【社説②】:景況感大幅悪化 現実見据え政策改めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:景況感大幅悪化 現実見据え政策改めよ
企業心理の深刻な冷え込みを映した内容だ。景気後退の懸念がいっそう強まったと言えよう。
日銀がきのう発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)で、代表的な指標である大企業製造業の業況判断指数はプラス12と2四半期ぶりに低下した。
昨年12月の前回調査と比べて7ポイント下がった。悪化幅は6年3カ月ぶりの大きさで、第2次安倍晋三政権発足後では最大となる。
長引く米中貿易摩擦で中国経済が急減速し、輸出や生産に逆風が吹いていることが背景にある。
内需の柱である個人消費が振るわず、企業活動が海外経済の動向に左右されやすいのは、日本経済のもろさを示すと見るべきだ。
アベノミクスでは自律的に成長する経済が実現しなかった。政府は政策の誤りを認め、早急に軌道修正しなければならない。
今回は、道内にも多い中小企業の景況感が2年9カ月ぶりに悪化した。米中摩擦の影響が中小にまで及んでいる証左だろう。
中小製造業などで経営悪化が懸念される。資金繰りを含め政府は支援に万全を期してもらいたい。
加えて留意すべきは3カ月後の先行きだ。製造業・非製造業とも規模にかかわらず低下を見込む。
内需を支える設備投資に関し、2019年度の計画は堅調だ。ただ足元では在庫過剰も指摘される。製品需要が減れば、設備投資見合わせの動きが出かねない。
消費の現場では物流費や原材料費の高騰を理由に、今月から飲食料品の値上げが相次ぐ。
10月に消費税率が上がれば家計はさらに圧迫される。このままでは個人消費が落ち込み、景気をさらに悪化させる恐れがある。
その点で今春闘の賃上げが力強さを欠くのは気がかりだ。余力のある大企業を中心に、十分な賃金アップを求めたい。
安倍政権の6年余り、株価は上がり、円安もあって輸出型大企業は巨利をあげた。これを政権はアベノミクスの成果と誇るが、現実を直視していないのではないか。
大規模金融緩和や財政出動というカンフル剤と、海外経済の拡大に頼る景気は長続きしない。
経済をゆがめ、副作用の目立つアベノミクスは限界にきている。しかも、超低金利をめざす金融緩和に固執する日銀には景気刺激の手だてがほぼ残されていない。
地方や中小企業にも広く恩恵が行き渡り、国民が誰しも不安なく暮らせる―。政府が目指すべきはこうした経済政策だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年04月02日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。