【社説①・02.27】:年金の改革 与野党で負担の熟議を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.27】:年金の改革 与野党で負担の熟議を
5年に1度の年金改革を、夏の参院選後に先送りする案が政府、与党内で出ている。
全ての国民が受け取る基礎年金(国民年金)の底上げや、パートらの厚生年金加入を広げる関連法案の提出を目指しているが、現役世代や企業の負担増を伴う。
選挙が不利になるとする与党内の反対や、野党の追及を避けるための先送り論という。
だが、少子高齢化により年金財政が悪化するのは確実で、制度を安定させ、国民の将来不安を低減する改革は急務だ。与野党の建設的な議論を求めたい。
保険料を支払う現役世代が減る一方、年金を受ける高齢世代が増えている。昨年の財政検証によれば、20歳以上の全国民が加入する1階部分の基礎年金は将来、特に給付水準が下がる。そこで会社員らが入る2階部分の厚生年金の積立金で、基礎年金を底上げするのが今改革の柱という。
非正規など不安定な雇用で、基礎年金が頼りとなる就職氷河期世代が少なくないとみられ、老後生活の保障には重要な対策となる。長期的には、ほぼ全ての世帯で給付水準が底上げされる。
もう一つの柱は、会社員に扶養されるパートらが厚生年金に加入する要件を廃止する案である。
年収要件(106万円以上)や企業規模要件(従業員51人以上など)をなくすことで、多様な働き方に中立的な制度とし、手厚い給付を受けられる人を増やす。
いずれも社会保障審議会の報告書を基にした案だが、自民党内で負担増への慎重論が強く、法案作成の段階で大きく後退した。
積立金の活用は枠組みを作るものの、実施の判断は5年後の改革時に行うとし、実質棚上げする。企業要件の完全撤廃は、10年後に延ばす。5人以上が働く個人事業所への適用も新設に限り、既存事業所は当面免除とする。
そんな穴が目立つ法案でさえ、今国会に提出せずに議論から逃げるようでは、石破茂首相が施政方針で掲げた「熟議の国会」はかすむばかりではないか。
衆院多数派の野党も姿勢が問われる。財源の裏付けを度外視し、高校無償化や「年収の壁」見直しの減税効果だけを追うような無責任さは改めるべきだ。
与野党で、法案作成から集中協議をしてはどうか。基礎年金の半分を占める公費の財源や、昨年の衆院選を前に封印した保険料の納付期間延長なども含め、幅広く検討してもらいたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月27日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます