《社説②》:子どもの社会的養育 本人の声尊重する体制を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:子どもの社会的養育 本人の声尊重する体制を
さまざまな事情を抱え、家庭で暮らせない子どもたちがいる。保護するための「社会的養育」を手厚くするきっかけにしたい。
厚生労働省の専門家会議が制度改正を求める提言をまとめた。
どのような暮らしを望むのか、本人の意見を聞くことを児童相談所などに義務付ける。保護の対象から外れる18歳以降の自立を支える施策も強化する。
社会的養育を受けるのは、親がいなかったり、虐待を受けていたりする子どもだ。児相の判断で児童養護施設や里親家庭で暮らすことになれば、生活は一変する。
現行の制度でも、なぜ保護が必要か説明し、本人の意見を聞くよう指針で定められているが、十分には機能していない。
「1日だけ、と言われたのに長くなった」「自分の人生なのに、知らないところで物事が決められた」という訴えが少なくない。
虐待が理由で保護したケースでは、「家に帰りたくない」という子どもの声を尊重せずに対応した結果、虐待により命が失われた例がある。
国連は、子どもが自らの意見を表明する権利が日本では十分保障されていないと指摘してきた。児童福祉法を改正して、この権利を明確にすることが欠かせない。
実効性をどう高めるかも大きな課題だ。
虐待を受けてきた子どもは大人を信頼できず、本音を明かさないことがある。障害がある子や幼児の気持ちをくみ取るには、経験豊富な専門スタッフが必要だ。
子どもの声を児相などにきちんと伝える「代弁者」の養成に取り組んでいる自治体もある。
こうした例を参考に都道府県が体制を整えられるよう、国は支援しなければならない。
18歳以降の独り立ちをどう支えるかも、かねて懸案となってきた。周囲の支えを得られずに就職や進学で行き詰まることがある。
専門家会議は、現状では22歳までとなっている自立援助事業の年齢制限を撤廃するよう提言した。自立できるようになるまで養護施設や里親家庭で暮らせる。
子どもにとって最善の利益は何かを考え、社会で育ちを支える。実現に向けた、きめ細かな取り組みが求められている。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月19日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。