《社説①・10.09》:石破首相の国会答弁 「自分の言葉」忘れたのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・10.09》:石破首相の国会答弁 「自分の言葉」忘れたのか
これでは、有権者に判断材料を提供できたとは言えない。「自分の言葉で誠心誠意語る」との約束はどこへいったのか。
石破茂首相の所信表明演説に対する与野党の代表質問が、衆参両院で行われた。
本来であれば、一問一答形式の予算委員会を開催し、新政権の基本方針を巡って議論を深めるべきところである。
だが、9日に衆院が解散されるため、国会審議は代表質問と党首討論の計3日間にとどまる。しかも、代表質問での首相答弁からは、国民の理解を深めようという姿勢がうかがえない。
「政治とカネ」の問題では、改正政治資金規正法を「徹底的に順守し、残された課題の検討を進める」などと繰り返した。どのようにして抜け道をふさぐのか、具体策には触れなかった。
使途が不透明な政策活動費は、「将来的な廃止」も視野に入れると述べたが、時期は明言しなかった。与党の公明党も含め他党が廃止で足並みをそろえる中、及び腰が際立つ。
自民党総裁選で繰り広げた持論を封印し、岸田文雄前首相の答弁をなぞる場面も目立った。
アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設や、日米地位協定の改定は、「一朝一夕で実現するとは考えていない」として棚上げした。
批判的な立場を取ってきたアベノミクスについては「デフレではない状況を作り出し、雇用を拡大した」と評価し、円安による物価高や財政悪化など、負の遺産には言及しなかった。格差是正策として一時提唱した金融所得課税の強化は取り下げた。
前向きな発言をしてきた選択的夫婦別姓制度の導入に関しても、「さまざまな意見がある」として慎重姿勢に転じた。
事実上、首相を決める総裁選で掲げた「公約」は重い。就任にあたって主張を変えるのであれば、理由を丁寧に説明すべきだ。さもなければ、発言の信用性が損なわれてしまう。
首相は所信表明演説で、ルールや国民などを「守る」と訴えた。しかし、一連の言動は、党内基盤の弱い自らを守ろうとしていると受け止められても仕方あるまい。
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