【社説②・12.10】:アサド政権崩壊 シリア情勢悪化避けよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.10】:アサド政権崩壊 シリア情勢悪化避けよ
シリア反政府勢力が首都ダマスカスを制圧し、アサド政権が崩壊した。同国内は今後、諸勢力による分割支配が予測される。内戦の疲弊に加え、新たに数十万人の避難民が生じており、人道状況の悪化を防がねばならない。
国際テロ組織アルカイダを出身母体とする過激派「シリア解放機構」など反政府武装勢力が首都を無血制圧。ジャラリ首相は「協調準備はできている」と政権移譲に応じる姿勢を示し、アサド大統領はロシアに亡命した。
アサド政権は1970年以来、父子2代にわたり、シリアで独裁体制を敷いてきた。現大統領は2000年に世襲したが、11年にアラブ各地で起きた民主化運動「アラブの春」で内戦に突入した。
14年には過激派「イスラム国」の伸長で政権危機に陥ったが、ロシアやイラン、親イラン民兵組織ヒズボラの支援で国土の大半を掌握。アラブ連盟にも復帰した。
内戦では40万人以上が死亡し、約550万人が国外に流出、約690万人が国内避難民となった。避難民は今回の反政府武装勢力との戦闘でさらに増えた。
アサド政権崩壊の背景には頼みの綱としていたロシアやイラン、ヒズボラからほとんど支援が得られなかったという事情がある。
ロシアはウクライナへの侵攻が最優先課題で、イランやヒズボラはイスラエルとの交戦で受けた打撃からの回復が急務だった。
米大統領にシリア介入を望まないトランプ氏の返り咲きが決まったことを受け、シリア政権内の大統領批判勢力やトルコなど関係各国間で、大統領放逐の根回しが進んでいた可能性も否定できない。
シリア国内は当面、シリア解放機構などイスラム過激派勢力、トルコと対立するクルド武装勢力、地中海沿岸を拠点とする親アサド民兵などが分割統治し、緊張が続くことが予測される。流動的な情勢が続く中、潜伏しているイスラム国の動向も不安材料だ。
アサド政権崩壊を軟着陸させ、内戦を終結につなげなければならない。国際社会は協調してシリアの安定化に力を尽くすべきだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月10日 07:14:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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