【社説①・12.04】:通販のアマゾン 値下げ強要 徹底解明を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.04】:通販のアマゾン 値下げ強要 徹底解明を
便利なネット通販は今や社会インフラの一つだ。世界的な巨大IT企業が法令を軽視し、サイトでの有利な表示と引き換えに出品業者へ値下げを強要していたならば到底許されない。
公正取引委員会はアマゾンジャパン(東京)に対し、独禁法が禁じる優越的地位の乱用や拘束条件付き取引の恐れがあるとして立ち入り検査に入った。
アマゾンの商慣習には欧米当局も競争上問題があるとして監視を強める。公取委はアマゾン米国本社が関与した可能性もあるとみて調べる方向という。
独禁法違反容疑でのアマゾンジャパン立ち入り検査はこれで3回目だ。以前は改善策を示し排除措置命令を回避してきた。
国際的にもネット通販のルール整備が求められる。公取委は海外当局と連携して実態解明や透明性確保を図ってほしい。
問題となっているのはアマゾンのサイトで外部の小売業者が販売する「マーケットプレイス」だ。利用者が商品を検索するとアマゾン推奨業者が目につきやすい位置に表示される。
優先枠となる条件として、価格引き下げに加え、アマゾン提供の商品発送サービス利用などを強要した疑いがあるという。
米国でもこの圧力が問題視され、連邦取引委員会が反トラスト法(独禁法)違反の疑いで米アマゾンを昨年提訴している。
赤字覚悟の出品を強いられる構図は日本も同じだ。人工知能(AI)利用とされる優先枠設定のプロセスも不透明である。
独禁法は優位な立場の企業が取引先に不利益を与える行為を禁じる。公取委は違反行為の情報を業者から募る予定で、アマゾン側も「調査に全面的に協力する」とコメントしている。
国内のネット通販市場は24兆円とされ物販は14兆円に及ぶ。市場シェアはアマゾンが首位で楽天が続く。公取委は3年前に楽天グループに対しても送料無料化による優越的地位乱用の疑いがあると指摘していた。
道内はデパートやスーパーの撤退が相次ぎ、どこでも注文や受け取りができるネット通販の比重は増すとみられる。アマゾンは今年夏に薬局チェーン各社と連携し、病院の処方箋に基づく医薬品販売にも参入した。
巨大IT規制ではスマホのアプリストアや決済システム運営で他社参入の妨害を禁じる新法も今年成立した。米アップルやグーグルを念頭に置くものだ。
大手の寡占、独占でサービスや価格の決定権が握られれば、不利益を被るのは消費者だ。今こそ公正で自由な取引環境の整備を強める時である。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月04日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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