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ケインズの労働時間短縮  文科系

2019年12月10日 09時37分49秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下は、「新自由主義経済は誤っていた! 2019年12月05日」につけたコメントです。重要なものなので、改めてエントリーとします。


【 重要な解説  2019-12-05 12:41:26

 エントリー中この部分は、普通に読んだら全く信じられないもの。解説が要りますね。
『「長期的に見れば、1930年代にケインズが予言したとおりに、週20~25時間労働にならざるをえないだろう」』

 「現実の学問」であるはずの経済学の大権威ケインズが1930年代にこう語っていた?貧困が多すぎる現在では誰も信じないでしょう。が、ケインズが生きていたら逆にこう言うはずだ。
「よく調べてみたが、この世界が信じられない、どうしてこれぐらいの労働時間短縮ができないのか。現実目標にできるはずだ」


 現在世界は豊かなのです。が、それぞれの国、民族に死活にして可能な、手段が入手できない。アフリカやアフガニスタンでは、水が必要だが、誰も援助してくれないからアフガンで中村哲さんがやってきた。ここに水を要るだけ与えたら、膨大な有効需要が生み出せる(ちなみに、ここアフガンで18年も戦争を続けているアメリカは、この国の困窮地域に水を与えるどころかヘロインの栽培、売買を勧めてきた。GIAがそれをやっていると、そんな文献もありました。「マスコミに載らない海外記事」サイトの12月9日分を参照)。南米、南欧、アジアなどの中進国には、もっともっと社会的インフラが必要だ。が、資金をリーマンショック、通貨危機、金融危機などでむしり取られたからできない。金がある国、人々がここの社会資本に投資したら膨大な有効需要が生まれます。

 このように、世界で必要な資金を必要なところに出して有効需要を作ることによって初めて、先進国経済も回りやすくなる。こういう考え方を、日本人で世界的な経済学者森嶋通夫は「政治的イノベーション」と呼んだかと思います。つまり、需給の好循環を世界に作るということ。この民主的な循環は、国連がイニシアティブを取らねばできません。

 金融資本主義は、国連を無視、敵視するなども含めて、この逆の道を歩んできた。各国、地域に必要な金を奪い取って、自らが膨らんだだけ? GAFAの金を今や、投資する場所もないのだ。それで、通貨の空売り、短期資金転がしなどやることによって、世界、地域をもっと貧しくして、自らが太るだけ?】
コメント (13)
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世界の格差・「株主利益の最大化経済」の仕組(3)  文科系

2019年12月10日 09時02分14秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月初版)を要約している。その第二部は、金融化が社会、政治、教育、そして学者たちをどう変えたかという内容。これがまた4節に分けられていて、各表題はこうだ。
①社会を変える金融化
②金融化の普遍性、必然性?(疑問符が付いている事に注意 文科系)
③学者の反省と開き直り
④「危機を無駄にするな」(括弧が付いている事に注意 文科系)。

 なお、ここまで書いてきたことを最も的確に表現すれば、こういうことになる。
「株主資本主義とは、戦前の不在地主のようなもの」
 その会社どころか、その地域や国とさえ全く関係ない人が、その会社の利益をほとんど持って行くということだ。当期利益どころか、財産を売り払ってつり上げた株価の差益までも持って行く事も多いのである。



(1) さて、第1節では、格差、不安の増大、最優秀人材が金融にだけ行く弊害、人間関係の歪みの四つに分けて論じられる。
・「格差」では、06年のゴールドマン・トレイダーら50人のボーナスが、一人最低17億円だったという例を28日のここで紹介した。こういう強食の背後には、無数の弱肉がいると解説を付けて。(この点については、28日拙稿を参照願いたい)
・「不安の増大」では、こんな例が良かろう。日本の国民年金掛け金未納者が38%にのぼること。日本で新たに導入された確定拠出年金が、10年3月末の110万人調査で63%が元本割れとなっている発表された。これらの人々の老後はどうなるのだろうか?
・人材の金融集中では、2010年8月の日経新聞広告を上げている。
『野村、「外資流」報酬で新卒40人採用へ 競争率16倍 専門職で実績連動 11年春、初任給54万円』
 マスメディアのライターからも、大学人やフリーライターとかジャーナリストらがどんどん減って、金融アナリストが急増している。
・人間関係の歪みでは、情報の非対称性(情報量に大差がある2者ということ)を利用して起こる諸結果から、「人をみたら泥棒と思え」と言う世の移り変わりが説かれている。

(2)「金融化の普遍性と必然性?」の要は、金融に特化する先進国に不当な世界的優位性を与えているということである。そこから、西欧がアメリカを追いかけ、今日本がつづき始めた、と。ただし、主要国の家計に占める株と証券との割合は05年でこうなっている。アメリカ46・6%の6・7%、ドイツ23・7%の9・7%、フランス28・0%の1・4%に対して日本15・0%の4・0%である。
 この程度でもう100年に一度のリーマンが起こって莫大な公金を注ぎ込まざるを得なかったとあっては、これで儲けるしかないアメリカがいくら頑張っていても金融立国はもう駄目だという文脈と言える。上記4国の証券%合計は21・8%となるが、1980年のこれは合計34・9%となっていた。4国で割れば、この25年で8・7%から5・5%へと家計における証券保有率は大幅に低減したという事になる。ただこれは家計に占める率であって、世界から金融業者に掻き集められた金はカジノばかりに膨大に投入されているということである。

(3)「学者の反省と開き直り」は省略させて頂く。作者自身も嘲笑的になりそうになる筆を押さえつつ書いているようだし。

「金融危機を無駄にするな」に括弧が付いているのは、掛け声だけという意味である。アメリカの妨害でちっとも進まないからだ。
(なお、この件については、拙稿「スティグリッツ国連報告」の序文紹介でも書いたとおりである)
 リーマンショックが起こって、「100年に1度の危機」と叫ばれた08年秋のころはアメリカも大人しかったようで、金融安定への不協和音はゼロだったとのこと(ただ、この「危機」の長期的根本的意味が一般には3割も理解できていたかどうか、僕はそう思う。)ところが、国際機構をきちんとして罰則を入れるようなものには全くできなかった。決まった事は、G7よりもG20サミットが重視され始めて、保護主義を排し、経済刺激策を取ろうという程度だった。IMFとこれによる規制との強化とについて、新興国と西欧とがかなり主張して端緒についたはずだったが、その後はほとんど何も進まなかった。
 ここで作者は、世界政府、国際制度作りの歴史などの話を起こすことになる。特定分野の国際協力機関は20世紀初めの国際連盟やILO設立よりも前に12もできていたと述べて、「万国郵便連合」などの例を挙げる。
 同じ理屈を語って日本人に大変興味深いのは、日本の戦国時代統一の例が語られている下りだろう。
『日本が16世紀の終わりに一つの国になったのは、信長、秀吉、家康の武力による統合と、幕府という統治制度の意識的な創出が決定的だった』(P132)
 アジア通貨危機やギリシャ危機は、大国金融が中小国から金を奪い取る金融戦争、通貨戦争の時代を示している。そんな金融力戦争はもう止めるべく、戦国時代の戦争を止めさせた徳川幕府のように、金融戦争に世界的規制を掛けるべきだという理屈を語っているのである。IMF(国際通貨基金)のイニシアティブ強化以外に道はないということである。


 金融の国際制度とこれによる執行力ある万国金融規制についてさらに、前大戦中から準備されたケインズの国際通貨、バンコール構想も解説される。が、これはドル中心にしようとのアメリカの終戦直後の実績と強力との前に脆くも崩れ去ったということだ。ドルが基軸通貨になったいきさつ説明なのである。
 以降アメリカは自国生産量より4~5%多く消費でき、日本や中国はその分消費できない国になったということである。それぞれ膨らんだドルを米国に投資する事になってしまった。その意味では、中国銀行総裁、周小川が09年に「ケインズ案に帰るべし、新機軸通貨、本物の国際通貨の創設を!」と叫び始めた意味は大きい。中国は今や8000億ドルの米国債を抱え、不安で仕方ないのであろう(この8000億は現在では1兆2500億ほどになっている。文科系)。中国のこの不安は同時に、アメリカにとっても大変な不安になる。「もし中国が米国債を大量に売り始めたら。国家、家計とも大赤字の借金大国の『半基軸通貨』ドルは大暴落していくのではないか」と。周小川中国銀行総裁が「本物の国際通貨の創設を!」と叫ぶのは、そんな背景もあるのである。
 なお、これは私見の言わば感想だが、アメリカが中東重視から西太平洋重視へと世界戦略を大転換させたのは、以上の背景があると観ている。中国に絶えず圧力を掛けていなければ気が休まらないのだろう。

(第4回目、最終回に続く)
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