【社説②・02.28】:女性の健康支援 社会的課題との認識を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.28】:女性の健康支援 社会的課題との認識を
働く女性が抱え込みがちだった健康上の課題に、企業や社会がしっかりと向き合う時である。
政府は今国会に、女性活躍推進法の改正案を提出する。
特に女性の更年期症状や生理に伴う体調不良などに企業が配慮すべきと初めて明記する。
半ばタブー視されてきた女性の健康問題を正面に据え、支援を明確に位置づける意義は大きい。
具体的には、法定の「生理休暇」の取得が低迷しているのを受け、名称変更も含め改善策を検討する。法定休暇でない更年期症状や不妊治療に対しても、企業が就業規則などで対応できる「特別休暇」の創設を促す。相談窓口の設置のほか、職場の理解促進へ社員研修の普及も図るという。
推進法は2015年、政府が「女性活躍」を成長戦略に掲げたのを背景に、就労状況の男女差を解消するとして法制化された。
働く女性にとって、頭痛、不眠、気分の落ち込み、下腹部痛など更年期症状や生理のつらさは深刻だ。だが、勤務先が支援しているかを尋ねた民間調査では、女性の約7割が「思わない」と答えている。
婦人科がん、不妊治療も含めた健康課題による仕事効率の低下や離職などの経済損失を、国は社会全体で約3・4兆円に上ると試算する。うち2兆円を占めるのが、更年期症状である。
昇進や仕事を引き受けることを諦めた経験のある女性が、3割に上るという東京都の調査も深刻さを表す。本人の働きがいやキャリアのみならず、企業の人材活用や事業活動に及ぼす影響は大きく、支援は不可欠といえよう。
問われるのは、その中身だろう。明治安田生命保険は社内に婦人科外来を設けた。京都でも、ワコールが広い範囲で使用できる休暇制度を、オムロンが不妊治療のための長期間休職制度を整備する。リモートワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方も一助になる。
大企業を中心に始まっている多様な取り組みを、中小事業にいかに広げていくかが問われる。
女性が働きやすい職場づくりに最も重要なのは、周囲の理解だ。
男性の上司に申請や相談がしにくく、つらさを我慢して働いている人は少なくない。管理職らが生理痛を疑似体験する研修を企画した企業もある。男女共同のセミナーなどで率直に体験や思いを話し合うのもいいだろう。
社会的課題として、正しい知識と理解を広げたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月28日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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