ネット紙「JANJAN」に祖師谷仁氏のこんな記事が目をひきました。紹介します。
(ネット虫)
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「朝日で存在感増すホームレス歌人」
祖師谷仁 2009/02/10
朝日新聞紙上に毎週載る読者投稿の短歌欄「朝日歌壇」で、ホームレス歌人「公田耕一」氏が脚光を浴びている。昨年末から登場し、毎週のようにホームレス生活を詠った作品が載る。最近は公田氏がらみの作品も登場し始めた。自らの身を公田氏に重ね合わせたものが多く、アマチュア歌人らの衝撃や共感の深さを映しているようだ。
毎週月曜日の朝日新聞に掲載される読者投稿の短歌欄「朝日歌壇」で、最近、1人の投稿者の存在感が高まっている。その名は公田耕一。本名かペンネームかはわからない。住所欄に地名ではなく、「ホームレス」と記されているのが印象的だ。
初登場は昨年12月8日だった。
・(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ
これを永田和宏、佐佐木幸綱の2人の撰者が採った。「柔らかい時計」というのは、画家サルバドール・ダリの作品として有名だが、住むところのある人間とホームレスの時間の流れ方の違いを表現したものだろう。
以降、毎週のようにホームレス生活を詠った作品が載るようになっていく。いくつか紹介しよう。
・鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか(12月22日)
・水葬に物語などあるならばわれの最期は水葬で良し(1月5日)
・パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる(1月5日)
・日産をリストラになり流れ来たるブラジル人と隣りて眠る(1月19日)
1月5日詠の「水葬」は、戦後を代表する歌人、塚本邦雄の第1歌集『水葬物語』を意識したもので、公田氏の短歌の素養がうかがわれる。1月26日に載った
・親不孝通りと言へど親もなく親にもなれずただ立ち尽くす
は、佐佐木幸綱、高野公彦、永田和宏の3人の撰者が同時に採る秀作で、これを永田氏は「親が生きていてこその親不孝だが、『親にもなれず』なる四句に万感の思いがある」と評した。
3撰者がそろって選んだ公田氏の「親不孝通りと…」の短歌。居住地は(ホームレス)となっている(1月26日「朝日歌壇」)
公田氏の登場は他の投稿者にも相当の衝撃を与えたらしい。朝日歌壇には公田氏がらみの作品が続々と登場しだす。多くは自らの身を公田氏に重ね合わせたものだ。
・炊き出しに並ぶ歌あり住所欄(ホームレス)とありて寒き日(豊中市)武富純一(12月22日)
・屋根があるだけの違いよ公田さん年金生活薄氷の上(北九州市)中村テルミ≫(1月26日)
・パンのみみで一日生きるホームレス公田さんを待つ零下となる夜(加古川市)藤田かのえ(2月8日)
短歌欄など興味のない多くの人が読み飛ばしてしまうだろうが、短歌もまたはっきりと時代を映しているのだ。
(ネット虫)
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「朝日で存在感増すホームレス歌人」
祖師谷仁 2009/02/10
朝日新聞紙上に毎週載る読者投稿の短歌欄「朝日歌壇」で、ホームレス歌人「公田耕一」氏が脚光を浴びている。昨年末から登場し、毎週のようにホームレス生活を詠った作品が載る。最近は公田氏がらみの作品も登場し始めた。自らの身を公田氏に重ね合わせたものが多く、アマチュア歌人らの衝撃や共感の深さを映しているようだ。
毎週月曜日の朝日新聞に掲載される読者投稿の短歌欄「朝日歌壇」で、最近、1人の投稿者の存在感が高まっている。その名は公田耕一。本名かペンネームかはわからない。住所欄に地名ではなく、「ホームレス」と記されているのが印象的だ。
初登場は昨年12月8日だった。
・(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ
これを永田和宏、佐佐木幸綱の2人の撰者が採った。「柔らかい時計」というのは、画家サルバドール・ダリの作品として有名だが、住むところのある人間とホームレスの時間の流れ方の違いを表現したものだろう。
以降、毎週のようにホームレス生活を詠った作品が載るようになっていく。いくつか紹介しよう。
・鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか(12月22日)
・水葬に物語などあるならばわれの最期は水葬で良し(1月5日)
・パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる(1月5日)
・日産をリストラになり流れ来たるブラジル人と隣りて眠る(1月19日)
1月5日詠の「水葬」は、戦後を代表する歌人、塚本邦雄の第1歌集『水葬物語』を意識したもので、公田氏の短歌の素養がうかがわれる。1月26日に載った
・親不孝通りと言へど親もなく親にもなれずただ立ち尽くす
は、佐佐木幸綱、高野公彦、永田和宏の3人の撰者が同時に採る秀作で、これを永田氏は「親が生きていてこその親不孝だが、『親にもなれず』なる四句に万感の思いがある」と評した。
3撰者がそろって選んだ公田氏の「親不孝通りと…」の短歌。居住地は(ホームレス)となっている(1月26日「朝日歌壇」)
公田氏の登場は他の投稿者にも相当の衝撃を与えたらしい。朝日歌壇には公田氏がらみの作品が続々と登場しだす。多くは自らの身を公田氏に重ね合わせたものだ。
・炊き出しに並ぶ歌あり住所欄(ホームレス)とありて寒き日(豊中市)武富純一(12月22日)
・屋根があるだけの違いよ公田さん年金生活薄氷の上(北九州市)中村テルミ≫(1月26日)
・パンのみみで一日生きるホームレス公田さんを待つ零下となる夜(加古川市)藤田かのえ(2月8日)
短歌欄など興味のない多くの人が読み飛ばしてしまうだろうが、短歌もまたはっきりと時代を映しているのだ。