【社説②・02.13】:下請法改正 デフレ型商習慣と決別したい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.13】:下請法改正 デフレ型商習慣と決別したい
中小企業がコスト上昇分を適切に価格転嫁できなければ、賃上げは広がらない。下請法の改正でデフレ型の商習慣と決別し、日本経済の成長につなげていくことが重要だ。
公正取引委員会と経済産業省の有識者会議は、下請法の見直しに向けた報告書をまとめた。これに基づき、政府は今国会に法律の改正案を提出する方針だ。約20年ぶりの抜本改正になるという。
下請法は、中小企業を保護するため、高度成長期の1956年に制定された。だが、ピラミッド型に業者が連なる多重下請けが常態化する業界は多い。時代に即して規制の強化を図るべきだ。
報告書は、まず下請法の適用基準を厳格化するように求めた。現行規定は「資本金」を基準に法律を適用しているが、新たに「従業員数」の基準を追加した。
現行法の下では、大企業が減資を行って中小企業扱いとなる「下請法逃れ」が相次いでいる。
このため、例えば、製造業の発注側は、従業員300人超、下請け側は300人以下なら法律の対象とする。資本金の意図的な操作で法の適用を逃れようとする行為を抑止するのは妥当である。
また、大企業が下請け側と協議せずに、一方的に取引価格を決めることも禁止するという。
現行法でも大企業が著しい低価格を押しつける「買いたたき」を禁じている。だが、実際に摘発しようとしても「著しい低価格」の算定が難しかった。新たな規定では、大企業が中小企業との価格協議を拒むことを禁ずる。
ただし、価格交渉が行われたとしても形式的なやりとりに終始する恐れがある。政府の監視体制の強化も不可欠になろう。
報告書は、デフレに陥った90年代後半以降の「価格据え置き型経済」を問題視した。取引に際し、中小企業が求める価格転嫁が進まない商習慣が定着したためだ。
長引く物価高で中小企業は価格転嫁に苦しんでいる。物価や賃金がともに上がる「成長型経済」へと転換を図る必要性は高い。
このため、報告書では、長年にわたり根付いている「下請け」の用語を変えることも求めた。政府は、大企業と中小企業が対等に向き合えるように、「中小受託事業者」へと改める方針だという。
官の旗振りで新たな用語を定着させるのは難しい面もあるが、意識変革の必要性を訴えたいという狙いは理解できる。経済界を挙げて、不合理な商習慣の是正に向けた努力を重ねていきたい。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月13日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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