

 晩婚化、未婚化は、この国をこんなに貧しくした政治の責任であると考える。特に安倍長期政権は最長政権と言うだけに、失敗した「三本の矢」、「インフレターゲット2%目標」など、その責任は大きい。失敗続きで延ばし延ばしにしてきた2%目標はいつの間にか語らなくなっているのだし。それだけではなく、この「3本の矢政治」の結末として、GPIFの去年第4四半期には15兆円の損失を出している上に、現在の株価等官製バブルには同様の損失を出す空売り暴落の近未来さえ待っている始末。そもそも、世界31位まで落ちた国民一人当たり購買力平価GDPを、安倍長期政権は一体どう弁明するのか。それもなしに「少子化対策」などと語っても、何の「やる気」も見えないのである。
コメント (2)
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