【社説①】:札幌政令市50年 具体性ある将来展望を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:札幌政令市50年 具体性ある将来展望を
札幌市が1972年に政令指定都市に移行し、今月1日で50年を迎えた。当時既に人口100万人を超え、現在は道内の約4割に当たる196万人を擁している。
72年は2月に札幌冬季五輪大会が開催された年だった。道路網や地下鉄が整備され、観光地としての国内外の知名度も上がった。
ただ近年は大都市ゆえの課題に直面している。コロナ禍では、人口が密集し感染が拡大しやすいもろさを露呈した。産業基盤が脆弱(ぜいじゃく)な中で、頼みの観光関連業が打撃を受け地域経済は冷え込んだ。
少子高齢化の影響で今年に入ると人口も減少に転じた。今後は老朽化したインフラの維持・補修が深刻な問題になるだろう。
札幌市は2030年の冬季五輪招致を実現させ、インフラの再整備やリゾート都市としての発展を目指すとしている。
だが五輪招致の是非を別にしても、一過性の巨大イベントに頼る従来型の発想には終止符を打つべきだ。地に足を着けた中長期の展望を示すことが求められる。
政令市は1956年、大阪市や名古屋市などの大都市を対象に、都道府県とほぼ同等の権限を持つ制度として創設された。現在は札幌を含め20市が指定されている。
ただコロナ対策を巡っては制度の欠陥も浮き彫りとなった。
道内感染者の半数超が札幌市に集中するにもかかわらず政府との調整は道が担い、札幌の感染状況の逼迫(ひっぱく)度を反映した対策を速やかに講じられなかった時もあった。
政府は政令市と直接協議する仕組みを検討するべきだろう。
札幌一極集中も長年の懸案だ。
道外への人口流出を阻止するダム機能の側面がある半面、道内各地の人口減少を加速させている。
過疎や働き手不足に直面する市町村に対し、札幌から人材や物資、資本を供給する機能を強化する必要があろう。
2015年の国勢調査結果に基づく札幌市の推計では、人口は40年には183万人になる。生産年齢人口も15年の124万人が98万人に減少する。逆に老年人口は48万人が69万人に拡大する。
経済活動を支える生産年齢人口が減ると市の税収に影響する一方で、高齢化の進展で社会保障関連費の増大は避けられない。
人口構造の変化を見据えた抜本的な財政改革は不可避だ。ただ、それが市民サービスの低下につながらないよう、道との二重行政解消を含め行政運営の在り方を徹底的に見直す必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月08日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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