【社説①】:日本への避難者 受け入れの拡充急務だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:日本への避難者 受け入れの拡充急務だ
ロシアによるウクライナ侵攻でポーランドに逃れていた人のうち、日本行きを希望した20人が、政府専用機で来日した。
自力で渡航できない人が対象だという。政府は自治体や企業と連携して滞在先を確保し、生活費や医療費を支給する。定住や長期滞在を希望すれば、職業訓練や日本語研修も実施するとしている。
生活習慣が異なる中、教育や就労のサポート、心のケアが必要だ。既に約400人が自力で来日しており、これらの人たちを含めきめ細かな支援が欠かせない。
ウクライナから国外に逃れている人は約420万人に上る。未曽有の人道危機だ。
道内はじめ全国で支援に取り組む動きがあり、来日希望者はさらに増えることが予想される。
政府の対応の遅れが妨げになってはならない。受け入れ態勢や法制度の整備を急ぐべきである。
海外の民間人避難に政府専用機を使うのは異例だ。欧米各国が軍事的な支援に取り組む中、岸田文雄首相には国内外に人道支援をアピールする狙いもあるのだろう。
ただ、20人の選定経緯や、他の希望者の有無について、政府は詳細な説明をしていない。
ウクライナ支援に取り組む市民団体によると、希望者はなお相次ぐ。政府は現地での周知や民間との連携を工夫する必要がある。具体的な受け入れ計画も急がれる。
政府はウクライナから逃れてきた人を「避難民」と位置づけ、90日間の短期滞在という資格で受け入れた。希望すれば1年間働ける特定活動への切り替えを認める。
ただ、難民条約に基づく「難民」ではないため、難民認定されると得られる5年間の定住者資格や、永住者要件の緩和、幅広い権利の保障は今のところない。
避難民では法的な位置づけがあいまいだと言うほかない。
紛争から逃れる人を受け入れるのが世界の潮流だ。日本の難民認定はそもそも厳格すぎるとして国際的に非難されている。そうした問題の解決を後回しにしてきたツケが表れたと言えよう。
入管制度についても人権への配慮を欠くとの批判が絶えない。
昨年の国会に提出された入管難民法改正案は、紛争から逃れるなどした人を難民に準じて在留を認めるとしていたが、強制的な送還や監視強化に重点を置いたことなどに反対が強く、廃案になった。
今回を機に、改めて難民行政のあり方や法制度に関し、国会で議論を深める必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月07日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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