【社説②・12.06】:SNSと子ども 有害情報から守らねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.06】:SNSと子ども 有害情報から守らねば
オーストラリア議会が、16歳未満がSNSを利用できないように事業各社に対策を義務付ける法案を可決した。保護者の意向にかかわらず全面禁止する法律が国家レベルで成立するのは初めて。
SNS規制は「言論の自由」に触れる恐れがある難題だが、有害な情報から子どもの心身を守るには野放図な利用を放置せず、対策を講じるべきは当然だ。
新法は違反事業者に最大50億円相当の罰金を科す厳しい内容だ。
背景には、子どもたちがSNSから離れられず、睡眠障害やうつ病を患ったり、投稿内容を信じて拒食や自傷行為に走ったりするなど、心身への悪影響がある。児童ポルノなどの犯罪の温床になっているとの指摘もある。
未成年者のSNS利用制限は世界的な流れでもある。米南部フロリダ州は14歳未満のアカウント取得を禁じる法律を成立させるなど一部の州が未成年の利用制限を法制化した。フランスは15歳未満の利用に保護者の同意を義務付けるなど欧州各国も規制を強めている。日本政府も検討を開始した。
事業者側は自主規制に取り組んでいると強調するが不十分だ。
若者に人気のインスタグラムやティックトック、日本で人気のX(旧ツイッター)など、多くのSNSは13歳未満がアカウントを取得できないようにしているが、虚偽の生年月日で登録は可能だ。
年齢をどう確認するかを含め、より有効な対策を講じるために知恵を絞らねばならない。
SNSの悪影響を受けるのは子どもたちだけに限らない。
SNS上で自分と似た意見や思想ばかりが行き交う「エコーチェンバー」や、関心のある情報が優先的に表示され、関心のない情報から隔離される「フィルターバブル」はよく知られた現象だ。
多くの人々が異なる意見に耳を傾けず、寛容さを失う一因ともされ、各国で広がる政治的な分断や対立とも無関係ではない。
虚偽情報の拡散力は、それを打ち消そうとするファクトチェックの数倍強いとの研究結果もある。虚偽情報は選挙にも影響し始め、民主主義を揺さぶっている。
こうした状況を放置すれば、規制はやがて利用者全体に及びかねない。SNSの運営者も利用者も自らをより厳しく律し、「言論の自由」を守り続ける方法を考えなければならない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月06日 07:41:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます